煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

Are you up for a dance?なVOCALOID曲

 

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 11月と言うのに夏日が続くとは驚きですね。昼間と夜の寒暖差で体が悲鳴をあげてますよ。気温の数字的にはそれほど寒く無いのですが、夜のなると異様に寒さを感じてしまいストーブが欲しくなりますが、取り敢えず我慢をしてやり過ごしています。それにしても、今年の異常な自然の変化はシャレにならず、いよいよ本格的に何かが起きている感じで不安になりますね・・、これ以上の変化は勘弁して頂きたいです。

 

今回のお品書きになります

 

 

 

煮干しがお送りするちょっとした物語

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

 曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。



 

 俺はブラインドカーテンから外の景色を見て、腕時計をチラ見し、くるりと周り、窓を背にして自身の専用のデスクに腰を下ろす。専用デスクには乱雑に資料が積まれて、俺専用の探偵魂と記されているマグカップには昨日淹れたコーヒーの飲みかけがある。そして、俺は頭の後ろで手を組み我が事務所を見渡す。おおよそ10畳程の室内にはオフィス用の資料用の棚が二つ、依頼人との打ち合わせ用にソファとテーブルが置かれ、俺のデスクの隣には先週調達したばかりの真新しいオフィス用の机と椅子があった。俺は再び腕時計を見て、「待ち合わせの時間はも過ぎているな・・電車が遅れているのか?、いや・・もしかしたら事故に遭ったか?」と俺は呟く。今日は人と会う約束をしている。それは俺の人生史上初の人を雇う為であり、そうなった経緯を説明するには少々長くなるが良いだろうか?、ありがとう、では説明しよう。俺は興信所を営んでいた。興信所て何かって?、平たく言えば探偵という奴だ。こんな狭いチンケな事務所を構えて、大手の興信所に媚びを売り顎に使われ、おこぼれを貰うケチな存在だった、そう、二年前までは。世間という奴は常に形を変えて変化をするもので、ここ最近の流れは速く、アンテナを張って世間を観察しないとあっという間に浦島太郎だ。そんな世間の荒波は容赦なく俺を襲う。以前は浮気調査や婚約者の素行調査、経歴調査、などの大手の事務所が人手を割けず、とりこぼした仕事を俺は請け負っていた。ささやかな生活を送るなら困る事は無く、一生食いっぱぐれる事はそうは無いと踏んでいた。だが、世間の価値は変わり実際の経歴や素行より、ネット上の素行、つまりデジタルタトゥーを重要視し始める。ネットというのは厄介で、ある種の人間性が剥き出しになり、従来の調査では浮かんでこないものが容易に分かる。従来の調査はここ数年でシステマチックされて、人員はあまり必要とされなくなり、必然として浮いた人材はネット関係に回し、捌ききれないものは末端の小さい俺の様な一人親方の事務所に流れる。しかし、残念ながらその手の技術や知識がないアナログ人間の俺は、からっきしダメだったため、大手事務所から要求に応えられず払い箱にされた。仕事の9割が無くなり途方にくれた俺ではあったが、お金は何もしていなくても出て行くものは出てく。背に腹は代えられず、今まで避けていた仕事をするようになる。その仕事というのは多種多様で一括りで表すならば、何でも屋、要するに街の便利屋さんだ。俺にもちっぽけなプライドがあって探偵がそんな事をしたら終わりだと自戒していた訳だが、生きる為に禁を破り身を落とす。皮肉にもどうやら水が合っている様で、俺の複雑な想いとは裏腹にトントン拍子に仕事が増えて、いよいよ一人では仕事を回せなくなりそうな展開になり、この度、助手を雇う事に決めた。この真新しい机と椅子はそのために購入したのだ。正直な話、俺は一生一人で探偵業をして、そのまま朽ち果てる運命だと思っていた。今でもこのような状況になったとは信じられない。ご清聴ありがとう、自己紹介が遅れたな、俺は兼平竜矢(かねひら・りゅうや)、探偵から身を落として何でも屋になった者だ。

 

 それにしても遅いな・・、待ち合わせでは午後一時のはず、現在は午後二時、完全に遅刻をしているぞ。面接に遅刻をするなんて論外とはいえ、幾度もお世話になった人からの紹介だから無下に出来ない。俺は何度目かの腕時計で時間を確認すると、事務所のドアにノックする音がした。ようやく来たか・・。「どうぞ」と俺はドアの前にいる人物に許可をする。すると、ドアが開き紺色のパンプスに黒のレディーススーツパンツに、黒のジャケットを着こなし、鋭い目をしたショートカットのすらっとした体型、いわゆる王子様系で同性にモテそうだ。女性は俺を真っ直ぐ見つめ、「失礼します」と言う。俺は席を立ち、来客用のソファーに座り、「待ってました、そこへどうぞ」ともう一つのソファに座る事を促す。女性はピシっとかかとを揃え、「はっ、失礼します」と独特の言い回しをしてソファに座り俺と対面する形になる。先ほどの彼女の仕草は上下関係が厳しい職場でしばしば叩きこまれるもので、民間では考えにくいし、恐らくだが、自衛隊、警察関係などの組織にいた可能性が高い。おっといけない、元探偵の悲しい性が出てしまった・・、今はそんな事より彼女に確認をしないといけない事があるはずだ。「どうも、代表の兼平竜矢と申します、といっても当社は私しか所属してませんがねw、まっ、そんな事より今日の面接の時間は何時でしたか?」と俺は皮肉たっぷり、ちくりと彼女に尋ねた。いくら恩人の紹介と言っても理由によっては彼女の採用は見送るしかない。彼女は少し戸惑いながらも「はっ・・、面接に向かう電車内でスリを目撃致しました、小官は見過ごせる事は出来ずその場で確保して、今まで警察に事情を説明致していました」と彼女は答えた。かくほ?、電車に乗り遅れたとか、道に迷ったとかじゃなくて?、本当か?。想像の斜め上の事情を聞き俺は少し動揺したが、飽くまでもポーカーフェイスを演じ、「あっ、ごめんなさい、私としたことがお茶を出すのを忘れました、お茶を出すので楽にして待っててください」と俺は彼女に告げて、給湯室に行く。給湯室に着くとスマホを懐から出し、探偵時代に築き上げた人脈の中から、彼女の真偽を確かめられる人物に電話を掛ける。電話を3コール目で繋がり「何だw竜矢、探偵を辞めたんじゃないのか?」と先方は開口一番に俺を煽った。「すいませんw、その通りなんですがちょっと確かめたい事がありまして、今日の午後1時ぐらいに電車内でスリが逮捕されませんでした?」と俺は飽くまで謙り先方を不快にさせまいと努め尋ねた。「スリの逮捕?、ああ!、あった、あったw、凄いんだぜ!、若い姉ちゃんが大の男を腕づくで捕まえて署内では噂で持ち切りだぜ!」と先方は興奮気味で言う。「そうですか・・、それを確認をしたかっただけですので」と俺は先方に返す。「何だよ、お前何かやっているのか?」と先方は俺が探偵を廃業したのを知っているので怪しむ。「いえ、所長さんに紹介された女性が面接に遅れた理由がスリの確保と言っていましたので」と俺は素直に経緯を打ち明ける。「えっ!?、あの方が?、そうならそうと言ってくれよw、人を雇うって事は儲かってるのかw、俺が警察を首になったら雇ってくれよなw」と先方は勝手気ままな事を言う。「ええ、善処します、それでは失礼します」と俺は通話を終了した。本当の事だったのか・・、ふむ、中々見込みがありそうだ。俺は感心しつつ、冷蔵庫からお茶のペットボトルを出し、グラスに注ぎお盆に乗せて彼女の元へ向かう。「お待たせしました、今年は暑いですよね」と俺はグラスに入っているお茶を彼女の差し出す。彼女は軽く会釈をしお茶には手を付けず、「面接を始めてくれませんか?」と俺に打診する。「ああw、そうだね、私とした事がうっかりしていた、それでは面接を始めましょう」と俺は申し訳なさそうに彼女の申し出を受けた。初っ端で出鼻を挫かれたが仕切りなしと行こう。「それではお名前をお教え願います」と俺は彼女に尋ねた。件の恩人からの紹介に相手の事は一切不問で面接を受けさせてやってくれとの事で、何やら訳アリの人物の様だが渡りの船で俺は快諾をしたのだ。だから、彼女の名前も容姿も知らない。非常識と思われるが、俺の生きている世界では義理を欠くと生きていけないので条件を受け入れる他なかった。

 

 「はっ、日下部晴美(くさかべ・はるみ)と申します」と彼女は名乗った。「ほう、日下部晴美(くさかべ・はるみ)さんね、良い名前ですね!」と俺は彼女の名前を誉める。「はっ、ありがとうございます」と日下部は素直に嬉しそうな顔をした。「それでは日下部さん、当社で勤務したい動機は何です?」と俺は面接でのお決まりの台詞を言う。「小官の動機ですか?」と日下部は少し迷った顔をして、「小官の前の職場は、いわゆる公安的な職場でして、失態を犯してしまい、円満退社なら天下り的な職場に行けましたが、その道も閉じてしまって、恩人の紹介に頼ってきました」と動機を語る。・・・何だ?、公安的?、天下り的?、何もボカシてないじゃないか、俺を試しているのか?、というか、一人称を小官と言っている時点で正しくそうじゃないか!。俺は心の中でツッコミまくりながらも、「ははw、大変だったんですね」と何とか言葉を紡ぐ。「はい、そうなんです!、経歴は教えできませんが自分が持っている特技を記した履歴書を持ってきました」と日下部は俺が同情したのを気を良くしたのか笑顔で履歴書を俺に差し出す。「では拝見させていただきます」と俺は差し出された履歴書を手に取りながらお茶を一口飲む。履歴書には国会の質疑応答で出される資料の様に黒塗りで経歴が塗りつぶされていて、思わずお茶を吹き出しそうになったが何とか堪えて、特技、刺客の欄に目を移す。だが、そこには更なる強力な刺客が待ち受けていて、俺の我慢のダムが崩壊してお茶を吹き出してしまい、「がはっ、ゴホン」とむせてしまった。「あの!、大丈夫ですか?」と日下部は心配そうに俺に尋ねる。「あっ、うん、大丈夫だよ」と俺は何とか立て直し日下部に返し、改めて履歴書の特技・資格欄に目を移す。そこには、拷問特殊訓練修了と書かれており、再び吹き出しそうになるが我慢をして、「あの・・w、拷問特殊訓練修了とはどういった資格ですか?」と俺は日下部に尋ねた。日下部は臆する様子もなく胸を張り、「はっ、前の職場では情報を手に入れるために、潜入をする場面があり、そこで潜入先で怪しまれて尋問されても口を割らない様にする訓練を修了した証であります!」とドヤ顔をする。「はは・・、凄いね、でもそんな資格はうちでは必要ないかな」と俺は思わず否定。すると、「そうなんですか?」と日下部はしゅんとした。落ち込む日下部に俺は、「まあ、公安は特殊な職場だからね仕方がないよ」と慰める。その瞬間、日下部の様子が激変をして、「貴様・・、何故私が元公安と知っている?」と少し硬い表情だが温和な目だったのが、鋭い目になり俺を睨む。「えっ・・、日下部さん?」と戸惑う。ちょ、何だこいつ?、ヤバい、このままでは殺されかねない勢い、何か言って彼女を落ち着かせなければ!。彼女の地雷を踏み抜いた俺は必至に思考をフル回転して、「く、日下部さん、落ち着いて!、話し合おう!」と俺は日下部を説得。しかし、当の本人は、「敵国の工作員?、じゃあ、あの方も?」とブツブツと呟き俺の声が届いてない様だ。そして呟きがピタリと止まる。俺は日下部を凝視していると、彼女はゆらりとソファから体が浮くように立ち上がり、顔をやや俯き髪の毛が遮り表情が伺い知れない。ゴクリと俺は生唾を飲み込み事態を見守ると、日下部は独特の足運びをして、まるで地面から浮いてると錯覚する動きでゆらりと俺の専用デスクに移動し、ペン立てから万年筆を抜き取り、間髪入れず俺と彼女の間にあったテーブルをあっという間に飛び越えてソファに座っている俺の膝に馬乗りになる。もし場面が違えば男と女の情事に見るだろうが、残念ならそうではない。日下部は息遣いが聞こえる位に顔を接近してきて、「私は尋問特殊訓練も修了していますから、適切に素早く拷問してあなたをなるべく苦しまず口を割らせますので、安心をしてください」と手にした俺の愛用万年筆を首元に当てる。俺は日下部を押し退けようとしたがこの体制では如何せん力が入らず、力ではどうする事も出来ない。考えろ、考えろ、口でどうにかするしかない。手にしていた履歴書の、拷問特殊訓練修了の下に、尋問特殊訓練を修了と記された文字を俺は苦々しく見て、「ちょっと待ってくれ、公安とばらしたのは君の方だぜ?」と言う。日下部はピクっと反応して「私が?、いつ正体をばらしました?」と片眼をひくつかせて俺に尋ねた。ヨシッ、取っ掛かりが出来た!。「君は間違いなく前の職場を俺に打ち明けている、大体、公安的って何だ?、この国で公安的な職場って何だよ?、俺に教えてくれ!」と俺は日下部を問い詰める。「そ、それは・・」と日下部は露骨に動揺し、潮目の変化を見逃さず俺は更に畳みかける。「大体さ、一人称が小官ってw、前の職場を告白してるようなものじゃないかw、あまりに露骨だから試していると思ったよw」と俺は言う。日下部は俺の膝の上でワナワナとして、遂には瞳から涙がポロポロと流し、「うっ、うっ、うあああ」と嗚咽をする。膝の上で女性が泣くシュチエーションは人生初の経験。でも、あまり嬉しくない。「日下部さん、膝からどいてくれないかな?」と俺は優しく諭す様に言う。すると、日下部は泣きながら退いて床に崩れ、「いつもこうなんです・・・前の職場でも私の思慮不足が目に余り退職をさせられたんです・・」と語り、続けて、「今日は本当にすいませんでした、紹介して下さったあの方には小官の方から詫びをいれますから、からご安心をください」とボソボソと言い、フラフラと立ち上がり出口に向かう。なるほどな・・・前の職場の上司は持て余すわけだ・・。俺に紹介した恩人は無駄な事は絶対しない、彼女を指し向かせたのは訳があるはずだ、少々厄介だが袖振り合うも多少の縁と言うしな。「ちょっと待った」と俺は日下部を呼び止める。彼女は立ち止まり、「・・何ですか?」と涙でボロボロになった顔をこちらに向けた。「面接は合格、良いよ、日下部晴美さん、君を採用する!」と俺は日下部に採用を告げる。彼女の顔は一瞬で晴れやかになり、「本当ですか?、こんな小官で良いのでしょうか?」と何度も確認をしてきた。「おいwおいw、そんなに疑うって事は俺の人を見る目がないと言っているようなものだぞw」と俺は日下部の思慮なさを注意。彼女は「あっ、すいません・・」と謝罪をし、「ありがとうございます、小官は粉骨砕身、身を粉にして働かせて頂きます!」と仰々しい所信表明をした。「そんな大げさなw、もっと軽い気持ちで良いよw、あっ、こっちに来て」と俺は日下部の大袈裟な所信表明を笑い、伝える事を思い出す。そして、「はっ、何でしょうか?」と日下部はやや戸惑いながらも俺の方へ来る。「明日から、このデスクは君専用だ、事務作業の時はここで行ってくれ」と俺はピカピカのデスクを指し示す。「はい!、ありがとうございます」と日下部は嬉しそうに言った。「じゃあ、来週からお願いできるかな?」と俺は日下部に打診。「はっ、小官は問題ありません!」と日下部は答える。「よろしいw、来週からよろしくお願いします」と俺はペコリと頭を下げて、「はっ、こちらこそよろしくお願いします」と日下部は言い、頭を下げると事務所から去った。俺はブラインドカーテンから彼女の後姿を見送り、「あっ、万年筆を返してもらってないや・・、まっ、いいか、俺はもう探偵ではない」と呟く。彼女が持ち去った万年筆は俺が探偵にデビューした時に自分のためにご褒美として購入した代物だ。当時の経済力ではかなり背伸びして購入した訳だが、今となっては未練もない。

 

  翌週の朝、事務所で俺はツナギを着て、ちょっと奮発して買った高級オフィスチェアで寛ぎながらコーヒーを堪能していた。朝は濃いめのコーヒーに限る・・。カフェインが俺の意識を覚醒して、ギアが入った時、ドアが開き「おはようございます!」と元気な挨拶をしながら、先週と同じような服装をした日下部が出社してきた。少し不安だったが、時間通り出社に俺は胸を撫で下ろす。日下部は自分の専用デスクにバックを置き、俺の姿を見て「今日は工事現場に潜入ですか?」と尋ねて来た。「違うよ、今日の現場、トタン屋根の張替えのための服装だよ」と俺は答えた。「トタン屋根?、何故です?」と日下部は要領得ない怪訝な顔をする。「何故って、仕事の依頼だからだよ・・・」と俺は少し話がかみ合わない事に不安が膨らむ。「興信所ってそんな事もするんですか?」と日下部は俺に尋ね、「えっ、うちは興信所は辞めて、今は何でも屋だが?」と俺は返し、「えっ!?」と俺たち二人は同時に言う。「きみ・・、あの方から聞いてないの?」と俺は日下部に確認。すると、「聞いてません・・・、興信所だと伺ってました」と日下部は目が点になる。これはまずい・・、何かの手違いだと思いたいが、それよりも今は本人の意思確認が先決だ。「おほん、うちは何でも屋で君が思っているような会社ではないけど、どうする?、他の会社に行く?」と俺は言う。数秒ほどの沈黙の後、「いえ、乗り掛かった舟ですし、取り敢えずここで働かせてください」と日下部は意思を固めた。「そう?、それは良かったよw、早速で悪いんだけど、隣の物置を改装して更衣室を作ったから、これに着替えて」と俺はツナギを日下部に手渡し更衣室で着替える事を指示。日下部は「はい」と返事をだけして、事務所から出て行った。数分後、ドアが開きグレーのツナギ姿の日下部が現れると、俺はつま先から頭までまじまじと見る。ツナギ姿の彼女は中々様になっていて「結構、似合っているよw」と茶化す。「ふ、ふざけないでください!、さあ!、現場に行きましょう」と日下部は顔を赤くして現場に行く事を促す。「そうだねw、資材はもう現場にあるから、このまま歩いて行こう」と俺は了承して事務所のドアに手をかけた。現場は俺の事務所の向かい隣にある個人宅だ。俺たちは事務所が入っている雑居ビルを出て、その個人宅に向かう。現場である個人宅の門の前に備えてあるインターホンを鳴らすと、「はい、どちら様?」と依頼人の声がする。「こちら、何でも屋ですけど、依頼のトタン屋根の修理をしに来ました」と俺は先方に伝えた。「ああ!、お待ちしてましたよ、少々お待ちください」と依頼人は言いインターホン切る。それから、玄関ドアが開き、依頼人である50代ぐらいの主婦が出て来て、「どうも、今日はよろしくお願いします」と門を開き俺たちを招き入れた。俺たちは依頼人の後に続き、裏庭に入ると本来なら鮮やかな青色をしたトタン屋根が経年劣化でサビで真っ赤になった小さい物置が現れる。依頼人は振り返り俺たちを見て、「ホント助かるわw、ここら辺の大工さんは皆引退しちゃったから途方に暮れていたのよw、後はよろしくお願いしますね」と依頼人はお辞儀。「分かりました、作業が終了次第、お声を掛けます」と俺は返し、お辞儀をして、ワンテンポ遅れて日下部もお辞儀をした。依頼人は去り際に軽く会釈をし去り、俺たちは早速作業に取り掛かる。俺は予め、持ち込んで置かせてもらった工具と新しいトタン屋根に掛けられているブルーシートを退かす。俺は工具箱から、エル字型に曲がり先が二股にわかれている金属製の釘を抜く工具、かじやを二本とかなづちを二本取出し、日下部に手渡すと、脚立を持って物置の傍に立てる。そして、俺はひょいひょいと脚立を登り物置の屋根に上がると、「助手くん!、工具!」と下にいる日下部に言い手を伸ばす。日下部は自分を指さし、私?みたいなリアクション後、ふわっと浮くような跳躍をして脚立の中間辺りの足場を蹴り、しなやかに屋根に着地をした。先週の騒動の時も思ったが彼女の身のこなしは尋常でなない。俺は驚きつつも気取り直し、「今から、トタン屋根に打ち込んでいる釘を取るからよく見てて、かじやとかなづちを貸して」と俺は彼女の持っている、かじやと、かなづちを、手渡す様に指示。「あっ、これってかじやって言うですね」と日下部は感心しながら俺に差し出す。俺はかじやを受け取ると、まるでイノシシの蹄の様なかじやの先端を、打ち込んである釘の頭の下に滑り込ませ、慎重にかなづちで叩き奥まで入れる。今度は、長い取っ手の方に体重をかけて、俺がテコの原理で下ろすとズルっと釘が抜けた。その様子を見ていた日下部は、「すごーい!!、あんなに深く撃ち込まれた釘がいとも簡単に!、流石・・って、あなたを何とお呼びしたらいいでしょうか?」と日下部は今更の質問を俺に言う。「・・・竜矢さんで言いよ・・」と俺は顔を引きつりながら答えた。「竜矢さん!、尊敬しました!」と日下部は何故かは知らないがテンションマックスになり、早速自分でも釘抜をし始める。俺は彼女が出来るか見守っていると、あっさり教えた通りに出来てしまう。どうやら飲み込みは早い様だ。「じゃあ、二手に分かれて釘を抜いてしまおう!」と俺は指示を言い、「はっ、了解です!」と日下部は元気く返事を返した。

 

     俺たちは一枚のトタン屋根の左右に別れ、釘を抜き始める。俺は時より日下部の様子を伺うと、そつなく釘抜きしていて下手したら俺より早い。俺は負けじと作業スピードを速めて日下部より5本多く釘を抜く。すると、日下部は、「流石経験者!早いですね!」と俺を称える。「ま、まあねw」と俺は言い辛うじて面子を保つ。それから、釘を全部抜いたトタン屋根を二人で外し、新しいトタン屋根を敷いて俺が上がり、四隅に釘を打ちこんでズレない様に固定した。「よしっ、助手君!、上がって来て残りの釘打ちをしようか?」と俺は日下部に指示する。日下部がまたもや手を使わず脚力だけで屋根に上がり、「了解しました」と言う。俺は呆気にとられながらも、日下部が作業に入る前に、「釘の打ち方分かる?」と一応尋ねる。日下部はニコリと笑い、「それ位、分かりますよ!見ていてください!」と左手で釘をトタン屋根に立てて固定し、かなづちを持っている右手で思いっきり振り下ろそうとする。俺はその仕草を見て慌てて、「わっ!?、ちょっ、待て!」と制止する。だが、日下部は止まらず、かなづちは釘頭をかすり固定していた左手の指を叩く。「ぐちっ」と嫌な音がして俺は反射的に顔を背けて目を閉じ、ゆっくり開け、視線を向けると、日下部はそのまま固まり、無言だった。俺は恐る恐る、「だ、大丈夫?」と心配をする。日下部は、ゆっくりこちらを向いて、「大丈夫です・・、拷問特殊訓練を修了していますので・・」と目じりには涙が浮かび、特殊訓練が意味が無いと俺は悟る。日下部がかなづちを退けると、彼女の指の爪はどす黒いネイルがされていて重症だ。「日下部さん、もういいよ、下で見ていて」とこれ以上何かあっては大変なので待機を命じる。しかし、日下部が睨み、「大丈夫です!、特殊訓練を受けているから大丈夫です!」と大事な事を二度いう。「でもさ、君泣いてるしさ」と俺が指摘。「これは、汗です!、泣いてなどいません!」と日下部は涙を手で拭う。「汗w、絶対涙だよ!」と少しイラっとした俺は半笑いで追及をする。すると、日下部は、「はっ?、泣いてませんよ?」と先週の俺を襲ったような雰囲気を出す。くっ、こいつ・・逆切れをするタイプか・・こんな場所で襲われても困る。「そ、そう?、じゃあ続けようか?」と俺は誤魔化す様に言い作業に入った。俺は釘をトタン屋根に立てかけて、慎重にかなづちを最初は弱く、釘が中ほどまで入ったら、力いっぱい叩く。時より視線を感じて、その方向をチラ見すると、日下部は真剣な目で観察をしている。俺の作業を一通り見た日下部は、おもむろに作業を始めて先ほどの様に豪快にかなづちで釘を叩こうとせず、慎重に叩く。日下部は釘抜き動揺、一度コツを覚えると機械の様に正確に動き早い。日下部の様子を見た俺は大丈夫そうなので自分の作業に集中。二人のかなづちの叩く音が青空にこだまして、15分後、作業が終わり依頼主に声を掛けた。「あらー、綺麗になってw、ありがとうねw」と張り替えた真新しいトタン屋根は秋晴れの青空の様に青く、それを見て感謝の言葉を依頼主が言う。「じゃあ、古いトタン屋根はこちらで処分しますので、また何かありましたらお声を掛けて下さい」と俺はお決まりの台詞を言い請求書を差し出す。依頼主は笑顔で受け取り、「はい、その時はよろしくね」とお辞儀して俺たちを見送った。

 

 俺たちは工具と、脚立それに古いトタン屋根を持って近場の個人倉庫に行く。倉庫に入ると、日下部に脚立の指定場所を指示して置かせ、俺は工具を棚に置き、古いトタン屋根を適当な場所に置く。それから、今年の夏は異常に暑かったので、水分補給をすぐできる様にと設置した冷蔵庫から猫のイラストが描かれた缶コーヒーを取り出し、そのうちの一つを日下部に投げる。日下部は片手でキャッチして、「ありがとうございます」と感謝を述べた。「仕事をしてみてどうだった?」と俺は日下部に何でも屋という仕事の感想を尋ねた。「うーん・・、まだ初日ですし、色々な仕事をやってみないと分からないです」と日下部は答えた。「そりゃそうかw、今日はこれで終わりだけど、明日からは数件の現場が控えているから覚悟する様に!」と俺は宣言。「はい!、頑張ります!」と日下部は呼応した。その後、俺たちは事務所に帰り、日下部は更衣室で着替え、「お疲れ様でした」と言い退社。俺はツナギのまま、コーヒーを飲みながらブラインドカーテンの一部を人差し指で曲げて日下部の後ろ姿を見る。すると、俺の内ポケットからスマホの振動が伝わり、すかさず手を入れて取り出し、電話に出た。「はい、兼平です」と俺は相手に名乗る。「あら、あら、ごきげんよう、所長よ」とスマホの受話口から聞き覚えのある声が聞こえた。「あっ、所長!、お疲れ様です!」と俺は背筋がピンとなる。「どうかしら、彼女は?」と所長は俺に日下部の事を尋ねた。「そうですね・・少し早合点の所がありますが、呑み込みが早く、経験を積めばかなりいい人材になります」と俺は今日一日を見て感じた事を包み隠さず答えた。「あら、あら、それは僥倖、彼女の古巣ではその早合点が致命的だったの、彼女のみならずチーム全体が危険に晒される前に、彼女の上司が先手を打ったのよ」と所長がかいつまんで日下部の経緯を言う。「ははw、そうですか・・、あの短慮は危険ですからね」と俺は愛想笑い後、少し引きつる。「まあ、これからも彼女をよろしくね、話は変わるけど、例の調査を終わったかしら?」と所長は俺に日下部を託す旨を言い別の話題を振ってきた。「これでも元探偵ですよw、とっくに調査は完了しています」と俺は仕事の完了を告げ、それを聞いた所長は、「あら、あら、それは良かったわw、その資料を私の名代が受け取りに行くから報酬と引き換えに渡してちょうだい」と言う。「名代?、妙な語尾があるメイド服の彼女ですか?」と俺は数度の取引で来た名代を思い浮かべる。「違うわ、落伍者みたいな男が来るわ、今後は彼が名代だからよろしくね」と所長は新しい名代のあらましの特徴を説明。「あれ?、趣味が変わったんですか?、まあ、こちらは報酬を貰えばいいですが・・」と俺は言った。「そういう事だからよろしくね、じゃあ失礼するわ」と所長は言、「はい、失礼します」と俺は返し通話を終了した。所長・・・通称で彼女が何者かは分からない。俺が探偵をしている時、意図せずアンタッチャブルに振れてしまい、命の危険に晒された。そんな時彼女に助けられて、その縁で定期的に人の調査を任されている。調査した人物たちは何なのかは分からないが、決まった時期に入る収入はありがたい。俺は再び、ブラインドカーテンの一部を人差し指で曲げて小さくなった日下部の姿を見て「これからもよろしくな、相棒!」と呟く。

 

 

 

328曲目の紹介

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲をカド丸さん、イラストをclartéさんによる踊るようにです。

 

 天空の星々が消え去り、日が昇り街には様々な目的を抱えて人は行き交い日常が動き出すと、彼等の呟きが今日も電子空間でこだまする・・、日常の下らない事や己に足りないものを求める声だ。そんな想いを私の起こすビートでひとまとめにしてあげようじゃない!、さあ!ビートに乗って今宵はレッツパーティ!踊ろうよ!

 

 本曲は、オシャレなテクノシティポップで、人々が呟く想いをひとまとめにする歌で、初音ミクさんがダンスに誘います。

 

 本曲の題名、踊るようには、恐らくですが単純明快にオシャレなビートを響かせる曲で人々をダンスに誘い、踊っちゃおうよ!というキュートな意味だと思います。

 

www.youtube.com

 

 恐らくシティポップというジャンルだと思いますが、日常のひと時を連想する感じの曲は好きですね。2分16秒と短めの曲ですが繰り返して聞いてもストレスが掛からず良かったです。

 

 本曲、踊るようには、オシャレサウンドで聴き手の琴線の振れる歌詞が素晴らしい曲ですので、是非!、本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

初音ミク