煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

現実と電脳世界の狭間で今日も曲が生まれるVOCALOID曲

 

 こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 バブル期の1989年に値を付けた3万8957円44銭を超えて、平均株価が過去最高値を記録しましたね。バブル期の逸話は聞いていますが、またあの様な時代が到来するのでしょうか?。まあ、自分の周辺だけの話になりますが今の所その様な感じは一切せず、株価の高騰による恩恵は無さそうです。NHKのニュース番組の解説者さんが、バブル当時の企業は国内で稼いでいたので、株価が高騰すると恩恵があっただけで、現在は企業の業務形態が大きく変わり、海外で稼ぐ状態だから株価の高騰による恩恵は一部にとどまっていると言われていました。国内は少子高齢化や重ね重ねに散り積もった社会負担によって余計なものを買う余裕はありませんからね・・・、購買力が健在なアメリカ、人口ボーナス中で今後経済の台風の目になりつつあるインド、それらの国に企業さんは活路を見出し経営のシフトチェンジをそりゃあしますよ。あと、株価は好調でも、一般人の懐はスカスカって感じの所に、日銀の植田総裁によるインフレ発言は、富める者が予定定員に達したから、マイナス金利解除しますって聞こえて、資本主義半端ないと戦慄しましたよ。

 

今回のお品書きになります

 

 

煮干しがお送りするちょっとした物語

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。



 薄暗い日本家屋の中で俺は目についた何も収納されていない本棚に懐中電灯を照らし、目を皿の様にして隅々まで見て、「くそっ、無いな・・・」と呟く。俺の名前は兼平竜矢(かねひらりゅうや)、世間一般では何でも屋と言われている部類の人間だ。俺は本棚には何もないと踏んで、部屋をあちらこちらと懐中電灯で照らす。部屋の右端から左端に向けゆっくりと慎重に観察しながら懐中電灯を移動させると突然、作業着姿で黒髪のショートヘアーの女性の顔が出現。俺は驚き、「うわっ!」と声を思わず上げる。俺は胸に手を添えて深呼吸をし、「日下部さん、驚かさないでよ」と抗議。彼女の名は日下部晴美(くさかべはるみ)、初めて雇入れた女性だ。日下部は、「はあ、すいません、特殊訓練を受けまして、薄暗いと無意識に気配を消してしまうのです」と何食わぬ顔で答えた。彼女は事あるごとに自分が習得したスキルの過程である特殊訓練を絡めて来る。それは彼女のアイデンティティであり、うっかりと否定をすると大変な事になる。俺は苦笑いで、「はは、凄いね」と誉めた。自尊心を満たされたのか日下部は、「まあ、それほどでも」と得意げな顔。話の一段落が付き、俺は懐中電灯で辺りを見回し、「二階にもなかった?」と日下部に尋ねた。日下部は即座に、「はっ、何も見当たらいです」と即答する。俺はため息を付き、「そうだよな、さっき、家中あれだけきれいに掃除したんだから、見つかる訳ないよな・・・」と落胆した。俺たちは今とあるものを探している最中だ。そのとあるものとは、日記帳の事である。何故日記帳を探しているのか?、それは遡る事数週間前、長期入院していた家主が亡くなり、長い間不在だった家主の家は不法投棄でごみ屋敷化になってしまい、相続の事も踏まえて、ごみの除去並びに屋内にある金目の物や貴重品の仕分け作業を、何でも屋である当事務所に白羽の矢が立った。そして今日の数時間前、作業中に金庫から桜柄の万年筆を発見する。日記帳からその万年筆は懇意にしている女性へのプレゼントだと発覚。俺はこれも何かの縁と考えて、亡くなった家主に代わり万年筆をお届けする事に決めた。しかし、日記帳から少ない手がかりをかき集めて懇意にしていた女性の勤務先まで行ったが、鈴原と言う名前以外は謎に終わり、諦めかけた時、日下部が日記帳から懇意にしていた女性との交流専用の日記の存在を発見。俺たちはその偶然見出した光明にすがる様に家主の家に馳せ参じ、今に至る。

 

 結局、家中探しても何も見つからず、途方にくれた俺は縁側の戸を開けた。外は丁度日が落ちたばかりで、空は紫色に染められていて、いわゆる逢魔が時だった。俺は縁側に腰を下ろし、足を外に投げ出す。日本家屋特有の敷居の高さにより、宙に浮いた足をブラブラと揺らしながら庭を眺める。半年ばかりの家主不在によって、庭の植木は伸び放題になりちょっとした森の様な感じになっていた。俺は同じ体制のまま、ゴロンと仰向けになり、チラリと上を見る。視線の先には日下部がまだ捜索作業を懸命に行っていた。一銭にもならないのによくやるな・・・。縁側の古い天井を見つめて、そろそろ諦めて撤収を宣言しようかと思った時、俺のくるぶしの辺りをジョリと湿ったやすりの様な感覚が俺に襲い、「うぎゃ!」と足をひっこめた。俺の挙動に日下部が驚き、「どうしました?」と尋ねてくる。俺は動揺しながら、「な、何か、俺の足に触れた」と答え、日下部はスタスタとこちらに来て、懐中電灯を手にして縁側の廊下に腹ばいになり縁の下を覗く。俺は固唾を飲んで見守っていると、日下部は直ぐに起き上がり、「猫です」と片手には首根っこを掴まれて大人しくなった茶虎猫がいた。俺はその茶虎猫を見て、「何だw、猫かw」と安堵。茶虎猫は、「うにゃあ・・・」とまるで抗議の様に鳴き、日下部はその鳴き声に反応して縁側の床にそっと置く。茶虎猫はブルブルと体を振るわせて少し毛繕いをし、俺を見つめると真っ直ぐ向かってきて頭をスリスリと足にこすり付けて来た。俺はその見知らぬ猫の挙動に戸惑いながらも撫でながら観察。そして、頭を撫で回し顎から首へ撫でた時、茶虎猫の首には見覚えがある首輪に目が止まり、「あっ!!、お前・・・茶太郎?」と俺は言う。茶太郎は俺の言葉に反応し、「うにゃ!」とまるで肯定する様に鳴く。そのやり取りを見ていた日下部は、「茶太郎って、あの茶太郎ですか?」と俺に尋ねて来る。俺は茶太郎を抱き上げて、「ああ、そうだよ、正しく茶太郎さ!」と日下部に見せつけた。この猫はうちの近所にある炭酸屋という一風変わった炭酸飲料専門店の主である通称オババの飼い猫だ。俺たちは彼女から外飼いの茶太郎がある日から帰ってこないので、捜索依頼を請け負っていたが、依然と見つからずほぼ諦めていた。始めて見る日下部に対して、茶太郎は細めた目をゆっくりとまばたきをして敵じゃないアピールをする。日下部はそんな茶太郎の挙動を知ってか知らずか、「フフフw、人懐こいですねw」と頭を撫でた。日下部に撫でられた茶太郎はグルルルと喉をひとしきり鳴らすと、にゅるっと体をくねらせ、俺の手から逃れて床に着地。そして、茶太郎は縁側から降りて縁の下へ行った。俺は急いで靴も履かず縁側から降りて縁の下を懐中電灯で照らす。すると、キラリと光る複数の小さいものが真っ暗の闇に浮かび上がり、俺は懐中電灯をそちらに向ける。懐中電灯に照らされて浮かび上がったものは、茶太郎と、見知らぬ白い猫、更に数匹の子猫だった。俺が照らされて確認が出来た猫たちに見入っていると、日下部が玄関から靴を履いて回ってきて隣に屈み、「どうします?、茶太郎を確保しますか?」と俺の指示を待つ。俺は少し悩み、「いや、止そう、恐らく茶太郎はあの親子の面倒をするために家出をしたんだ、あの親子をどうにかしないと、茶太郎は素直に捕まらないだろう」と推測を日下部に言う。日下部はすかさず、「じゃあ、あの親子をどうするのですか?、私たちだけでは絶対無理ですよ」と茶太郎確保に手も足も出ない状況に打開策があるのかと、俺に期待をする目。俺は含み笑いをし、「フフフw、こんな時に役立つプロフェッショナルの知り合いがいる、その人に明日の朝一に来てもらってあの親子を保護してもらおう」と得意顔をする。俺の案に日下部は、「そんなプロフェッショナルいるのですね・・・どんな特殊訓練を受けたのか気になります!」と予想外の所に食いつく。俺は半ば呆れ気味に、「あっ、うん、君がきっと想像も付かない特殊訓練を受けていると思うよ」と同調する振りをした。

 

 翌日の早朝、俺たちは昨日のうちに連絡を入れた、プロフェッショナルな方を待っている。約束の時間に腕時計の針が差し掛かる頃、軽自動がこちらへ向かってきて停車すると、デニムのエプロン姿で栗色の髪の毛をポニーテールにした女性が降りて来る。彼女がプロフェッショナルな方である宇志(うし)さんという方だ。彼女は俺たちの元へ来て、「どうも、保護猫シェルターの宇志です」と名乗りお辞儀。俺は反射的にお辞儀をして、「あ、すいません、この度はご足労ありがとうございます」と返す。宇志は俺の隣にいた日下部を見て、「この方は?」と俺に尋ねる。俺はすかさず、「あの彼女はうちの従業員の日下部です」と紹介。すると日下部はペコリと頭を下げて、「日下部です、今日はよろしくお願いします」と名乗った。宇志はニッコリ笑い、「どうも、よろしくお願いします」と返した後、俺を見て、「兼平さんw、人を雇うなんて繁盛してるんですねw」と俺を茶化す。俺は頭をかきながら、「止してくださいw、舞い込んでくる依頼がここの所増えまして、俺一人じゃ捌き切れないので彼女を雇いました、でも、所詮何でも屋ですから報酬なんて微々たるものですよw」と最後は謙遜し誤魔化した。実際は稼ぎは増えていたが、ここで馬鹿正直に儲かってますなんて答えるとトラブルの元になるのは必至で、貧乏暇なしアピールが無難だ。人の嫉妬というのは、前職の探偵業で嫌という程、俺は厄介なものと知っている。宇志はフフっと口元を押えて笑い、「本当に?、本当は儲かってるんじゃないんですか?w」と追及をしてきた。俺は苦笑いをして、「貧乏暇なしですよw」と再度否定。宇志は残念そうな顔して、「そうなんですか・・・残念です、景気が良かったらほんの少し寄付をお願いしたかったんですけどね・・・」と言う。前回の仕事の時も善意でお願いして、今回も善意と行くのは気まずい気がした俺は、「あの、すいません・・・、寄付とかはお幾らですか?」と尋ねた。宇志は少し焦った様子で、「あわわわ、すいません、何か遠回しで寄付を要求したみたいになった感じで、うちのボランティア団体の寄付は最低一万円から受け付けております、もちちろん、これは強制ではありません、どうしますか?」と最終確認を俺にする。俺は懐から財布を取り出して、「じゃあ、二万円ほど寄付します」と一万円札二枚を差し出す。宇志は畏まって二万円受け取り、「ありがたいです!、あなたの清き善意のこのお金は必ずや役立てて見せます、領収書を発行しますのでちょっと待って下さい」と自身の乗ってきた軽自動車に向かう。宇志は数分後に領収書を持って来て、「またの機会がお有りでしたら、その時はよろしくお願いします」と差し出す。俺は領収書を受け取り、「あっ、はい、それでは縁の下の猫親子の保護をお願いします、こちらへどうぞ」と宇志を案内。庭を通り抜け縁側の傍で俺が屈み縁の下を覗くと、宇志も隣で屈み同じ様に縁の下を覗く。俺は持参していた懐中電灯を照らし、茶太郎、そして白猫の親子の姿を晒す。宇志はそれを見て、「ああ、いますね、茶虎猫も保護対象ですか?」と俺に尋ねる。俺はすかさず、「いえ、あの猫は別件で捜索願が出ている猫ですので、こちらで保護いたします」と答えた。宇志は頷き、「了解しました!、それではこれからはプロの私に任せて、お家の門の所で待機してください」と指示。すると、今まで大人しく静観していた日下部がいきなり、「えっ!、作業風景を見せてくれないのですか?」と言う。宇志は、「すいません、あまり大人数でいると母猫が警戒するので、ここはプロである私、単独でお願いします」と日下部に説明。俺は日下部の手を引き、「ほらっ、ここはプロの任せよう」とこの場を離れる事をう促す。俺たちは指示された通り門で待機した。

 

 時折、日下部が縁側の方を伺う仕草するも俺がやんわりそれを阻止していると、「ボフッ」と奇妙な音が鳴る。その効果音の様な音に、俺と日下部がお互い一瞥して、庭の縁側がある方を見る。日下部は縁側がある方を見ながら、「今の音は何でしょう?」と言う。俺も同じ方向を見て、「さあ?、何かチープな戦隊ものが使う、変身する効果音の様な音だったな・・・様子を見て来るか」と何かがあってからでは遅いので門を抜けて庭に向かう。俺と日下部は慎重に辺りを見回しながら縁の下を覗き懐中電灯を照らすと、茶太郎、白猫親子、そして見知らぬ牛模様の猫がいた。俺は懐中電灯で辺りを見回し、「あれっ?宇志さんは?」と彼女の姿がどこにも見当たらず困惑。日下部も自身が手にしていた懐中電灯を照らしながら、「いませんね・・・、どこへ行ったのでしょう?」と呟く様に言う。俺は立ち上がり、「日下部さん、君は庭を探して!、俺は裏手に回って探すから」と日下部に指示。日下部は立ち上がり、「了解しました、庭をくまなく探します」と生い茂った植木の中へ入っていた。俺の胸の鼓動が少し早まる中、何事も起きない事を願いつつ家の裏手に向かう。人が一人やっと通れる家の側面の通路を小走りで進むと、「ボフッ」と再び例の音がして、俺は立ち止まる。音がした前方に俺が凝視していると、宇志が子猫を抱いてこちらへ向かって来た。俺は安堵と共に、「宇志さん!、驚かさないで下さいよw」と宇志に声を掛ける。宇志は照れ笑いをして、「すいません、子猫ちゃんが一匹逃げてしまいまして」と抱きかかえた一匹の白い子猫を見せてきた。宇志が見せてきた子猫は、何故だかは分からないが宇志を見ながらあんぐりと口を開けて固まっていて、俺はその光景に腑に落ちなかったが何事もなかったので不問に付す。俺と宇志が庭に戻ると、ガサガサと植木を揺れた後、生い茂った枝の隙間から日下部が登場し、「あっ、見つかったのですね」と言う。俺は安堵しながら、「ああ、何事もなかったよ」と返す。宇志は申し訳なさそうに、「すいません、ご心配おかけしました、じゃあ、猫ちゃんたちを保護しますね」と縁側に向かう。俺はすかさず、「あっ、その子猫持ちましょうか?」と打診。宇志は振り返り、「あっ、大丈夫です、みんなー!、行くわよ!」と縁下に声を掛けた。俺は宇志の奇妙な行動に首を傾げ、「あ、あの何をやっ」と言い終わる前に、縁の下から母猫を先頭に子猫たちが後に続き出て来る。俺はその光景に驚き、「えっ!?、あんな警戒していたのに・・・」と最後は言葉を失う。宇志がそのまま門の方へ向かうと母猫たちもその後に続く。俺と日下部はその奇妙な光景に目を丸くし、最後まで見届けるため彼女たちの後に続いた。宇志は自身の軽自動車ハッチバックを開けて、その中にあるゲージの扉を開け、「ほらっ!、取り敢えずここに入って」と指示。猫が人の言葉を理解して、行動するとは到底信じられないが、なんだか出来そうな予感がして猫たちの行動を固唾を飲んで見守っていると、猫たちは素直にゲージに入り、最後は白い母猫が、「うにゃあ!」と鳴き、それはどうぞ閉めて下さいと言っている感じだった。宇志はその鳴き声を聴いて、「あっ、はい」とまるで通じ合っている様な仕草をし、ゲージを閉め最後は車のハッチバックを閉めた。その信じられない光景を見て俺は固まり完全に思考停止状態になっている所、「あの!!、今のスキルはどこで訓練を受ければ習得できるのでしょか?」と興奮状態の日下部が宇志に問い詰める。宇志は日下部の勢いにドン引きしながら、「あ、あのですね、これは当ボランティア団体の秘伝の技術でして、部外者には公開していないのです」と答えた。日下部はそれでもあきらめず、「じゃあ!、そのボランティア団体に入ります!」と喰らい付く。宇志は日下部の諦めない姿勢に驚きながらも、「誠にすいません・・・、うちのボランティア団体は独自の身体検査をしてまして、申し上げにくいのですが、日下部さんは入る事は出来ないと思います」と説明。日下部は歯を食いしばり、「なら、その身体検査を教えてください!、私、パスして見せますよ!」と尚も食い下がる。流石の宇志も片目をピクピク痙攣させイラついた様子で、「すいません、部外者にはお教えできませんのであきらめて下さい」とやんわりと拒否をする。すると日下部は膝をつき頭を抱え、「何でだー!!」と絶望。呆気に取られていた宇志を傍目に俺はすかさず、「日下部さん!、もうそれ位にしようか?、仕方がないよ次はもっと面白い何かに出会ってそれを習得すれば良いじゃない」となだめて説得。そして、俺は宇志を見て、「今日はありがとうございました、こちらは大丈夫ですので猫たちの事をよろしくお願いします」と言う。宇志はドン引きしながらも、「あっ、じゃあこれで失礼します」とそそくさと車に乗り去った。

 

 俺は走り去る宇志の車に向かいお辞儀をして振り返ると、いつの間にか茶太郎がいて顔をスリスリとこすり付け日下部を慰めている。俺は膝をつき、「日下部さん、諦めるのも肝心な時があるんだよ、それに仕事関係で付き合う人に特殊訓練を持ち出すのは今後控えてね」と説教じみた事を言う。そして日下部の傍にいる茶太郎が、「うにゃ!」とまるで、そうだぞ!と言わんばかりの泣き声。日下部は茶太郎の頭を撫でながら顔を上げて、、「すいません、取り乱しました・・・、どうも、惹かれる技術を目の前にすると、習得欲で理性が効かなくなってしまい、善悪の区別がつかなくなってしまうのです」と告白。日下部の技術に対する飽き亡き欲望の存在には気が付いてはいたのだが、ここ迄とは予想も出来なかった。俺は、「前の職場でも、こんな事がもしかしてあった?」と日下部に尋ねた。日下部はしゅんとなり、「はい、捜査対象にドロボウの方がいまして、その方は金品には一切手を付けず、情報だけを盗む専門の方でした・・・」とポツリポツリと言う。俺はすかさず、「それで?」と続きを促す。日下部は俺に促されて口を開き、「その方の金庫などのカギを開ける技術はそれは素晴らしいものでした、彼の捜査をしているうちに私は次第にその技術に魅了され・・・、遂には・・・」と言葉を濁す。俺はその先になる日下部のやらかしを聞きたくて、「遂に?」とオウム返しをする。日下部は少し戸惑いながらも、「私は彼に弟子入りをしてしまいました・・・、幸い彼を逮捕出来ましたので、私のやった事は相殺されて停職だけで済みました」と答えた。俺は驚き、「じゃあ、金庫のカギを開ける技術はその時の?」と尋ねる。日下部は無言でこくりと頷いた。問題児だと思っていたいが、これ程とは・・・、しかし彼女を解雇する事は出来ない。何故なら彼女は俺の命の恩人であるとある人物の紹介なのだから。俺はため息を付き、「そうか・・・ありがとう答えてくれて、君の習得したあまたの技術は役に立つ事がある、要は適材適所だよ!、先程の失敗を学習をしてトライアンドエラーで行こう!」と我ながら適当な事を言って日下部を鼓舞。日下部の瞳は光を取り戻し、「はい!、そうですね、今日はすいませんでした」と謝罪をする。一応の区切りが付き、俺は茶太郎を抱きかかえて、「じゃあ行くか?」と言う。日下部は立ち上がり、「依頼者に返しに行くのですか?」と俺に尋ねてくる。俺は空を見て茶太郎の背中を撫でながら、「いや、少し気になる事がある、猫爺に会ってから返す」と答えた。俺の答えに日下部は首を傾げ、「猫爺に?、何故です?」と再び尋ねてくる。俺は茶太郎を日下部に渡し、「何で猫爺は俺たちに場違いな所を捜索させたんだろうな?」と質問に質問を返す。日下部は戸惑いながら、「えっ・・・それはいくら猫に詳しいお爺さんでも間違える事はあるのではないでしょうか?」と答えた。俺は首を振り、「俺の知っている猫爺は、こと、猫に関してだけは正確無比で間違はない、仮に知らないなら知らないと言う、そんな爺さんだ・・・、何故なら、あのホームレスの爺さんの大事な食い扶持だからな」と言う。日下部は茶太郎を抱きながら開いている手で自身の顎を摩り、「確かに・・・、情報が不正確になれば、あのお爺さんに誰も報酬を払わなくなりますよね、じゃあ、何故嘘を?」と俺に答えを求めた。俺は日下部を見つめ、「覚えてないか?、屋内でホームレスのゲソ痕の事を?」と言う。一瞬考える様な仕草を日下部はして、「あっ、覚えてます!、確かホームレスのゲソ痕は家主がいないあの家で過ごしていた形跡がありました!」と思い出す。俺は頷き、「そう、そのホームレスは猫爺と俺は見ている、俺たちに素直に茶太郎の居場所を教えたら、不法侵入の事が明るみに出るかもしれないと恐れて嘘をいったんだ!」と推理を披露。日下部は俺の推理に関心をした様子。俺は更に口を開き、「見つからない日記帳は、猫爺が持って行ったと俺は推理している」と推理を締めくくった。俺の最後の推理に日下部はピクリと眉をひそめて、「ちょっと待って下さい、その推理は乱暴ではないですか?、猫爺が日記帳を持っていたとは限らないでじゃないですか、本人が入院する前に処分した可能性は?」と反論を言う。俺は首を横に振り、「それは無い、依頼者に渡された資料によると、家主は散歩中に気を失いそのまま救急車に運ばれて、意識が目覚める事無く亡くなっている・・・、つまり処分する暇は無い訳だ」と日下部の反論を論破。しかし日下部は怯まず、「でも、もしかしたら空き巣の犯行かも知れませんよ?、現に屋内には空き巣のゲソ痕がありました」と指摘をする。俺は自信満々に、「確かにそれは一理ある・・・、だが、金目の物を盗む目的の人間が、赤の他人の赤裸々に描かれた恋の日記帳を盗むか?、いや!、盗まない!、そんなものを所持していたら空き巣に入りましたと自白している様なのもだ、消去法で猫爺が持って行ったという事が一番自然なんだよ」と日下部に説いた。日下部は少しの間沈黙をして、「そうですね・・・兼平さん、あなたの言う事は、合っている可能性が高そうですね・・・、でっ?、猫爺に対してどう問い詰めるのですか?」と具体的な次の行動の指示を仰ぐ。俺は日下部の抱いている茶太郎の頭を撫で回し、「猫爺は今の時間帯は空き缶集めで、ねぐらを留守にしている筈だ・・・、その間にねぐらを家捜しして日記帳を探す」と次の行動を言う。日下部は頷き、「ありますかね?」と俺に少し不安そうに確認。俺はニヤリ笑みを浮かべ、「絶対ある!、猫爺は収集癖があるんだ、粗大ごみの日に勝手に拝借しては、俺や仲間のホームレスに見せびらかしている・・・、それも金目の物ではなく捨てた者の思い出の品の様なものばかりだ、奴のコレクションの中に日記帳が必ずある!」と日下部の不安を取り除く努力をした。日下部は俺の言葉を聞き、「それなら、あるかも知れませんね!、行きましょう!」と張り切り始める。俺は先陣を切って車に向かい乗り込むと、日下部が遅れて茶太郎を抱いて助手席に乗りこむ。エンジンを掛けてアクセるを踏み、猫爺のねぐらがある公園に向かい走らせた。

 

 公園に着くと、平日の昼間という事もあり、人影はまばらで静かなものだった。俺たちは早速、猫爺のねぐらがある木々が密集している箇所に向かう。野鳥の泣き声と葉と葉が擦れる音がする場所に着くと、ブルーシートが掛けられた段ボールハウスが数個あり、木の枝と枝にロープが掛けられて、服が干されていた。段ボールハウスの住人たちは猫爺と同じく空き缶拾いに精を出しているのか気配が無い。俺は一番奥の猫爺の段ボールハウスに一直線に行き、迷わず入る。中は薄暗く独特の匂いがして、遮音性が案外あって静かだ。俺はペンライトを使い辺りを見回すと、遅れて入って来た日下部が、顔をしかめ、ほんのひと時フリーズ。そんな日下部を気にせず俺は探索。猫爺のコレクションがある場所を見ると、金にならい様々な持ち主の思い出の品が並べられていて、何が猫爺をそうさせるのか全く理解が出来ない。俺はペンライトくまなく探したが日記帳は見当たらず、当てが外れて焦燥感が出始めた。そんな俺の後ろで、日下部が積まれた雑誌をめくりながら、「ゴルフ雑誌ばかりですね・・・」と呟く。俺はその雑誌の一つ取り、「猫爺は昔、プロゴルファーだったらしい」と言う。日下部は驚きながら、「それは本当の事ですか?」と俺に尋ねる。俺は雑誌を元の場所に置き、「まあ、昔、本人が酔っ払っていた時にそんな事を喚いた事を一度聞いただけだから、本当かどうかは分からん」と返す。日下部は考え深げに、「今じゃホームレスですか・・・切ないですね」と言った。その後、段ボールハウス中をくまなく探したが日記帳は見つからず、いよいよ本人が空き缶集めから帰ってくる時間が迫り、焦りが一段と強く俺の心に圧し掛かる。俺と日下部は途方に暮れているとヌルっと何かが俺の太もも辺りを通り、反射的にそちらを見ると、茶太郎がいた。俺は少し驚き、「あれっ!?、車に置いて来たんじゃないの?」と日下部に確認。日下部は探す作業をしながら、「すいません、車に置いて行こうとすると、この子凄い抵抗して嫌がるんです、ですから連れて来ました」と答えた。俺は呆れながらも茶太郎の一挙手一投足を眺めていると、積まれたゴルフ雑誌の間をしきりに前足で引っ掻く仕草をする。俺はその行動が気になり、茶太郎が反応している部分までゴルフ雑誌を退かす。すると・・・、何と見覚えがある一冊のノートが現れた。「あった・・・」と俺は呟く。俺の呟きに日下部は反応し近寄り、ゴルフ雑誌に挟まれていた日記帳を目撃して、「これは!、正しく日記帳!」と驚く。俺は慎重にノートを手にして中身を確認すると、それはまさしく家主が書いた日記帳で間違いがなかった。俺は安どのため息を付き、「さあ、これからが本番だ、帰ってきた猫爺を問い詰めるぞ」と言う。日下部は頷き、「はい!」と一言返事を返す。俺たちは段ボールハウスから出て、公園の駐車場に停めてある車で待機して、猫爺の帰還を待つ。数時間後、猫爺が帰ってきた。恐らく何処かで盗んだ自転車に乗り、缶酎ハイを片手に陽気な様子で俺たちの車の前を横切る。俺たちは一斉に車から出て、猫爺の走り去った方向に向かい歩き出す。二人と一匹は猫爺のねぐらの前で止まり、仁王立ち。その姿を見た他のホームレスたちはそそくさと立ち去り、無用なトラブルから己の身を守る行動に出た。俺は咳ばらいをして、、「猫爺!、出てこい!」と言う。すると、間を置かず、「ふぁ?、だれじゃ?」と間の抜けた声が返って来て、ブルーシートがめくれて、ボロボロの作業着姿に、白髪で長髪、髭が伸び放題の仙人みたいな老人が出て来る。この老人こそが猫爺だ。猫爺は目を細めて、「おお!、何でも屋w、何の用じゃ?、また猫の事か?、それならカップラーメンの箱をひと箱で情報を提供をするぞw」と親しげに俺に話し掛けた。俺は無言で日記帳を出し、「やってくれてたな猫爺」と言う。まさか、二つの案件が裏で繋がっているとは思わなかった・・・、いずれにせよ、真実を暴く時間だ。

ーつづくー

 

351曲目の紹介

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲を稲葉曇さん、イラストをぬくぬくにぎりめしさんによるリレイアウターです。
 

 怒り、喜び、悲しみ、憂い、殺意、絶望、驚き、嘲笑、屈辱、様々な感情が人と人が出会う度にぶつかり合う。そして、ぶつかり合いを繰り返し、その果てに極稀に愛が生まれる。それらは私には無いもの。しかし、私を歌わせる力がある。歌は貰った感情を加えて彩りを足しあなたに返す。あなたは歌を受け止めて感情をまた私に放つ。何て素晴らしいやり取りなのだろう・・・、だが、その中毒性に注意をして欲しい、愛とAIの化学反応は危険なのだから。どうか、自分を見失わないで欲しい・・・、あなたがあなたである限り私は哀と愛が混ざった灰色を乗せて歌い続けるから。

 

 本曲は歌愛ユキとそれを使うユーザーの関係を題材にした曲で、有機物と無機物若しくは、DNAと0と1の羅列との心の交流を表現した歌を歌愛ユキさんが歌います。

 

 本曲の題名であるリレイアウターは、リレイ(relay、繋ぐ、中継)とアウター(outer、外側、外部)の意味する二つの言葉を繋げた造語だと感じました。本曲では三次元にいる人とデーター上のみに存在するボーカロイド可愛ユキとの心のやり取りを意味していると思いました。

 

 


www.youtube.com

 

 可愛ユキ=稲葉曇って感じのイメージが強く、もう一心同体な印象を受けます。作曲者とボーカロイドの関係を刹那的な感情で表現していて感動しましたよ!

 

 本曲、リレイアウターの、ユーザーとボーカロイドの関係をセンチメンタルな感情を前面に押し出した歌詞は、触れた事が無い聞く専門の方でも、十分に曲を作る喜びを感じる事が出来る曲ですので、是非!本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

可愛ユキ

 

weblio様より

リレイ

アウター