煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

幾千の情熱と物語で紡いで出来た歌姫を歌うVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 各地に豪雨が襲い、大変なことになっていますね・・。秋雨前線がようやく登場して気温が下がる予兆と思いきや、豪雨による災害とは、今年の天気は物凄く意地が悪い感じで腹立たしいですよ。今年の様な天気が通常になるんですかね?、いやー、今年の様な天気が続くなら、勘弁してくださいと言いたいですw。今年の暑さは本当にこたえましたw、次は耐えきれる自信が無いですw。灼熱の激暑は自分の体をボロボロにして寿命をゴリゴリ削りましたので、来年も同じような天気でしたら寿命が無くなってしまいますw。半分冗談ですが、来年はもう少し優しい天気になって欲しいです。それでは、322曲目の紹介とちょっとした物語をお送りしたいと思います。

 

 

 まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

 曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。


 10畳ほどの薄暗い部屋で白衣を着た、白髪交じりで髪はボサボサな初老の男が真剣な目で実験用シャーレを見つめていた。彼の名は谷村勇、国立・ど田舎大学に籍を置いている農学者だ。「やはりダメか・・」と谷村はあきらめにも似た嘲笑をを浮かべ呟く。彼は時を遡る事10年前、マツタケ人工栽培の研究に着手、そして意気揚々と研究を開始したが一向に成果が上がらず、今に至る。。谷村はやけくそ気味にシャーレの中の灰色の寒天培地を老齢の手ですくいとり、水道で洗い流し、大きいため息をつくと、ドアを誰かがノックする。谷村は苦虫を嚙み潰したよう様な顔をし、「はい、どうぞ」と返事をした。それはそうだろう、実験は失敗をし、今回の実験に対して総括をしなければならないのに、横やりが入ったのだから。「こんにちは、先生w、課題のレポートを集めてきましたw」と透かした態度で、世の中を舐め切った感じの学生が入って来た。彼は田中悟、ど田舎大学の4回生で、谷村が担当しているゼミ生だ。「ああ、ご苦労、そこに置いておきたまえ」と谷村は田中を一瞥してぶっきら棒に指示。「了解w」と田中は指示通り集めたレポート置き、流しにあったシャーレを見て、「また失敗したんですかw、もう止めた方が良いんじゃないですか?」と言う。「やかましい!、用が済んだらとっとと去れ」と田中に琴線を触れられた谷村はむっとした顔。谷村の苛立ちを横目に、「すいませんw、でも先生が学内で何て言われているか知っています?」と田中が流しにあるシャーレを手にし、窓から見える太陽と重ねて尋ねた。「知っとる・・松茸(まつたけ)先生だろ?」と谷村は伏し目がちで答える。「何だw、知っているんですかw、10年も研究に明け暮れて一向に成果が出せないから言われるんですよw」と田中は今どきの若者というか、傲慢で目上の目上に対して敬意が無い。そんな勘違い男の目を覚ますため、谷村は真剣な目をして、「いいか!、研究者は効率を求めてはいけないんだ、己がときめいたものに対して追及するのが真の研究者たる生き方だ」と研究者としての矜持を言う。「はーいw、先生のありがたい言葉、心に刻みました!」と田中は半笑いで体裁を整える。元来のお調子者である田中を改心させることを諦め、「このお調子者が・・もういい、私の事より、お前は進路を気にした方が良いんじゃないか?、この時期になっても、就職活動をしてないそうじゃないか」と谷村は担当学生である田中の就職活動が暗礁に乗り上げている事を指摘。「あ、それですか?、別にどうでもいいですよw、先生には関係ない事でしょ?」と田中は意に返さない。田中のとぼけた言いざまに、谷村はワナワナ体を震わせ、「関係あるんだよ!、私はお前の担当教官だ!、進路を導く義務があるんだ!」と吠えた。

 

 しかし、「ああ・・それなら関係ありますねw、でも大丈夫ですよ!、適当にどっかの会社に潜り込みますからw」と田中はお気楽な将来像を展開。「どっかにって・・お前、なんにも行動もしてないじゃないか・・」と谷村は呆れた。「もういいじゃないですかw、それよりもLEDを当てた培地の状況はどうなったんです?」と田中は話をすり替える。「お前っ?・・まあいい、日長の変化によるマツタケの発芽実験の事か?」と谷村はヤレヤレとばかりに言う。「ああ!、あれって日の長さを調節するためだったんですか」と田中は感心。その言葉を聞いた谷村は眉間にしわを寄せ、「おい、4年も農学を学んでいて、何で知らないんだ?」と谷村は睨む。谷村の怒気に押され、田中は一歩下がり、「せ、先生、落ち着いてください、俺は人生に関係ない事はすぐ忘れる性質なんでw」と愛想笑いをする。「全く・・はぁ」と谷村はため息をつき、続けて「いいか、植物は例外なく、日中の長さに影響を受けているんだ、イチゴなどは日が長くなったと感じると、花芽分化(花が咲く蕾を作る過程)が促進され、そして開花を始める」と言い、更に「冬場のビニールハウスが電球で光ってる所を見た事あるだろ?」と田中に尋ねた。「はい、見た事あります!、田んぼの真ん中で煌々と輝いて綺麗ですよね」と田中は笑顔で答える。「あれはな、イチゴに日が伸びたと勘違いさせているんだ」と谷村は言う。「イチゴを騙しているんですか!?、なんて酷い事を・・」と田中は本気でイチゴに同情をしている様だ。「お前って、愚図の癖に妙にピュアだよな」と谷村は教え子がヒューマニズムを発揮している様子に感想を漏らす。「先生!、酷いですよ!、教え子に愚図扱い何て!」と田中は師事している者からの辛辣な言葉に抗議。「だって、お前がやった数々のやらかしを見れば、疑いようがないだろ?」と谷村は抗議を却下する。すると、「まあ、そうですねw」と田中はあっさりと認め、「お前・・凄いな・・」と谷村は不覚にも感心をしてしまった。「オホン、話を戻すぞ、イチゴを無理やり開花させるのは事情があるんだ、さて何故でしょう?」と谷村は田中に問題を仕掛ける。「えっ・・、分かりません・・、乙女じゃないから、冬場でイチゴに用はありませんよ」と田中は見当も付かない様子。「はい、ブッブーw、お調子者のクズで、騒ぐことが大好きなお前には確実に用がありますw」と谷村は倍以上歳が離れた教え子に勝ち誇る。「先生・・、あまり調子に乗ると、学生課にパワハラ案件として相談しますよ」と田中は窮鼠猫を嚙む。「ぶほっ!、すまんw言い過ぎた、今の発言は取り消そう」と谷村は田中の反撃に素直に謝罪。「まあ、いいですよw、俺と先生の仲じゃないですかw」と田中は謝罪を受け入れた。

 

 「お前な・・逆に私がお前をパワハラで訴えてもいいだぞ・・」と谷村は教え子である田中の態度に憤慨をしたが、話が進まないので、心のストレス・ストレージに保管。「でっ?、俺がイチゴに用があるってどういう事です?」と田中は尋ねた。「フフっw、12月にあるだろ?、お前ら若人が好きなイベントがw」と谷村はもったいぶって答えない。「12月?、イチゴが関係しているイベントなんて、ありましたっけ?、もう教えて下さいよ」と田中は考えたが答えが浮かばなく、ギブアップ。「クリスマスだよw」と谷村は答えた。「クリスマス・・?、ああ!、ケーキに乗っているイチゴですか?」とようやく教えて貰った答えで田中だが、まだ真意が掴めないでいた。「そう、クリスマスケーキだ!、イチゴの消費が高まる時期は、3月~6月頃の旬な生食用のイチゴ獲れる時、そして、12月のクリスマスケーキが作られる時なんだ」谷村は言い、更に話は続き、「クリスマスケーキのために、需要を高まり価格が高騰するのを見越して、電球を使い花芽分化を人工的に起こし、イチゴを実らせ、出荷する訳だ」とドヤ顔で谷村は話を終える。「はえー、じゃあ、あの光っているハウスはクリスマスケーキの為なんですね!」と田中は感動。「これこれ!、勘違いするな!、飽くまで価格が高騰するからであって、ケーキの為でなない!、昔はケーキか生食位しか用途がなかったが、今日では様々な用途が開発されていているから、出荷先は様々だがな」と谷村は教え子の勘違いを訂正して、正しい方向に修正した。イチゴの話しが決着が着き、田中は笑顔で、「何だか頭がよくなった気がしますw、それでは失礼します」と一方的に立ち去ろうとする。帰ろうとする教え子を谷村は、「こらこら!、そもそも、何でお前にイチゴの話をしたんだっけ?」と引き留めた。「えーと・・確か、マツタケの実験用培地にLEDを当てている意味を俺が分からなかったからです」と田中は言う。「そうだ、そもそもこの実験はマツタケって・・!、おい!、何で帰ろうとしている!」と谷村は自分の話を聞かずドアノブに手をかけた田中を咎める。「えっw、だって、その実験は失敗したんでしょ?、じゃあいいです、失敗したのなら意味無いので、俺はこの辺で失礼します」と田中は意に介さず、実験室から退出した。「ちょっ!、おまっ!、たく!何て奴だ・・」と谷村はあっけに取られていたがその顔には怒りの表情が無い。谷村は自分のデスクに腰を下ろし夕暮れの空を眺めた。

 

 およそ10畳ほどの広さの実験室に今日も谷村はいた。ただいつもと違うのは、己の机に座り誰かを待っている。数分後、ドアが開き、「失礼します・・」と神妙な顔立ちをした教え子の田中が入室。田中がやって来た同時に能面の様な笑顔で谷村は迎え、「まあ、そこに掛けたまえ」と谷村は田中を自分の机の前にある椅子に座る様に促す。田中は素直に座り、谷村がそれを確認すると、「やあ、今日は君を呼んだのは何故かわかるかな?」と言う。その不気味な笑顔に戸惑いながら、「えっ!?、それは・・なぜでしょう?」と逆に田中が尋ねる。「それはな・・、これを見て欲しい」と谷村は二冊ノートを出す。それは先日、田中が集めて持ってきたレポートが書かれたノートだった。谷村は二冊ノートを開き、「君と彼のレポート何だがね・・偶然にしては同じような内容なんだ、君はどう思う?」と谷村は相変わらず、笑顔の能面を付けたままだ。「えっ・・、それは、偶然でしょうw」と田中がいつもの様にへらへらと笑い、のらりくらりと、かわそうとした矢先。「ばっかもーん!!」と谷村の怒りが爆発した。田中は谷村の怒りの爆発で委縮し、「すいませんでした」と、取り敢えず謝る。「でっ、どちらが写したんだ?」とレポートの盗用の犯人を谷村は問いただす。すると、「あっ・・俺です」と田中は素直に自供。彼の自供に谷村は一瞬笑いを堪えた仕草をし、安堵の様子。クズはクズでも人を陥れるクズでは救いようがないからだろう。「この馬鹿が、どうせ映すなら最後まできっちりやれ、レポートの最後の方は丸写しじゃないか」と谷村は教育者としてあるまじき発現をする。田中はその発言に目を丸くして、「すいません・・次は完璧な仕事をしてみます」と言う。「そうそう、次は完璧にこなし・・って、アホか!、二度とやるな!」といつもの谷村に戻る。その様子に田中は安堵して、「へへへw、はい!」と言う。「もうやってしまった事は仕方がないが、このまま不問にする事は出来ない・・よしっ、私のフィールドワークの助手として卒業までやるか、退学になるか選べ」と谷村は教え子に究極の二択を迫る。「そ、そんな!、殺生な!、そんなの助手の一択じゃないですか!」と田中は抗議、「やかましい!、本来なら即退学の所を、菩薩の様に慈愛に満ちた私が助手をするだけで単位やるっていってるんだ、泣いて喜べ!」と谷村は田中の抗議を却下、そして「ご存じの通り、私のフィールドワークは山を登る、お前、登山経験があるか?」と尋ねた。「小学校の遠足で登ったきりです」と田中は答える。「実質素人だな・・」と谷村は呟き、腕時計を見て、「もう、そろそろ学食が閉まるな・・、よしっ、これから学食で余り物定食を食いながら、お前に必要な登山道具を説明しよう」と言う。「えっ!?、奢りですか?」と田中はキラキラと目を輝かせる。「まあ、たまにはいいだろう」と谷村は快諾し、「ヤッホー」と田中は歓喜する。田中は先んじて退出し、最後に谷村が消灯して実験室から立ち去った。

 

 

 秋晴れの中、谷村は岩の上に座り、遠くに見える山々を眺めていた。彼を囲んでいる木々は、ほんのりと紅葉していて、近年まれにみる激暑が続いてはいるが、季節は確実に移行している様だ。谷村は山道の来た道に視線を移し、「おーい、助手君!、喉が渇いたんだけど」とノロノロとこちらに向かう田中に言う。「はあ、はあ、ちょっと待って下さいよ!、こっちは先生の荷物も持っているんですから!」と田中は泣き言を口にする。彼はレポートの不正のペナルティで谷村の助手もとい小間使いを仰せつかった。ようやく田中が谷村の元まで到達し、「はあ、はあ、どうぞ」と水筒を手渡し、その場に座り込む。そして、「うむ、ごくろう」と谷村は田中に労をねぎらい、水筒の水を飲み始め、田中も息を切らせながら自分の水筒を取り出し飲み、「ぷっはっ!、生き返る!」と呟く。二人は会話をせず景色を眺め、少し冷たい尾根から伝わる山風に当たり、汗が引く頃、「先生、何か所も回りましたが、一本も生えてませんでしたね・・、マツタケってこんなに生えてないものなんですか?」と田中は尋ねた。ここに来るまで二人は、数か所のマツタケの生育場所を回り観察したのだが、一本も見つけることが出来なかったのだ。「いや、通常ならば数本は生えていてもおかしくない時期だ、恐らく、例年にない激暑と雨が少ないのが原因だろう」と谷村は顎に手を添えて考察。「そうなんですか・・、じゃあ、もしかしたらこれから、もっと取れない感じになって、値段の高騰に拍車がかかるんですか?」と田中が珍しく知的な好奇心を出す。「あるいは、そうかもしれないな・・、だが、私が人工栽培を成功させれば、そうはならない!」と谷村は研究者らしい発言。「じゃあ、俺の様な庶民でも食えるように、頑張ってくださいよw」とヘラヘラとしたいつもの顔で田中は言い、「お前に言われなくても、分かっているわw、先を急ぐぞ!」と谷村は田中の軽口に対して返し、休憩を終わる事を宣言し先へ進む。「へーい」と田中は立ち上がり、谷村の背中を追った。山の中腹位に到達した一行は、開けた場所に出る。そこには焚火をしている老人が佇んでいて、谷村を見ると、「これはこれは、先生」と谷村に挨拶。「ああ、長門さん!、どうも」と谷村も老人に長門という名で呼び挨拶を返す。「先生・・、この方は?」と後ろの続いて来た田中が谷村に尋ねた。「ばかもん!、この方はな、この山の地主だ、挨拶せんか!」と谷村は老人の素性を明かし、田中に挨拶を促す。「へっ!?、マジですか?、あっ、どうも、こんにちは!」と田中は驚き挨拶。「ほほっw、元気が良い学生さんじゃなw」と長門老人は微笑んだ。「長門さん、今年のマツタケはどうです?」と谷村は早速、長門老人に今年のマツタケの生え具合を確かめる。すると、長門老人は伏し目がちになり、「今年はな・・、めっきりですじゃ」と長門老人もやはり、マツタケを発見できずにいた。「そうですか・・、これからでかね?」と谷村はこの山を知り尽くし、マツタケで生計を立てているプロの地主の意見を訪ねる。「うーむ・・、確約は出来ないが、前にもこんな時があって、その時も遅れて生えて来たんじゃが、その時と同じになるかも知れんの」と長門老人はプロの意見を言う。「なるほど、私も大体その様な感じだと思います」と谷村は長門老人の意見に賛同した。研究者とマツタケのプロの会話が終わり、「あの!、さっきら良い匂いするんですが、何ですか?」と田中が言う。「ほっほっ、先程、天然のシイタケを見つけましてな、炙って食べようとしていたのじゃ」と長門老人は答える。石を積み上げた簡素な焚火に、不格好で巨大なシイタケを笹竹で串刺し刺しにし、火に炙っているのが二人の目に映った。

 

 「うおおお!、でかっ!、こんなシイタケ初めて見ましたよ!」と田中がテンションマックスで言う。「ほっほっw、どうじゃ?、食べたいか?」と長門老人は田中に提案。「はい!、食べたいです!」と田中は素直に長門老人の提案を受け入れ、「これ!、そんな貴重なもの、いいんですか?」と谷村は田中をたしなめ、再度確認。「シイタケなんざそこら辺にたくさん生えとる、気にするでない」と長門老人は快諾した。谷村を田中は長門老人差し出したシイタケが串刺しにしている笹竹を受け取る。シイタケから漂う、香しい香りが二人の鼻孔に入り笑顔にし、同時にかじり、ハフハフしながら食す。「美味い!、スーパーで市販されているものとはダンチですな!」と谷村はべた褒めし、「ジューシーで美味いです!」と田中も続いて絶賛。「フフフ、ではこれを試して見なされ」と長門老人は懐からスキットルを出し、慎重に二人の食べかけのシイタケに黒い液体を一滴、二滴かけると、醤油の匂いが辺りを包む。そして、谷村と田中は、ゴクっと唾のみ込み、シイタケにかぶりつく。二人は満面な笑顔になり、「美味い!!」と同時に叫んだ。それから、男三人が、美味しいシイタケを肴に、会話が弾み、笑い声が山中でこだました。シイタケを全部食べ終えると、長門老人が帰る支度を始める。長門老人は焚火を入念に消し、「さて、わしはこれでお暇させて頂くかの、んっ?」と別れの挨拶中に何かを発見。長門老人の仕草に釣られて、谷村と田中が同じ方向をみた。三人の視線の先には、茶虎柄の猫がいて、「にゃあー」と連呼しながら挨拶をしている様にこちらへ向かって来る。茶虎模様の猫はそのまま長門老人の足元まで来て、まとわりつき、「おお!、茶次郎w」と長門老人が嬉しそう言う。「この猫は、長門さんの猫ですか?」と谷村は尋ねた。「そうじゃw、正確に言うと、大学のために上京した孫があっちで、こやつを押し付けられて、卒業後、一緒に帰って来たんじゃ」と長門老人は言い、茶次郎と呼ばれた猫の顔を撫で回す。「へーw、長門さんの猫ですかw」と田中は近づき茶次郎を触ろうとした時、茶次郎はジャンプして田中の腹を蹴った。蹴られた田中は、「ぶふぇっ」と声を上げ尻もちを付く。その光景に、「ははははw、この猫はお前の事を嫌いなようだなw」と谷村が声を上げて笑った。「じゃあ、わしは下山するから、お二人は気を付けて下され、日も短くなって来たからの」と長門老人は言い、茶次郎と共に山を下る方向へ行く。谷村と田中は長門老人の背中に礼を述べ、逆の方向へ向かった。

 

 日が傾き始め、最後の調査ポイントに二人はいた。やはりここもマツタケは生えておらず、今回の調査は徒労に終わる予感が谷村によぎる。近辺をくまなく探したが、何も見つからず、田中に下山を告げようと谷村が口を開こうとした時、崖っ際に見覚えがあるフォルムのキノコが谷村の目に映る。谷村はすかさず走り寄り屈み、慎重に観察。紛れも無くマツタケであった。谷村は嬉しさのあまり、勢いよく立ち上がって田中に報告しようとした時バランスを崩し、なだらかな傾斜の崖に滑り落ちた。「先生!!」と田中が叫び崖っ際まで走る。下を見ると谷村が崖の傾斜が終わり比較的平らな場所に倒れていて、ピクリとも動かない。田中は再度、「先生!!、大丈夫ですか!」と声を掛けたが谷村の反応はなかった。田中は慎重に崖を滑り降り、谷村の者へ辿り着くと、体を揺すり、「先生!、先生」と声を掛ける。すると、「うっ・・、田中?、私は?、うわっ!、痛い!」と谷村は意識を取り戻したが顔を苦痛で歪ませた。「先生!、どこか怪我を?」と田中が焦った表情を見せ谷村に尋ねる。「どうやら、足をやったみたいだ・・」と谷村は弱々しく答えた。すかさず、田中は谷村の足を慎重に触って行くと脛の部分で、「うっ!・・」と谷村が反応。田中が恐る恐るズボンをたくし上げると、谷村の脛は紫色に変色して、骨折をしているのは明らかだった。「先生・・脛が紫色です・・」と田中の顔は真っ青になり今にも気絶をしそうだ。「こらっ!、ばかもん!、お前が気絶したら私はどうなるんだ!、リュックから保温用シートを出せ!」と谷村は体力を振り絞って指示、田中はリュックから金色のアルミ保温シートだし、谷村の体に掛けた。谷村は保温シートをくるむと、田中を見る。田中は完全にパニックになっていて、目がキョロキョロと落ち着きがない。痛みが少し和らぎ、思案する余裕が出来、数分考慮、だが二人が助かる案が浮かばず途方に暮れていると、徐々に周囲の闇が二人に迫る。そして、無慈悲にあっという間に闇が二人を包んだ。完全に真っ暗な山中は昼間の時より、様々な音がして、不気味さを感じ、特に田中は恐怖で慄き、念のために持ってきた懐中電灯を音がするたびにそちらを照らす。「田中、無暗に懐中電灯を使うな・・」と谷村は教え子を少しでも落ち着かそうと優しく諭すように言う。「す、すいません」と田中は谷村の行いに功を奏し若干の落ち着きを戻し、懐中電気を消す。数分後、幸い月明りがあり、更に闇に目が慣れてきて辺りを見渡す事が出来るようになり、二人は己の場所が何処か確認を試みる、だが、崖からかなり下に落ちたので見当も付かない。二人は押し黙り、皮肉にも夜空は星空が燦然と輝き、それを眺めるしかなかった。

 

 そして、谷村は観念した表情になる。それは年を重ねた分、田中より少し先が見通せるからだろう。二人に心の温度差が生まれつつあった矢先、「先生!、何か音がします!」と田中が暗闇を見つめる。「音?、さっきから音はしているだろう・・」と谷村は呆れ顔。「いやっ、本当にしてますって!、あれっ、この声は!」と田中は凝視したまま固まる。「遭難した恐怖で幻聴や幻覚を見る事はよくある事だ、気の所為だ!」と谷村は田中を正気に戻そうと説得。だが、「にゃあ」と聞き覚えがある泣き声が谷村の耳にも聞こえ始めた。「この鳴き声は・・!」と谷村も鳴き声がする方を凝視。二人が見つめた暗闇から、泣き声が次第に大きくなり、遂に声の主が姿を現す。長門老人と共に下山したはずの茶次郎だった。「茶次郎!、お前!何でこんな所に?」と谷村は言う。茶次郎は谷村の言葉に、「みゃあ」と返す。まるで言葉が通じている様子に谷村は驚き戸惑い、そんな彼の状態に茶次郎は意に返さず、横になっている彼のお腹当たりの鎮座し待機し始めた。「ぐるるる」と茶次郎の喉を鳴らす音を聞きながら、谷村は意を決した表情をし、「田中、茶次郎に案内させて下山をし、助けを呼びなさい」と真剣は表情で教え子に指示。「茶次郎に?、猫ですよ?」と田中は戸惑う。「良く聞け、茶次郎は家猫だ、朝のエサの時間までには必ず家に帰る習性があるはずだ、恐らくだがそろそろ、家に向かうだろうから、この猫の後を追うんだ」と谷村は己が立てた理論を説明。荒唐無稽な話だが、今はこれしか頼るものが無いのだろう。「分かりました・・」と田中は勢いに押されて了承。「これを持ってい行け」と谷村は田中に懐中電灯と水筒を手渡す。まるで話が付き、準備が整ったのを確認した様に、茶次郎は立ち上がり、お尻を星空に向けてストレッチをし、「にゃごろん」と鳴き、田中の脛を猫パンチ。「痛っ」と田中は声を上げ戸惑う。茶次郎は困惑した表情をした田中の前を横切り、少し進むと振り返り「にゃっ」と鳴く。それは、まるでついて来いと言わんばかりの仕草だった。流石に田中も意を決して、ついて行く事を決心し、「先生、直ぐ助けを呼びますので辛抱していてください」と言い、一匹と一人は闇の中に溶け込むのだった。

 

 一人になった谷村は、保温シートにくるまり、目を閉じてひたすら助けを待つ。山が放つ音には多少の抵抗力が付き、リュックから取り出したチョコレートを口の中で転がす余裕すら出来た。暫くして、谷村は腕時計を見ると、田中が茶次郎と下山を開始してから数時間が経過したのを確認。そして、水筒の水を一口し、少し楽観的な気持ちになり、谷村の表情は和らぐ。そんな事を数回繰り返していると、「がさっ、がさっ」と何者かがこちらに近づく音がする。谷村に緊張が走り、辺りを渡す。音は確実にこちらへ向かって来てはいるが姿は見当たらない。動けない谷村は運命に身を任せ、音の主が姿を現すのを待つと、月明りに照らされてようやく姿を現す。それは、タヌキのつがいだった。タヌキのつがいは谷村を一瞥したが、特に興味が無いのか無視を決め込み、谷村の傍を通り過ぎ、一本の木の元で立ち止まる。谷村は体をよじり方向を変え、タヌキたちを観察。すると、タヌキたちは木の根元で足踏みをし始めた。谷村はその不思議な光景に見入る。つがいのタヌキは木の周りを万遍なく足踏みをして、それは数分続き、最後に谷村の方を向き「ぎゃっ」と一鳴きし立ち去った。谷村は始めて見る動物の不思議な行動に呆気にとられてぽかんーとし、タヌキたちがいた場所にそびえ立つ木を改めて見るとそれは立派な赤松だった。再び谷村は仰向けになり目を閉じて待機の姿勢に戻り、先程の不思議な光景を研究者として様々な考察を巡らせ、時間を潰す。更に数時間が経ったのを腕時計で確認をした時は、すっかり夜が明けていた。そして、谷村は水筒の水を飲み干し、天運にませる事を決意した時、「おーい」と人の声が谷村の耳に入る。谷村はめい一杯の声を張り上げ、「ここだ!!」と叫ぶ。すると、「声がしたぞ!」と谷村の叫んだ声に反応し、谷村の瞳から涙がこぼれ落ちた。落ち葉をかき分ける音が大きくなり、「先生!」と田中は第七分団と書かれた制服を着た数人の男たちを引きつれて現れる。「田中・・無事に下山で来たんだな・・」と谷村は弱々しい調子で田中に言う。「はい!、茶次郎がちゃんと俺を無事に下山せてくれました!、大した猫ですよ」と田中は涙ぐむ。師と教え子の感動の対面の中、「先生w、無茶せんでくださいよw」と田中が連れて来た男たちの中の一人が谷村に馴れ馴れしく話しかける。「お前は・・・長門じゃないか?」と谷村はこの男と知り合いのようだった。「先生、この方をご存じなんですか?」と田中はすかさず谷村に尋ねた。「知り合いも何も、お前の先輩だ」と谷村は答える。「えっ、じゃあ、ど田舎大学のOBですか?」と田中は目を丸くさせた。「すまんなw、緊急事態だからは名乗るのが遅れた、俺はど田舎大学の卒業生、長門だ、親父から、山に入っている事は聞いて知っていたが、まさか遭難した何て思わなかったよw」と長門と名乗った男は言う。「長門?、じゃあこの山の地主さんの息子さん?」と田中は長門に質問。「ああそうだよw、シイタケ美味しかったでしょw」と長門は答えた。

 

 「さあ、先生帰りましょう」と長門は谷村に言い、「よし、遭難者を見つけた!、これから撤収する、担架の用意!」と他の男たちに指示する。「はい!」と男たちは返事をし、谷村を慎重に起こす。谷村は担架に乗るために、ゆっくりと両脇を抱えながら歩き、視線を前に移すと驚愕の表情で固まる。谷村の尋常ならざる挙動でその場にいた男たちは反応し、視線を谷村と同じ方向に向ける。その先には大きい赤松がそびえ立ち、「ちょっと、あそこの赤松まで行きたいんだが」と谷村は懇願。男たちは戸惑いながら谷村を支えて向かう。赤松の元まで来ると、谷村は屈み、落ち葉を慎重にはらう。すると、数本のマツタケが姿を現す。「おお!、こんな所にマツタケのスポットがあったんですねw」と長門は感心し、「後で親父に報告しよう」と言う。一行はマツタケをまじまじと見つめ、谷村は何故か固まって動かない。谷村のおかしな様子に怪訝な表情をした田中が、「先生、どうしました?」と尋ねる。谷村はゆっくりと顔上げ、「わかった・・・」と呟く。「えっ、先生、何がわかったんです?」と再度、田中が尋ねた。「マツタケの発芽はタヌキが関係してるんだ!、これは世紀の発見だぞ!」と谷村は興奮しながら答える。谷村の発言でその場の空気は凍りつき、長門は神妙な顔つきで、無線機を取り出し、「こちら第七分団、応答お願いします、どうぞ」と本部に連絡。無線機からノイズが鳴り、「こちら本部、何かありましたか?、どうぞ」と返事が返ってきた。「遭難者を発見、外傷は右足の骨折、更に遭難者の不明瞭な言動から頭部を強打した疑いがあります、登山口に救急車の待機を要請します、どうぞ」と長門は本部に状況報告と要請をする。「了解しました、救急車を手配します、くれぐれも二次遭難にならないよう気をつけてください、通信終わり」と本部と長門の通信は終わった。長門と本部の通信を聞いていた谷村はワナワナと体を揺らし、「ふざけるな!、私は正気だ、昨夜、タヌキが不思議な行動を私はこの目で目撃したんだ!、あれはマツタケと関係があるに違いない!」と興奮しながら言う。「はいはい、先生、落ち着いて」と長門は谷村をなだめながら男たちに目配せ。男たちは一糸乱れない行動で谷村の両脇を抱え担架がある場所まで運ぶ。だが、担架の元まできても、「離せっ!、お前たちの助けはいらん!、自力で帰るわ!」と谷村の興奮は収まらず抵抗。「先生、落ち着いて!」と田中が谷村を説得しようとした時、茶色の塊が宙を舞、谷村の胸あたりにぶつかる。谷村はその衝撃にたまらず、「ブヘッ」と声を上げ担架の上に尻餅を付き、傍には茶次郎がいた。

 

 「茶次郎隊員!、でかした!」と長門は言い、「要救護者を固定」と男たちに指示。「了解」と男たちは返し、谷村をベルトで固定。そして、担架を4人で持ち上げ、「気を付けて下山開始!」と長門が号令を発する。「了解!」と男たちは元気よく言い、「うにゃあー」と谷村のお腹に乗っていた茶次郎も続いて雄叫びを上げた。谷村は急死に一生を得て助かり、その後も懲りずに田中と共に足繁く山に通い、学会でマツタケの発芽による、タヌキのフミフミ理論を発表。爆笑の渦を起こせたが、受け入れてもらえなかった。しかし、谷村は諦めず、マツタケの発芽は外的要因の可能性が高いと踏んで、マツタケを取り囲む野生動物の関係を研究。その後、彼がマツタケの発芽の条件を見つけたのは定かではない。

 

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲をよみぃさん、イラストをIF_Akineさんによる、アシェンプテルの虹奏(こうそう)です。

 

 本曲は、様々な物語が持つ色が合わさり、紡ぎ出来上がった未来という舞台に華麗に登場した歌姫が、情熱と熱狂が消えるその日まで、歌い続ける事を渇望する歌をキラキラサウンドに乗せて初音ミクさんが歌います。

 

 本曲の題名、アシェンプテルの虹奏のアシェンプテルはドイツ語のシンデレラ姫の意で、虹奏は恐らくですが作曲様の造語で様々な音や構想、情熱、物語と言ったものが合わさる虹色のキラキラ音楽という意味合いだと思います。それらを総合すると題名アシェンプテルの虹奏は、初音ミクというボーカロイドソフトが様ざなユーザーの手に渡り、それぞれの情熱や物語が合わさり紡がれて出来上がった虹色の音楽を纏い誕生したのが、歌姫初音ミクという意味だと自分は考察しました!。

 

 

 

 本曲のキラキラで緩急がある歌は好きですね!。初音ミクとユーザーの物語系の歌は様々あって聞いてきましたが、クリエーターという人たちの情熱の熱さを感じられて感心してしまいます。何かを生み出すというのは生半可な気持ちでは出来ないと啓蒙される思いで、週一回、怪文書を増殖させている自分としては耳が痛いですねw

 

 本曲、アシェンプテルの虹奏は、初音ミクとユーザーという視点で紡ぐ歌は、大半の聞くだけで、ボーカロイドソフト・初音ミクを触れた事が無い人でも、その情熱の高い熱量にあたられて、何かを挑戦したくなる曲だと自分は思いますので、是非、本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

初音ミク

 

weblio様より

アシェンプテル