煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

日常と言う普通に恋焦がれ望郷するVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 今年もあと二ヶ月になりましたが、仮想通貨の価格がにわかに上昇を始めましたね。上昇理由としては、仮想通貨の本場アメリカで、ビットコインETF(Exchange Traded Funds)が承認されるのを確実視されているからと言われています。正直な話、映画のETは知っていますがETFって何?って感じで、自分はよく知りませんけど、承認されたらビットコインは、2021年に付けられた最高額776万を超えるかもしれないと、仮想通貨ホルダー達も期待を寄せている様です。今現在のビットコインの値段はブログ制作中の現在、約516万円でとても手が出せない高価な価格になっており、1コイン以下の0.1単位でも買え求めが出来ますが・・、今からの参入しても出遅れ感が否めないので、アルトコインビットコイン以外の仮想通貨)でワンチャン狙おうと思います。多分、こういう一発逆転みたいな感じを狙うから失敗するんだと思いますが、それでもロマンを追いかけて行きたいんですよw、持ってるアルトコインが、一万、十万、と値が付いたら脳汁ドバドバ出して、気持ちええーと感じる体験したいんです!。何か、以前にも上昇トレンドになった時に似たような事を書いた気がしますが・・まあ、十中八九無理と思いますw。それでは、327曲目の紹介とちょっとした物語をお送りしたいと思います。

 

 

 

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

 曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 

 時は深夜一時、田園地帯の真ん中に通る国道沿いには、囲むように街灯が立ち並び、それはさながら光の道のようにも見えて、そこに一台の軽自動車が走る。軽自動車は都内に向けて走っていて、車内には運転手である男が一人。男は20代後半で、顔立ちはそこそこ整っていたが、だいぶ疲労がたまっている様子で酷い顔をしていた。「はあ」と男はため息をつき、車内の時計を見る。時計は深夜1時を表示していて、「はあ」ともう一度ため息をつく。男の名前は馬場亮二、彼は工場系の清掃を請け負う会社に勤めていて、今しがたクレーム処理を終えて自宅に帰る所だ。彼の仕事は営業職で、自社のクライアントを増やし、仕事を増やすのが彼の本来の仕事だが、ここ最近はクレーム処理ばかり続き、彼はかなり参っていた。もちろん、クレームが出たのは彼の所為では無い。しかし、クライアントに叱責されるのも仕事の内なので、亮二はお怒りになっている先方からの心無い言葉を粛々と受け続け、最後はお決まりの謝罪台詞を言い、解放されたのは、深夜になっていた。「あーあ、仕事辞めよっかな・・」と亮二は自身以外誰もいない車内で呟き風景を眺める。本来なら田んぼが広がり、昼間なら黄金の稲穂が風に揺られ波打ち、壮大な風景が広がっている筈が、亮二の眼に映った風景は、暗闇が広がりポツリポツリある住宅の明かりが時折見えるのみで、まるで漆黒の闇の中を走っている様に感じ、自身の心象風景を投影している気がして彼は切ない表情をし、直後に背筋にゾクゾクと悪寒が走り、運転に集中する事によって気持ちを切り替えを試みた。

 

 亮二はこう見えても、アイドルの卵をだった。タレント事務所に所属していて、様々なレッスンやオーディションを受けたが鳴かず飛ばずの日々が続き、遂に事務所からの契約解除を打診され、アイドルの卵は孵る事なく、一般人として生きる事を余儀なくされる。社会経験は、まるで無い亮二であったが、人手不足の世の中に助けられて、鳴かず飛ばずの全くの無名だったのも功を奏し、経歴を説明しても特に問題は無く、今の会社に難なく潜り込めた。それから、亮二が会社に勤め始めて二年後、所属していたタレント事務所が倒産してた事を彼が知ると、ちっぽけな自己愛が満たされて事務所の連中が見る目が無かったと確信の様なものを感じて、これからは良い事が沢山あると思い込み、明るい未来を夢見た訳だが、彼は今どん底にいる。深夜の国道をひたすら走り、運転に集中をして、気を紛らわそうと試みたが亮二であったが、心は依然として漆黒の闇の中にいた。そこで亮二はラジオを聴く事にして、軽自動車のチープなカースレオのつまみを回す。運転席の周辺のスピーカーから音楽の前奏が流れ、聞き覚えのある声が歌い始める。その歌を聴いた亮二は眉をひくつかせて、顔をしかめた。亮二とラジオから流れている曲の歌手、養老廉治とは因縁があった。いや、正確には一方的な感情であったが、それでも亮二は因縁を感じている。遡る事、アイドルの卵をしていた時、亮二と廉治はオーディションでよく顔を合わせていた。当時の彼と亮二は立場が一緒で、事務所は違うが切磋琢磨して頑張ろうと、お互いを鼓舞し合う中だった。だが、時が進むにつれ彼の方はどんどんとテレビやネットでの露出が増え、片や亮二の方は全く売れず羨望のまなざしでその様子を見るしか出来なかった。彼は今や国営放送のドラマの主演をするまで成長し、亮二にとって挫折の象徴の様なものだ。先方からするとはた迷惑でしかないが、それでも亮二は一方的な感情を彼に抱いていた。亮二は面白くない顔をしながら即座にラジオを切ると、車内には車のエンジン音と、ロードノイズが響き、道路のおうとつを車が拾うと、ドリンクホルダーに収まっている缶コーヒーが揺れて金属音を鳴らす。それから、数キロほど進むと、亮二の眼にイルミネーションの様な一定間隔で点滅する光が写る。「ちっ」と亮二は舌打ちをし、車を減速し始めた。点滅する光に近づくと、反射ベスト身に着けた交通誘導員が闇の中から現れて、誘導灯を真横にして亮二の車を停車する様に合図する。亮二は素直に指示された通り停車。そして、誘導員はトランシーバを使い反対側の同僚に連絡をし始めた。亮二はぼんやりとその光景を見ていると、誘導員の顔に見覚えある事に気が付く。「・・・先輩?」と亮二は呟き思わず顔を下を向く。誘導員をしていたのは、タレント事務所の先輩で演歌歌手をしていた桃山だった。亮二が事務所から契約解除される一年前、事務所は亮二を持て余していてた。アイドルになるには既にとうが立ち過ぎ、亮二の処遇に苦慮していて、苦肉の策で3期上の桃山のカバン持ちをさせた。タレント事務所のでの最後の一年は、桃山と全国津々浦々ドサ周りをして、小さなライブハウスや健康センターで演歌を歌う桃山の背中を亮二は見続けたのだった。そんな桃山が目の前で交通誘導員をしている。亮二は特に疑問を感じる事は無く、桃山の身に何が起きたのか数秒で理解した。亮二の所属していたタレント事務所の稼ぎ頭の数人は他の事務所が引き取ってくれるだろうが、桃山レベルのタレントを好き好んで引き取る事務所は無い。桃山は亮二と同じように野に放たれて、この体たらくになったのだ。片田舎の深夜の国道で、失敗者たちの邂逅は亮二にとってこの上なく不愉快でありがた迷惑な話であり、亮二は不自然にならない様に、カーナビを弄る仕草をしながら、やり過ごそうと試みる。しかし、この男はとことんツイてない様だ。顔を下に背けて数分、頭頂部から何やら視線を感じ、それが側面から今度は感じて亮二はチラッと運転席側の窓を見ると桃山が覗いていて、思わず二度見をした。

 

 桃山が車のガラスをコンコンと叩き、亮二は窓を開けて「あっ、先輩ご無沙汰しています」と、ぎこちない顔で会釈。「ご無沙汰じゃねぇよw、何やってんだよ?、お前まさか・・俺の事しかとして立ち去る気だったのか?」と桃山は亮二に尋ねる。全くもってそうで、図星を付かれた亮二は顔を赤くして、「えっ!?、ヤダなw、そんなことある訳ないじゃないですかw」と、ここは何とか誤魔化しを押し通そうとする。「嘘つけw、じゃあ、カーナビつんつんして何やってたんだよ?」と桃山は尚も追及の手を緩めない。「いや、近道ないかなーって」と亮二は嘘を重ねる。その様子に桃山は苦笑をして、「お前w、相変わらずだなw、だから鳴かず飛ばずなんだよ」と言う。その言葉に亮二はカチンと来て、「桃山先輩こそ何でこんな所にいるんですか?」と相手が嫌がりそうな事を尋ねた。だが、桃山は特にリアクションはせず、「そりゃあ、事務所が無くなったからだよw」とあっけらかんと答える。予想外のサバサバとした態度に亮二は動揺を隠せず、「よ、余裕ですねw、先輩はこれからどうするんですか?」とお返しとばかりに将来の事を触れた。「将来?、そんな事決まっているだろがw、演歌歌手として一花咲かせるのよ!」と桃山は恥も外聞もなく言う。亮二は自身と同じく何もかも諦めていると思っていたが、桃山はまだ夢に向かって歩んでいて、その姿に神々しさを感じ、嫉妬の黒い炎がチリチリと燻り、「へ、へー凄いですね」と言うのが精一杯だった。そして、亮二の引きつった顔を素知らぬふりで桃山は「なあ?、これから帰りか?」と言う。「ええ、帰る所です」と亮二は、話の流れをぶった切った桃山の問いに、思わず素直に答えた。「じゃあさ、あと少しで上がりだから、飲みに行こうぜ!」と桃山は突如、亮二を酒に誘う。亮二はお酒はあまり好きではない、それに運転中という断る口実がある状況に、「すいません、車を運転中ですので、ちょっと・・」と免罪符を十二分に活用。「じゃあさ、俺だけ飲んで、お前は付き添いって事でどうだ?、頼むよ、一人の晩酌は飽きたんだよ」と桃山は懇願をしてくる。少し躊躇した亮二だが、桃山の強い押しで根負けし、「まあ・・良いですよ、夕食もまだですし」と渋々了承した。「おおそうか!、流石、元付き人だw、そこのトラックの後ろで停車して待っててくれ」と桃山はトラックが数台駐車している道路のゼブラゾーンを人差し指で指す。「あ、はい」と亮二は返事をして、指示された通りの場所に移動をしてエンジンを切り待機した。桃山の方はと言うと、仕事に戻り、交通整理をし始める。だが、深夜と言う時間帯での交通量は多くなく、亮二が観察している限り、殆ど棒立ちで暇そうにしていて退屈な感じだ。亮二はその様子に、「良いな・・俺も交通誘導員に転職しようかな・・」と呟く。それから20分位で現場の作業員たちは撤収の準備に取り掛かり、桃山は彼らに挨拶をして、亮二の車に小走りで近づき、助手席側に回り込みドアを開ける。すると、どこからともなく、「演歌!、次の打ち上げの時、歌ってくれよな!」と声がする。桃山な乗車を一旦止めて、声のする方を見てその先には、現場監督風の風貌をした壮年の男性が立っていた。「お疲れ様です!、任してください!プロの歌を披露しますよ!」と桃山は大きな声で現場監督風の壮年の男性に言う。「おう!楽しみにしてるぜ!、お疲れw」と現場監督風の壮年男性は手を振り作業員たちが集まっている場所に向かった。桃山は会釈をすると亮二の車に乗り込み、「さあ!行こうぜ!」と言う。「はい」と亮二は返し、エンジンを始動して公道に出て走り出す。桃山の指示通り、亮二は国道をひた走り、桃山の事をちらりと一瞥。その事に気が付いた桃山は「何だよ?」と亮二に尋ねた。「演歌って、先輩のあだ名ですか?」と亮二は先程の会話に出て来たワードの事を尋ね返す。「ああ、そうだよ、今の現場監督は俺の事を知っていてな、結構かわいがられてんだぜw」と桃山な得意げに答えた。「そうなんですか・・」と亮二は言い、桃山が楽しそうな感じで、同じ境遇の筈がまるで違い気分が落ち込む。亮二が浮かない顔をしているのを見た桃山は、「何だよw、暗いなw、俺より、お前はどうなんだよ?、いつもこんな遅くまで仕事か?」と桃山なりに亮二を慰める様に尋ねた。「最近はこんな感じですね、正直つらいです」と亮二は素直に吐露する。「マジか・・、ブラックて奴か、まあ、ブラックじゃない仕事があるのかって感じだがよw」と桃山は豪快に笑いながら言う。桃山のやかましい笑いに顔を引きつりながらも、亮二は心の内が僅かに穏やかになっている事に気が付く。車内でのほんの数回のやり取りで変わるとは思いもよらず、ドヨドヨと曇った心の内が僅かな光が射した気持ちになる亮二であった。

 

 5,6分位経つと桃山が右折を指示し、亮二は指示された通り右折するとその先には建物が並んでいて、スナックや居酒屋がひしめく、田舎に多々ある飲み屋街が現れる。亮二たちはコインパーキングに駐車して早速、飲み屋街に繰り出す。都心にはあまりお見掛けしない点滅する白熱電球に囲まれた昭和レトロな看板が並び、かなり年季が入っている事が伺われた。昭和情緒が漂う飲み屋街をキョロキョロしながら歩き、「先輩、いつもこんな所で飲んでいるんですか?」と桃山に尋ねる。「いつもじゃねぇけど、今派遣されている現場がな、国道の補修でよ、当分ここら辺で過ごすことになるから、良い飲み屋を探したらよ、たまたまここで見つけたってだけだ、ほら、あの店」と桃山は言い仙人霞と言う看板が掲げられた居酒屋を指す。二人はその店に向かい、店の前に来ると、イミテーションの酒樽の上にキジトラの猫が香箱座りをしていて、桃山は躊躇せず撫でる。キジトラの猫は目を細めてグルグルと鳴き、桃山とは顔見知りの様だ。亮二も続いて撫でようとしたところ、ヌルっと体をくねらせて避けると、酒樽から飛び降りテクテクと路地の奥に行ってしまった。亮二は触ろうとした姿勢のまま固まり仏調顔をして、それを見た桃山は、「ははw、気にすんなw、あいつは人見知りするから、一ヶ月ぐらい通わないと無理だw」と苦笑をして、居酒屋の戸を開け入る。亮二も続いて店内に入ると、「よっ、大将!」と桃山は景気良く店主に声を掛けた。「おおw、モモちゃん!、どうぞ!」と店主は自身の前にあるカウンター席を案内する。二人は促されるままにカウンター席に行き横並びに座り、亮二は古びて年季が入った薄黒いカウンタに―に肘を付き辺りを見回す。店内はごくありふれた居酒屋の内装で、座敷とカウンターあり、亮二たち以外に二組の客がいた。亮二がキョロキョロしていると、「お通しとメニューになります、ごゆっくりどうぞ」と店主からお通しの、なめろうとメニューを差し出された。二人は同時に割りばしを手に取り舌鼓をし、桃山が口を開き「いやー参ったw、日が落ちても涼しくならないだもんよ」と亮二にぼやく。「そうですね、今年は異常ですよね」と亮二は話を適当に合わす。「外仕事だからよ、汗が止まらなくて、作業着が何着も必要でよ、洗濯が大変なんだよw」と桃山は苦笑しながら言う。「そうなんですか?、大変ですね」と亮二は先程と同じ調子で受け答えをする。すると、桃山は少し顔を引きつり、「お前、変わらないねぇ・・、ドサ周りをした時も俺が一方的に話して、お前ときたら、そうですね大変ですねばかりで、まるで独り言みたいになるんだよ」と苦言を呈する。亮二は桃山にその様な風に思われていたのは予想外であった。彼的には聞き上手だと自負していたが、それは思い込みであった様だ。不意に出された相手からの苦言に亮二は焦りながら、「そうなんですか?」と言い、口元を押える。桃山は苦笑をして、「たくっ」と言い「大将!、生中一つに、唐揚げと適当に焼き鳥の盛り合わせをお願い」と店主に注文をした。桃山の注文を受けて、「喜んで!」と店主は返し、その勢いに飲まれた亮二はそそくさとメニューを広げる。亮二がメニューを見て決めあぐねていると、桃山と店主が話始める。「モモちゃん、お連れの方は?」と店主が亮二の事を尋ねた。「ああ、こいつ?後輩w」と桃山は意地悪そうな顔で答える。「へーw、じゃあ、この方はタレントさん?」と店主は更に詳細を求め亮二を奇異な目で見た。店主の視線に気が付いた亮二はメニューで顔隠し、その仕草に店主は「ふふっw」と少し笑い、「違うよw、元だよw、元w、こいつはもう一般人w」と桃山が答える。亮二はこの光景にデジャブの様な既視感を感じ、その懐かしさが何かを考えて見ると、桃山とのドサ周り時代における夕食の光景だった。桃山が一方的に話して飽きると、店の関係者や客と話始めるのだ。五年経ってもなお、変わらない関係に亮二は少し微笑みメニューから、「八丁味噌をベースにした和風シチュー煮込みハンバーグセット・・・それとウーロン茶をください」と注文する。突然の注文にも店主は動揺をせず、「はい、喜んで!、お連れさんお目が高い!、この品には結構自身があるんですよw」と言う。「えっ、そうな‥それは楽しみです」と亮二は先ほど言われた苦言を思い出し、急遽訂正する。その仕草に店主と桃山は大笑いをして、亮二は顔が熱くなるのを感じた。そして、「良いよw、もう、それがお前なんだから気にすんなw」と桃山は亮二をフォローする。「はは、すいません」と亮二は恥ずかしそうに愛想笑いをして桃山に言った。

 

 それから、桃山の頼んだ、生中と唐揚げに焼き鳥の盛り合わせ来て、桃山は早速ビールジョッキを握り傾けて飲むと、「ぷはーーw、たまらねーw」と言い、その直後に亮二が頼んだ八丁味噌をベースにした和風シチュー煮込みハンバーグセットとウーロン茶が来て、和風ビーフシューから漂う香しい香りが亮二の腹を鳴らす。考えて見れば、亮二は今日一日、缶コーヒー以外何も口にしていなかった。亮二は早速、レンゲで和風ビーフシチューをすくって、口に入れる。すると、普通のビーフシチューとは違い、味噌と醤油をベースにした和風ティストで、ご飯に物凄く愛称が良さそうだった。早速、亮二はレンゲですくった和風ビーフシチューをご飯にかけて食べる。予想通り、愛称は抜群で久しぶりのご馳走に亮二は笑顔になる。その笑顔を見た桃山は焼き鳥のつくねを串から咥え食べて、「どうだ?美味しいか?」と尋ねた。「はい!、めっちゃっ、美味いです!」と亮二は食べながら答える。「そうか!、良かったw」と桃山は満足そうな顔し、「大将!、美味いってよ」と店主に伺う。「ありがとうございます、実は昔、洋食屋をやってまして、その店の売れ筋だったんですよ」と店主は笑顔で言った。亮二は店主の言葉に反応して、「前の店はどうして辞めたんですか?」と尋ねる。亮二の行動に桃山は、「こらっ!、人様には都合って奴があるんだ、すいませんね、大将」と咎めて謝罪。しかし、店主は、「いえいえ、大丈夫ですよw、私の怠慢で潰してしまいましたw」と店主は意に返さず告白をした。「えっ・・、本当に?」と桃山は信じられないとばかりに言う。「はい、本当ですよ、10年ばかしは上手く行ってましたが、その辺りから金儲けに万進してしまい、気が付いた時には店に客は寄り付かず潰れてしまい、妻にも逃げられました」と店主は淡々と自分の半生を語り遠い目をした。想像以上の過酷な過去に亮二と桃山の二人は目を合わせ押し黙った。そして、「はは・・」と桃山は愛想笑いをして先程迄の調子は無かった。亮二は桃山の内にある状態を手に取る様に分かる。予想はこうだ。恐らくだが、桃山はこの店に通うがてら店主に自分の失敗談や不幸話を嘯いていたのだろう。だが、今宵店主の正体が分かり、相手は失敗を乗り越えて店を構えるまで蘇った猛者と知って、桃山は自分の矮小な存在と感じて縮こまってしまったのだ。しかし、亮二が何故その様に分かるのか・・それは、ドサ周り時代に、とある都市の飲み屋で、桃山が隣の客に演歌で食っているんだと嘯いた事があった。だが、その隣の客は某国営放送の年末に行われる歌合戦に常連で出るほどの誰もが知っている有名演歌歌手で、私も演歌で細々と食べていますと名刺を差し出され、その時点でようやく相手の素性を知った桃山は土下座する羽目になった。それから桃山は二、三日、嘘のように静かになって、お酒も飲まなくなり、件の出来事が起きた飲み屋は周辺にドサ周りをした時は必ず寄る店だったが、それ以来、寄り付かなくなる。そんな訳で、それ以外にも桃山がやらかした似たような事案を5回位、目撃していた亮二だからこそ察する事が出来たのだ。店主の告白が切っ掛けで起きた気まずい雰囲気で、ひたすら気味悪い愛想笑いをする陽気な失敗者の桃山、オロオロする口数が少ない陰気な失敗者の亮二、勢いで喋った事を後悔する元失敗者の店主の失敗者トライアングルがここ、場末の居酒屋、仙人霞にて形成され、異様な雰囲気を醸成し始め、トライアングルの面子はお互いに目を合わさず、それぞれの行動を黙々とし始める。周囲の客も異常な空気を悟りさっさと会計を済ませ退散。居酒屋には店主の作業音と桃山と亮二の食事の音だけがした。しかし、そんな空気を打ち破る刺客が現れる。ガラッと引き戸が開き一同はそちらに視線を向けると、そこには誰もいなかった。それは否、一同はポカーンとしているとキジトラの猫が入って来たのだ。「こら!、営業中は入るなって!」と店主が慌ててカウンターから飛び出しキジトラの猫を捕まえる。キジトラの猫は大人しく捕まって抵抗せず「ウナーン」と鳴く。「あれ、大将の猫?」と桃山はすかさず尋ねた。失敗トライアングルにキジトラの猫という触媒が加わると、会話の歯車が回り始める現象が起こる。「違いますよw、この周辺に居ついてる野良猫ですよ、何故か閉店間際に来るんですよ」と店主はキジトラの顔を撫でながら言う。亮二は桃山の様子を見て思う、多少表情は柔らかくなったが、店主と桃山の関係は終わったのだろう。今宵が最後で二度と桃山は姿を現さない。桃山という男は勝手に居ついて勝手に挫折し去る、そういう男だ。更にもう一つ付け加えるなら、その行動癖が演歌歌手桃山を中堅と新人の間を漂うえらく不安定な位置に至らしめたのだ・・。案外、あのキジトラの野良猫と同じ様な存在なのかも知れない。亮二は感慨深くうんうんと小さく頷き、残りのハンバーグを食べ、味噌汁を飲む。亮二の推測通り話は乗らず、会話は終了して桃山と店主は無言になる。キジトラの猫という触媒はいささか役不足であった。それから、桃山と亮二の食事は終わり、入店した時とは雲泥の差の雰囲気の中、退店した。外に出ると嘘のように空気が上手いと感じる亮二は背伸びをして、桃山と駐車してあるコインパーキングに向かう。周辺の店は殆どが閉まっていて、閑散とした雰囲気を感じさせる中、桃山が口を開き、「ごめんな、何だか空気悪くして」と謝罪を言う。亮二は桃山の謝罪に少し驚き、「いいでよ、でも、先輩が変わってなくて良かったですw」と返す。「ははっw、俺もお前に会えて良かったよw」と桃山はいつもの調子の戻る。二人はコインパーキングでの戻り、亮二が先に運転席に乗り込むと、桃山が何かを思いついた仕草をして走り出す。桃山は数分後、戻って来て車に乗り込み、「ほれっ、お土産w」と缶の様なものを差し出した。亮二は困惑しながらも受け取ると、「冷たっ!、何ですかこれ?」と桃山に尋ねる。「これな、最近ここら辺の自販機で試験的に展開している冷凍スイーツだw」と桃山は自分の分を見せる。「スイーツ?、飲み物じゃないんですか?」と亮二は受け取った大き目のスチール缶を不思議そうに見た。「そうだ、常温に晒して置けば30分位でスイーツが食べれるぜw」と桃山はドヤ顔を決める。「へー、こんな商品があるんですね・・、ありがとうございますw」と亮二は礼を述べた。「良いって事よw、よし、駅前のビジネスホテルまで送ってくれw」と桃山は言った。そして、亮二は桃山の案内で近郊の駅前にあるビジネスホテルまで行く。ホテルの前に着くと、「じゃあなw、また縁が有ったら会おう、あっ、後これやるよ」と桃山は別れ際に何かを亮二のスーツの胸ポケットにねじ込む。「・・?、あっ、ありがとうございます、じゃあ縁が合ったらまた!」と亮二はねじ込まれたものを気にしながら別れを言い、車を発進させた。

 

 亮二は深夜の国道をひたすら走り、都内まであと僅かな距離になる。しかし、流石に疲労が出てきたので道の駅で停車し休憩をする事にした亮二であった。道の駅はずらっと並んだ仮眠中のトラックのエンジン音だけが聞こえ、一般の車は殆どいなかった。亮二はトイレから戻ると、運転席を少し倒して、桃山から貰った冷凍スイーツを開け、食べ始める。「美味いw、何だかパフェみたいだw、凄いな技術の進歩は!」と亮二は呟きながら食し、トイレ行ったついでに購入した缶コーヒーをパフェの合間に飲む。あっという間に平らげた亮二は桃山から何かをねじ込まれたことを思い出しスーツの胸ポケットを弄り取り出すとそれは、チケットで桃山貫太郎演歌ライブと記されていた。「先輩・・・、俺は何やってんだろ・・」と亮二はしばし考え込む。桃山は不器用ながらも演歌歌手を続けていて、自身にはない情熱を失わない事に熱いものが込み上げ、ポロポロと涙が流れた。亮二は涙をハンカチで拭いチケットを無くさない様に財布に入れて車を再び走らせる。都内に近づくにつれ住宅やビルが増えて周囲が明かるなってきて、亮二の心はホッとし、車内のセンターコンソールに置かれた財布に視線を移し、それを強く握り、「来週・・会社辞めよう!、夢に向かって生きよう!」と強く呟く。亮二は決意を新たにアクセルペダルを踏みこみ国道を疾走して行くのだった。

 



 

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲、ディレクター、メインアニメーター、バックグラウンド・アートをはるまきごはんさん、動画をスタジオごはんさん、アニメーションアシスタントを〇gakiさんいよわさん小津さんシャノンさん達そうそうたるメンバーによるディナーベルです。

 

 私は特別を望んだ・・そして奇しくもその願いは叶い特別な存在になった。だが、それは間違いだった・・。普通である事が何よりも特別で、その優しい温もりこそが掛け替えのないもので、皆と同じありふれた正常な日常が本当に求めていたものだった。しかし、それはもう選べない、あの優しいベルの音が私を呼ぶことは無い。

 

 本曲は、特別な存在、または特異点になった少女が普通に恋焦がれ望むも、それを手に入る事は永遠にない、選択する事も出来ない状況を、渇望と受け入れた諦めの様な覚悟が入り混じった複雑な感情を乗せた歌を初音ミクさんが歌います。

 

 本曲の題名、ディナーベルの意味は食事の用意が出来た時に知らせるベルを指していいます。本曲での意味合いは、恐らくですが、曲中の主人公である少女の日常という普通の生活をイメージすると最初に出て来る象徴的なもので、ベルが鳴る、母の後ろ姿、笑いが絶えない暖かい夕食といった失ったものが矢継ぎ早に脳裏に浮かぶ、悲哀と望郷のメタファーだと思いました。

 


www.youtube.com

 

 本曲は実に切ない物語が展開していて聴いていると、しんみりとした感じになってしまいましたよ。アニメーションは抽象的な表現が多いですが歌詞とマッチしていて良かったです!

 

 本曲、ディナーベルは少女の孤独を曲とアニメーションで深く表現したとても素晴らしい作品で、イラストと曲、両方できる、はるまきごはんさん、ならではの強みを生かしていて、視聴して聴いてみても決して損はしませんので、是非、本動画をみてください。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

初音ミク

 

weblio様より

ディナーベル