煮干しの一押しVOCALOID曲

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心に咲く儚い花を歌うVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 心なしかちょっと涼しく感じてきましたね。気温を見るとまだまだ高温ですが、それでも涼しく感じるほど、今年の夏は以上に暑かったです。15年前ぐらい前は30度前後で猛暑と感じてましたが、今やその程度では猛暑に入らないですよね。この暑さは九月いっぱいまで続くそうです。夏バテなどに気を付けていきましょう。それでは、319曲目の紹介とちょっとした物語をお送りいたします。

 

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 人の言葉を解し、言葉を操り、人の姿になれる動物、化け者。俺はそんな人外の者たちとひょんな事から関る事になり、行動を共にしている志村という者だ。化け者の化け猫に属するミケの修行の付き添いを、上司で化け者である所長の業務命令で半ば強制され、猫岳にある隠れ里にある化け猫修行館に向かった。化け猫修行館では、猫岳の麓にある、民宿・峠の飼い猫キジ子が人の姿から元の猫に戻れなくて困っていて、俺とミケは彼女が元の猫に戻れるように協力する事になる。キジ子は化け者の力の源、化け力(ばけりき)の出し方、溜め方そして、操り方を要領よく習得。しかし、彼女は焦りからか、根を詰め過ぎて、化け力の枯渇で気絶してしまう。ミケは責任を感じ、贖罪の意味を含めてご馳走を振舞う事を決意する。ご馳走を振舞うには、隠れ里で使われている独自通貨、にゃんコインが必要。雑巾がけレースの優勝商品である、にゃんコインをゲットするため息巻くミケ。そんな所にミケは、旧知の間柄のジョーに遭遇。雑巾がけレースでミケはジョーと死闘を演じ、二本目の尻尾、御霊尻尾(みたましっぽ)の発現により見事、勝利を収めた。にゃんコインをゲットし更に、修行の目的を達成したミケは疲れ果てていて、彼女を俺は背負い俺たちの部屋、鶴の間に向うのであった。

 

 黒髪ツインテールに、三毛柄の耳と尻尾を携え、小豆色の作務衣を着た少女の容姿をしたミケを背負い、俺は鶴の間へ向かう。背中のミケは妙に大人しく、さっきからだんまりだ。雑巾がけレースで力を使い果たしたのだろう、時折、ミケの顔を伺うと、瞳が閉じたり開いたりを繰り返して、うつらうつらとし、背負っている俺の手に時折尻尾を絡ませてきた。えっちらおっちら数分歩くと、鶴の間の前に到着し、俺は片手で扉を開け、室内に入る。すると、「お帰りなさい!」と誰かが出迎えて来た。出迎えたのは、ショートヘアーに、キジ柄の耳と尻尾を携えて、小豆色の作務衣を着た少女、キジ子だった。「キジ子ちゃん!、もう大丈夫なの?」と俺は彼女を心配する。キジ子はつい先日、化けの者の力の源である化け力(ばけりき)の使い過ぎで失神してしまったのだ。「はい、大丈夫です、お陰様で体調は万全です」とキジ子は問題ない事を、はきはき答えアピール。「そうか!、それは良かった!、ミケ!、キジ子ちゃんはもう大丈夫だって」と俺は背中を揺すり、ミケを起こす。「あ?、ここは・・部屋かにゃあ?、キジ子?、もう大丈夫みたいでよかったにゃあ・・」とミケは半分寝ボケながら応える。「志村さん、オトギさんから状況を聞いてます、ミケを寝かせてあげましょう」とキジ子が提案。オトギさんとは、化け猫修行館の従業員で俺たちの部屋、鶴の間の担当だ。「そうだね」と俺はすかさず返し、寝室のベットにゆっくりと慎重にミケを寝かす。「ありがとうにゃあ・・、悪いけど寝かせてもらうにゃあ・・」とミケはベッドの上で変化を解き、作務衣の裾からヌルっと猫の姿で出てきて、へそ天の大の字になり、「じゃあ、寝るにゃ・・かーー」とイビキをかき始めた。「はやっ!」と俺とキジ子は同時に言い、驚く。ミケの寝つきは相変わらず良い。「じゃあ、ミケをそっとして置こう」と俺は寝室から出る事をキジ子に促し、「はい」とキジ子は返事して、二人で寝室を出た。

 

 リビングに移動し、俺はソファーにドカッと座ると、キジ子は部屋に備え付けてあった、ポットと急須、それと二つの湯飲みを持って来くる。急須にお茶の葉を入れ、ポットのお湯を注ぎ、急須を軽く振ると、湯飲みに交互にお茶を注ぐ。「あっ、ありがとう、凄いね・・手慣れているって感じで」と俺は差し出されて湯飲みを受け取り、一口飲む。「そんなw、大した事ないですよw、お母さんのやっている事を見様見真似でやっただけです」とキジ子は謙遜。彼女のお母さんとは、猫ではなく、猫岳の麓にある民宿・峠の女将、村山さんの事だ。彼女は、乳飲み子から育ててくれた、人間の村山さんを親と認識している。「へー、女将さんの仕事をよく見ていたんだw」と俺は言う。「はい、最初はついて来るなって、怒られたんですが、お客さんが私の姿を見ると喜んでくれて、なし崩し的にいい事になって、いつも見てました」とキジ子は切ない目で遠い過去の話をしている様に語る。彼女が化け者として覚醒したのは半年前、普通の猫として過ごした時期が遠い過去に感じるのは無理もない。「大丈夫だよ、もう直ぐ元に戻れるようになるよ」とキジ子の纏った切ない雰囲気を追い払う様に励ます。「ありがとうございます、もう、大丈夫です、志村さんとミケがいるから」とキジ子は感謝の意を返す。「それは良かったw、さて、今日はどうする?、まだお昼前だし、時間はたっぷりあるよ?」と俺はキジ子に尋ねる。「うーん・・雑巾がけの行をしたいんですが・・また気絶したら迷惑なので、ミケが起きるまで大人しくゴロゴロ電球の鍛錬をしてます」とキジ子は答えた。ゴロゴロ電球とは、化け力に反応して明かりが点く、猫型の電球の事だ。「うん、それが良いよ!、あっ、ゴロゴロ電球ある?」と俺は聞く。「ありますよ、オトギさんにこの部屋に案内された時、渡されました」とキジ子はリビングの端に置かれたトランクケースを持って来て開け、トランクケースの中になる大小さまざまな大きさの電球の中から手のひらサイズの電球を取り出す。そして、おもむろに喉をゴロゴロ鳴らすと、電球が光輝き、辺りを照らした。ほんの数日前までは、電球の光は不安定でおぼつかない感じだったが今は力強く、化け力の生産が安定している証拠だ。キジ子が万が一の事もあるので、俺は無理をしない様にしっかり監督した。柱時計を見ると昼過ぎになっていて、「キジ子ちゃん、お昼にしようか?」と俺は休憩を兼ねて昼食を提案。「はい、そうですね!、お腹ペコペコですw」とキジ子は、はにかんだ笑顔をする。俺たちは食堂に行き、ねこ精進料理を食べ、再び部屋に帰ってきた。

 

 キジ子はソファーに寄りかかり休息を始め、俺はミケの様子を見に寝室に行く。すると、思いがけない光景が待っていた。何と、ミケの鼻先に顔の三倍位の鼻提灯が出来ていて、まるで風船のようにそれは浮き、ミケは縫いぐるみの景品の様にぶら下がり、だらーんと垂れ下がっていた。その光景に俺は思わず「うおっ!?」と声を上げ、異常を察知し、キジ子がすかさず寝室に入って来て、「どうしまっ、うわっ!」と驚く。「な、な、何ですかこれw」とキジ子は鼻提灯で浮遊しているミケに近づき、更に、「ねぇw、ねぇ?w、ミケをちょっと押していいですか?」と目を輝かせ言う。「えっ、まあ、ちょっとだけならw」と俺は苦笑して了承。キジ子はミケのお腹をトンと、軽く指先で押すと、殆ど摩擦が無い空中では、軽い力でも容易に動き、浮遊しているミケは僅かに上下しながら壁の方に向かう。俺は浮遊しているミケが向かっている方向に先回りしてスタンバイ。ミケの鼻提灯が壁に接触すると、「ぱん」と小さい乾いた音を立て落下し、それを俺は受け止めた。「あっはははw」とキジ子はその様子が笑いのツボに入ったのか大爆笑。「はいはい、もう終わり、ミケは疲れているんだから静にしようね」と俺はやんわり注意し、「はいw、分かりました」とキジ子は笑い泣きで瞳から流れる涙を拭った。俺は寝ているミケを優しく扱い、ベッドに寝かせ静かにドアを閉め退室。キジ子ちゃんの言葉遣いが気になる・・俺に対しては敬語だけど、ミケに対しては、ため口、猫はそんなものなのか?、いや、ミケは俺を呼び捨てにしている・・明確に意味があるはずだ。俺はキジ子の態度に、引っかかるものを感じつつ、小一時間の休憩後、午後の鍛錬が始まる。午前中と同じようにゴロゴロ電球を使い化け力の鍛錬が始まり、物足りなさを感じたキジ子は、一回り大きい電球にチャレンジ。最初は苦戦をしたものの、30分位で難なく電球を点ける事が出来る様になった。それから、黙々と鍛錬を続け、日が落ちる頃には、頭と同じ大きさの電球も点けれるまで上達。そして、キジ子の顔に疲労の表情が出ていたので、「お疲れ様、今日はこの辺で止めようか?」と俺はキジ子に打診。「あっ、はい、そうですね」とキジ子は素直に了承し、俺たちは夕食を食べ、露天風呂に浸かり、就寝した。

 

 翌日の朝、俺の顔を誰かが触っていいる。俺は薄眼で様子を伺うと、すっかり元気になった猫の姿をしたミケがいた。「起きるにゃあ!、何時だと思っているにゃあ!」とミケが言う。俺は咄嗟に寝室の時計を見ると朝の6時だった。「まだ6時じゃん・・少し寝かせてくれよ・・」と俺は再び寝る体制をする。すると、「まだ6時じゃなくて、もう6時にゃあ!、今日はキジ子を次の段階に進めるための鍛錬をするから、早く起きるにゃあ!」とミケは俺の腹の上でジャンプを繰り返す。「分かった、分かったよ、起きます」と俺はミケを退かし、洗面所に向かった。洗面所で身支度を終え、リビングに行くと、まだ寝ボケているキジ子がソファに座っていて、「キジ子ちゃん、おはよう」と俺は挨拶。「おはようございます・・」とキジ子は気だるそうに返す。そして、「はい、はい、注目にゃあ!!」とミケは猫の姿のまま、リビングのテーブルに乗り言う。何だ・・?、いつもなら直ぐに人間の姿になるのに今日は何故か猫の姿のままだ。俺とキジ子はミケに注目し話を待つ。「オホンw、キジ子も聞いていると思うがにゃあ、あたいは遂に二本目の尻尾、御霊尻尾(みたましっぽ)の発現に成功したにゃあ!!、見るがいいにゃあw」とミケはドヤ顔でくるりと後ろを向き、お尻を俺たちに向け、二本の尻尾を見せる。なるほどね、自慢がしたかったのね・・。「凄い!!、尻尾が二本ある!」とキジ子がまず食いつき、「ねえw、ねえw、触ってもいい?」とワクワクしながら打診。「どうぞにゃあ!、好きなだけこの神々しい尻尾を触るにゃあ!」とミケはノリノリで承諾し、「俺も触らせても貰うわw」と俺も混ざる。キジ子は尻尾を交互に触り、「へー、本物と全く同じ手触り」と感想を漏らす。キジ子が終え、次は俺が触り始める。本当だ、手触りは全く一緒、違うのは尻尾の付け根の部分が半透明になっているだけだ。「ねえ、私もいつか御霊尻尾を発言できるかな?」とキジ子はミケに尋ねた。「まあ、お前は筋が良いから何時かは出来ると思うにゃあ、ちょっと失礼するにゃあ」とミケは答えて、寝室に向かいトテテテテと走り、小豆色の作務衣を着て人の姿になり、黒髪のツインテールをなびかせ戻ってくる。「さあ、これからキジ子!、お前を次の段階に引きあがようと思うにゃあけど、その前にはっきりしておきたい事が有るにゃあ」とミケは言う。「はっきりしておきたい事って?」とキジ子はミケに怪訝な顔。「お前、何であたいに、ため口なんにゃあ?」とミケはキジ子に尋ねる。そう、俺も昨日から思っていた。「えっ・・、だってミケは猫でしょ?」とキジ子はミケの発言の意味が分からない様だ。「お前、今まで猫と暮らしたことはあるかにゃあ?」とミケは再びキジ子に尋ねる。「無いよ、民宿に猫は私だけだったし・・、お母さんは、私の事をお外には絶対出さなかったわ」とキジ子は答えた。「かーーー、これだから箱入り娘はダメにゃあW、いい機会だから覚えるにゃあ、目上にはさんを付けて敬語で話すにゃあ!、分かったかにゃあ、メスガキ!」とミケはため息交じりで説教。「な、何でよ!、猫のあんたに敬語を使わないといけない訳?」とキジ子は反論を展開。「お前をここまで導いたのは誰にゃあ?」とミケはジト目でキジ子に言う。ミケの発言にキジ子は鳩が豆鉄砲を食ったような表情をし、「えっ?・・、ミケ・・さんです」と渋々自分の立場を自覚した。「じゃあ、改めて教えを乞いたいなら、懇願してみて欲しいにゃあW」とミケは勝者の顔。「はい・・、これからもよろしくお願いします、ミケさん・・」とキジ子は苦虫を嚙み潰したように言う。「おい!、ミケいい加減にしろ!、彼女はまだ若いんだよ、これから色々と学ぶんだから良いんだよ、ねっ?キジ子ちゃん!」と俺は険悪な空気を掃うためフォロー。「うん、ごめんなさい、気を付けるわ」とキジ子は素直な反省の意を示す。それを受け、「まあ・・いいにゃあ」とミケは一応納得した。

 

 「さっ、気を取り直して、始めるにゃあ、キジ子!まずはこの三枚の紙を見るにゃあ」とミケは気を取り直して、あらかじめ用意していた、赤、青、黄色の三色の紙をキジ子に見せる。「見たわ」とキジ子は応え、「何色に見えるにゃあ?」とミケは質問。「色?、黄色と青と黄色に見ます、ミ・ケ・さ・ん」とキジ子は若干トゲがある言葉で返す。キジ子の発言に、「キジ子ちゃん?、赤が分からないの?」と俺は驚き、ミケの反応を伺う。ミケはため息をつき、「心配は的中にゃあ・・、キジ子、お前の変化は中途半端にゃあ、化け者が人に変化出来るようになると、人の特徴を獲得するにゃあ、だからあたいはこの紙をちゃんと三色で見分けることが出来るにゃあ、そして、猫の姿に戻っても、獲得したものは失わないにゃあ、化け者になるという事は、人でも猫でもなくなるという事にゃあ」と言った。「えっ・・、じゃあどうすればいいですか?」とキジ子は不安そうにミケに尋ねる。「安心するにゃあ、これは割と直ぐに解決出来るにゃあ」とミケは答えた。「おっし、キジ子、そこに胡坐をかいて座るにゃあ」とミケは指示。「はい!」とキジ子は良い返事を返し胡坐をかく。「目を閉じて、化け力を燃やすにゃあ、それから燃えた化け力からモクモクと煙が出るイメージをするにゃあ」とミケは言う。「はい、燃やして・・煙が出るイメージ・・」とキジ子は指示通りにやっている様だ。「そしたら、煙が全身を循環して駆け巡るイメージをするにゃあ」とミケはキジ子に近寄って体を円を描く動作でさする。イメージの補助なのだろうか?、俺には全く見当が付かない。数分、ミケはキジ子の体をさすり、「あの・・、体がみなぎってくる感じがするんですが?」とキジ子は自身に起きている体の事象を報告。「そろそろにゃあ、お前のなりたかった者のイメージをするにゃあ」とミケはキジ子から一歩引いて距離をとる。「なりたい者のイメージって何ですか?」とキジ子はミケに質問。「お前の姿は、母ちゃんの本当の娘になりたいという願望だと思うにゃあ、ここまで言えば分かるにゃあよ?」とミケはアドバイス。「・・・・・!、わかります!」とキジ子は何かを悟って集中を始める。すると、キジ子は目を開けて立ち上がり、その場で回転して、「ボフッ」と音を出し、姿を現したのは、基本は同じだが、元の姿より更に幼くなり、くりくりお目目の可愛らしい化け猫が現れた。「えっ!?、すごーい!!、カラフルに見える!!」とキジ子は開口一番に言う。「良かったにゃあw、これでようやく完璧に変化出来たにゃあ、後は元に戻れるように鍛錬を積むのみにゃあ」とミケはキジ子がはしゃいでいる様子を見ながら微笑む。「ミケさん、ありがとうございます!!」とキジ子はミケの手を握りブンブン上下に振り回す。「止めるにゃあ、お調子者w」とミケは照れていた。

 

 キジ子は新たに獲得したカラフルな視界で、部屋中を見回し、「凄い!、すごーい!」とはしゃぎ回る。そんなキジ子にミケは「今日の鍛錬は終了にゃあ」と言う。「えっ!?、私まだ全然いけるけど?」とキジ子は自分の体調は万全だと主張した。「今の体に慣らす時間が必要にゃあ、焦りは禁物にゃあ、だから今日はゆっくり休むにゃあ」とミケはキジ子の焦る気持ちなだめる。すると、「はい・・分かりました」とキジ子は素直に従う意志表示を示す。「素直でよろしいにゃあ、それよりも、今日の夕食はお前に御馳走を振舞ってやるから楽しみにするにゃあ」とミケはキジ子にウィンク。「本当に?、楽しみw、あっ、お世話になった人がいるから、その人も呼んでいい?」とキジ子はウキウキ顔でミケに尋ねた。「一人ぐらい増えても問題ないにゃあw」とミケは苦笑。「良かったw、じゃあ、その人に話してくる!」とキジ子は早足で部屋を出て行った。「さて、あたいも、もう一人誘って来るかにゃあ」とミケは独り言のように呟く。「もう一人って、誰?」と俺はミケに尋ねる。「カウボーイ野郎のジョーにゃあ」とミケは俺に返し、更に、「じゃあ、留守番でもしてろにゃあ」と部屋を出た。雑巾掛けレースを通じて、ミケはジョーとの過去のわだかまりが少し解消したとはいえ、やはり、償いをしたいのだろう。一人になった俺は3人用ソファーに身を投げ、アームの部分に足を投げ出し、目を閉じた。この化け猫修行館に着いてから何気に一人の時間は初めてだ。部屋に備え付けてある柱時計の「チクタク、チクタク」という音が、やけに耳に入る。でも、一定のリズムで刻むこの音は不愉快じゃない。そのリズムが心地いいまどろみを誘い、俺の意識が徐々に暗転していく・・。「おい、志村!、起きるにゃあ!、もう夕食の時間にゃあ」と誰かが俺のほっぺを叩いていた。「うっ・・、何・・?」と俺は気だるい体を起こし、目をこすり、開ける。目の前にはミケがいた。「ミケ?、今何時?」と俺は咄嗟に尋ねた。ミケはヤレヤレという表情の後、「もう、6時過ぎにゃあ、キジ子が部屋の外で待っているにゃあ!」と答える。「あっ、ごめん、ちょっと待って」と俺は洗面所に行き顔を洗い、口をゆすぎ、意識をシャッキとさせ、ミケの元へ戻り、「じゃあ、行こうか?」と言う。「行くにゃあ!」とミケは返し、ドアを開ける。「志村さん、おはようw、気持ちよさそうに寝てましたねw」とキジ子は俺を見て開口一番にちくり。「はは・・ごめんw、あまりにも気持ち良かったんでねw」とポリポリと頭を掻く。「うっし!、ゲストはもう先に座敷に入ってる頃にゃあ!、いざ!、出陣にゃあ!」とミケは号令を上げ、「おう!」と俺とキジ子は掛け声を返した。

 

 ミケの後に続き、化け猫修行館の立派な門を出て、隠れ里の街を練り歩く。「キジ子ちゃんは、化けに子修行館の外に出て里を出歩いた事があるの?」と俺は歩きながらキジ子に尋ねた。「おつかいを頼まれて数回出た事がある位で、あまりないです」とキジ子は答える。「おつかい?、あれ?、キジ子ちゃんて、この半年間、一人で過ごしていたんじゃないの?」と俺はキジ子に疑問をぶつけた。「ああ・・、オトギさんから聞きましたが、志村さん誤解してますよ」とキジ子は言う。「誤解?、何が?」と俺はすかさず返す。「確かに化け者の修行は教えてくれませんでしたが、言葉や読み書き、などの教養はオトギさんから教わりましたよ」とキジ子はジト目で俺を見る。その瞬間俺は、医務室でオトギを責めた光景が蘇り、顔が青ざめ冷汗が出た。自分の意志とは関係なしに偶然化けてしまい、里に迷い込んだ猫が、こうも流ちょうに話せる事は誰かがお世話をしたに決まっていて、ちょっと考えれば分かる事だ。「き、キジ子ちゃん、お世話になった人ってオトギさん?」と俺は恐る恐る確認。「はい、そうです」とキジ子は簡潔に肯定した。ヤ、ヤバい・・どんな顔をして会えばいいんだ・・。「にゃははw、早合点したな志村w」とミケは俺をせせら笑う。そのふざけた顔に俺は我慢ならず、「お前!、ふざけんなよ、ジレンマどうのこうの言っていた話は何なんだよ、しっかり助け合っているじゃねぇか!」と俺はミケに食って掛かる。「あくまで、基本はそうにゃあ、でも例外もあるにゃあ、それに化け者だって情はあるにゃあ」とミケはしれっと俺に返す。くそっ、もう覚悟を決めるしかない!。俺が観念した同時に、「ここがご馳走が食べられる場所にゃあ!」とミケは立ち止まり、建物を指す。建物は古民家風で、年季が入った輪切りの板には里の宴と書れていた。俺たちは早速、暖簾を潜り、店内に入る。「いらっしゃいませ!」と茶白の耳と尻尾と携えて、エプロンと三角巾をした女性化け猫が俺たちを元気よく迎えた。「予約したミケにゃあ」とミケはすかさず言う。すると、「ミケ様ですね!、奥の座敷に場所を取っております、お先に2名様がおられますよ!、ささっ、こちらへ」と俺たちを茶白の化け猫店員が案内。茶白の店員化け猫店員の案内で俺たちは障子が閉まった座敷の前に通され、俺はゴクリと唾を飲む。ミケは躊躇なく障子を開け、「待たせたにゃあw」と座敷に座していた二人に話しかけた。「OH、ミケサン、今来たところデース」と灰色の下地に黒のストライブ模様の耳と尻尾を携え、カウボーイハットで、銀色の星型のバッチを付けた茶色のベストに、革のパンツ姿をした、往年の映画スター、ノースブッダと瓜二つの姿の化け猫、ジョーが言う。そして、「ミケさん、今夜はお招きいただき、ありがとうございます」とサビ柄の耳と尻尾を携え、小豆色の作務衣を着た、20代後半のショートヘアーの女性化け猫がペコリと頭を下げる。俺はオトギを確認し、ものすごい勢いで土下座をしながら滑り込み彼女の前に行く。「さーーせんしたーー!、何も知らないくせに、上から目線で責めて、さーーーせんしたーー!」と俺はおでこを畳みにすりすりして、渾身の謝罪。俺の突然の行動に場は固まり、シーンと静まり返る。ポカーンとしていたオトギだが、苦笑し、「志村さん、大丈夫です気にしてませんw」と言って、その場の凍った空気が融解し、「シムラさん、間違いは誰でもありまーすw」とジョーが言い、「 志村さん、良かったですねw」とキジ子はオトギの隣に座る。ミケは会話に参加せず、メニューを真剣なまなざしで見ていた。

 

 「はは・・では、失礼します」と俺は恐縮し、ミケの隣に座ると同時に、「おしぼりです」と茶白の女性化け猫店員がやってきて人数分のおしぼりをテーブルに置く。そして、「ご注文はお決まりましたか?」とメニューを見ていたミケに尋ねた。「とりあえず、ビールを四つにゃあ、キジ子はお子様だからメロンジュースを一つにゃあ、それと焼き鳥の盛り合わせを塩とタレそれぞれ一つづつにゃあ」とミケは注文。「かしこまりました、それでは注文を繰り返させていただきます、ビール四つに、メロンジュースお一つ、焼き鳥の盛り合わせの塩とタレを一つずつですね!、よろしいでしょうか?」と茶白の女性化け猫店員が確認をする。「いいにゃあ」とミケは了承し、「かしこまりました、失礼します」と茶白の女性化け猫店員が去った。店員が去り、黙っていたキジ子が口を開き、「何だかうちに帰ってきたみたいw」とキョロキョロ見回す。彼女の家は民宿なので確かに雰囲気は似ているかもしれない。「キジ子ちゃん、姿が変わってびっくりしたわよ」とオトギはキジ子の頭を撫でて、キジ子はゴロゴロと喉を鳴らし、「キジコチャン、話を聞きましたよ、ファイトデース!、いつかは元に戻れマース!」とジョーはキジ子を励ます。この光景は、何だか親戚が集まった宴席でのひと時に感じる。そうこうしていると、茶白の女性化け猫店員が来て、「お待たせしました、ビール四つとメロンソーダです」とテーブルのミケの目の前に置き「失礼します」と去った。ミケはビールとメロンソーダをそれぞれに配り、立ち上がって、「今日は、無礼講にゃあ、ご馳走を食って、日々疲れを癒して欲しいにゃあ!」と宴の始まりを高らかに宣言し、「カンパーイ!!」と俺たちはお互いのグラスを接触させ、「きんっ」とグラスを鳴らし、キジ子は戸惑いながら俺たちの真似をして、グラスを鳴した。久しぶりのお酒だ・・、俺は、ビールを「グビッ、グビッ」とジョッキの半分ぐらいまで飲む。のど越し爽やかで、何よりもお酒は一人より誰かと飲んだ方がやはり断然美味しい。宴の面子も、ビールを飲んで、ぷはーと息を吐き、笑顔になっていた。俺はアルコールが体を駆け巡り、少し陽気な気分になりながら、テーブルを挟んで向かい側にいるキジ子ちゃんに視線を移すと、彼女はメロンソーダジーと見つめて一口も飲んでいない。「キジ子ちゃん、どうしたの?、飲まないの?」と俺はキジ子に言う。すると、「この緑色の水は何です?」とキジ子はジョッキを横から眺め、炭酸の気泡を不思議そうに見つめる。俺とキジ子のやり取りを見ていたミケは、「いいから飲むにゃあw」とキジ子に勧める。「う、うん」とキジ子は頷き、慎重にメロンソーダをゴクリと飲む。その瞬間、目を見開き、「美味い!!、何これ?、シュワシュワするw」と未知の感覚にキジ子は大はしゃぎ。「これからもっと美味いものが来るから楽しみにするにゃあw」とミケはキジ子に期待をさせ、「本当に?」とキジ子は目を輝かせた時、「お待たせしました!、焼き鳥の塩とタレの盛り合わせです」と茶白の化け猫店員が大皿を二つ、テーブルの真ん中に置いた。焼き鳥の香しいの匂いが座敷中に漂わせ、食欲を増進させた。「これ、知っている!、お母さんがよく作っていたよ」とキジ子は焼き鳥の盛り合わせからタレがかかりテカテカしたつくねを取り、「食べていいの?お母さんはダメって言っていたけど」と隣のオトギに聞く。「キジ子ちゃんはもう、立派な化け者だから大丈夫よ」とオトギは優しくキジ子に答えた。「じゃあ、いただきま~す」とパクリとキジ子はつくねに食いつき、「美味しいw」とほっぺを手で押さえて感激をする。「おしっ、今日は大いに騒ぐにゃあw、店員さん!、にゃんころりと唐揚げ大盛追加にゃあ!」とミケはキジ子が喜んでいるのを見て満足気に、にゃんころりという謎の食べ物を含めて注文。「はい、かしこまりました!」と茶白の女性化け猫店員は注文を元気よく承り去った。

 

 それから2時間後。「あの時、お尻の辺りからメラメラと何かが沸き起って・・、志村!聞いているかにゃあ?」とミケは酔いが回り壊れた蓄音機みたいに6度目の同じ話を俺にしている。キジ子は様々なタレを口の周りに付けて、「すーすー」と寝息を立て横になっていて、オトギはそれを優しい目で眺めながら、ハイボールを飲む。自分のペースを守っていたからか、俺とジョーは比較的にあまり酔っておらず、これから、泥酔したミケをどう運ぶか話し合っていた。「素直にワレたちの言葉を聞きますでしょうか?」とジョーはヒソヒソと俺に尋ねる。「うーん、まっ、抵抗したら強引に連れ帰りましょう」と俺はミケに視線を向けた。「あれっ?、もう無いにゃあ・・」とミケはにゃんころりと、ひらがなで記されて、麻縄が巻かれた大徳利を逆さまにして覗いている。にゃんころりとは、この隠れ里で酒造している、マタタビの実を漬け込んで、何年も寝かせた名物果実酒の事だった。アルコール度数は結構高く、俺も飲んだが、ショットグラスをせいぜい一杯飲むのが限界。それをミケはしこたま飲んでご覧の有様だ。「もうお開きにします?」と俺はジョーとオトギに目配せ。「そうですね、キジ子ちゃんを部屋に運ばないと行けませんし」とオトギは了承しチラッとミケを一瞥、「賛成デース、潮時デース」とジョーも賛同し、準備。打つ合わせ通り、「ミケ、帰るよ!」と俺はミケに声を掛けるが、「えー、まだ飲み足りないにゃあ」と想定した通りミケが抵抗。だが、しかし、「わがまま言うな・・よ!」と俺はミケの両脇に手を入れ、ジョーが足を持つ。「止めるにゃあ!、誰かー!、拉致されるにゃあ!、動物虐待にゃあ!」とミケはわめき散らしたが、俺たちは無視して護送に移る。オトギに、にゃんコインが入った木箱を渡し清算を任せ、「お騒がせしました」と言い先に俺たちは店を出た。店の前で待っていると、オトギがキジ子を背負い出てきて合流すると、俺たちは鶴の間へ向かう。鶴の間へ着いた頃にはミケは完全い酔い潰れていて、イビキをかいて熟睡していた。ミケを慎重にベッドに寝かせ、オトギも優しくキジ子を寝かせ毛布を掛ける。俺たちは静かに寝室から出て、鶴の間から一旦出る。「今日は楽しかったですw」と俺は二人に言う。「こちらこそ、楽しかったです、今日はご馳走様でした」とオトギは頭を下げる。「久しぶりに楽しい食事デシタ」とジョーは親指を立ててスマイル。お互い別れ際の言葉を言い終わると、「それでは失礼します、おやすみなさい」とオトギは去り、彼女の後ろ姿が見えなくなるまで、俺とジョーは見送った。廊下に男二人取り残され、俺も部屋に退散しようとした時、「シムラさん、まだ飲めマースカ?」とジョーは、手で何かを飲むジェスチャーをし、突如俺を引き留めた。「ええ、大丈夫ですけど?」と俺は答える。「良かったら、ユーとワレで飲み直しませんか?」とジョーは俺にサシ飲みを誘う。サシ飲みか・・、往年の映画スター、ノースブッダさんの事を聞きたいし、願ったり叶ったりだw。「良いですね!、飲み直しましょう!」と俺は快諾する。「As expected! 実はこの隠れ里にはBARがあるんデスヨ、ここで飲むデース」とジョーは親指を立て、人差し指を俺に向け銃を撃つ仕草。そして、ジョーに肩を組まれながら俺はBARに向かった。

 

 ーつづくー

 

 

 

 今回ご紹介する曲は、初昇さん作詞作曲による雪花探しです。

 

 傷つき、避けて、拒絶し、己のあり様を求めるが未だにわからず、消えては蘇る心の中に咲いた花は、また溶けてなくなる・・私は何処へ向かっているのだろうか?。本曲は心に傷を抱えて、己のあり様を求め彷徨う者の歌を結月ゆかりさんが歌います。

 

 本曲の題名、雪花探しの雪花(せっか)は、雪の結晶や空から降ってくる雪を花に見立てた言葉で、恐らくですが、不安定で儚くとも蘇る心のあり様と、雪花の溶けては咲く様を重ねて隠喩表現をした題名だと自分は解釈しましたよ。

 

 

 本曲の切ない歌を聴いていると、人の関わり方や距離感、正解があるのか?と考えてしまいますね・・、実際問題、正解なんて人それぞれで、決まった答えは無いと思いますが、大衆や集団は答えを求めてしまうんですよね。

 

 本曲、雪花探しは、人の心のあり様を求める歌が聴き手に考えさせる切っ掛けを与えてくれる素晴らしい曲だと思います。是非、本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

結月ゆかり

 

コトバンク様より

雪花