煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

誰しもある心の闇を弾き語るVOCALOID曲

 

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 今年最後の投稿になります。今年を振り返ってみると、コロナが第五類になり、いよいよ通常の生活に戻ると思いきや、異常な熱さの猛暑・・いや、酷暑が襲ってきて、ヘトヘトになった所に年末の気温の急激な寒暖差、いやー、オッサンの体をこれでもかと虐めて来る一年でした。この自然の猛威をよくぞ耐えたと自分をほめてやりたいですねw。ブログの方の閲覧数はお陰様で微増をしてまして、モチベーションが上がりました!、感謝感激の至りで、ございます。まあ、自分が書く物語に需要が無い事は明白で、正直、ボーカロイドの紹介だけで良いんじゃないかな?と思う事が頭をよぎる事が多々あるんですが、文書を作るのがこんなに楽しいのかと思う自分がいまして、もしよろしかったら引き続き来年もよろしくお願い致します。

 

今年最後のお品書きです

 

 

煮干しのお送りするちょっとした物語

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

 

 師走も残り僅かになり、俺は勤務先である事務所の大掃除をしていた。窓を開けると歓楽街の独特の空気が俺の鼻孔を刺激し、目の前には卑猥な看板が立ち並び、昼間という事もなり、電飾は消えていて、不夜城の本番はまだだった。俺は早速、窓枠に座り外側の窓を雑巾で拭くと真っ黒になり、すかさず裏返しにして再び同じ場所を拭くと窓は輝き始めた。更に二枚目、三枚目と拭き続けていると、窓越しに見える、床を一生懸命にモップ掛けをしていて、フリフリのメイド服を着た黒髪のツインテールの女の子に目が止まり作業を停止。彼女には三毛柄の耳と尻尾がある。罰ゲームでその様な格好をしている訳ではない。正真正銘、本物の耳と尻尾で、通称化け者と言われる、言葉を理解し操り、人の姿に化けれる人外の者なのだ。因みに彼女はの名はミケ、化け者の化け猫に属している。俺は窓拭きに戻り、作業をしながら外を眺めると遠くに森が広がり神社の様な建物が視界に入った。あの建物は稲荷神社なのだが、俺を含めた僅かな関係者しか見えず、殆どの人は気付かない。その通常は認識出来ない稲荷神社を中心に歓楽街が広がっている。この街はそうした特殊な成り立ちをしていて、ミケを始めとした様々な化け者たちが跋扈(ばっこ)していているのだが、一般の人々は、うす皮一枚の向う側に信じられない世界が広がっているのを気付かず、今日も歓楽街に己の欲望を満たすためにやって来ると思うと感慨深い。彼らはこの街の本当の姿を知ったらどう思うのだろうか?、拒絶するのだろうか?、それとも受け入れるのだろうか?いずれにしても俺の様なものにわかる訳もない。事務所には猫耳メイドが掃除をしていて、外は見た目では通常の世界が広がる・・・俺の立ち位置はこの窓枠と同じなのかもしれない。俺の名前は志村、人外の者たちと共に生きる普通の世界から少しずれた所に身を置く者だ。

 

 窓拭きが終わり、給湯室でどす黒いバケツの水を捨て、雑巾をゆすいで絞って物干し紐に吊るし、己のすべき事が終わった俺は事務所の三人用ソファに寝転ぶ。ミケはモップで床を拭きながらもこちらを一瞥して、「志村!、手伝うにゃあ、あたい達は仲間の筈にゃあ」と言う。俺は上司である所長に予め宛がわれた役目以外をする気はなく、「やだよw、俺の役目は終えたのw」と白を切る。期待を裏切られたミケは驚きながら、「な!?、お前がそんな薄情とは知らなかったにゃあ・・こうなったらお前が変態だとノスタルジーJKのお姉さん達に言いふらすにゃあ!」と逆恨みによる報復を示唆。ノスタルジーJKとは、この事務所が入っている雑居ビルの隣のビルに入っている風俗店で、古のJKがしていた制服ファッションをしていて、オッサンたちのノスタルジーを刺激をするサービスを提供する店だ。俺は勢いよく起き上がり、「はっ!?、ふざけんな!、何でそうなるんだよ!、ていゆうか、ノスタルジーJKのキャストたちは、お前の猫の姿しか知らないだろう?、見ず知らずのメイドの言う事を信じるかよ!」と抗議とその脅迫は意味が無いと看破してやった。ミケはモップ掛けをしながら、ニヤリと不気味な笑顔をして、「フフフw、志村w、お前は情報のアップデートが遅いにゃあw、実はちょっと前に記念すべき21番目の自販機をノスタルジーJKの軒先に置かせてもらっているにゃあw、交渉をする時に店長とお姉さんたちと話し合っていて顔見知りにゃあw」としたり顔。ミケは俺と同じ仕事の他、自販機ビジネスに参入をしていて、歓楽街中に合計20台の自販機を展開していたのだが、どうやら、俺の知らない所で新たに1台を増やした様だ。「えっ!?、いつの間に・・・全然気が付かなかった・・・」と俺は事態の変化に対応できず言葉を失う。ミケは俺の動揺を見逃さず、「フフフフw、どうですかにゃあ?、手伝ってくれますかにゃあ?」とばか丁寧な言葉を使い、優位性を知らしめてきた。俺は成す術もなく、「くっ!、わ、分かったよ!」と渋々モップを掃除用具箱から取り出し、床掛けをしようとした時、「あら、あら、ミケ?、床掛けはあなたの仕事でしょう?」と声がした。俺たちは声がする方を振り向くと、黒髪を束ね、燃える様な赤いアイラインと口紅、高価な黒いコートを身にまとい、コートの隙間からは見える大胆に胸の谷間を見せた白いセーター、ロングスカートに、黒いロングブーツを履いた麗人、俺の上司で雇い人である所長だ。彼女は誰からも所長と呼ばれ、化け者の中でもひと際、謎が多い。俺が知っている事と言えば、化け狐で歓楽街の中心にある稲荷神社が出自だというだけで、本名はおろか、年も知らない。ミケはゴマすりの様な仕草をして、「お早いお帰りでw、これはほんのレクレーションにゃあw」と誤魔化す。所長は取り繕うミケを見て少し困った顔し、「所長、悲しいわ・・、分かりやすい嘘で乗り切ろうなんて、舐められたものね」と言う。ミケは更にゴマすりを加速させ、「そ、そんなつもりはないにゃあ!、反省をしているにゃあ」とよく見ると膝がガクガクと震えていた。しかし、ミケの必死のゴマすりも効果は無く、「これは・・稲荷神社送りかしらかね?」と所長は断罪。いつもなら稲荷神社送りと言うワードを聞くとミケは発狂したように抵抗をするのだが、ミケのガクガクの膝はピタリと止まりいやらしい笑みを浮かべ、「所長w、あたいだって成長をしているにゃあw、あの姉妹はもうあたいの手中に収めているにゃあw、やれるもんならやってみるにゃあw」と軽口を叩く。俺はあり得ないミケの軽口に驚き、「ちょっ!、ばっ、何を言っているんだ?、ヤバいって!」とミケに忠告。所長はポカーンとした後、「あら?、そうなの?、じゃあ私が直接制裁するわねw」と微笑みながら瞳の瞳孔を縦長にし、いわゆる獣の目になる。ミケはハッとしてモップを投げ出して、前傾姿勢で疾走し、黒髪ツインテール、フリフリメイド服とお尻から出ている2本の尻尾をはためせ、空いてる窓に向かう。どうやら窓から飛び出して逃げる算段のようだ。だが、ミケを追い越し、先回りして茶色い塊が窓を塞ぐ。それは、所長のお尻から発現した大きなこげ茶色の大きな狐の尻尾だった。所長の尻尾は蛇のように威嚇する仕草したが、ミケは構わず突撃し、尻尾の巻きつき攻撃を、すんでの所をジャンプしてかわす。そして、ミケは空中で体を捻り所長の尻尾を背に着地し、今度は所長に向かい疾走。所長は身構え、「いや〜ん❤️、動きが格段に良くなっているわねw」とおちゃらけ態度で追加の尻尾を発現させ、ミケに差し向けた。ミケの勢いをそのままにスライディングして、正面から来た所長の放った尻尾をスレスレでかわし、「うにゃにゃー!」と言い所長の脇をすれ違いざまに指先の鋭い爪で一閃。高価そうなロングスカートが縦に切り裂け、流石の所長もこれには動揺して、「ちょ!、これ高いのよ!」と露わになった白くて美しいセクシーな太ももを手で切り裂かれた部分を抑えて隠す。これにより所長の尻尾の動きが乱れ隙が生じ、勝利を確信したミケは、「おさらばですにゃあ!w」と事務所のガラスドアに向かってラストスパートをかけた。ミケの逃走経路の本命は事務所の出入り口であるガラスドアだった。ガラスドアに到達したミケは振り返り、「アデューにゃあw」と別れの言葉を口にしてガラスドアをを開け放つが、所長の尻尾が待っていた。ミケは驚き、「なっ!?、何処から来たにゃあ?」と逃げようとしたが、尻尾は素早い動きでまるで蛇の様な動きをし、ミケに巻き付き締め上げる。ここまで僅か数十秒、化け者同士の攻防に傍観していた俺も、ミケを拘束した所長の尻尾の出所が気になり、所長のお尻から伸びている尻尾を辿った。窓を遮った尻尾が外に飛び出していて、窓から見るとぐるりと雑居ビルに沿ってガラスドアの方へ伸びている事が分かり俺は「スゲー」と感嘆の声を上げると、伸びている尻尾が縮み始め、ガラスドアで拘束されたミケが雑居ビルの外周を経由して、「志村!、助けてくれにゃあ!」と俺に助けを請いながらやって来た。所長の元まで引き寄せれたミケは完全にパニックになり、「冗談にゃあ!、三毛猫ジョークって奴にゃあ、キュートな三毛柄でモフモフの毛玉がしでかした事にゃあw、気にしちゃいけないにゃあw」と今更おこがましい言い訳を言う。所長はミケの戯言を聞き、泣く仕草をして、「結構傷ついたわ・・、育ての親である私に対してその様な口の利き方をされて・・所長・・ショック!」と両手で顔を覆う。所長がミケの育ての親と言う事に俺は驚き「えっーーー!?、所長がミケを育てたんですか?」と思わず尋ねた。所長は覆っていた手を戻し、案の定何事もない顔で、「あれ?、言ってなかったかしら?、この子が歓楽街に流れついた時、ズタボロ状態のこの子を保護したのよw、立派な成猫にしたのは私のなのよ」とペラペラと軽快に喋りドヤ顔で説明。俺は育ての親に対しての先のミケの言動にドン引きし、「最低だな、お前・・」と巨大な尻尾の隙間から出ているミケの顔を見た。ミケは目を逸らし何とか尻尾から脱出しようともがいていたが、「ギチギチ」と音が鳴り始める。ミケは苦悶の表情を浮かべ、「それ以上はヤバいにゃあ!、口から出てはいけないものが出てしまうにゃあ!、勘弁してくださいにゃあ!、所長!」と命乞い。所長は悩む仕草をして、「えー、どうしようかしら?w、このスカートお気に入りだったのよねw」とわざとらしく悠長に構え、切り裂かれたスカートを手で摩る。ミケはその仕草に驚き、「ギブギブ!、もう限界にゃあ!」と更にめい一杯の命乞いをした。所長はやれやれとばかりにため息をつき、「もう!、次はもっときついお仕置きをするわよ!」と巨大な狐の尻尾を消す。ミケは締め付けていた尻尾が消えた事により床に落ちて、そのまま寝転がり、「ひゅー、ひゅー、ヤバかったにゃあ・・」と青色吐息。そして、すかさずミケは美しい土下座を披露して、「申し訳ありませんでしたにゃあ、これからは心を入れ替えますにゃあ」と反省の言葉を言う。俺はその台詞を、もう3度ほど見ている。なぜこうも懲りないのか?、今回で少しわかった気がした。所長、いや親に対しての反抗、一種の愛情表現なのかも知れない。無理筋な俺に対しての因縁を付けてのは、恐らくだが前振りで、この駄猫はこれでも化け猫の端くれ、所長の接近に気が付かない訳は無いのだ。

 

 騒動が収まり、所長の持ってきた差し入れである、イチゴショートケーキと紅茶で舌鼓をしていると、所長が、「オホン」と咳ばらいをし、俺とミケはそれに反応をして注目をする。俺たちが注目している中、所長は口を開き、「ええ、志村君は初めてだから知らいないと思うけど、お猿さんの護送する手筈を説明したいと思います」と言う。ミケは最後に取っておいた真っ赤なイチゴをパクリと食べ、「お猿さんの護送の話を聞くと年末だなーと感じるにゃあ」と考え深げな表情。俺は初めて聞くお猿さんの護送という正体不明な仕事に一刻も早く詳細を知りたくて、「あの・・そのお猿さんの護送とは?」と所長に尋ねた。所長はクスリと笑い、「大丈夫よ志村君、簡単なお仕事よw、私たちはね毎年、年末になると若いお猿さんを別のお猿さんグループがいる地域まで護送をしているのよ」と答えた。俺は動物の護送と聞くとついこの前にやった子猫を届ける仕事を思い出し、また動物を運ぶのかよと心の中で毒を吐く。所長は不敵な笑みを浮かべ、「フフフw、はいそこ!また動物を運ぶのかよってぼやかないでw」とまるで俺の心を読み取っている様に一字一句同じ事を言う。そして、思わず呟いてしまったと俺は思い、思わず口を手で押さえる。俺・・喋ってないよな?。どう考えてもしゃっべってない事は確かだが取り敢えず俺は、「ははw、やだなーw」と愛想笑いを誤魔化す。すると、動揺している俺を所長はジト目で見て、「まあ、そういう事にしてあげるわ」と返し不問に付し、俺たちのやり取りを涼しい顔で見ていたミケは、「やはり所長は恐ろしいお人にゃあ」と呟いた。

 

 所長は立ち上がりホワイトボードを持って来て、複数の尻尾をお尻から出し、それらにペンを握らせ何やら描き始める。俺とミケは所長の作業を見守ると、少し凝っている簡易イラストがあっという間に出来上がった。所長の尻尾ってそんな事も出来るんだ・・・。所長は自身が書いたイラストを見ながら、「それでは説明するわね、私たちの住んでいる都市の周りには、四つのお猿さんが住んでいる森があります」とホワイトボードに描かれた森を指す。そして所長は更に説明が続き、「本来なら若いお猿さん達は自力で別の森へ行き巣立つはずなのよ、でもね人間による開発が進み森と森が遮断されて、自力で辿り着くのは危険が伴い難しくなってしまったの」と言う。所長の説明に俺は疑問を感じ、「えっ、じゃあ森から出ない方が良いんじゃないんですか?」と尋ねた。所長は頷き、「確かに森を出なければ危険も無いけどね・・、同じ森に同じ個体の系譜が続くと近親交配が進み、グループ全体が近親者になり、奇形児や障害児の多発によって、種の繁栄の妨げになるのよ」と所長は俺の疑問に答えてくれた。俺は納得の答えに今回の仕事の意図が分かり、「あっ!、だから若いお猿さんを他のグループがいる森に護送をするんですね」と説明を咀嚼して導き出した答えを言う。俺の言葉に所長は笑顔で、「正解!、そうなのよ、理解が早くて助かるわw、郊外に住むお猿さんの種の存続を助けるために私たち化け者は、この年末に若い猿を護送をしているのよ!」と俺を誉め説明を締めくくる。俺は所長のイラストを見て、「じゃあ、4か所を全て回るのが今回の仕事ですか?」と仕事の詳細を所長から聞く。しかし、俺の後ろにいたミケは紅茶を飲みお澄まし顔で、「回らないにゃあ、あたい達はその何処か一か所だけ回り、後は別の部隊が担当にゃあ」と変わりに答える。俺は振り返り、「マジか?、良かったよw、全部回ったら相当な距離だもんなw」と安堵。所長は微笑みながら、「志村君、今回は郊外の森Aから郊外の森Bに若いお猿さんを護送すれば終わりよ!、特別手当も付けるから頑張ってね!」と俺を鼓舞した。特別手当と聞いた俺は俄然やる気が燃え上がり、「任してください!、お猿さんを無事に護送しますよ!」と所長に胸を張り宣言。所長は少し驚いた仕草をして、「あら、あら、僥倖!、それは頼もしいわねw」と言い、「あたいを忘れて貰っちゃいけないにゃあ!、シャカリキに頑張っるにゃあ!」とミケは猛アピール。所長はウインクして、「期待をしてるわよ!、あっ、でも特別手当からスカート代を差っ引かせて貰うわねw」とチクリと釘を刺す。ミケは恐る恐る、「差し引きお幾らになるにゃあ?」と尋ねる。所長は少し考え込む仕草をし、「うーん・・このロングスカートはヨーロッパにいる高貴なレディが好む高級ブランドなのよ、正味45万って所ねw、だから差し引くと・・3万になるわね」と無慈悲な答えを提示。ミケは己のしでかした事に後悔をして頭を抱えながら、「そんにゃあ!!」と叫んだ。

 

 

 そしてお猿さん護送の当日。朝日がまだ登らない薄暗い中、俺とミケは所長から指示された場所に、架空の社名が入ったツナギを着て、同じく架空の社名が書かれたトラックで向かう。気温が急激に下がり雲行きも怪しくなってきたが、ちょちょいのちょいと仕事を終わらせれば問題は無いだろう。指示された場所は国道と獣道が交える場所で、地蔵が目印と言われている。助手席に座っているミケは注意深く見ていて、「あっ、あったにゃあ!、志村!、カーブの手前に地蔵があるにゃあ」と指さす。俺はミケの指さした先に地蔵を確認し、「了解!」と返した。地蔵の手前でハザードランプを付けて停車をし、俺とミケはトラックから降りて地蔵の元へ小走りで行く。地蔵の元へ辿りき、辺りを見るとお猿さんの姿は無く、「ミケ、早すぎたのかな?」と尋ねる。ミケは辺りを嗅ぎまわるな仕草をし、「いや、どうやら時間通りにゃあ、先方はもういるにゃあ」と答え上を見た。俺はミケと同じ方向を見上げると、木の枝に複数の猿がいてこちらを凝視している。ミケはすかさず喉に手を当て、「ききっき!、きっき?」と猿語で話し掛けた。お猿たちは警戒心を解き次々と木から降りて来て俺たちの元へ集まり、その中で少し明らかに年をとっている猿が一歩前に出て、「ききいい?、きききっき」と何かを俺たちに言う。ミケは、「ふむふむ、なるほどにゃあ、あなた達が若い衆を護送してくれる化け者ですか?と言っているにゃあ」と通訳。俺はミケに「そうですって、伝えてくれ」と指示。ミケは再び喉に手を当て、「きききっき、きいいき」と猿語で伝えた。年をとっているお猿さるさんは頷き納得したのか振り返り、「ききいき、きっきき!」と後ろの若いお猿さんに何かを言っていた。若いお猿さんは一斉に鳴き始め、「早く護送してくれって言っているにゃあ」とミケは通訳して俺に伝える。理解した俺は、「じゃあ、行こうか?」と伝わるか分からないが若いお猿さん達に語り掛けトラックに歩き出す。後ろをチラッと一瞥すると若いお猿さん達は俺の後を素直について来ていて、通じたのを確信し安堵し、トラックの荷台に着くと観音扉のドアを開けた。トラックの荷台は改造が施されて、中は良い感じのリビングの様な寛げるスペースに改造されていて、長距離の移動の負担を和らげる様になっていた。若いお猿さん達は荷台を覗き込むと、気に入ったようで、喚起する様に鳴き次々と入る。ミケは若いお猿さん達に、「少しの辛抱にゃあ、休憩する時が来たら開けるにゃあ」と言い、観音扉の荷台の扉を閉めた。しっかりとロックがかかっている事を確認した俺たちはトラックの車内に戻る。俺はエンジンを掛け、最初の目的地である高速のパーキングエリアに向けてアクセルを踏みだす。お地蔵んさんの上に先ほどの年老いたお猿さんがいて、気のせいか手を振ったような気がしたので、サイドミラー越しにもう一度確認すると、その姿は無かった。俺は首を傾げ、その様子にミケは、「どうしたにゃあ?」と尋ねる。俺はサイドミラー越しにお地蔵さんを見ながら、「いや・・さっき、年老いたお猿さんが手を降った様な・・」と答えた。ミケは窓の景色を眺めながら、「もしかしたら猿の化け者かも知れないにゃあ」と呟くように言う。俺はルームミラーを見るのを止めて前方を見ながら、「化け者って、大抵は人と一緒にいるんじゃないのか?」と尋ねる。ミケはこちらを見て、「化け者の中には、元の動物の生活に固執する変わり者が極少数いるにゃあ、恐らくさっきの年老いたお猿さんは数少ないその一人にゃあ・・あたいはその生き方を否定する気はないにゃあけど、化け者になると味覚が人のそれと同等になるから、かなり辛い日常を送る事になるにゃあ・・あたいにはそんな真似絶対できないにゃあ」と答えた。ミケの話しに俺は複雑な感じになり、「じゃあ、あのお猿さんは、俺たちには想像が付かない使命を胸に生きているんだな・・」と言い、雲行きが怪しい空を眺めた。

 

 若いお猿さんたちが慣れない車での移動による疲労とストレスを緩和するために俺たちは一時間ごとに休憩と状態チェックを挟みながら進み、中間地点の高速道路にあるパーキングエレアに着く頃には日が完全に暮れていて、トラック専用の駐車スペースには、多くのドライバーたちがエンジンを掛けぱなしにして仮眠中だった。今日は俺たちもここで仮眠をとり朝一番に目的地に向かう。俺はなるべく目立つことを避けるために、他のトラックと隣合わせにならない一番端っこの雑木林に面した駐車スペースに停まってトラックのエンジンを切る。俺は助手席に座ってスマホをポチポチと捜査しているミケを見て、「ミケ、お猿さん達に今日はここで一夜を明かす事を伝えてくれ」と指示。しかし、ミケは俺の事を見ずスマホを操作しながら「何かやる気が出にゃいー」と不貞腐れた態度。突然のミケのわがままに俺は、「ふざけんなよ!、お猿さんと意思の疎通ができるのはお前だけなんだぞ!、荷台を開けて早く伝えてくれよ!」と焦りながら言う。だが、ミケは相変わらず不貞腐れていて、「あたいはこの仕事を完了してもたった3万しかもらえないにゃあ・・、満額の報酬を貰える誰かが今日の晩御飯を奢ってくれたらやる気が出るかもしれないにゃあ・・」と独り言のように呟く。この駄猫・・自業自得なのに・・でも、ミケの協力が無ければ仕事に支障を来す。俺はため息を付き、「わかったよ、奢ってやるから、お猿さん達に伝えてくれ」と全面的に要求を受け入れる事を伝える。ミケは目を輝かせながら、「本当かにゃあ?、じゃあ、このパーキングエリア名物、極上トンカツ欲張りセットをご馳走して欲しいにゃあ!」と要求の詳細を言う。俺は二つ返事で、「良いよ、極上トンカツでも何でも良いから、奢ってやるから頼むよ」と了承。ミケは勢いよく助手席のドアを開け、「うひょーw、俄然やる気が出たにゃあ!」と言い、トラックの荷台に向かった。俺は首をふりヤレヤレとばかりにドアを開けミケよりワンテンポ遅れて外に出る。すると、向かい合わせに停まっていたトラックから壮年の男が降りて来て、「なんでぃ、随分と若いドライバーじゃねぇかw」と俺に声を掛けてきた。俺は不測の事態だったが、極めて冷静に努め、「ははw、どうも」と頭を下げる。壮年のとこは近づいて来て、「見かけねえ会社だな」と俺たちのトラックの荷台にミケ運送とデザインされた架空の会社名を見た。俺はすかさず、「えへへへ、うちの会社は零細企業って奴でして、普段は西の方を中心に運送をしていまので、知らないのも無理は無いです」と適当に嘘を言う。壮年の男は、「なるほど、西の方か・・なら知らねぇなw、どうだい景気は?」と尚も会話が続き、俺は頭をフル回転して、「け、景気・・?、まあ、ボチボチです」と、どうとでも取れる感じで返す。壮年の男は、「そうか・・どこもみんな同じだなw、それよりもよ!、例の働き方改革関連法をそっちの会社はどうするよ?」と突然業界の話を俺に振る。俺はトラックドライバーでもないし、業界の事はさっぱりで、「は、働き改革?」としどろもどろ。壮年の男は目を見開き、「かーー、これだから若いのはいけねぇ、来年の4月から時間外労働時間が960時間を上限にする法律の事を知らねぇのかよ?、お前・・本当に業界の人間か?」とあきれた態度。壮年の男の話しで俺はネットやテレビのながら聞きで聞き覚えがあり、相槌を打ち、「ああ!、知ってますよ!、本当に大変なことになりましたよね」と何とか誤魔化そうと試みる。壮年の男は苦笑いをして、「遅ぇよ!、業界人なら関連情報を常に把握しろw」と説教を言い、どうやらやり過ごす事に成功した様だ。壮年の男は口を開き、「たくっ、迷惑だよな?、休みをもらっても給料が減らされたら意味ねぇじゃねえか!、余計なお世話なんだよ」と国に対して愚痴り始めた。俺は正直どうでも良かったが、「そうですよね!、全く!、国の奴らは俺たちの事をまるでわかってない!」と壮年の男の言う事に同調をする。壮年の男は気を良くしたのか笑顔になり、「若いのに見上げた心構えだぜ、よしっ!、今晩の飲まねぇか?」と飲む仕草をした。俺は仕事中という事もあり何より荷台のお猿さん達の存在がばれる事を恐れて、「いやー、折角の申し出ですけど、当社は仕事中にお酒の類、部外者との接触を禁じられているんですよ、申し訳ないですが辞退させてもらいます」と我ながら上手い言い訳を言う。俺は心の中で自画自賛をしていると、「連れねぇ事を言うなよ、大丈夫だってバレやしねぇ、さっき見てたけどよ、お前さんには若い女の相棒がいたなw、どうれ、俺が説得してやる」と荷台の扉の方へ歩き出した。俺は焦り、「いや、すいません、本当に無理なんですって」と壮年の男を引き留めるためにワザと大きい声で言う。声がミケに聞こえている事を願いながら俺は壮年の男の進路を塞ぐ。だが、壮年の男の歩みは止まらず俺を押し退け荷台の扉まで来てしまう。そこにはミケは若いお猿さん達を丁度荷台から降ろしていた。壮年の男はその光景に驚き、「な、な、なんじゃこりゃあ!」と叫ぶ。俺は困惑して何を言って良い分からず、「あっw、これはですねw、えっと・・猿の・・牧場を経営してましてw」と半笑いしながら頭に浮かんだ事をペラペラと言う。俺の荒唐無稽な話に壮年の男は、「牧場の経営?、お前は運送会社じゃないのか?」と至極まともな事が返ってくる。俺はほんの数分前に言った設定と矛盾をしている事を言った失態により完全にパニックになり、自然とミケの姿を探す。しかし、先程迄いたミケは忽然と姿が消えていて、いよいよ正念場を迎えた。壮年の男は既に冷静になっており、「おい、お前は何者だ?、まってろ警察に連絡するから逃げるなよ」と作業服のポケット弄り始める。俺はもう駄目だと諦め、この後の自分の末路の想像が頭の中をグルグルと駆け巡り、冷汗が背中を伝わる。壮年の男がようやくスマホを取り出し電話をしようとした時、「どうしましたにゃあ?」と婦人警官に化けたミケが現れた。壮年の男はミケの姿を見るなり、「お巡りさん、この男何やら輩ぬことをしています!」と言う。ミケはニッコリ微笑み、「落ち着いてくださいにゃあ、ここはコーヒーでも飲んで気持ちをリラックスして、もう一度経緯を教えてくださいにゃあ」と見た事もない缶コーヒーを差し出す。壮年の男は戸惑いながらも、「お、おう、そうだな」と差し出された缶コーヒーを受け取り、蓋を開けてグビッと一気飲み、壮年の男はフーとため息を付き、「実はですね・・・」と言いかけた時、全身が脱力状態になり、持っていた缶コーヒーを落とした。夜のパーキングエリアに缶コーヒーの甲高い音が響き、俺の目の前にいる壮年の男は頭をだらしなく頭を下げている。ミケは落とした缶コーヒーを拾い、「流石新型にゃあ!」とドヤ顔をして缶コーヒーの銘柄を見せた。俺は目を細め、タヌキの様なキャラクターの吹き出しに注目し、「DO!・・亡・・心・・Re・・・?、・・・あっ!?、ど忘れ!」と缶コーヒーにデザインをされた読みにくい文字を解読。俺が理解をした事が分かるとミケは、「そうにゃあ!、この缶コーヒーはタヌキの化け者化学班たちが試行錯誤して作られた最新版!、その名も・・ど忘れ薬EXにゃあ!」と声高に言い、パーキングエリアにこだまする。俺は再び壮年の男を見ながら、「じゃあ、この人は今見た光景を忘れるのか?」とミケに尋ねた。ミケは姿勢を低くし壮年の男の顔を覗き込み、「その通りにゃあ、説明書にはそろそろ目を覚ますはずにゃあ」とボフッと音を鳴らし、婦人警官から元の俺と同じ架空の会社のロゴが入ったツナギに戻る。そして、荷台にいる残りのお猿さん達をに、「ききき!!」と何かを言う。荷台に残っていたお猿さん達は足早に出て行き雑木林に飛び込み姿が見えなくなった。ミケは俺の隣並び、俺たち二人は壮年の男を見つめ数分後・・。壮年の男はゆっくりと顔をあげ辺りを見回し、まるで寝起きの様な態度。俺は壮年の男に「あの・・」と声を掛ける。男は俺たちを見て、「ああ、私の向かい側に停まったお若い同業者さん達じゃないですか、あの・・私は何故ここにいるんでしょうか?」とまるで別人の様な言葉遣い。俺の心臓は強く鼓動をしていたが悟られるまいと冷静な素振りで、「いや・・俺たちが荷台をチェックしようとしたら、あなたがここでボーと突っ立っていましたので、お声をお掛けしました」と嘘の状況説明。壮年の男は再び辺りを見回し、「いやー・・全く記憶にありませんね・・どうやら疲れている様です・・真に申し訳ありませんでした、私は休む事にします」と自身のトラックに向かう。俺たちは立ち去る壮年の男の背中を見守っているとピタリと歩みが停まり、俺たちはビクッとなる。壮年の男は振り返り、「ああ、そうだ、来年4月には働き改革関連法が施行されます、それはお国が私たち労働者の為を思って作られたありがたいものです、ですからあなた達もしっかりと法令順守してください、それでは!」と手を振り歩みを再開。壮年の男はそのまま歩きながら、「ああそうだ、寝る前に妻に連絡を入れよう」と呟いた。壮年の男がトラックの仮眠室に入った事を確認した俺はミケを睨み、「おい!、何じゃあれは?、全くの別人になっているじゃねえか!」と言う。ミケは耳を塞ぎ、「あああ!、うるさい、うるさい、聞こえないにゃあ!」と現実逃避。俺はその身勝手な振る舞いにイラっときて、「うるさいって言ってる時点で聞こえているじゃねえか!、あれ・・どうするんだよ?」と責任を追及。ミケは耳を塞ぐのを止めて俺の両肩をポンとたたき、「過ぎた事はもう忘れるにゃあ」と諭すような表情をし、「さあ!極上トンカツ欲張りセットを食うにゃあ!」とパーキングエリアの食堂の方へ逃走。俺は駄猫の背中を追いかけ、「待てこら!!」と夜のパーキングエリアを疾走した。

 

ー続くー

 

 

 

 

345曲目の紹介

 

 

 今年最後の紹介する曲は、作詞作曲をReNさん、動画をくずーきんさんによる心の穴です。

 

私は業務が終わり、家路の道半ばの土手沿いから見える夕陽に染め上がられた茜色の空を眺めていた。川の匂いを含んだ風が私の顔に吹き付け、その風が吹く前方遥か先に視線を送る。遥か先にある茜色のキャンパスをバックに黒く染められた工場群の煙突のシルエットからユラユラと煙が宙に舞い、その営利活動から吐き出す紫煙の儚さを見ていると心の空洞から空腹感にも似た虚無感を抱く。この奇妙な感覚・・むなしさを抱えて今日まで生きてた。この空洞を埋めるにはどうしたらいいのだろうか・・。前方から来る数分ほどですれ違うカップルを見ていると私の心の空洞が疼き拡張する様な感じがして堪らず目を背け、足元のアスファルトを見る。すれ違う瞬間、妙に土手に自生している枯れたセイダカアワダチソウの擦れる音が耳に入り、高ぶる私の神経を紛らわす。そして、すれ違い終わると私は前方を見据え、遥か先まで続く何も無いアスファルトの小道から己の人生と重ね、自身にある心の空洞が再び疼く。この空洞が埋まる日が来るのか?、それは分からないが確実な事は今日もこの空洞と共に生きていくのだ。茜色の空がいつもより哀愁漂うもの悲しい感じがした。

 

 本曲は、心にぽっかり空いた穴をテーマに、情緒を刺激するアコースティックギター初音ミクさんが弾き語りをします。

 

 本曲の題名、心の穴は恐らくですがそのままの意味で、誰しも抱えている心の闇を指している題名と思いました。

 

 


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 本曲のアコースティックギターの音色に癒されますね。哀愁と情緒を刺激され、何と言えない想いが込み上げて来ました。

 

 本曲、心の穴は誰しもある心の薄暗い部分をテーマにして、自分にはないものを求める心から発する飢餓感、焦燥感、観念的な想いを表現した歌は、共感できる部分が多く、心の孤独感が幾分か和らげてくれる感じがする曲だと思いますので、是非!本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

初音ミク