煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

愛すべき先駆者を歌うVOCALOID曲

 

あけましておめでとうございます!!

 

 今年は辰年という事で、積み重ねたものが形になって大成の年という事ですが・・・元旦早々にお祝い気分が吹き飛ぶ悲しい事が起きてしまいました。皆さんもご存じだと思いますが、石川県能登を中心とした地震でかなりの被害が出ている様子で悲惨な状態の様です。被災した皆様方の心痛の程は通常の生活を送れている自分にははかり知れませんが、どうか心を強く持って欲しいと願う思いの限りでございます。最後に私事でございますが、今年も許される限り記事を書いて行こうと思いますので、本年もよろしくお願いします!

 

今回のお品書きになります

 

 

 

煮干しのお送りするちょっとした物語

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

 

 俺の名前は志村、年が明け正月になり、俺は上司で雇人である所長の家で行う新年会に召集されて、彼女の家に向かうため電車に乗り込み車窓から正月飾りで彩る街を眺めていた。彼女の家はあの有名老舗百貨店・九尾百貨店の屋上にあるという。そんな奇妙奇天烈な場所を指定されたら普通の人だったら疑い怪しむだろう。だが、俺は特に疑問を持たなず、そんな所に住んでいるのかよwと感想を抱く程度。それは、うんざりするほど沢山の奇妙で不思議な事を体験して、薄皮一枚向うに普通の人が思いもよらない不可思議な世界が広がっている事を知っているからだ。電車の車窓の風景が卑猥な看板が多くなり歓楽街が近づいて来るのが分かる。それから数分後に歓楽街の最寄り駅の到着。通常ならこの駅に降りて勤務先に向かうのだが今日は所長の家である九尾百貨店に向かわなければならない。俺は電車を降りずじっと外を眺めていると後ろで誰かが電車の乗り込む音がして、「志村!、明けましておめでとうにゃあ!」と聞き慣れた声で新年の挨拶をする。俺は振り向き声の主を見据えると、べージュのコートに同じ色のブーツで黒髪のツインテール、年は十代後半の女性がいた。彼女の名はミケ、まるで猫の様な名前と思うかもしれないが、実際彼女は猫なのだ。いや、正確に言うならば、人の言葉を理解し、そして話し、人の姿に化ける通称化け者と言われる存在で、化け猫に属している異形の者、それが彼女の存在を正確に表した言葉である。俺はにやりと笑みを浮かべ、「あけましておめでとう!、いつものメイド服はどうしたんだ?」と尋ねた。ミケの普段着はメイド服で、同僚でもある彼女はそのコスプレ紛いな服を着て俺と仕事をこなす。勤務先が歓楽街という事もあって案外目立たないのだ。ミケは少し不機嫌そうに、「所長に釘を刺されたにゃあ、家に来る時は普通の服で来るようにって言われたにゃあ」と答える。俺は苦笑をして、「まあ、あの格好でデパート行ったら間違いなく警備員に止められるからなw」とミケに言う。ミケは顔を赤らめて若干怒りながら、「あたいの由緒正しい正装を変質者呼ばわりかにゃあ!、心外だにゃあ!」と抗議。その抗議に俺は、「でもさあ、実際メイド服で来たらお客さんとかがビックリして大騒ぎになると思うよw」と現実を教える。ミケはしゅんとなり、「そういうもんかにゃあ?」と確認。俺は頷き、「そういうもんだ、お前のメイド姿は歓楽街の中でしか通用しないんだよ」と説き伏せた瞬間、電車のドアが閉まり、九尾百貨店の最寄り駅に向け動き出す。ここからは快速になり、次が止まる駅が最寄り駅だ。車窓からの景色は卑猥な看板が無くなり街並みがガラッと変わりモダンでお洒落なビルが立ち並び、街を行き交う車の中に高級車がちらほら見える。数分もすると、駅が見えて来て遠目からでも分かる大きな商業施設が姿を現す。ミケと俺はその商業施設の屋上をジーと見ると本当に屋敷が立っていて、その異彩を放つ建物に驚く。「すげー・・・さすが所長だわw」と俺は感嘆の声を上げ、ミケは「あたいの家より数倍広くて豪華にゃあ・・」と呟くように言いため息をつく。俺たちは電車が停まると下車をして、駅の中にある九尾デパートへの案内看板の指示に従い進む。迷路の様な構内をひたすら歩き、本当にあっているのかと疑い始めた時、駅の外に出られて目の前に九尾百貨店とでかでかと書かれた看板が備え付けた大型商業施設が現れた。地上から改めて見るとその凄まじい大きさに圧倒される。どうやらミケの方も今回が初めての様でキョロキョロと周りを伺い、「はえー、所長の新しい自宅は凄まじいにゃあ!」とただただ驚くばかり。辺りを見回し終わった俺たちは互いに見合い頷き、早速九尾百貨店に向かって歩き出す。大勢の人の流れに沿いようやく百貨店の入り口の前に着くと俺たちを赤い舌をベロンと出して人を見下している狐マスコットが出迎えた。その舐めた態度に既視感を抱き、この百貨店は所長の物だとはっきりと確信。所長はミケの同じく化け者で化け狐に属していて、彼女の事のほとんどは謎で名前はおろか年齢も分からない。俺は狐のマスコットに近づき、その説明書きを見て、「Q・・B君?・・九尾君W」と苦笑い、隣に並んだミケは、「所長らしいユーモアたっぷりなマスコットにゃあw」と同じく顔を引きつり苦笑い浮かべる。俺たちは所長に何度も酷い目に合わされている訳だが、最後は決まってこのマスコットの様な仕草をして茶を濁すのだ。俺たちのとって凶兆であるその仕草を見ているとぞくっと背筋に冷たいものを感じ、これ以上耐えられそうもないと感じ足早に店内に入る。店内は高級品が所狭しと並び、それらを見ているお客さんも分相応な感じだった。それに比べ俺たち一般人は分不相応な感じでかなり浮いている事が否めなく、所長の指示された通りインフォメーションセンターに急ぐ。進むと吹き抜けのエスカレーターがある場所が見え、吹き抜けのフロアの真ん中にインフォメーションセンターを見つけた俺は「ミケ!、あったぞ!」と言う。ミケは俺が指さす方を見て、「本当にゃあ!、早く所長に取り次いでもらい案内してもらうにゃあ」と返す。吹き抜けフロアの手前には高級家電が並び、巨大液晶テレビの前を俺が通り過ぎようとした時、野生のお猿さんが映り、思わず止まる。俺が立ち止まった事によりミケも立ち止まり、「どうしたにゃあ?」と俺に尋ねた。俺は巨大液晶テレビに映った野生のお猿さんを見ながら、「あのお猿さん達・・・元気にしているかな?」と言う。ミケも巨大液晶テレビに映ったお猿さんを見て、「元気にしていると思うにゃあ・・いや、して貰わないと困るにゃあ・・」と考え深げな顔をした。

 

 時は遡って去年の大晦日、俺たちは上司である所長の要請により野生の若いお猿さんを元居た場所とは違う別の生息地に住まうお猿さんがいる所まで護送する仕事を請け負い、俺たちは道中の高速道路のパーキングエリアにて仮眠を取っていた。謎その様な事をするのか?、それは種の保護を名目とした事らしいが、俺的には報酬を貰えればそれで満足だ。トラックの助手席の端に頭を置き少し窮屈だが横になって寝たが、慣れない車内での仮眠は眠りが浅く起きてしまう。薄目で車内を見回し、毛布で目張りしたフロントガラスの隙間から見える空は薄暗くスマホでセットしたアラームよりだいぶ早く起きてしまった事が分かる。俺は再び目を閉じ二度寝を決行。しかし、トラックと言っても俺の取得した準中型免許で乗れる限界の大きさである二トントラックの車内は普通自動車よりも、ほんの少し気持ち大きい程度な、窮屈で寝心地はお世辞にの良いとはいえず、数分もすると再び薄目を開ける。足元には丸まった三毛柄の毛玉が僅かに膨らんでは縮み、、「スピ―、スピ―」と音を鳴らしていた。この毛玉の正体はミケ、車内で二人で寝るには限界があり、化け者である彼女は元の猫の姿に戻り寝ているのだ。俺はスマホをタップして現在の時間を確認すると予定の起床時間より1時間も早く起きてしまっていて、どうするか思案し始めた。一時間か・・、微妙だな・・、寝てもすぐ起きる感じで意味ないだろう、でもなー、やる事もないしその辺を散歩するか?、いや、やめよう、今日も長距離を運転をするんだ、体力を温存しよう。俺はこのまま目を閉じて取り敢えず体力の温存を務める事にする。それからパーキングエリアの環境音を聞きながら過ごすと俺のお腹の上でスマホが振動と共に音を鳴らす。俺は目を閉じたままスマホのアラームを切り、アラームは若干早めにセットしていたのでそのまま少し横になる事にした。足元でもぞもぞと動く感じがして、ミケが起きた事が分かる。ミケは俺の体の上を歩き始め太ももからお腹そして胸の辺りでピタリと止まった。目を閉じていたが何となく俺の顔を伺っている気配。何だ?、ミケの奴、何をするつもりだ?。俺はミケが何をするのか興味が沸きこのまま狸寝入りを決め込む。ミケの鼻息が聞こえて顔の目の前まで近づいている様だ。すると、俺の鼻の穴から激痛が走る。俺は思わず目開け、「イタタタ!!、痛い、止めろ!」と目を見開く。目の前には俺の鼻の穴に肉球から飛び出した爪を入れてひっかけていた。ミケはニヤリと笑い、爪を引っ込めて、バク中をし、「ぼふっ」と音と煙を出し黒髪でツインテールで俺と同じ作業用ツナギ姿の女の子の姿になりお腹に着地。俺は人の姿に化けたミケの重さによって肺の空気が抜けだし、「おふっ」と声を漏らす。ミケは俺を見下ろし、「おはようさんにゃあ」と挨拶。俺は、「お、おはよう」と辛うじて返す。俺たちのこの状況を何も知らない他人が見ると恋仲の男女がじゃれているように見えるのだろうか?。俺は起き上がり、「重いから早く退けろ」と言いミケを運転席側に追いやった。ミケはきょとんして、「何にゃあ?」と俺の態度を不思議がっている。俺は咳ばらいをして、「早く朝食と身支度を済まし、お猿さんを呼び戻し予定地点へ行こう」と照れ隠しをしてミケに悟られない事を願った。

 

 俺たちは、車から降りたパーキングエリアに常設をしている食堂に向かう。食堂にはトラックドライバーたちが黙々と食事をし、それぞれの会社のロゴが入った色違いの作業服を着ていて、なかなか壮観な景色。俺たちは空いている席に座り、メニューを取り出し朝食を何にするか決めるべく行動に移す。昨夜のミケが予めネットでリサーチをしていて奢らされた極上トンカツには驚かされた。程よく熱が通り赤みがかって口の中で溶ける様なジューシーな肉と自然由来の甘さが感じるキャベツ。ミケには少しイラっとしていたがあれを食べた後には恨みなど吹き飛ぶ美味さで逆に感謝をしてしまう程だ。あの極上のご馳走を出せる店なら他の物も期待できるというもの。俺は朝食メニューを端から端まで見て何をするか真剣に吟味をした。うーん、どれも美味しそうだ・・、逆に全方位に隙が無いと決めあぐねるな・・。ミケもやはり決めあぐねていて、「魚も良いにゃあ・・」と呟いていいる。朝食を決める事に苦戦をしている所に突如、俺たちのテーブルにドカッと作業服を着た壮年の男が座る。俺たちは顔を見合わせた後に壮年の男を見ると同時にあっと言う顔した。壮年の男は俺が持っていたメニューを奪い、「あんたら、俺のトラックの向かい側にいる見慣れない運送会社の兄ちゃんと姉ちゃんだろ?」と言う。俺は動揺をしていたが顔に出さない様に努めながら、「はあ・・・」と曖昧な返事。男はメニューをテーブルに置き、「いやー、お前さん達の様な若いトラッカーなんんて珍しっくってよ、声を掛けたのよw」と人当たりが良さそうな笑顔を見せる。この壮年の男とは実は初対面ではなく、昨夜に声を掛けられたばかりだが、男の方は覚えてない感じ。俺はミケをチラリと一瞥をして、「いやー、最近起業したばかりの運送会社なので、社員も若いんですよ」と適当に話を合わす。男は相変わらず屈託のない笑顔で、「そうか!、道理で知らないはずだ!、よーし、これも何かの縁だ、ここの隠しメニューを教えてやろう、おーい!ぶり大根定食を三つ!」と俺たちの分まで勝手にオーダをした。壮年の男が俺たちの事を初対面の様に振舞うのは本当に記憶が無いからだ。実は昨夜、この男に護送中のお猿さんを見られてしまった。そこでミケが機転を利かせ婦警に化けて、ど忘れ薬EXを缶コーヒーに偽装したのを飲ませた訳だが、その後がよろしくない。男は言葉遣いも変わり言っている事が真逆になり、まるで別人の様に振舞い、ただそれを見て見ぬふりをするしか俺たちには出来なかった。この様子だと記憶は無くなり、言葉遣いも戻っている様なのでほっと胸を撫で下ろしたい所だ。ミケも安堵した様子で、「おじさん、奢りかにゃあw?」と調子よく尋ねる。男は大きく頷き、「おう!、奢ってやるよ!、若いもんはどんどん食ってモーレツに働け!」と了承。ミケは満面の笑みで、「ヤッターw、ラッキーにゃあ!」と喜んだ。他愛のない会話をしていると、店員さんのおばさんがワゴンを押してこちらまで来て、「ぶり大根定食です」と俺たち三人それぞれにお盆に乗せた定食を置く。ぶり大根定食は、メインにぶり大根、ピカピカに輝く新米のご飯、良く漬かってそうなニンニク味噌、冬の寒さで旨味が濃縮された縮みホウレンソウのおひたしの組み合わせ。純和風の少し豪勢な和食に通り過ぎるトラッカーたちも目を見張る。俺たち三人は、「頂きまーす」と元気よく朝食を開始をした。

 

 さーあ、何から手を付けよう。俺は自身の目の前にあるぶり大根定食を見て最初の一手を探る。そうだな・・・まずは、やはりぶり大根だなw。俺は箸の切っ先をぶり大根のお椀に向けてる。俺は大根を箸で小分けにすると、断面からエキスが染み出す。そして、その内の一つをつまんで口に放り込む。おおお、何て味だ!ぶりアラの旨味が存分に染みこんで美味い!。久しぶりに食べる純和風な料理に感動を覚えながらも今度は味噌ニンニクに手を付けることにした。味噌にんにくはを箸で慎重につまむとそれを口に運び、「コリ、コリ」と小気味いい音を鳴らす。ニンニクの風味と味噌、そこに鰹節の風味が合わさり完璧なハーモニーを感じ、銀色の輝きは何よりも証拠である今年の新米・・・つまるところ銀シャリを口に間を置かず入れる。はあー、この国に生まれて良かったとつくづく思わせる味だ。幸せの余韻をほどほどに縮みホウレンソウのおひたしに移る。鰹節が乗っているほうれんそうのおひたしにテーブルに備え付けのマヨネーズを掛けて最後に醤油を数滴を掛け、俺は完成されたほうれんそうのおひたしを慎重に口に運んだ。この根っこの部分に近いピンク色の部分から出る甘みとコクがマヨネーズと醤油、鰹節が融合してこの上もなく上等な料理に昇華させ、俺は舌鼓をした。それから俺はぶり定食を味わい、最後にぶり大根のぶりアラを箸で骨を取り除くとパクリと食す。うん!、良く煮込んでいて柔らかく出汁が染みこんで美味い!。全てを食した俺は恍惚の表情をして正面を見ると、壮年の男とミケも同じ表情をしていて何かヤバい薬をやっている様な惚けた顔。ミケは男をみて、「おじさん・・、ありがとうにゃあ、ここの食堂にこんな絶品料理があるとは知らなかったにゃあ」と感謝の意を伝える。男はゆっくりと隣にいるミケを見て、「良いって事よw、この隠しメニューは何度も食べているが飽きねえよw」と返した。俺はミケに目で合図をすると、「じゃあ、ご馳走様です、俺たちは先を急ぎますので」と立ち去ろうと椅子を引いたその瞬間、「あんた!!」と食堂の出入り口の自動ドア方から声がした。

 

 俺たちはその声がする方を見ると見知らぬおばさんが血相を変えてキョロキョロと店内を探していた。すると、壮年の男が立ち上がり、「お、お前!、何でこんな所にいるんだ!」と動揺をしながら言う。どうやら壮年の男の関係者の様だ。壮年の男に気が付いたおばさんがこちらを見ると、手を振り、早足で近づいて来た。そして、俺たちのテーブルまで来ると壮年の男の腕を掴み、「病院に行くわよ!、仕事の方は会社の人が引き継ぐらか大丈夫だって!」と店から連れ出そうとする。壮年の男は振り払い、「何だお前!、旦那の仕事を邪魔しようとするとはどういう了見だ!」と怒鳴る。食堂にいたトラッカーや店員さん達が一斉に注目をして、これはまずいと思った俺は、「あの、今日はありがとうございました、やっぱり、会計は俺たちは持ちますんで」と伝票を取り食堂の出入り口に向う、壮年の俺の背中に、「ちょっ、待てって」と壮年の男の抗議する声が聞こえたが俺は構わず進み精算をする事を店員に伝票を見せて促す。俺は財布を出し店員さんから提示された料金を支払うために財布を弄っていると、「てめぇ、俺の面子を潰すとはいい度胸だ!」と更に壮年の男の怒気が強まりヒートアップしていたがおばさんは怯まず、「だって!、昨夜のあんた絶対おかしかったのよ!、早く病院に行きましょう!、脳を検査して早期に対処しましょうよ!」と大声で返す。壮年の男は一瞬、きょとんとした後に、顔真っ赤にして、「てめぇ!、何を訳の分からい事を言いやがる!」と今にも襲い掛かりそうな勢いに、今まで静観していたトラッカーたちも割って入りなだめる。今のやり取りでこの原因が俺たちだと確信をしてしまった俺は、震えながらもお札と小銭を出し何とか精算を終えて飛び出す様に食堂を出る。あくまでも走らずしかし素早く早歩きで自身のトラックに俺たち向かう。トラックに着くと、俺は急いで運転席に座り、「お猿さんに召集を掛けるにゃあ!」とミケは荷台へ。俺はミケが来てすぐに出発できる様にエンジンを始動し、ハンドルを握りながら食堂の方を見る。店内では大騒ぎになっていて皆立ち上がって壮年の男とおばさんを囲んでいた。助手席のドアが開きミケ飛び乗ると、「志村!、お猿さんは全員乗ったにゃあ!出発にゃあ!」とシートベルトを締め、俺は、「お、おう」と返し、アクセルペダルを踏み込んだ。パーキングエリアから高速道路の合流に入るとミケは食堂の方を見て、「おじさん・・こんな出会いをしたくなかったにゃあ・・」と切ない顔を見せ更に、「志村!、オジサンの犠牲を無駄にしちゃあ駄目にゃあ、お猿さんの護送を成功させるにゃあ!」と前を見据えた。

 

 高速道路をひた走り、ようやく目的地の最寄りの出口に着き高速道路を降りると、予定していて物資の補給をするために、ゴロニャン運送が運営する預かり倉庫の駐車場に停めた。預かり倉庫とは、契約したユーザーに送られた荷物を一時保管し、ユーザーは都合がいい任意の時間で予め運送会社から送られた暗証番号を入力をして持ち出せるサービス。さまざな運送会社がこのサービスを参入をしているがゴロニャン運送は他社と一味違く、コンテナ程の大きさの荷物も取り扱い可能だ。ここでは最後の休憩ポイントでお猿さんに振舞う飲み水と食べ物を手に入れる。俺は予めスマホに連絡が来た暗証番号を入力をすると、レンタルボッス位の預かり倉庫の扉が開き、中に数個の大きなタッパと飲料水の入った段ボールがあった。俺たちはそれらを運び出しトラックの荷台に入れながら中にいるお猿さん達の状態もついでにチェック。お猿さん達の顔色は良好で大丈夫そうだ。ミケは喉に手を当て、「ききき、きっきき!」と猿語を喋りこの先の予定を伝える。お猿さん達は頷き、了解の意志を示す。そして、俺たちはトラック乗り込み海岸線沿いの県道を走る。日はやや傾き空がほんのりと赤みがかっていた。両側に広がる防風林の切れ目に広がる空き地の様な場所に俺たちはトラックを停めて荷台にいるお猿さん達を出して最後の休憩に入った。お猿さん達は始めて見る海に見入っていてる中俺たちシートを敷き、タッパを置き、それを開ける。タッパの中は黄色い丸い物体が敷き詰められていて、俺にはそれが何なのか分からなかった。ミケはそのうちの一つを取り出し、「所長、お手製のさる団子にゃあ」と言う。俺はの聞き慣れない言葉に「さる団子?」と聞き返す。ミケはさる団子と言われた黄色い丸い物体を掲げ、「所長は毎年この時期に直々にこの団子を作ってお猿さんに振舞うにゃあ、結構美味しいからお前も食べてみるにゃあ」と俺に差し出す。俺はさる団子を受け取ると、「あの所長が料理?。嘘くさいなw」と怪しむ。ミケは躊躇なくパクリと食べ、さる団子の断面を見せながら、「嘘じゃないにゃあ、ホレ、お前の食べるにゃあ」と促す。ミケに促された俺は、おもむろに遠慮がちにさる団子をかじる。すると口の中にほんのりと甘いサツマイモの甘みがしてその中に粒粒の実の様なもの歯ごたえがして、不味くはない。俺はさる団子の自身が付けたかじった断面を見ながら、「ミケ、この粒粒は?」と尋ねた。ミケはパクパクと食べて平らげた後、「ヒマワリのタネとカボチャのタネにゃあ」と答え、喉のに手を当て、「ききき!ききいっ」とお猿さん達に声を掛ける。海を見入っていたお猿さん達は一斉に敷かれたシートに集まると、ミケはタッパに入ったさる団子を配り始める。俺もさる団子を急いで食べて、タッパの中にあるさる団子を配る作業に加わった。お猿さん達はさる団子を美味しそうに頬張り、海を眺めていて、そのつぶらな瞳から海風の所為か少し涙の様なものが見え、俺は複雑な心境になる。さる団子の配布を終えた俺は、「なあ、このお猿さん達は移住先でうまくやってくいけるのかな?」とミケを見つめる。ミケは海から塩混じり風を受け目を細めながら、「どうかにゃあ、そればっかりはお猿さん自身の適応能力次第にゃあ、でも二年に一回ぐらいの割合で出戻りがあるにゃあ」と言う。俺は、「出戻り?」とオウム返し。ミケは風になびかれた黒髪のツインテールを手で押させながら、「環境に上手く馴染めなかったお猿さんは元の住処へ戻ろうとするにゃあ、それを出戻りと言うにゃあ」と説明。俺は驚きながら、「戻るって・・凄い遠いけど?」とここまで来た道順を思い出す。ミケは頷き、「そうにゃあ、到底戻れない距離にゃあ、でも故郷を目指そうとするにゃあ」と切ない顔。俺は恐る恐る、「その出戻りの・・最後は?」と尋ねた。ミケは口をゆっくりと開き、「まあ、大抵は野垂れ死ぬにゃあ、そして残りは結局護送先にげ返ってくる奴にゃあ、それと稀に・・わざと人里に降りて暴れる奴が出て来るにゃあ」と答える。俺は最後の稀に出て来るというお猿さんに興味を抱き、「暴れる?、何で?」とさる団子を美味しうに頬張るお猿さん達を見た。ミケはお猿さん達の一匹に近づき、「今回の護送されたことを強烈に記憶していたお猿さんの中には、人里で暴れれば、あたい達の様な人が迎えに来てくれて故郷の森に帰してくれると思う個体が稀にいるにゃあ」と頭を撫で、お猿さんは目を細めて気持ちよさそうにすると、ミケの作業用ツナギを器用に登り頭に辿り着くと、お猿さん達がコミュニケーションとして使うノミ取りの仕草をした。俺はすかさず、「えっ、じゃあ、あの時々テレビで放送される街中に出現するお猿さんは・・」とテレビで報じられるお猿さんを思い出す。ミケは自身に対してノミ取りしているお猿さんを抱きかかえ下ろして、「そうにゃあ、あれは出戻りのお猿さんがあたい達の様な護送した人たちへの必死のアピールにゃあ」と言う。俺は顎に手を当て、とある疑問が沸きあがり、「もしもの事だけどさ、このお猿さん達が出戻りをして、街中で暴れたら俺たちが回収をするのか?」と確認。ミケは空になったタッパを回収しながら、「残念ながら、そこまでアフターケアはしないにゃあ、普通の人間に捕獲されたら、後はそのお猿さんの運次第にゃあ」と言いトラックの荷台に空のタッパを積み込んだ。

 

 それから休憩を十分とった俺たちは最終地点に向かう。海岸沿いから少し内陸に入り国道の山道に入ると、スタート地点の様に寂れたお地蔵様があって丁度駐車スペースがある場所で停めた。俺たちはトラックを降りて、荷台の扉を開け、改造されていたリビングの様になっている荷台の中で寛いでいるお猿さん達を外に出る事をミケが促す。一応通りすがりの車に目撃をされるのを避けるためトラックの裏に待機させ、ようやく目的地に着いたお猿さん達は緊張した様子で辺りを伺い、俺たちも引き渡すための先方が来るのをまだまだかと道路沿いで待った。数分した所、国道の山道を一台のスクーターが登ってくる。お猿さんたちの姿を見せる訳に行かず、「ミケ!、ヤバい!、人が来た!」とミケに言いお猿さん達に姿を隠す様に促す。しかし、ミケは微動だにせず、「待つにゃあ!、あれは・・・人じゃないにゃあ」と言う。俺はスクーターに乗っている人がこちらへ一直線に向かって来る様を凝視すると袈裟を纏っていてお坊さんだと分かり、「ミケ、あれはお坊さんだよ!」と警告。ミケは俺を見て、「あたいを信じるにゃあ、あのお坊さんの方から吹くつけてくる風に運ばれてくる匂いは人のそれじゃないにゃあ」と真剣な顔。俺はミケのその真剣な面立ちに意を決して、「分かった、信じるよ」と覚悟を決めた。お坊さんが乗ったスクーターは俺たちの前まで来て止まり、ヘルメットを取ると丸坊主でお坊さんそのものでどこらどう見てもお猿さんに見えない。お坊さんは俺たちを見て、「ご苦労様です、若者たちを引き取りに来ました」と言う。その言葉に俺は安堵して、「あ、はい、若いお猿さんはこちらです」と、トラックの裏に待機させたお猿さん達の所に案内。お猿さん達はお坊さんを見てギョッとして固まったが意を決した一匹がお坊さんの匂いを嗅ぐために近づき嗅ぎまわると、人じゃないと確信を、皆にそれを伝える仕草をするとわらわらと集まる。お坊さん周りにお猿さんが余る異様な光景を俺は見入ってしまい言葉を失う。お坊さんはお猿さん達に何やら会話をしている様だが俺には皆目見当つかず、ミケの方は、「がんばるにゃあ、ここが踏ん張りどころにゃあ」と感動している様子でこの場で俺だけが分からず少し疎外感を感じた。お坊さんはようやく護送されてきた若いお猿さん達との会話が終わると、こちらを見て、「申し訳ない、確かに受け取りましたこの子たちの面倒は責任を持って私が見ます、あの・・・この子達の故郷にいた、あ奴はどうしてます?」と遠慮がちに尋ねて来る。俺はミケを見ると、ミケは首を振り、分からない様なので、「あ奴?誰です?」と尋ね返す。お坊さんはてれ臭そうにして、「ああw、申し訳ない、言葉足らずでした、あちらの森の代表のお猿さんの事です」と答えた。俺は即座に引き渡しの現場にいた白髪交じりのお猿さん思い出し、「ああ、あのお猿さんの事ですか!」と言う。ようやく伝わった事を分かりお坊さんは、「どんな風でした?」と神妙な顔立ち。俺は思い出しながら、「えっと、あなたの様に人の姿でななく、お猿さんの姿で言葉も喋りませんし、普通のお猿さんでしたよ」と伝える。お坊さんははぁとため息を付き、「そうですか、あ奴はやはり化け者として生きる事を相変わらず拒否をしているのですね」と複雑な顔をした。俺がその言葉で最初に合ったあのお猿さんが化け者と知り、「えっ!?、あのお猿さん、化け者なんですか?」と驚く。ミケも驚きながらも、「全然気が付かなかったにゃあ!」と言う。お坊さんは遠くの山々を見ながら、「はい、あ奴は正真正銘、私と同じ化け者の化け猿です、しかし、化け者としての生き方に疑問を感じたあ奴はある日を境に化ける事も人の言葉を話す事を辞めました・・・」と遠い目。俺は初めて見る化け物を辞めた化け物の存在に少し自分と同じ匂いを感じ、「なんで辞めたんでしょうか?」と尋ねた。お坊さんは俺はジーと見て、「ほう・・今気が付きましたがあなたは人の子ですね、所長さんも相変わらず好き者ですねw、あ奴が何故、化け者を辞めた理由ですか・・私が聞きたいくらいですよ、化け者は化け者の生き方、普通のお猿さんは普通のお猿さんの生き方、明確な立ち位置があるにも拘らず何故あ奴は中途半端な生き方を選んだか?・・もしかしたら・・あなたならいつか分かるかも知れませんね」と答えた。俺はその真意不明な回答に、「俺が?、何でです?」と困惑。お坊さんは微笑みながらも、「あ奴とあなたは随分と中途半端な所に立っています、ですから、予感と言いますか、何やら縁の様なものが感じられるのですよ」と言った。その言葉に俺の心臓が一瞬大きく跳ね上がる。確かに・・俺は人でありながら化け者たちと交流をして化け者側にいる・・立ち位置がひどく曖昧であの白髪交じりのお猿さんは俺と同じなのかも知れない。俺が少し考え込んでいると、、「志村!、何を考え込んでいるにゃあ、お前は志村にゃあ!、志村の生き方をすればいいにゃあ!」と背中を叩く。俺は驚きながらも、「ははw、何だよw、らしくない事を言うなよw」と笑みを浮かべる。俺とミケが茶化し合っていると、「フフフw、お二人は仲がよろしいのですねw、今回はお疲れ様でした、ではこの若い子達を案内しますので失礼します」と言いくるりとその場で横回転をして「ぼふっ」と音共に煙が出て、煙が風に払われると一匹の白髪交じりの猿さんの姿が現れ、俺たちが護送してきた若いお猿さん達に、「きき!」と何かを言う。すると、若いお猿さん達はお坊さんだった白髪交じりお猿さんの後に続き森に消える。俺は、「お猿さん達をよろしくお願いします!」と森に向かって叫び、彼らに聞こえているか分からないが、とにかく言わざるを得なかった。

 

 「志村!、志村!、何をボーとしてるにゃあ!」とミケの声で俺は我に返る。高級デパートの家電売り場の音が耳に入り、そして、ミケはまじかで俺の顔を覗き込んでいて俺は思わず一歩下がって、「あ、悪いw、ボーとしていたw、所長の家に行こうか!」と言う。ミケは少し怪訝な顔をして、「しっかりするにゃあ!、所長の家でご馳走を食べて暮れの仕事の特別報酬を貰うにゃあ!」と拳を強く握った手を挙げた。そうだ!、お猿さんの護送により特別報酬が入る予定なのだ!。俺は意気揚々とインフォメーションセンターのお姉さんに事情を説明すると、所長の知り合いとわかり、信じられない位に畏まり、即座に何処かに連絡をする。数分後にどう見ても壮年の偉い人の案内でエレーベーターに通されて、俺たちはそのエレベーターに乗り込む。エレベーターが停まりドアが開くと屋上にある豪華屋敷が俺たちを出迎え、これまた豪華な日本庭園を通り、屋敷のドアホンを鳴らす。すると、ドアホンのスピーカーから、「あら、あら、二人共、待っていたわ、ちょっと待ってw」と所長の声がした。数分後に重厚な扉が開き、恐ろしく精工にあつらえた蝶のデザインがされた朱色の着物姿にいつもの様に黒髪を束ねていたが今日はかんざしを刺し、なんと言うか時代劇に出て来る花魁を思わせる姿の所長、それと所長に絡みついて甘えながらこちらを伺う、所長と同じ系統の顔をした、黒髪で三つ編みをし、椿の髪飾りをした瓜二つの女の子が、赤と青をそれぞれ基調とした着物を着て出迎える。この小さい双子は所長の姪に当たり、姉の名前は水無月、妹の名は葉月と言う名で、俺たちのホームグランドである歓楽街の中心にある稲荷神社の子達だ。俺たちは畏まり、「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」と新年の挨拶。所長も頭を下げ、「あら、あら、これはご丁寧にw、あけましておめでとうw、こちらこそよろしくねw」と挨拶を俺たちに返し、「あけましておめでとうです」と所長に続き双子の女の子が頭を下げこちらをジーと見る。俺は彼女たちの視線の意味が分からず首を傾げると、ミケが即座に前に出て、「お嬢さんたち!、あたいからのお年玉にゃあ!」とポチ袋を二人に渡す。双子の彼女たちは顔を赤く染めて、「ありがとうです!、流石ミケお姉さま!」と感謝。姪たちの喜んだ顔を見た所長は、「あら、あら、良かったわねw」と微笑む。俺はようやく彼女たちの視線の意味が分かり、いい年して想定していなかった自分を恥じ、顔から始まり体が火照ってきた。お年玉を渡された双子たちは嬉しそうな顔をし、ミケは彼女たちの頭を撫でながら、「いい年してお年玉の事を想定していなかった奴がいるらしいにゃあw、そいつの顔を拝みたいにゃあw」と勝ち誇った顔しながらチラッと俺を一瞥。俺は恥ずかしさのあまりに顔赤くして、「あの、ちょっと、野暮用で少し出かけてきます」と名誉挽回をするためにそこら辺でポチ袋を入手することにした。しかし、所長はくすっと笑い、「あら、あら、志村君、気にしなくていいのよw、来年こそは期待するわw」と俺を慰め、遠慮する。ミケがすかさず俺の耳元に顔を近づけ、「ポチ袋が余っているにゃあ」とボソッと言う。俺はミケの提案に喜び、「マジで?、じゃあ、悪いけど頂戴?」とねだる。ミケはニヤリと笑い、「この世の中は相場という者がありましてにゃあ、ニーズと供給量の基づき値段が決まりますにゃあw、旦那・・このレア物のポチ袋・・二枚で一万円でどうかにゃあ?w」とゲス顔で商談。俺の全身の血管が勢いよく流れ、頭に血が上り、「はあ?、何だよその法外な値段は?、買う訳ないだろ!」と興奮しながら拒否をする。ミケはヤレヤレとばかりにため息を付き、「じゃあ、諦めるにゃあw」と二枚のポチ袋を持ちヒラヒラと見せびらかせた。俺は歯ぎしりをして悔しがり、背に腹は代えられないので、財布と相談しようとした時、ひょいっとミケが手にしてポチ袋が消え、「にゃにゃ?」とミケは驚く。ポチ袋は所長の手にしていて、「ミケ!、正月早々意地悪しないの!、はい、志村君」と俺にポチ袋を手渡す。何とも情けないやら、俺は恥ずかしながら受け取り、相場が分からなかったが、双子の年齢に見合うと思った三千円をポチ袋にそれぞれ入れ、「ごめんね、二人共、来年はもっとしっかりするから・・」と俺は水無月と葉月に手渡す。双子の少女たちは一瞬、お互いを見て、「ありがとうです!、志村のおじさんドンマイです!」と屈託のない笑顔を見せた。俺は何とが面子を守ることが出来てホッと胸を撫で下ろすと、「じゃあ、私の後について来てねw」と所長が屋敷の中に入る事を促す。俺たちは素直に所長、そして手を繋いでいる双子の後に続き屋敷に入ると驚愕をした。玄関だと思われたその先は竹林が続き、古都にある有名な観光名所の様な石畳の両側に青々とした竹林が真っ直ぐ上に伸びていたのだ。俺は竹林を眺めながら、「あの・・所長、ここは中庭とうい奴ですか?」と尋ねる。所長はくすっと笑い振り向き、「違うわよ普段は玄関ホールよw、お正月だけの特別エディションって所かしらねw」と言う。ミケもこの竹林には驚き、「はえーこいつはたまげたにゃあw」と天井を見上げた。竹林を抜けると業かな観音扉が現れ、所長は躊躇なくそれを両手で開閉し、くるりと振り向き、「ようこそ!、正月の宴に!」と扇を取り出し、広げた。所長の後ろに広がっている景色は上等な松が生え、梅の花が咲き乱れ、何だか春を先取りしたみたいな感じだった。所長に続きその奇怪な部屋に入ると、梅と松が生えているところ以外は高級そうなジュータンが敷かれていて、中央には高級そうなソファに囲まれて大木を贅沢に切った切り株の様なテーブルに遠目でも分かる物凄いご馳走が並ぶ。贅を尽くし極めた感じに俺とミケは戸惑っていると所長は率先してソファに座り、続いて双子たちが両側に座って、「二人共w、座ってw、座ってw」と所長はソファに座る事を促す。俺とミケは適当に座ると所長はピンと背筋を伸ばし小袋を着物の袖から二通の茶封筒を出す。俺はその茶封筒が特別手当だと確信し、ワクワクしながら所長の言葉を待つ。所長は咳ばらいをして、俺とミケはそれに反応して背筋を伸ばす。所長は微笑みながら口を開き、「二人共!、暮れのお猿さんの護送ご苦労様でした!、少し不安だったけど先方からお礼の言葉を聞いて、感激のあまり所長・・涙がちょちょ切れそうだったわw、さて当初説明通りに特別手当を支給を致します!」と言う。遂に現ナマの束を貰えると思うと心臓が高鳴る!。所長は茶封筒を手にして、「志村君、ご苦労様でした!、今年も頑張ってね」と茶封筒を俺に差し出す。俺は両手で受け取り頭を垂れる。ん?・・軽いし・・ピラピラ?。現ナマの束にしては、やけにに軽いので俺はすかさず中身を確認。中身は一枚の紙が入っていて現ナマの束は無かった・・・。俺は恐る恐る紙を取り出すと請求書と書かれた紙でそこには情報工作費と記されていて、特別報酬の全てが引かれていた。俺は余りの出来事に意味が分からず、「えっw、何これw」と妙な笑いが出てしまう。所長は涼しい顔で、「ごめんなさいねw、パーキングエリアでのトラブルの始末費用なのよ、あっ、これでもお友達価格でお安くしたのよw」と言い、直後に双子の少女たちは「因果応報なのです」とハモリながら言う。俺はパーキングエリアで起きた出来事が走馬灯の様に走るとミケを睨み、「これは俺じゃないです!、この駄猫が変ちくりんなものを飲ませたからであって、俺は関係ありません!」と必死に所長を説得。ミケは俺の言葉を聞くと立ち上がり、「異議ありにゃあ!、そもそも、あたいが、ど忘れ薬EXを飲ます事になったのは志村があのおじさんを引き留められなかったからにゃあ!」と俺に対して反論した。所長は、「はい、はい、二人共!、静粛に!」と言う。俺たちは黙り静かにソファに座ると所長は、「良い?、二人共、これは二人の仕事なんだから責任も二人が負うべきと思うの、違う?」と諭すように言った。俺とミケは互いの顔を見合い、何かおかしくね?みたいな顔をしあい、納得が行かなった俺はすかさず挙手をする。所長は俺を見て、「はい、志村君」と発言の許可。俺は生唾を飲み込み、「あ、あの、この仕事を受けたのは所長ですよね?、部下の不始末は上司が取るのがセオリーだと思う・・ですが・・はい」と最後は知り蕾なりながら抗議。所長は少しピクっと眉を動かし、「あら、あら・・言うようになったわね・・つまりこれは上司である私の責任という事かしら?」とまるで何かを確認する様に言う。俺は再び生唾を飲み込み、「は、はい」と返す。ミケは恐怖に歪んだ顔をして、「志村ー!、何てこと言うにゃあ!、これはあたいは関係ないにゃあ」と俺の巻き添えを食わない様に必死に関係ないアピール。所長は下を向き、「フフフフw」と不気味な笑いをしたら、不気味な沈黙をした。両脇にいる双子は呑気にポチ袋の中身を確認し、俺とミケが注目する中、所長はゆっくりと顔を上げ、「冗談よw、ほっw!」と掌を合わせて、「パン」と音を鳴らす。すると、俺が手にしていた茶封筒が膨らみ重くなる。俺は茶封筒の中身を確認をすると現ナマが入っていて困惑し、「えっ・・冗談?」と言うのが精一杯。お調子者のミケは俺の様子を見て、「冗談かにゃあw、あたいはそうだと信じていいたにゃあw、所長!、あたいの報酬をくださいにゃあ!」と掌を所長に差し出す。所長はニッコリと笑い、「あら、あら、ミケは相変わらず、げんきんねw、どうぞw」ともう一つの茶封筒をミケに手渡す。ミケは、「ははー、ありがたき幸せですにゃあ」と畏まった台詞を言い受け取り中身を確認。ミケはビクッと体を一瞬震わせ、「所長・・本当にいいのかにゃあ?」と尋ねた。所長は笑顔で、「今回は頑張ったから特別よw」と言う。俺は気になり、「ミケ、幾ら入ってたんだ?」と尋ねる。ミケは茶封筒の中身を俺に向けて見せた。当初はミケの報酬は、昨年の暮れにやらかした所長の高級スカートを切り裂いた弁償で差し引き三万と言われていたが、茶封筒の中身は俺と同等にある様に見える。俺はミケに、「良かったなw」と肩を叩く。ミケは屈託のない笑顔で、「おうにゃあw、あたいはこれでご馳走を食べるにゃあ!」とはしゃぐ。そして、「さあ!、お正月のおせちをデパートのシェフに作らせたものよ!、今日は大いに食べて飲み明かしましょう!」と所長は宴の始まりを宣言。後顧の憂いが無くなった俺は「胃が壊れるまで飲みますよw」と言い、ミケは「おせちは、あたいの物にゃあw」と全て食べ尽くす事を予告、「レッツ!、パーティなのです!」と双子の少女たちは興奮しながら万歳する様に両手を上げる。新年の始まりは上々に始まった・・この先どうなるか分からないが、辰年の一年を精一杯駆け抜けていこうと決意をした。

 

―おわりー



346曲目の紹介

 

 

 令和六年、一回目の紹介は、作詞作曲及び動画をisonosukeさんによるバカ通信です。

 

 本曲は、ほんのちょっとした出来心、又は余興で誕生してしまった、現在でも語り継がれるネットミームや炎上や事件を題材に、人の性が成せるその現象を強烈に皮肉り、一周回って愛おしく思ってしまう歌を知声さんが歌います。

 

 本曲の題名、バカ通信は、今日まで日夜、通常の生活では考えられない行動、言論などを相手に炎上しバカ騒ぎする集団の集合意識が渦巻く電脳空間を痛烈に皮肉った題名だと思いました。

 


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 本曲のMVは秀逸ですねw、ピクトグラムでネットミームを表現していますが、すぐ、あっ!と感じで分かってしまい脳内でオリジナルの画像が浮かんでしまいますよw。くすっと来てしまいますねw。

 

 本曲、バカ通信は、現在まで誕生した様々なネットミーム、または事件、炎上を本曲を聴くことで振り返れる秀逸な曲で、ああ、あったな・・とネット黎明期からのユーザー程、感じざる得ない大変感慨深い構成になっており、一見の価値があると思いますので是非、本動画を視聴して見て下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

VoiSona様より 知性紹介ページ