煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

感情は人を狂わせるVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 ワグネルの創始者プリゴジン氏が搭乗していたと思われるプライベートジェットの墜落の一報は、ある意味予定調和な様なもので、プーチン氏に反逆した者たちの宿命と言うべき結果でしたね。プリゴジン氏はワグネルを南米やアフリカに派兵して、多くの命を奪う事に関わっていたのでそうなっても仕方がない生き方をしていましたが、あの破天荒な感じは嫌いじゃなかったですね・・。プリゴジン氏がいなくなったワグネルは今後どうなるのでしょうか?、解体?それとも国軍と併合?、もしかしたら報復?、今後の展開は予想も付かない事が起きそうで怖いですね。それでは、318曲目の紹介とちょっとした物語をお送りしたいと思います。

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 人に化けて、人の言葉を操る動物たち、彼らを化け者という。俺、志村は、ひょんな事から化け者たちと関る事になり、同僚である化け者の化け猫に属するミケの修行に、上司のである所長のお願いで半ば強制で付き添いする事になり、猫岳にある化け猫の隠れ里にある化け猫修行館に向かう。化け猫修行館に着くと俺たちは思いがけない人物に会う。それは猫岳の麓にあるお世話になった民宿・峠の女将が乳飲み子から育て可愛がっていたが、半年行方不明になっていたキジ子であった。彼女は偶然に人に化けてしまい、元の猫に戻れなくて途方に暮れていた。そこで俺たちは協力を申し出て、彼女が戻れるように化け者の力の源、化け力(ばけりき)の生産力と保有容量を増やす鍛錬を決行する。キジ子は短期間でたちまちに成長して、化け力の使い方まで学習する。しかし、早く家に帰りたい気持ちが焦りを生んだのか、頑張り過ぎて化け力の枯渇を招き、失神してしまう。指導が行き届かなかった事に反省をしたミケはキジ子に謝罪の意味を込めてご馳走を振舞う事にする。だが、化け猫の里にある食堂を含めたサービスを利用するには、独自通貨にゃんコインが必要。ミケは化け猫修行館が定期的に開催する、にゃんコインが賞金になっている試合に勝つために練習しようと部屋を飛び出す。ところが、ミケはカウボーイハットに銀色の星の形をしたバッチを付けている茶色いベスト、それに皮のパンツにカウボーイブーツを履いて、グレーの下地に黒のストライブの耳と尻尾を携えた、往年の映画スター、ノースブッダに生き写しのジョーと名乗る化け猫に出合い頭にぶつかる。そして、彼の口からミケに宣戦布告のが告げられた。彼は何者なのか?ミケとの関係は?波乱が巻き起ころうとしていた。

 

  「お前・・誰にゃあ?」と三毛柄の耳と尻尾を携え、黒上のツインテールで小豆色の作務衣を着たミケは後ろにバックステップをして臨戦態勢。「Oh!、ミケさんw、警戒しないでクダサイw、ミーは紳士デース、ガチンコで肩を付ける気は毛頭ありまセン」とジョーは浮ついたスマイルで言う。「じゃあ、さっきの宣戦布告の意味はなんにゃあ?」とミケは戦闘態勢を維持しつつ尋ねる。ひりついた空気に俺は額から汗が吹き出し、それを腕で拭い、事態を見守っていると、ジョーはヤレヤレという仕草をし、「ワレの事覚えてませんか?」と逆にミケに尋ねた。「お前の様なカウボーイ野郎の知り合いは、いないにゃあ!」とミケは言い放ち、尻尾が逆立つ。「Oh・・ジーザス・・ガッテム!、6年前にアナタとワレ、ここで一緒に修行をしていました、それでも思い出せませんか?」とジョーは憤慨して言う。「6年前・・あっ!?」とミケは不味いという顔をして、後ろを向く。ミケの様子がおかしくなり俺はすかさず駆け寄るり、「ミケ!、どうした?、やっぱ知り合いか?」とミケに問いただす。「志村・・ヤバいにゃあ・・」とミケは青ざめていた。この様子だと知り合いなのは確定だ。「何だよ・・知り合いで良かったよw、てっきり宿敵か放たれ刺客で戦闘に発展するかと思って、肝が冷えたよw」と俺は危機が去ったので楽観的なテンションで言い、「でっ、どんな知り合い?」とミケに改めて尋ねた。「あ、あいつは・・6年前、あたいがまだ化け者の駆け出しの頃、歓楽街の化け猫組合の習わしで、丁度、一歳になったあたいを含めた6名はこの場所、化け猫修行館に2ヶ月の合宿に行く事になって・・その時のメンバーの一人にゃあ」とミケは語り始める。「じゃあ、ジョーさんって、歓楽街の化け者なのか?」と俺はミケに言う。「あいつは歓楽街の化け者じゃないにゃあ、たまたま、交換留学で来ていて、年が丁度一歳だったから、一緒に行く事になったにゃあ」とミケは俺の問いに返す。そして、「あたい達は、所長が運転するマイクロバスに乗って猫岳に行き、化け猫修行館に着き、修行に励んだにゃあ」とミケは語り終わるが、やはり若干様子がおかしい。「えっ?、それだけ?、ジョーさんは何でミケに怒っているんだ?」と俺はミケの態度に違和感を感じ、更に問い詰める。「そ、それはにゃあ・・、当時のあたいは、天空の星々や太陽と月が、あたいを中心に回っていると思い込んでいる様な、ガリレオもビックリの痛い自己中ガールだったにゃあ・・」とミケは過去の自分を告白。「それで?」と俺は続きを促す。「そんで・・目に映るものは全て、あたいが利用できるものと考えていたにゃあ・・、そんな自己中ガールで軟弱だったあたいは、ここの猫精進料理の不味さには我慢出来なかったにゃあ」とミケは言った。

 

 ミケはチラッとジョーを一瞥し、「志村、お前も知っている通り、この隠れ里のサービスを受けるには、にゃんコインが必要にゃあ、留学生だったジョーは優秀で、あたい達より頭一つ分抜けていて、化け猫修行館主催の試合で優秀な成績をおさめていたにゃあ・・、そんでもって、にゃんコインをそこそこ持っていたあいつが、あたいに好意がある事を分かっていたにゃあ・・そこであたいは・・思わせぶりの態度をして、外の食堂のご馳走を毎日奢らせたにゃあ・・」と昔の罪を暴露。「えっ!?、一ヶ月も?、最後は・・どうなったの?」と俺は恐る恐る結末を聞く。ミケは少し口元をもごもごしながら、まごついた後、「・・合宿が終わって山を下りれば、外では好きなものが自由に食えるにゃあ、その、だから・・用が無くなったから、ポイッにゃあw」とミケは最後に開き直りのスマイル。「ポイッにゃあ、じゃねーよ!!、正直な話、ガリレオの下りの所は心の中で少しくすっときたけどよ、馬の鼻先に人参をぶら下げる様な外道の所業、普通出来ねーよ!」と俺はミケを叱責した。ミケは俺の叱責にムッとした顔を一瞬してから、いやらしい笑みを浮かべ、「かーー、これだから志村はw、女を知らな過ぎるにゃあw、女の基本生存戦略サキュバスにゃあ、女は男の持っているものを奪うべく、色香とフェロモンで惑わし、差し出されたものを、みーんな、チュウチュウ吸っているにゃあ!、常識にゃあw」と、とんでも理論を出す。しかし、俺はこの手の所長とミケがよくやる、嘘で煙を巻く行動に耐性が付いていて、「こらっw、駄猫w、いくら俺が経験が無いからって、そんな戯言に惑わされるか!、世の中の女性が皆が皆、そんな訳ないだろう!」と返す。「ぐっ・・志村、手強くなっているにゃあ・・」といつもなら簡単に言いくるめる事が出来た相手に思わぬ反撃を喰らいミケは動揺。そして、その瞬間、「オホン!、お二人さん、漫才はその辺で止めてクダサーイ」と俺たちの後ろで静観をしていたジョーが言う。俺はジョーの介入により、ハッとなって、「あっ!、すいませんでした!!、うちの駄猫が粗相をしたそうで・・」とミケの頭を掴み無理やり頭を下げさせる。だが、ミケは俺の手を払いのけ、「こんな奴に頭を下げる必要ないにゃあ!」と頭の耳が後ろに折れて、イラついた顔。「おまっ!、どう考えてもお前が悪いだろ?」と俺はミケを更生しようと試みたが、またしてもジョーが割って入り、「HAHAHA、あなた志村さんといいましたか?、あなたの心遣い感謝の極みデース!、しかしデース、これはワレとミケサンの問題デース、お気遣いナサラーズニ」と言い終わると、ベストの胸ポケットから葉巻と長めのマッチを取り出し、葉巻の吸い口を食いちぎり、それを咥え、今度はおもむろにマッチをカウボーイブーツの靴底で擦り火を灯す。灯した火を慎重に葉巻の先に点け、ジョーが葉巻を吸い込む動作をすると、葉巻の先の火の勢いが僅かに増し吸い口の方へ進む。実に絵になる・・往年の映画スター、ノースブッダの演技を間近に見ている気分だ。ジョーは口から煙を吐き出し、ゆっくりとミケに視線を移す。「な、なんにゃあ!、やるかにゃあ!」とミケはジョーに見つめられて反射的に軽いステップをしながら、ボクシングのジャブの仕草をして挑発。ジョーはヤレヤレと言った仕草をして、「ミケサン、ワレは過去の惨めな自分と決着をつけたいデース、明後日の雑巾がけレースでワレと勝負するデース!」と言い、すかさず「望むところにゃあ!、今のあたいは昔のへなちょこじゃないにゃあ!」とミケはジョーの挑戦を受けた。「オキドキ!、では首を洗って待っていてクダサーイ」とジョーはくるりと後ろに振り向き、葉巻の煙を上に吐き出しながら手を振って去った。

 

 「ミケ、勝てるか?」と俺は隣にいるミケに言う。「うるさいにゃあ!、あたいが負ける訳ないにゃあ!、志村!、寝言は、ナイトキャップを被って、布団に入り、羊を100匹数えて言うにゃあ!」とミケはへそを曲げれ俺に言い放ち、何処かへ走って行ってしまった。一人になった俺は、俺たちの部屋、鶴の間で寛いでいた。だだ広い豪華な部屋で数時間こうしているが、手持ち無沙汰で落ち着かない。ミケはあれから帰ってこない、恐らく雑巾がけの行が出来る化け猫修行館の別館で練習をしているのだろう。さて、どうしよう・・俺が出来る事は・・これしかないよな。俺はバスルームにあったタオルを取り出し、化け猫修行館の別館に向かった。本館から伸びる長い廊下を数分歩くと、日本庭園に囲まれた遠目でもわかるほど広い縁側に囲まれた別館が見えてくる。別館に着くと横幅が3メートルほどの広い縁側には数人の化け猫が凄まじいスピードで雑巾がけをしていた。その中に黒髪のツインテールをなびかせて、雑巾がけをしている少女に俺は目が止まり、「おーい!ミケ!お疲れさま!」と声を掛ける。すると、ミケは俺に気が付き、急ブレーキをかけ止まり、「はあ、はあ、志村?、来ないと思ったにゃあ・・」とミケは少し遠慮がちに返す。「何だよそれwどうして俺が来ないと思ったわけ?」と俺は大体、察しているが確認。「だってにゃあ・・あたいの過去の所業を聞いてドン引きしていたにゃあ・・」とミケはちょっと余所余所しい。「お前ねぇw、今更、そんな事でお前を軽蔑しないよw」と俺はミケにタオルを差し出す。「ありがとうにゃあ・・、それ本当かにゃあ?」とミケは受け取ったタオルで汗を拭い、嬉しそうな顔を覗かす。「逆に聞くけどさ、俺にそんな事を聞くって事は、結構自分でも悪い事をしたって思っているんだろ?」と俺はミケの横に座り尋ねた。「そ、そうにゃあ、今思うと、とんでもない事をしでかしたにゃあ・・」とミケは答える。「何だよw、しっかり、反省しているじゃんw、それで十分!、でも、試合には勝てよ!」と俺はミケにエール。「当たり前にゃあ!!、勝負は勝負、別の話しにゃあ!、にゃんコインをゲットしてキジ子に御馳走を振舞うにゃあ!」とミケは顔から暗い影が取り除かれ、本来の明るさを取り戻す。それから、ミケは明後日の雑巾がけレースに向けて様々な想定をしたライン取りを確認をし、終わった頃には空を満天の星空が埋め尽くされていた。「志村、これから蓄積した疲労を回復するために猫サウナ―に行くにゃあ!、お前も付き合うにゃあ」とミケは言い、俺は、「おう!」と返し、後に続く。本館に続く長い廊下を戻り、今度はフロントロビーを通り過ぎ、露天風呂のある場所まで来ると、猫サウナ―の案内看板がありそれに従い歩く。数分後、「ドドド」という水の流れる音が聞こえて来て、猫サウナーと書かれた暖簾が俺たちの前に現れた。それを潜ると、男女別に分かれた脱衣所に俺たちはそれぞれ入る。脱衣所の中には、タオルと作務衣が山積みに積んであり、猫サウナーを堪能した化け猫だろうか?、ビタビタの濡れている作務衣を脱ぎ捨て、山積みにしてあるタオルと作務衣を取り、着替えていた。どうやら、ここのサウナーは、裸にならず、このままの服装で良いらしい。俺は脱衣所を通過して、猫サウナーに繋がる扉に手をかけ開けると、目の前には河原が広がり、人工で作られたであろう滝と川が流れていて、水風呂代わりだろうか?、数名の化け猫が作務衣のままで気持ちよさそうに川に浸かり、更に、奥の方に目をやると、巨大なテントの様なものが見えた。「どうにゃあ?w」とあっけに取られている俺に、誰かが声を掛けてきたので、そちらを向くとミケだった。「屋内に滝と川が流れているなんて、凄いなミケ!」と俺は目の前に広がる光景に驚きの声。「驚くのはまだ早いにゃあw」とミケはニヤリと笑う。ミケの後に続いて歩き、奥のテントの様な建物に向かい近づくと、テントではなく巨大な掛布団で、屋根と思われたものは、長方形の平板だった事に俺は驚く。この掛布団の上に平板を乗せるフォロム・・何か見覚えがある。「ミケ・・これって、炬燵?」と俺はミケに直感で導いた考えを言う。「良く気が付いたにゃあ!、正解にゃあ!、ここの名物、猫サウナーにゃあ!」とミケは得意げに応えた。

 

 「炬燵がサウナー?、本当に?」と俺は若干、懐疑的。「何にゃあ!、信じられないかにゃあ、百聞は一見に如かずにゃあ!」とミケは俺の手を引っ張り巨大は掛布団をかき分け中に入る。内部は意外に広く、20畳ぐらいで、フイルム撮影の現像をする暗室の様に赤い照明が点き、数名の作務衣の化け猫の先客がいて、額には玉のような汗が浮かでいた。「志村、ここは飽くまで化け猫専用にゃあ、辛くなったら、すぐ外に出て人口の川に入るにゃあ」とミケは俺に忠告。「おう、分かった!、でも俺ってサウナーには結構長く入れるぜw」と俺は余裕しゃくしゃくに返した。それから5分位経っただろうか、体感的には普通のサウナーと暑さは変わらなかったが何故か物凄くしんどい。俺は堪らず、「ミケ、俺出るわ・・」とギブアップ宣言。「おう、あたいはまだ行けるにゃあw」とミケの言葉を俺は背中で受け、掛布団をかき分け、人口の川に作務衣のまま入った。うおぉぉ・・気持ちい・・、急激に冷やされて体が整う。他の化け猫たちも目を細めて気持ちよさそうに川に浸かり、何だか連帯感の様なものを感じて、リラックスできる。夜空を眺めて、数分後、俺は猫サウナ―に再挑戦。しかし、化け猫専用は伊達ではなく、我慢しても8分ぐらいが限界で、それ以上は身の危険を感じた。そんな事を数回繰り返し、俺は何度目かの川の中で整っていると、「ふーー、気持ちよかったにゃあw」と俺の隣にざぶんとミケが入ってくる。そして、「ふぃーー、いい感じだにゃあw、整ってくるにゃあw」とミケは至福の顔。化け者の身体能力が人間よりずば抜けている事は理解していたが、同じことをやると余計わかるな・・。「やっぱ化け者は凄いな!」と俺はミケを褒める。すると、「何にゃあ?、急に?、これぐらい、どうってことないにゃあw」とミケは謙遜。「明日も練習するのか?」と俺は明日の予定を今のうちに尋ねる。「明日は何もしないにゃあ、体を休息して試合に備えるにゃあ」とミケは答えた。俺たちはそれから、数時間、猫サウナーを堪能して、食堂のねこ精進料理を食べ、部屋に帰った。

 

 薄暗い室内、ミケの寝言混じりの寝息が聞こえる・・、俺はベットの上で天井を眺め、物思いにふける。明後日の試合はどうなるんだろう・・、もし負けたら?、いや!、試合に出る訳でもない俺が弱気になってどうする!、俺は・・出来る最善を尽くすだけだ!。弱気になり掛けた心を奮い起こし、俺は瞼を閉じて羊を数え始め、37匹目で記憶が途絶えた。そして、試合当日の朝、俺たちは早めに起床し、入念な準備をする。ミケはベッドの上でストレッチをし、俺は万が一、ミケが怪我をした時のために、フロントから借りた応急セットの中身をチェック。すべき事を終えた俺たちは、お互いを見つめ合い無言で頷き会場に向かう。会場の化け猫修行館の別館に着くと、障子と襖が撤去されて、真ん中の座敷でぐるりと囲む縁側を見渡すことが出来る様になっていた。物見遊山で集まった化け猫だらけで、ガヤガヤしていて、スタート地点らしき場所に今日の試合に参加する化け猫が待機している。俺たちは、試合にエントリーするため、早速、受付と思わしき、即席の机と椅子にいた化け猫に近付く。「おう!、エントリーするにゃあ!」とミケは元気よく受付の化け猫に言う。「はい、承知いたしました、お名前をここに書いて下さい」と受付の化け猫がミケに案内。ミケは用紙に自分の名前を書き記し、「あたいのな前覚えておきなw、今回、優勝するのはあたいにゃあ!」とミケは大口を叩く。「あっ、すいません・・ちょっと興奮しているのでw」と俺は怪訝な顔をした受付の化けに子に頭を下げ、そそくさとミケの手を引き、選手が集まっているスタート地点に向かった。スタート地点に着くと、「OH!!、ミケサンw、逃げずに来たのは褒めてやりマース」とジョーがミケにを目ざとく見つけ早速、挑発。「ほざいてろにゃあw、その余裕ぶった顔を悔しさでぐしゃぐしゃにしてやるにゃあ!」とミケは負けじと返す。ジョーは人差し指を伸ばしそれを振りながら「チッチッ」と口で鳴らし、「その意気やよしデース、やる気のないアナタを負かしても意味はありまセーンからw」と余裕をかます。前哨戦が終わり、ミケとジョーはおもむろに試合の準備を始め、ミケは履いていてサンダルを俺に渡し、柔軟体操を開始し、ジョーはカウボーイブーツを脱ぎ、その上にカウボーイハットを置く。脱いだカウボーイハットをよく見ると、猫耳が帽子から飛び出す様にくり抜いてあり、化けた時に被る様に想定してある様だ。「ジョーさん、帽子とブーツは実物なんですね、てっきり変化の一部かと思いましたよ」と思わず俺は対戦相手であるジョーに世間話を振ってしまった。「ハイ、ソ―デース、これはワレの主が使い古して捨てたものをワレが秘密裏に回収して直したものデース」とジョーは宿敵の仲間である俺に気さくに返す。「えっ!?、じゃあこれはノースブッダさんが映画で使用したものですか?」と俺は興奮気味に言う。「残念ながら違いマースw、主がプライベートで使っていたものデース」とジョーは苦笑。俺が更に話を続けようとした時、「お前・・どっちの味方にゃあ」とミケがいきなり俺の顔の鼻先まで近づき言う。ミケの息遣いが感じつつ、「あっ、ごめん・・」と俺は猛省し、「ジョーさん、お互い頑張りましょう」とジョーに別れを告げる。「OKデース」とジョーは軽く返し、試合前の準備に入った。俺たちはジョーと距離をとり、ミケは再び柔軟体操をし始め、「あいつは敵にゃあ!、仲良しこよしはタブーにゃあ」とミケは俺に尚も責める。「だから謝っているでしょ!、迂闊だったよ、ごめん」と俺はミケをなだめ、「今度から気を付けるにゃあ」とミケは一応、腹の虫は収まった様だった。

 

 それから、数分後・・。選手のエントリーがもうないと判断した受付の化け猫は、「はーい、皆さん!、これより当館の主、ギンコから試合のルール説明をいたいますので、聞いてくださーい!!」と大声で叫ぶ。俺たちは指示された通り大人しく待っていると、小豆色の作務衣を着て銀色の耳と尻尾を携え、俺たちが化け猫修行館に初めて来た時に案内をしてくれた女性化け猫が部下の化け猫を引き連れて現れた。「皆様、今日はお日柄も良く、絶好の試合日和ですね、さて、これよりルール説明を致します」とギンコは言い一礼。「今回の試合は雑巾がけレースになります、ここ、別館をぐるっと囲んでいる、おおよそ1キロの縁側を雑巾がけしながら20周回って頂きます」とギンコは部下の化け猫が持ってきた試合コースの見取り図を指さし説明。すると、今度は、部下の化け猫が雑巾を取り出しギンコに渡し、「これが今回、試合で使われる雑巾です、この雑巾には特殊な術がかけてあり、雑巾を縁側の床から離すと赤く染まり、また、手が雑巾から離れても赤く染まります、雑巾が赤く染まった方は失格となります」とギンコは言い、部下の化け猫に雑巾を返す。部下の化け猫は、返された雑巾を持っておもむろに縁側で雑巾がけを始め、わざと雑巾を離すと雑巾はたちどころに鮮やかな朱に染まる。そして、種に染まった雑巾を、試合に出場する選手たちに見える様に広げた。「はい、この様に雑巾が染まった方は問答無用に失格になりますので速やかに縁側から退出してください、それでは、スタートしますのでスタート地点にお並びください」とギンコはルール説明を終えると開催宣言をした。「えっ・・早い者勝ち?、ミケ、スタート順って普通くじとかで決めるんだろ?、不公平じゃないか?」と俺はミケに囁く。「早い者勝ちにゃあけど・・雑巾がけレースではスタート順はあまり意味が無いにゃあ」とミケは俺に囁き返す。「意味が無い?、それはどういう意味?」と俺は意味が分からずミケに尋ねる。「試合を見ればわかるにゃあ、じゃあ行くにゃあ」とミケは俺も疑問に答えず、スター地点に集まっている選手の集団に紛れ、見えなくなった。

 

 選手たちが雑巾を手渡されて、すかさず雑巾がけのポーズをし、体内で化け力(ばけりき)を生産するためグルグルと喉を一斉に鳴らす。その光景はさながらモータスポーツのスタート前にエンジンをふかしている様だ。ギンコは選手たちの準備が整った事を確認すると部下の化け猫が持ってきたドラを叩く仕草をし、「位置について、よーい・・ドン!!」と言い思いっきりドラを叩き、遂に雑巾がけレースの火蓋が切って落とされた。ドラの合図で一斉に選手たちの雑巾がけが始まり、総勢30名以上の化け猫たちが出す振動は、地震の様な低音の「ドドドド」という音を響かす。スタートして数分、集団から誰も飛び出さず、まるで一つの生き物のように動いている。ミケがあまり意味が無いという言葉が分かった。おおよそ20キロという距離は、逃げ切って勝てる距離ではない、試合中の体力配分、選手同士の駆け引きが重要なのだ。俺が壮大な光景を目にして関心していると、「どうです?、化け猫の試合は凄いでしょう」とギンコがいつの間にか隣にいる。「あっ、そうですね!、あの、この膠着状態はいつまで続くんですか?」と俺は少しでも雑巾がけレースを知りたくて、ギンコに尋ねた。「そうですね、恐らく、10週ぐらいは、体力を温存して膠着状態は続き、それから徐々にペースをあげ、残り5周から本番だと思います」とギンコは答える。そうか・・じゃあ暫くこのままの状態が続くのか。「ありがとございます!、素人なので何が何やらでw」と俺はギンコに礼を言う。「まあ、何事も始まりがありますものね、仕方ありませんわw、それでは、お友達のミケ様が勝つ事をお祈りいたしますわ」とギンコは上品でスマートにお辞儀をして去った。レースが始まり、5週目、7週目となり、未だに硬直状態が続き、集団は時計の針のように規律正しく一定のペースを維持ている。ギンコの話しの様に10週目まで膠着状態が続くかと思われた。しかし、茶虎の耳と尻尾を携えた女性化け猫が突如、集団から飛び出す。たちまち集団は乱れ、集団の真ん中辺りにいた選手がバランスを崩しこけて数人を巻き込む。彼らの雑巾は朱色に染まり、敗者の烙印が押されていた。これも駆け引きなのだろう、茶虎の女性化け猫はトップになり、集団を引っ張る形になった。

 

 茶虎の女性化け猫がトップになり数週、状況は変わらず、動きは無い。更に数週して、残り五周になった時、変化が起きる。集団がトップを走っていた茶虎の女性化け猫に徐々に迫っていた。そして、残り四周になった頃には、茶虎の女性化けに子は集団に飲まれ、姿が見えなくなった。残り三周、遂に俺の期待していた事が起きる。ミケが集団から飛び出し、「みゃみゃみゃみゃー!!」と静観している俺の耳にもはっきり聞こえる唸り声を発しながら疾走。続いて、ジョーもあとを追う様に集団から飛び出す。二人が飛び出した影響で、集団もペースを上げて追う。だが、彼らは気付いてなかった、徐々にペースを上げられていて、体力を削られていた事を。懸命に二人を追っていた集団の何人かは足がもつれて転び、数十人を道連れにして失格。選手は数人になり、優勝争いをしているミケとジョーの独壇場になる。ミケとジョーは横に並び、ギンコがラスト一周を報せるドラをけたたましく鳴らす。頭一つ分、ジョーが前を走っていて、このままだとミケは敗北をする。最後の直角カーブに差し掛かった時、ミケが仕掛けた。ミケは更にスピードを上げて、カーブに突入し、強引に曲ろうと試みる。だが、素人目でも無理そう感じ。「ミケーーがんばれ!」と俺は思わず叫ぶ。「うにゃにゃにゃーー!!」とミケは俺の声援に応じる様に叫び、なんと!、ミケのお尻に生えていた尻尾が一本から二本に増え、それと同時にミケが蹴った縁側の床が津波のようにめくれ上がる。そのままの勢いで見事にミケは曲がり切って、ゴールの直線をラストスパートを駆けて更に疾走し、ゴールのテープを切った!。ゴールと同時にミケは力を使い果たしたのかゴロゴロと転がり柱にぶつかる。俺は、すかさず駆け寄り「おい、ミケ!、大丈夫か?」と体をゆすって意識を確かめた。「い、痛いにゃあ・・大丈夫にゃあ、これで、にゃんコインはゲットだにゃあ・・」とミケは力なく笑った。「ミケ様!おめでとうございます!、当館で作られた特性ドリンクです!、どうぞ!」とギンコがいつの間にか駆け寄って来て、ミケにストローがさしてある紙コップを渡す。「あ、ありがとうにゃあw」とミケは手渡された紙コップを受け取りチュウチュウと吸い始める。ミケの顔色は見る見る良くなり、よろよろと立ち上がって、「にゃんコインをくれにゃあ・・」とミケはギンコに優勝商品であるにゃんコインを要求。「あら、すいませんw、勝者ミケ様に、にゃんコインを贈呈致します!!」とギンコは勝者がミケと確定してにゃんコインを贈呈する事を高らかに宣言。すると、観戦していた化け猫と選手が拍手と歓声を上げた。「どうぞ、にゃんコインです」と部下の化け猫から渡された30センチぐらいの長方形の木箱をミケに差し出す。ミケは木箱を早速開ける。中には五百円玉ぐらいの大きさの金色のコインが、赤いビロードのような素材の型に一つづ収まっていて、合計10枚あった。「おお!、やったなミケ!、お前凄いよ!!」と俺はミケの肩を優しく叩く。「今ご気付いたかにゃあ?」とミケは、はにかんだ表情。「レース中に御霊尻尾(みたましっぽ)の覚醒は、雑巾がけレース史上初ですわw」とギンコがミケに向かって言う。「御霊尻尾?、何ですかそれ?」と俺は聞きなれない言葉に食いつき尋ねた。

 

 「御霊尻尾は、化け者が鍛錬により、ある域に達すると、発現する実体ではない尻尾の事でございます」とギンコは答え、続けて、「御霊尻尾が発言すると、化け力が格段に上がり、化け者は強くなります、尻尾の数=強さでございます」と言う。そう言えば、所長の尻尾は数えきれない程あったな・・、つまり所長はかなりの強者という事か・・。「へへ・・、志村、期せずして、目的達成にゃあw」とミケは嬉しそうに言った。「尻尾を増やすのが目的だったのか?」と俺はミケに尋ねる。「そうにゃあ、ここに来たのはこの為にゃあw、これであたいは更なる高みに行けるにゃあw」とドヤ顔。「ミケさーん、おめでとうございます!、コングラチュレーション!」とドヤ顔をしているミケの後ろにジョーが現れる。すかさずミケは、「ジョー、お前はよくやったにゃあ、国にいる家族の元へ帰るにゃあ」と少し芝居がった調子でジョーに言う。「HAHAHA、ミケサン!、相変わらずお茶目ガールデースw、帰りまセーン、我も御霊尻尾を発現させようとオモイマース」とジョーは言い終わると、ウインクして親指を立てる。「まあ、好きにすればいいにゃあ、あたい程じゃないけどお前は才能が有るから近い将来、御霊尻尾が発言すると思うにゃあ」とミケは先輩風をふかす。「OH!、ライバルへのブラスト!、激熱展開ネw、ミテナサーイ、ワレはあっという間に発言させマース」とジョーは感激し、雑巾がけを始める。ミケは青色吐息の状態なのにジョーの底なしの体力にミケと俺は驚愕。ジョーを見送り、辺りを見回すと、ギンコと部下の化け猫はいつの間にかいなくなっていて、観戦していた化け猫たちもまばらになっていた。「じゃあ、部屋に帰るか?」と俺はミケに打診。「賛成にゃあ!、あっ、でも、おんぶしてくれにゃあ」とミケは俺の背中に抱きつく。「おわ!?、急に抱きつくなw、わかったよw、つかまってろよ!」と俺はミケをおんぶし、「おう、にゃあ!」とミケは返し、俺たちは鶴の間へ帰った。

ーつづくー

 

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲、ミックスをshuさん、ギターをYushiさん、ベースをさどやさん、マスタリングをさぶろうさん、イラストをめりさん、動画を藤墅(ふじの)さん達による盲目的インサニティです。

 

 彼が言った愛の言葉、歯の浮くようなセリフ、全てが不愉快で記憶から消したい・・。いっそう狂ってしまった方がましだ。凍てつく寒さが私を包み、一人ぼっちで負け犬の私を容赦なく虐め、都会の冷たいネオンが容赦なく照らし、影がいつもより濃く見えた。

 

 本曲は、相思相愛の間柄の二人が別れた途端、相手の長所があまり良くないように見え、短所は更に悪く感じ、思い出も黒く塗りつぶされて、後悔と孤独が頭を支配し、相手を全否定して自分を保つ、ある種の恋の歌を鏡音リンさんが歌います。

 

 本曲の題名、盲目的インサニティのインサニティは、精神的に異常な状態、若しくは非合理で狂気じみた行為を指す言葉です。愛し合った時期、別れて憎しみ合った時期、恋が関わった前後どちらもお互い普通じゃなく盲目的かつ異常な行動をしていたという意味合いと自分は題名から解釈しましたよ。

 

 

  鏡音リンちゃんの強がりをしている感じが実に良かったです!乙女の感情が歌に乗っていて、聴いていると感情を高ぶる感じがしますね。

 

 本曲、盲目的インサニティは、恋や愛情が絡むと人は冷静にいられないという事を歌でうまく表現された素晴らしい曲だと思いますので、是非、本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

鏡音リン

 

weblio様より

インサニティ