煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

楽しませることに特化したVOCALOID曲

 

 こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 円安はどこまで行くのでしょうか?、34年ぶりの円安水準になり、4月18日時点では155円まで値下がりしてしまいました。円安で恩恵を受けるのはいわゆるインバウンド、海外から来た観光客さん達と国外に商品を売っている企業だけで、輸入に頼り切っている国内の自分達にはあまりメリットはありません。光明があるとすれば、この歴史的な円安と先進国と比べ安い人件費が呼び水となり、工場などの製造業を主とした第2次産業が国内回帰へと促され、就職先に困らない位ですね。しかし、それは新興国に追い抜かれ、今まで途上アジア諸国が甘んじていた組み立て工場のポジションであり、日本が途上国化するという事です。立場が入れ替わり、発注する方からされる方に変わって、新興国の下請け国家になる・・・更に少子高齢による人口減少が進めば、下請けですらなれず亡国になるかも知れない・・・、今回の円安はそうした日本の暗い未来の予兆を感じます。

 

今回のお品書きになります

 

 

 

煮干しのお送りするちょっとした物語

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

 

 プロカメラマンとして踏み出して半年後、私は撮影の日々を過ごしていた。正直な話、前職の収入より下がってしまってはいたが後悔は無い。様々な撮影をこなす毎日は充実していて、天職だと感じる。今日はアマチュア時代から度々仕事を貰いお世話になっている、月間野鳥の編集長、秋葉さんに呼ばれて編集部に向かっているのだ。改札口を通り抜け駅から出ると、古本屋が立ち並ぶ奇妙な通りが現れる。ここは通称古書街、見ての通り古本屋が密集している地区で、都内有数の蔵書数を誇る。漫画や写真集、はたまた貴重な古書、絶版した本、何でも手に入り、本を探すならこの地へ行けと言われるくらいだ。そんな独特な雰囲気を放つ古本通りを歩きながら、感性に触れた光景を目にしては撮影をし、古びた雑居ビルの前に着く。私はカメラをしまい、雑居ビルの狭い階段を登り、月間野鳥編集部と書かれたプレートが貼られた何の飾り気も無いドアを開けた。すると、ドアの向うから流れて来た、煙草の匂いと埃っぽい空気に私は少しせき込む。およそ12畳ほど広さの薄暗い編集部の中は乱雑に山積みにされた資料や原稿が置かれた机が数個あり、お昼頃という事もあってどれも主の姿は無く無人だった。私はデスクチェアの背もたれの裏側の向うから、モクモクと一筋の煙草の煙が立つ一番奥にある机に迷わず向かう。やはり乱雑に置かれた資料や原稿の机に編集長と書かれたプレートの前に私が立つと、デスクチェアが勢いよく回転し、「よく来たな桜井w、他の奴らはお昼を食べに出払っている、打ち合わせが終わったら俺たちも食いに行こうぜ」と中年太りでボサボサの髪の毛に眼鏡をかけた男性が気さくに言う。彼こそが秋葉さんだ、月間野鳥の編集長である。月間野鳥は40年の歴史があり、全国の野鳥ファンのバイブル的な存在で、秋葉さんは三代目の編集長。私はペコリと頭を下げ、「今日はどの様な要件でしょうか?」と懐からメモ帳を取り出す。私の仕草に秋葉さんはニヤリと笑い、「おっw、流石はプロカメラマン、今までとは違うねw」と茶化してきた。私は苦笑いで、「茶化さないでください、仕事の打ち合わせをしましょうよ」と返す。秋葉さんは豪快に笑い、「悪いw、今でも桜井がプロに転向した何て信じられなくてなw」と立ち上がり、机に置いてあった灰皿を手にして、来客用のソファに向かい、私を手招く。私は促されるままに秋葉さんの反対側のソファに座り対面する形になった。秋葉さんは新しい煙草に火を点け、一吸いすると口から輪っかの様な煙を天井に向けて吐き出す。いつもながら立派な紫煙の輪っかを私は見入っていると天井付近で霧散して消えた。秋葉さんは灰皿にタバコを押し付け、、「実はな、再来月号の表紙にミサゴの写真を表紙にしようと思っているんだ」と口火を切る。私はメモ用紙にミサゴと書き顔を上げ、「ミサゴですか?、季節がら子育てをする時期ですので容易ですね・・・やっぱり魚雷持ちの写真ですよね?」と言う。ミサゴ、それは国内の海岸や沼、川、湖の近くでしばしば見られる猛禽類の野鳥。上空でホバリングして、水中の魚を見定めると、突撃して狩りをする。そして、狩りが成功して上空に羽ばたくと、丁度飛び立つ進行方向に頭を向けた形で魚を器用に持つ。その姿はまるで旧大戦で使われたセスナ機が魚雷を持っている姿に酷似している事から、魚雷持ちと言われるようになった。秋葉さんは頷き、「そうだ、魚雷持ちの写真で丁度水面から飛び立つ写真が欲しい・・・こんな感じだ」と一枚の写真を出す。その写真はミサゴが大物の鯉を捕らえて水面から飛び立つ見事な写真だった。私はキョトンした表情で、「あるじゃないですか・・・」と言う。秋葉さんは煙草を灰皿でもみ消し、「この写真はうちの編集者が保険で撮った写真で予定の写真ではないんだ・・・」と不満顔。私は首を傾げ、「じゃあ、どの様なミサゴの写真ですか?」と尋ねた。秋葉さんは自身が手にしていた写真を見ながら、「実はアルビノ個体のミサゴが目撃されていてね、そのミサゴは普通より一回り大きく、狩り姿は神々しく美しい姿らしいんだ・・・、捕らえられた鯉は余りの出来事でウオッって感じの表情らしい」と説明する。私は素早く万年筆を走らせながら、「アルビノ個体、一回り大きい、狩られた鯉はウォッって感じ」とブツブツ復唱。その時、私の正面から、「あれっ?、ウォッて感じだよ」と秋葉さんが再び同じ事を言う声がした。私はハッとして顔を上げ、「ギョギョって感じですよねw」と咄嗟に返す。秋葉さんは微笑みながら、「そう、ウォッって感じだよw」と呼応する。危なかった・・・、秋葉さんの渾身のダジャレを受け止めずエラーすると、しつこくダジャレを繰り返すからな・・・。「野鳥撮影は時の運、必ずじゃなくて良いんだ、最悪この写真を表紙にするからさ、他の仕事がてら撮りに行ってくれれば良いから・・・頼む!」と秋葉さんは頭を下げて手を合わせる。今の話しから察するに、経費は出せない、写真報酬のみ、そんな感じだ・・・だが、彼には散々お世話になっている。私はニコリと笑い、「分かりました、他ならぬ秋葉さんの頼みですから、お引き受けしましょう!」と秋葉さんの依頼を受けた。秋葉さんは会心の笑顔で、「そうか!、ありがとう!、お昼まだ食べてないよな?、美味しいカレー屋さんがあるんだ、奢ってやるからそこに行こう!」と私を誘う。私はその誘いに快諾し、古書街の一角にあるカレー専門店で食事をしつつ、秋葉さんから件のミサゴの詳しい目撃場所を時間などを聞いた。

 

 微風が吹き、日が登る時刻、小高い山の上に鎮座している神社の境内で、ご神体が祭られる本殿に続く歴史を感じる凸凹の石畳の上で三脚を構え、その時を私は待っている。樹齢何百年かは分からない、大楠の木が揺れて、「サラサラ」と葉と葉が擦れる音を聞きつつ数分経つと、レンズが向いている、鳥居の向う側にある春菜山の頂上から光がこぼれ後光が射す。私はすかさずレリーズ(カメラを遠隔でシャッターする装置)のボタン押すとカメラから、「カシャシャシャ」と音が鳴る。カメラの背面にある小型液晶に最後の撮影結果が表示されると、数秒後に自動的にオフ状態になり、画面は黒くなった。私は秋葉さんに頼まれたミサゴの撮影に掛かる経費が赤字にならない様に、撮影場所周辺で案件を複数受けて、この撮影で全ての案件は完了する。「よしっ」と私が呟き、三脚を畳み、カメラを収納しようとした矢先に、「ご苦労様です、撮影は終ったのですか?」と声がした。人の気配がしない薄暗い境内での突然の声に体をビクッと震わせ、「えっ!?、あっ?」と動揺する声を私は上げる。声のする方へ振り向くと、老人が立っていて、ペコリと頭をさげた。私も反射手にお辞儀をし顔を伺うと、謎の老人が昨日の昼間に打ち合わせをした神社の総代さんだと分かり、「あっ、これはどうも、おはようございます」と挨拶。私の挨拶に神社の総代さんは、「おはようございます」とオウム返し、続けざまに「写真はどうなりましたか?」と尋ねて来た。私はリュクの中にあるタブレットを出し、カメラに接続して先程撮影した写真を表示する。タブレットに表示された写真は、鳥居を額縁構図に利用し、美しい藍色の空に後光が射す春菜山を日の丸構図にした自信作。タブレットの明かりでぼんやりと照らされた神社の総代さんの顔は感動していて、私は安堵した。「これは・・・素晴らしい、知り合いの伝手であなたに依頼して良かった、この写真を元旦祭の広告に使わせてもらいます」と神社の総代さんは言う。私は自身の写真が評価されて、嬉しさのあまり顔が綻びながら、「ありがとうございます!、ではこの写真データを新聞社にお持ちしまして、細かい調整後、そちらとの最終確認を終えたら、紙面に載ると思いますのでよろしくお願いします」と伝える。すると、神社の総代さんは、「はい、よろしくお願いします」と私に返した。私はカメラのレンズキャップを閉めて、リュックに収納し背負い、三脚が入っているケースを肩にかける。最後の挨拶をしようと私は神社の総代さんの方を向くと彼はジーと本殿を眺めていて、その背中は哀愁が漂う。私は気になり、「あの・・・どうかなされました?」と尋ねた。神社の総代さんはゆっくりと振り向き、「いや、私の子供の頃、信じられないでしょうが、この神社は活気があって、元旦祭となれば人の行列が出来ていました・・・、しかし、今や氏子さんも一人また一人と辞めて、見ての通り寂れた神社になってしまいましたわ・・・」と寂しい目で言う。ローカル信仰の宿命と言ってしまえば簡単だが、最近は過疎化でこう言った神社が増えている。この国の文化、根源的な考え方を司るものが消滅していくのは物悲しい・・・。この現場の仕事が私との元へ来たのは、せめて元旦祭だけでも、以前の栄華を復活したいという氏子さん達の切なる願いを新聞社に打診した所から始まる。しかし、地方の寂れた神社の広告を受けるほど今の新聞社には暇は無い。そこで系列の地方紙ならと、新聞社は提案し、氏子さん達はそれを了承。だが、そこで問題が発生する。地方紙には専属カメラマンと言う上等な人員は存在せず、大抵は記者が兼務しているのだが、運が悪い事に記者たちは国政選挙の取材に取られて、人を回せない状態にってしまった。そこで、総代さんの息子であり窓口になっていた新聞社のデスクが苦慮の末、たまたま居合わせた私に白羽の矢を立てる。私にとってもミサゴ撮影の経費を浮かせると渡りに船だったので、即答で快諾したのだ。私は言葉を選びながら、「広告が新聞に載ったら、きっと来ますよ!、こんな素晴らし景色が拝める場所なんですから!」と鼓舞した。神社の総代さんはニコリと笑い、「そうですか?、そうなって欲しいですね」と言った。私は神社の総代さんと別れ、石階段を降りた所に駐車したレンタルサイクルで、ここ一週間を拠点にしている湖沿いの釣り宿を目指す。釣り宿とは、釣りを趣味とした客を専門にした民宿のような施設で、別に釣りをしないと泊まれないという事は無い。これから向かう釣り宿は、大きい広間で他の釣り客と雑魚寝するプライベートもあったもんじゃない環境だが、値段の安さが何よりも魅力的で、この周辺の仕事を受ける時は定宿にしているのだ。薄暗い田舎道を自転車で風を切ながらひた走り、湖をグルリと囲んでいるサイクリング道路に到達したら、「ゲコゲコ」と暗くてまるで見えない水辺の葦からウシガエルの大合唱が聞こえ、時折、どこからかともかく正体不明の野鳥の雄たけびが聞こえる。そんな道をひたすら自転車で走り、ようやく、一台の船が停まっている桟橋のほとりにある釣り宿が見えた。釣り宿に着くと私は定位置に自転車を駐車し、入り口がある桟橋側に向かうと、女将さんとご主人が入れ替わり船に荷を運んでいた。私の存在に気が付いた女将さんは、「あら!、お帰りなさい、お写真は撮れましたか?」と私に気さくに声を掛けて来る。私は頷き、「ばっちり撮れましたよw、もう釣りに行くんですか?」と返す。女将さんは、「そうなのよw、釣りの朝は早いからね」と笑顔。釣り宿は宿泊だけでなく、船に客を乗せ穴場へ案内するサービスを大抵している。実はこの船に以前乗った事があった・・・。湖の中央に集まる枯れた葦の塊に止まり木をしている野鳥の撮影をするために乗船した訳だが、釣り客に交じっての撮影は非常に居心地が悪く、金輪際乗らないと誓った。私は会釈をしながら、「じゃあ、お先に休ませてもらいます」と言う。女将さんは手を振り、「ごゆっくり、朝ご飯のおにぎりは用意してありますから、ご自由にどうぞ!」と返す。私は頷き、「了解しました!」と宿の中に入った。貴重品をロッカーに入れ、釣り宿の客が寝泊まりする大部屋の前に着くと、私はゆっくりと静かに襖を開けて、忍び足で入室。すると、以前は宴会部屋として使われていたのであろう20畳間の広い和室の中では、私より三日遅れて宿泊してきた釣り客がカラフルなベスト身に着けて、いそいそと釣り道具をバックに入れていた。私は、「おはようございます、お早いんですね」と挨拶をする。二人の釣り客が作業を止めて、「ああ、おはようございます、」と当時に挨拶を返し、その内の一人が、「撮れました?w」と写真を撮る仕草。私は笑顔で、「はい、お陰様で撮れましたよ」と答えた。残りの一人は作業を終えると、こちらを向き、「じゃあ、今度はうちらの番ですなw、釣果を期待して待っててくださいよw」と意気揚々と言う。二人は足早に宿の前に停めてある船に向かい、一人残された私は、風呂に入り、朝食のおにぎりとたらふく食べて床に就いた。

 

 秋葉さんから聞いた情報を元に、例のミサゴの狩場を探す。経験則から恐らくだろうと思われる狩場から、南南西の土手の上に位置取りをして、しばらく様子を伺う。すると、数羽の通常のミサゴが忙しなく狩りとしている。確信を得た私は本格的にこの場所で対するために、あらかじめ用意していたキャンプ用の折り畳みチェアを設置して、三脚を立て、巨大な望遠鏡を思わせるレンズをカメラに装着した。この巨大なレンズはクーロン社製、100-800・ストライカー。純正でこの同性能のレンズを買い求めると、軽く100万は超えるが、クーロン社は徹底的なコストカットをして、30万という低価格を実現をした。性能面は少しばかり純正には及ばないが、中望遠域から超望遠域をカバー出来るこの優れものズームレンズはマニアからの評価が高い。低価格と言っても、30万レンズは高い事には変わりなく、私は慎重にカメラに装着して、雲台(カメラと三脚を繋ぐ機器)をカメラでなくレンズの下部に付いている専用の装着できる箇所に付ける。このレベルの望遠レンズはカメラより遥かに重く、うっかりカメラを三脚に固定すると、レンズの重みで転倒、若しくはカメラとレンズの接合部分が折れ曲がるか、最悪ポッキリと折れてしまう。カメラを首にかける時も同様にカメラ本体ではなくレンズにストラップを装着するのだ。私はレンズを三脚に固定し、いつでもターゲットが現れても良い様にスタンバイした。本格的な野鳥の撮影は、草や木々に偽装したシートや藁で身を隠して息を殺して待機する。しかし、今回のミサゴを始めとした湖畔にいる野鳥は水と言う距離を保てるアドバンテージにより人の姿を見ても、殆ど警戒しないので、姿を隠す必要はない。私は撮影準備も終わり、ゆったり景色を眺めながら、アルビノ個体のミサゴを待つことにした。アルビノ個体を待ち続けて3日後、今日も同じ場所に陣取って待機を私はしていた。予想では2日ばかりで撮れると踏んでいたが、狩場に来るのは通常のミサゴばかりで、一向に目的のミサゴは現れない。もしかしたら、例のミサゴはとっくに死んでいるのでは?と私の脳裏によぎる。アルビノ個体は白い体によって、天敵から狙われやすい。大抵は成体になる前に死んでしまう事が大半で、今回の様な成体のアルビノ個体は珍しいのだ。成体になっても、狙われやすい事には変わりはなく、最悪の事態を考えなけばいけないかもしれない。太陽が西の方へ傾き、ほんのりと青空をオレンジ色に染め上がり、今日もダメかと私は落胆した時、「ガサリ」と草木が揺れる音がした。音がする土手の下の方へ視線を向けると、草花がガサガサと揺れながら、こちらへ何者かが近づいて来るのが分かる。イノシシ?、里山にも近いこの場所では珍しくもない。私は三脚持ち、万が一に備えて逃げる準備をした。何者かが「ガサガサ」と草花を揺らし目の前で接近。私は目を凝らしもうすぐ現れる正体不明の何かが現れるのを待つ。そして、ガサリと白い前足が出て、「うにゃ!」とキジシロ柄の猫が現れた。私は、「何だよw、猫かw、驚かせるなよw」と言い、安堵しながら椅子に座る。キジシロの猫は、三脚の足の全てに自身の体をこすり付けると香箱座りした。邪魔にはならないだろうが・・・どうする?。私は少しばかり思案をし、強引に退かせば、引っ掻いてくる危険があると判断し、無視を決め込むことにした。太陽が更に傾き、辺りがまた一段と暗くなったので、カメラの感度を上げてシャッタースピードを確認。テスト撮影のよるシャッター音に、足元で大人しくしていたキジシロは突如反応し、私の足をよじ登り膝の上に上がる。困惑している私を他所に、キジシロ猫はカメラを興味深く観察して、振り返り、「うにゃあw」と私に一鳴き。私は突然のキジシロの行動により、少し体をこわばらせながら観察すると、首に赤い首輪が付いているのを発見した。この猫は恐らく、ここから見えるぽつりぽつりと建っている農家さんの家猫に違いない、なら、大丈夫だろう。私はゆっくりとキジシロの体を触る。キジシロは目を細めてゴロゴロと喉を鳴らし、気持ちよさそうな仕草をした。以前に野良猫を触って酷い目に合った事がある・・・、猫疥癬(ねこかいせん)を知っているだろうか?、ヒゼンダニが引き起こす皮膚病なのだが、人畜共通で人にもまれに感染する。今回の様に撮影のためにフィールドに出た時、野良猫に何気なく触った。何か粉っぽい感じで、少しおかしいなと思ったがその時は気にしなかった。だが、その日の夜・・・腕や腹が物凄く痒くなり、堪らず皮膚科に駆け込んだら、猫疥癬と診断された。それ以来、外にいる猫には注意してる。幸いこのキジシロ猫には異常はなく、家猫ならではのケアはされている様だ。突如現れた相棒と共に、ターゲットである例のミサゴを私は待った。キジシロの肉球から少し湿った感じつつ、空を眺める。強すぎず弱すぎない絶妙な爽やかな風、ゆったりと流れる雲と時間、これが仕事でなかったら結構いい時間を過ごしてる気がした。30分位経っただろうか?、太陽もかなり傾き、湖面が金色に輝き始める。相変わらず、待ち人は現れず、今日も空振りかと私が思うと、膝の上にいるキジシロが突然、顔を私の膝にうずめた。「何だ?」と思わず私は呟く。数分後には私の後ろのサイクリング道路を誰かが歩いていて、その気配が止まり視線を感じ、ゆっくりと振り向く。そこにはウォーキング姿の高齢の婦人がいて、私は無言で会釈。夫人も軽く私に会釈を返し、「キジ?、あんたキジよね?」と言う。このキジシロの飼い主さん?。私はすかさずキジシロの猫の背中をちょんちょんと突き、「おい、呼んでいるぞ?」と声を掛ける。しかし、キジシロは反応しない。婦人の顔が少しムッとして、「まあ!、あんた、首輪でバレてるんだからね?、憎たらしい!、明日のおやつは無し!」とスタスタと歩き出す。その瞬間、キジシロの猫は起き上がり、夫人の進行方向で寝転がり、腹を見せて媚び始めた。婦人は構わず跨いで進み、キジシロの猫は起き上がり小走りで先回りして、再び寝ころび腹を見せる。そんな事を数度繰り返し一人と一匹が米粒位の大きさになった時、私は咄嗟に野鳥観察用のスポッターレンズを使い覗くと、婦人はニヤケながらキジシロを抱きかかえ、ワシャワシャと撫でまわしていた。猫と飼い主の関係は恋人同士に近いと聞いた事がある・・・、どうやら間違いない様だ。良かったなキジ・・・、と私は許しを得た猫に感想を送ると、再び孤独な待機を始めた。空は青よりオレンジ色が多くなり、逢魔が時が近づく。今日はこれ位で撤収をしようかと思案した時、私の足元にドサッと、先程のキジシロが寝ころびため息を付いた。「何なんだよ・・・お前」と私は毒づいたが、内心少し嬉しかった。カメラの高速撮影に支障を来すまであと僅か、数分後には高速撮影は出来なくなるだろう・・・。夕陽よ、もう少し待っててくれと私は願った。だが、暗さは無常にも進み、あっ、これは無理だなと感じて、三脚に手を振ると、キジシロの猫が空を見上げ、「けっけっけっけっ」と奇妙な鳴き声。その鳴き声に驚きつつ、私はキジシロの視線の先を見る。そこには白い野鳥が円を描く様に飛んでいた。私はズームリングをめい一杯回し、その野鳥を確認する。ほぼ白一色、白い体にくちばしが何故か朱色に染まっていて、その姿はまるで白無垢姿で朱色の紅をさしている花嫁を思わせる容姿に神々しさえも感じるその野鳥の姿形は、間違いなくミサゴで、秋葉さんの情報通り一回り大きく、一瞬ダイサギかと持ってしまう程だ。「間違いない・・・奴だ!」と私は呟きシャッターボタンを押す。とりあえず姿は抑えた・・・後は依頼通り魚雷掴みをしている姿だ・・・。私はアルビノミサゴを懸命にカメラで追い、その時を待つ。同じ場所を数周回ったアルビノミサゴは突如、ホバリング(空中で停止)を開始。それは獲物を見定めた仕草で、ミサゴの視線の先にある水面にカメラを向けた。片方の目をファインダー覗き、もう片方はミサゴを見る。これにより、ターゲットの挙動を見つつタイミングを計れるのだ。アルビノミサゴがホバリングを止め滑空を開始。私はアルビノミサゴが水面向かってダイブした瞬間を逃さずシャッターボタンを押す。これから、間髪入れず浮上を開始るはずだ・・・、この瞬間こそ、秋葉さんが求めていた風景・・・。水飛沫を豪快にまき散らし羽ばたくアルビノミサゴの足には、大きい鯉がしっかりと握られていて、まるで大戦中のセスナ機が魚雷を持っいる様な姿を晒す。私は興奮しながらシャッターボタンを押し続け、連続シャッター限界までボタンを離さなかった。多分撮れた・・・はず・・・。私はカメラとタブレットを繋ぎ、祈りような気持ちで待つ。数秒後に表示されたその写真を、また次の一枚と指で触れてフリックし次の写真を確認する。撮影された写真はピントが合ってないものばかりで落胆をし、明日に再チャレンジかと半ばあきらめつつ最後の写真をチェック。最後の写真を見た私の指は震え、「やった・・・」と呟く。目の前に表示された写真は、金色に輝く水しぶきを纏った神々しいアルビノミサゴが、まるで神の使いである巫女が湖面から貢物を届けようとしている様相を呈していた。驚愕の出来に自身で撮ったにもかかわらず、見入ってしまう。野鳥撮影は運の要素が強い・・・、撮影対象を理解するために度重ねる撮影はほんの少し成功率を上げるに過ぎない。神社の仕事を受けたのが功を奏したのか?、いづれにしても良かった、秋葉さんに吉報を届けれそうだ。私はタブレットに表示された写真をニヤケながら眺め、余韻に日ってていると、キジシロの猫が私の体をよじ登り、タブレットを覗く。数秒程タブレットを覗き、私の顔をみて、「うにゃにゃ!」と鳴く。それは、やったじゃねぇか!と私を誉めている感じだった。本当に何なんだ・・・お前は・・・。私はキジシロの猫を抱きかかえ優しく下ろす。キジシロは振り返らず飼い主である婦人が立ち去った方へ、尻尾を天高く上げながらトテトテを歩き、その先には夕日が沈む最中だった。思わず私はカメラを構え、ほんの少しサイクリング道路から横にズレて、斜線構図で沈みゆく太陽をバックに、相棒であるキジシロの猫を撮った。

 

 都内に帰り、古書街に再び来た私は意気揚々と編集部に向かう。月間野鳥の編集部がある雑居ビルの階段を登り、編集部があるドアを開けると、今日は編集者さん達が忙しく仕事をしていて、私は軽く挨拶をしつつ編集長デスクに向かう。秋葉さんはどこかへ電話をしていて、私の姿を見ると、ちょっと待っててと言う感じのジェスチャーをする。私は写真のデータが入ったSDカードをカバンから取り出し待機。電話が終わり、秋葉さんが受話器を置くと、「待ってたよw、早速見せてくれ!」と手を差し出す。私は促されるままに、秋葉さんの手にSDカード置く。秋葉さんは机にあるパソコンにSDカードを刺し、チャックを開始。すると、間髪入れず「うおっ!!、何じゃこりゃあ!?」と驚く。その驚愕した声は編集部内に轟き、編集者さん達も何事かと集まってきた。「編集長!どうしたんです?」と一人の編集者さんが秋葉さんの横に行きパソコンの画面を見る。すかさず、「すごっ!!」と驚愕の声を出す。我も我もと編集者さん達が見ようと詰め掛け、驚きの声を皆挙げて、最後は私を見た。秋葉さんは編集者さん達に囲まれながら、こちらを見て、「桜井君・・・、期待以上の働きだったよ、再来月号の表紙はこの写真にする、依存は無いな?」と最後は部下の編集者たちに確認をする。編集者さん達は一斉に「無いです!」返す。部下の了承を得た秋葉さんは、「今日はこれで仕事を切り上げるぞ!、飲みに行こう!」とまだ日が落ちてない3時頃に関わらず飲み会を提案。編集者さん達は、「マジっすか?、奢りですよね?」と口々に秋葉さんに確認をする。秋葉さんはニヤリと笑い、「そんな訳あるかw、割り勘だ!、割り勘!、桜井以外はなw」と言う。その瞬間、編集者さん達は、「えっ・・・、割り勘ですか?、じゃあ定時まで働きますので良いです」と自身の机に帰ろうとした。秋葉さんはヤレヤレと仕草をした後、「居酒屋で編集会議をする、これは業務だから拒否は認めない」と部下に命令。編集者さん達は。「ええ・・・、マジかよ・・・、パワハラ案件だよね?」とブーブーと文句を言う。ぬか喜びをした編集者さん達と私は秋葉さんに続き、編集会議と称した飲み会会場に向かった。数ヶ月後、数件の仕事を終わらせ、自宅に帰ると、郵便物がポストにねじ込んであり、それらを取り、自室で開けると、地方紙と雑誌が出て来る。それは数か月前に私がやった仕事の成果であった。この仕事は形になるので、やはり達成感を感じる。まずは、地方紙をペラペラとめくり、広告欄を見た。鳥居の中央に後光を挿す春菜山が美しく映えて、その下部には元旦祭と書かれている。その出来栄えに私はニヤリと思わず頬が緩む。次は雑誌を手にする。月間野鳥と書かれ、私が撮ったアルビノミサゴの魚雷持ちの写真が表紙を飾っていてた。雑誌の表紙を手で優しくなぞり、あの苦労が報われたと感じた。オフィス棚にそれらを大事にしまい、防湿庫にしまっていたカメラを出して、私はソファに腰を下ろす。カメラを構えて、自身の部屋を何気なく撮り、「次は撮影は何だ?、何でも来い!」とチャレンジャーとして気概を口にし、シャッターボタンを押す。

 

ーおわりー

 

358曲目の紹介

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲、動画をゆかてふさん、お一人で制作された、新幹線でひたすら席蹴られるリンちゃんです。

 

 本曲は新幹線で遭遇した愉快な仲間たちとのセッションを鏡音リンさんが歌います。

 

 本曲の題名、新幹線でひたすら席蹴られるリンちゃんは、曲中の出来事の切っ掛けを視聴者に伝える題名ですw

 


www.youtube.com

 

 曲中の出来事が現実で起きたら間違いなく炎上してしまいますよねw。動画の演出がコミカルで不快にならい感じは素晴らしいの一言。視聴していると思わずリズムを取りたくなりますw

 

 本曲、新幹線でひたすら席蹴られるリンちゃんは、エンターテイメント性が強く、視聴者を楽しませようとする制作側の心意気が、見るものの心を見事に明るくさせる事に成功している作品です。最近、何だか心がアンニュイな感じだと思うそこのアナタ!、是非、本動画を視聴して見て下さい!、何だか軽い気持ちになれるはずです。

 

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

鏡音リン