煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

科学的なアプローチで恋を歌うVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 皆さん、バーラトって何か分かりますか?、バーラトはもしかしたらインドの新しい国名になるかもしれない言葉です。バーラトとは、ヒンディー語でインド人が母国を示す言葉なんです。そもそも、インドと言う国名は、ペルシャ人がインダス川の古い名前、シンド(大河の意)をヒンズーと呼び、それが地域を指す言葉になり、それをポルトガル人がポルトガル読みにするとインドになって、現在に至ります。インドという国名はインドの方々が名乗った国名じゃないんですね。日本に例えると、ジャパンという正式な国際名を、日本人だけが自分たちの国を二ッポンと呼ぶような感じですねw。現在のインドの首相、モディ氏はヒンズー至上主義を掲げていまして、もしかしたら、変更をする可能性があるんじゃないかと憶測が流れている様です。日本もニッポンですから、ジャパンという勝手に名付けられた国名を払拭できる日が来るといいですね。それでは、320曲目の紹介と、ちょっとした物語をお送りしたいと思います。

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 

 人の言葉を操り、人に化ける者たち、化け者。俺はそんな異形の者たちと偶然関わる事になり、彼らと生きる事になった。勤め先の同僚であり、化け者の化け猫に属しているミケの修行の付き添いで、半強制で猫岳にある、化け猫の隠れ里に行く事になる。そこで待っていたのは、様々な出会いと出来事が息つく暇がない程の連続であった。猫岳の麓になる民宿・峠の飼い猫キジ子、ミケの旧知の間柄であるジョー、ミケの修行の目的である御霊尻尾(みたましっぽ)発現、雑巾がけレース、更に優勝賞金のにゃんコイン、里の宴でのドンチャン騒ぎ。矢継ぎ早に起きる出来事に多少の疲労感を感じるがそれ以上に楽しい。次は何が起きるのだろうか?。

 

 カウボーイハットに、銀色の星型バッチを付けた茶色のベスト、革のパンツにカウボーイブーツを履いた、切れ目で男前な往年の映画スター、ノースブッダに瓜二つで、灰色を下地に黒のストライブ模様の耳と尻尾を携えたジョーと二人で夜の里を歩いていた。俺たちは、里の宴でのドンチャン騒ぎが終わり、解散後、飲み直す事になり、ジョーの馴染みのBARに向かっている。もう、23時を回る頃だが里は笑い声や奇声などが絶える気配がない。肩を組んでおぼつかない足をふらつかせる者たち、道端で楽しくお喋りをしている女性化け猫たち、皆が皆、伸び伸びして、あるがままの姿で謳歌していた。「志村サン、どうなされまシタ?」とジョーは俺に尋ねる。「いや、皆、伸び伸び楽しそうだなって、思いまして」と俺はジョーに返す。「ここは、化け猫のパラダイスデース、他の種族の化け者の目がありませんから、開放的になるんデース、最近は修行より余暇を過ごす趣の傾向がある様デスヨ」とジョーはドヤ顔で説明。「そうなんだ・・あれっ?、この遊び歩いている化け猫たちは皆、試合で勝ってにゃんコインを所持しているんですか?」と俺は不意に出た疑問をジョーに尋ねた。「HAHAHA、そんな訳ありまセーンw、化け猫修行館主催の試合では優勝者しか、にゃんコインを貰えまセーン」とジョーは言う。「じゃあ、この人たちはどうやって、にゃんコインを手に入れているんです?」と俺は再び尋ねた。「恐らくデスガ、外から何かを持ち込んで、質屋で換金しているんデース」とジョーは答えた。「えっ!?、この隠れ里に質屋なんてあるんですか?」と俺は驚愕。「アリマース、あれを御覧なサーイ」とジョーは指差し、俺はその方向に視線を向けると、にゃんこ質屋と掲げているいる店に行列が出来ていている。俺たちは、にゃんこ質屋に近づき店を覗くと、化け猫が何やらリュックから取り出し、それを店員は真剣な目で観察。その光景を俺は目を凝らしてよーく見ると、「えっ!?、猫缶?」と俺は目を疑う。「その通りデース、隠れ里の住人はあまり手に入らない猫缶に飢えてますから、にゃんコインと交換が成り立つんでーす」とジョーは言った。「キジ子ちゃんが医務室で猫缶を出されてましたけど、それじゃダメなんですか?」と俺は数日前に起こった、キジ子が化け者の力の源、化け力(ばけりき)の枯渇で失神した出来事を話す。「それは、飽くまで医療用なので、健康の時に食べると凄く不味いデース」とジョーは返し、「志村サン、BARにGOデース!」と目的地に向かう事を促す。「そうですね」と俺は快諾して、歩みを再開した。

 

 数分歩くと、飲み屋街の様な路地に入り、突き当たりの月光だまりという看板を掲げた店の前に着く。ジョーは躊躇なくその店のドアを開けて進んだ。俺もキョロキョロしながら後に続き店内に入ると、カウンター席のみで薄暗い店内にジャズが流れていた。ジョーが真ん中の席に座り、俺も隣に座りカウンター越しのバーテンダーを見たら、猫とは違うフォルムの尻尾と耳を携えている、なんと、タヌキの化け者だった。「いらっしゃいませ、BAR月光だまりへようこそ」と化けタヌキのバーテンダーが俺たちに挨拶し、水が入ったグラスを差し出す。「ここはワレのオゴリデース、遠慮なく頼んでくだサーイ」とジョーは俺にメニューを渡す。「どうも」と俺は言い、メニューを受け取ると、中身を確認。ふーむ、普通のBARって感じの内容だな・・よしっ、「スコッチをミストで」と俺は注文し、「ワレはバーボンをロックでお願いしマース」とジョーも続けて注文をした。「承知しました、少々お待ちください」と化けタヌキのバーテンダーは軽く会釈。すかさず、カウンターの奥にあるお酒の棚から、開拓魂という銘柄と円卓の騎士という銘柄を取り出し、テーブルに置く。そして、ロックグラスを二つ取り出し、一つには丸く削り出した氷を入れ、もう一つにはクラッシュアイスを流し入れる。丸く削り出した氷が入っているロックグラスにバーボン開拓魂を適量入れ、マドラーで軽くかき混ぜ、コースターを出し、その上にロックグラスを置くと、ジョーに差し出し、「開拓魂、バーボンのロックです」と言う。「サンキューデース」とジョーは礼を述べ一口飲み、「流石デース」と誉める。「ありがとうございます」と化けタヌキのバーテンダーは返し、今度はクラッシュアイスが入っていいるロックグラスにスコッチウイスキー円卓の騎士を適量入れ、マドラーで軽くかき混ぜながら、小刻みに上下させ、レモンの皮をぎゅっと絞り、最後にそれを入れ、コースターを置き、ロックグラスを乗せ俺に差し出し、「円卓の騎士、スコッチのミストです」と言う。「ありがとう」と俺は軽く会釈し、すかさず一口。おお・・、円卓の騎士という初めて飲んだ銘柄だが何という香しい風味だ・・、それにクラッシュアイスに程よく薄められて飲みやすく、レモンの爽やかな酸味が後味をすっきりさせて美味い。「こんな美味しいスコッチ初めてです!」と俺は素直な感想を言う。「ありがとうございます、ごゆっくりどうぞ」と化けタヌキのバーテンダーは会釈後、グラス磨きをし始めた。「さて、実はデスネ、志村さん、あなたを誘ったのは理由がありマース」とジョーは口を開く。「何です?」とお俺は返す。「ミケさんの事であなたにお尋ねしたい事が有るのデース」とジョーは言った。「ミケの事ですか?、俺が知っていて、尚且つ教えて支障がない事なら良いですよ」と俺は限定的に快諾。「OH、Thanks!、では、現在ミケさんは特定の恋人などいまスカ?」とジョーは俺に尋ねる。げっ!、参ったぞこりゃあ・・、どうする?、本当の事を言うか?、でも、ショックだろな・・ミケが人妻で茶虎4兄妹の母親だと知ったら・・。「ミケは・・」と俺は躊躇して言葉を詰まらせ、「ミケは?」とジョーは続きを促す。グラス磨きの音がやけに耳に付く数秒間の沈黙の中、ええい!ままよ!と俺は決心をして、「ミケは人妻で茶虎4兄妹の母親です!」と真実を告白し、俺はチラッとジョーに視線を移す。ジョーは涼しい顔でバーボンをグビッと一口飲み、真正面を見据え、「・・・・・・・」と沈黙。異常な雰囲気を察したのか、化けタヌキのバーテンダーはグラス磨きを中断しこちらを凝視する。俺と化けタヌキのバーテンダーが見守る中、ジョーは、「はは・・、現在のミケサンは特定の恋人はいまスカ?」とリピートを開始。えええ!?、この人、話が戻っちゃったよ!、えっ、これって、どうすればいいの?。俺は取り敢えず、「いや、だから、ジョーさん、ミケは人妻で子持ちですよ!」ともう一度、真実を告げる。すると、ジョーは体をプルプル振るわせて、歯を食いしばり、「う、う、ぷぎぎぎ・・」と唸り始めて泣く事を堪えている様子。だが、瞳のダムは決壊して涙が頬を伝い、ポロポロと流れる。「ジョーさん!、巡り合わせが悪かったんですよ、ポジティブシンキングで行きましょうよ!、ノースブッダさんの主演の名作、荒野のボッチで”俺にはこいつが有るから寂しくない”という夕陽に向かって銃を一発ぶっぱなす名シーンがあるじゃないですか、その意気で行きましょうよ!」と俺は自分でもよく分からないフォローを懸命にした。

 

 俺のよく分からんフォローを聞いたジョーは、化けタヌキのバーテンダーからおしぼり貰い、顔を拭き、「この、バカヤーロ」と言う。なっ!?、こいつ、バカヤロって言った。「あ、あんた、人に対してバカヤロはないだろ!」と俺のボルテージが徐々に上がる。「志村、お前は奴の実態を知らないから、そうやって呑気に憧れるんデース」とジョーは言う。「実態?、ノースブッダさんのか?」と俺はジョーに尋ねる。「そうデース、奴の普段がどうなのか知っていまスカ?」とジョーは逆に俺に尋ねた。「ノースブッダさんの普段の姿?、そりゃあw、広い牧場を経営して、地平線に沈む夕日を眺めながら野営地の焚火で淹れたコーヒーを飲んでいるんだよw、雑誌で書いてあったもん」と俺はマニアの知識をフル動員。すると「OH・・、オーマイガーw、奴はそんな事はしてまセーンw、普段の奴は、一日中100インチのモニターの前にあるソファーに座ってマースw」とジョーはヤレヤレという仕草と共に俺をせせら笑う。「一日中?、な、何で?」と俺はジョーの態度に腹を立てていたが、それよりも彼の知っているノースブッダさんの普段が気になった。「奴は日がな一日ゲームをやってマースw」と答える。「いやw、いやw、ないないw、あの往年の映画スターで無頼男のノースブッダさんが一日中ゲームやっているなんて、絶対ないw、お前、俺の事を担いでない?」と俺はあまりにも荒唐無稽の話しに笑いが込みあげた。「ふーー、ヤレヤレデース、真実デース、奴がゲームをクリアして終わると何が始まるか知ってイルカ?」とジョーは突然俺に問題を出す。「えっ・・さあ?、何が始まるんだ?」と俺は答えが頭に浮かばず降参。「新しいゲームが始まるんデース、正にエンドレス!、奴はゲーム廃人デース」とジョーは答えた。「うそだろ・・、うあああ、聞きたくない!、そんな真実聞きたくない!」と俺は耳を塞ぎ悶える。「フフフ、これでイーブンデース、ワレはミケの真実で、志村はワレの主の真実でお互いハートブレイクデースw」とジョーは満足げに言う。「くっそっ、何がハートブレイクだ!、そっちが一方的に絡んできただけじゃないか!」と俺は抗議。「まあ、確かに一理ありマースw、ソーリーデース」とジョーは素直に謝罪をした。「まあ、分かればいいけど・・」と謝罪の言葉を聞いた俺はボルテージが下がり、スコッチでわだかまりを胃に流し込み、化けタヌキのバーテンダーのグラス磨きが再開される。「でも、ジョーは、ノースブッダさんを尊敬しているでしょ?、だってその姿をしているんだからさっ」と俺はジョーが化けている姿を指摘。ジョーはバーボンを飲み干し、「マスター、おかわり」と言い、苦笑して、「映画好きって奴はどうして、お涙頂戴な話しを望むのでしょうか・・、現実はビターチョコレートの様に苦いデース、ワレがこの姿をしているのは、志村が想像している様な事ではありまセーン」とジョーはバーボンのおかわりを受け取り一口。「じゃあ、どんな訳?」と俺は肘をカウンターに付き尋ねた。

 

  「訳ですか・・そうですね・・、ちょっと小腹が空きましたね、ヘイ、マスター例のものを」とジョーが化けタヌキのバーテンダーに何かを頼み、「これから出て来る食べ物が、ワレがこの姿をしている理由デース」と葉巻に火を点ける。ジョーの注文を受けた化けタヌキのバーテンダーは、無言で冷蔵庫を開けて何かを取り出す。俺の位置では冷蔵庫の扉で分からず、凝視し続けると、冷蔵庫の扉が閉まり、化けタヌキのバーテンダーが手にしているものが現れた。それは、キャベツ、大き目のチョリソーだろうか?それを二つ、更に中身は不明のタッパだった。なんだ?、何が始まるんだ?。俺は化けタヌキのバーテンダーの次の動きを見逃さない様に注目。化けタヌキバーテンダーはキャベツをまず調理場のまな板に置き千切りを始める。薄暗い店内にジャズとキャベツの千切りをする音がして異様な雰囲気が漂う。キャベツの千切りが終わると、コンロに火を点け、油を引き、フライパンで二つのチョリソーを炒め、焦げ目が付くつと、タッパを取り中身をフライパンに入れ、「ジュ―」と音がした。匂いから察するに、スライスした玉ねぎにスパイスをを足したものを炒めている様だ。チョリソーとスパイス入りのスライスした玉ねぎをリズミカルに数分炒めると、コンロの火を消し、フライパンから調理プレートにチョリソーとスパイス入りの少し赤みがかったアメ色のスライスした玉ねぎを分けて置く。すると、化けタヌキバーテンダーは棚から二つのコッペパンを取り出し、それぞれをパン切りで切れ目を入れ、キャベツの千切りをコッペパンの切れ目に詰め込む。次にチョリソーを入れ、最後にスパイス入りの少し赤みがかったアメ色のスライスした玉ねぎを乗せた。それから、化けタヌキのバーテンダーはそれを皿に乗せ、俺とジョーの前に置き、「贅沢ホットドックです、マスタードとケチャップはお好みでどうぞ」と赤と黄色のディスペンサーを俺とジョーの真ん中に置いた。「ホットドックが理由?」と俺は皆目見当がつかない。「はい、そうデース!、これが理由デース」とジョーは豪快にがぶりとホットドックにかぶりつく。俺はジョーの食べている様子に思わず生唾を飲み込み、ジョーの様にかぶりついた。うまっ!、何だこれ?、こんな美味いホットドックを食べた事ない!。ジューシーでピリ辛なチョリソーが濃厚なスパイス入りの少し赤みがかったアメ色のスライスした玉ねぎで深みのある味にして、最後にキャベツの独特な甘みとみずみずしい味が脂っこさを中和している。「凄く上手いよジョー!」と俺はホットドックをべた褒め。「Thanks!、お口にあって良かったデース、このホットドックを食べるためにワレはこの姿をしているのデース」とジョーは言った。

 

 「このホットドックを食べるために?」と俺はジョーに訪ねる。「yes、厳密にはワレのマイホームがある街のキッチンカーで販売されているホットドックを食べるためにこの姿をしてマース」とジョーはホットドックをがぶり。「・・まさか!、その姿で働いているのか?」と俺は推理する。「OH!、ザッツライト!正解デースw、ワレの街は映画の街と言われ、世界的にも有名なんですが、ワレはこの姿で観光客にそっくりさんとして記念撮影をし、小銭を頂きマース」とジョーは自慢げな顔をする。「じゃあ、その記念撮影で貰う小銭をためて、ホットドックを買っているという事?」と俺は食い気味にジョーに聞く。「はい!、その通りデース、志村が想像するよな、実は心と心が通じ合っている様な事ではなく、単純に食欲の賜物でーすw、奴の姿が利用価値があるので利用してマースw」とジョーはあっけらかんと答えた。「えぇ・・・、マジかよ寂しくないか、ほらっ、実は相棒みたいな関係とか?」と俺は自分の願望を吐露。「nothing!、現実はそんなものデースw」とジョーは無残にも現実を俺に叩きつける。「そうなんだ・・何か残念、まあ、ホットドックは美味しいけど・・」と俺は食いかけのホットドックマスタードをタップリかけて、一気平らげ、指に着いたマスタードをペロリ。「この事を話したのは、志村、あなたが初めてデース、もうあなたは、身内同然デース」とジョーは俺に親指を立てる。「へへへ・・おだてても何も出ないぜw」と俺は照れを隠すため、スコッチを一気に飲み干す。それから、俺たちはお酒をしこたま飲み、明け方にお互いを支えながら化け猫修行館の自室に帰った。

 

 「志村!起きるにゃあ!」と誰かが俺の体を揺する。俺は薄目を開けると、ズキズキと頭痛が襲う。どうやら二日酔いの様だ・・。俺は顔をしかめながら改めて辺りを見回すと、ミケがいた。「何時だと思っているにゃあ!、もう朝の8時にゃあ!、キジ子を新しい修行場に連れて行くにゃあ!、早く支度をしろにゃあ!」とミケは俺に朝の身支度を促す。だが、俺の体調は絶不調でとてもじゃないが動けない。「ミケ・・ごめん、俺さ二日酔いみたいだから、今日はパス」と俺は辞退を申告。「だらしない奴にゃあ、あの程度で二日酔いにゃあ?、んっ?、すんすん」とミケは突然俺の口回りを嗅ぎ始め、「これは・・!、ホットドックの匂いにゃあw、お前ずるいにゃあ!!、抜け駆けは許さないにゃあ!!」と俺のベッドの周辺を探し始めた。すると、「どうかした?」と小豆色の作務衣を着て、キジ柄の尻尾と耳を携えた、ショートカットで幼い少女のキジ子が寝室に入ってくる。「志村がホットドックを隠しているにゃあ!、お前も探すにゃあ!」とミケはキジ子に存在しないホットドックを探すことを指示。しかし、「ホットドックって?」とキジ子は首を傾げた。「かーーー、これだら箱入り娘は!、パンにジュ―ジーな肉が挟まれた滅茶苦茶美味い食べ物にゃあ!」とミケは情熱的に説明。「へぇー、よく分からないけど、美味しそうな食べものなのね!、分かった探すわ!」とキジ子も不毛な捜索に参加した。俺は懸命に探す二人を横目に、気を振り絞って起き上がり、「聞いてくれ・・二人共、ここにはホットドックは無い、里の飲み屋街にある、月光だまりというBARの隠しメニューにホットドックがあるから・・そこで頼んで食べろ、頼むから静かにしてくれ・・、お前たちの声が頭に響く・・」と俺は言い終わると力尽きパタッとベッドに倒れ込む。「なーんでお前がそんなこと知っているにゃあ?、まあいいにゃあ、お昼ごろ、医務室から二日酔いに聞く薬を持って来るから安静するにゃあ、キジ子!、今日の修行はこれまでより厳しいから覚悟するにゃあ!、あたいに続くにゃあ!」とミケは走り出す。「ミケ!、ちょっと待ってよ!、何で走って移動するのよ!」とキジ子は非難の声を上げミケの後を追う。「さんを付けるにゃあ、メスガキ!」と部屋の外からミケの声がした。ようやく静かになり、俺は安堵して毛布にくるまって、瞼を閉じる。柱時計の時を刻む、一定間隔の音が聞こえ、やはり心地いい。頭痛と吐き気を我慢しながら数分・・。誰かが俺の肩を叩く。俺はゆっくり目を開けると、小豆色の作務衣を着て、ショートカットでサビ色の耳と尻尾を携えた女性化け猫のオトギだった。オトギさんは俺たちの部屋の担当である化け猫修行館の従業員で隠れ里に迷い込んだキジ子の世話を半年間していた。「調子はどうですか?」とオトギは俺の具合を尋ねる。「オトギさん?」と俺は柱時計を咄嗟に見るともう、お昼過ぎだった。どうやらいつの間にか寝ていた様だ。「ええ、少し楽になった様です・・」と俺は容体を素直に答える。「それは良かったです、ここにお薬と、お粥を置いておきますね」とオトギはベッドの脇にある小さな机にお盆を置く。ミケのヤロウ、自分で持って来ると言っていたのに人に押しつけやがった。「ありがとうございます」と俺は礼を述べ、「しかし、どうしたんですか志村さん、昨日はそんなに酔ってませんでしたよね?」とオトギは俺の二日酔いに疑問を抱く。オトギさんは昨日のドンチャン騒ぎに参加していて、俺がその後にジョーと飲み直したのを知らない。「あのですね・・、実は昨日あれからジョーさんと飲み直しまして・・」と俺はオトギに昨日の出来事を打ち明ける。「ああ!、合点がいきましたわ!、ジョーさんの担当の者も二日酔いのお薬をお部屋に持っていきましたが、そんな訳があったんですねw」とオトギは疑問が解けてすっきりとした笑顔を見せた。「もう、ほどほどにしてくださいねw」とオトギは言い、「それでは、数刻後にお盆を回収しに来ますから、ゆっくり安静にしていてください」と事務的な挨拶をして頭を下げ部屋を退室した。再び俺は部屋に一人になり、早速、机に置かれているお盆の中にあるお粥の入った椀の蓋を開ける。湯気と共にお粥の匂いが立ち込め、それが鼻孔に入り、「ぐー」と反射的にお腹が鳴った。俺はレンゲを手に取り、お粥をすくい口に入れる。程より塩加減で美味しく、二日酔いの俺にはご馳走だ。俺は瞬く間にお粥を平らげ、お盆に置かれた二日酔いの薬を口にして、コップの水で流し込むとベッドに寝転がり就寝した。

 

 耳元にガヤガヤと話し声が聞こえ、それがだんだんと大きくなってくる。俺は目をゆっくり開け、薄暗い寝室を確認。お粥が入っていたお盆が無くなっていて、オトギが回収した事が分かる。ガヤガヤ音は大きくなり、俺がいる部屋の前でピタっと止まる。そして、そーと静かにドアが開く音がして、「キジ子、志村の容態の確認をするにゃあ」とミケの声がし、「分かったわ」とキジ子が返事をした。ガヤガヤ音の主はミケたちだった。俺は上体を起こし、ボーとした意識を立て直そうと努力し待ち構えると、寝室のドアが開き、「志村、起きているかにゃあ」と少しボリュウームを抑えた声でミケが俺に声を掛けた。「ああ、起きてる・・、体調は随分ましになったよ」と俺は返す。「良かったにゃあw」とミケは言い寝室の照明を点け、「志村さん、これw」と後から入ったキジ子は俺に紙に包まれた細長いものを俺に手渡した。手渡されたものは暖かく柔らかい手触りで、ほんのりスパイシーな香りがして、大体の見当が俺にはついた。「ホットドックを買いに行ったのかミケ?」と俺はミケに尋ねる。「そうにゃあ、タヌキのバーテンダーに聞いたにゃあw、お前、ジョーと相当酒を飲んだらしいにゃあ、あっ、これはマスターからご厚意にゃあ」とミケは答え、俺に魔法瓶を差し出す。俺は魔法瓶を受け取ると、蓋を回し中身を確認。魔法瓶の中から香しいコーヒーの匂いがした。「ありがたい・・、ミケたちも飲もう」と俺は起き上がりリビングに行き、備え付けのマグカップを三つ出し、テーブルに置きそれぞれにコーヒーを注ぐ。ミケたちも俺に続き寝室が出て、リビングのソファに座り、ミケが紙袋から6個のホットドックを出しテーブルに並べた。俺もソファーに座り、「そんなに買っていたのかよw、さあ、食べようか」と夕餉の開始を宣言。「頂きますにゃあ!」とミケは言い、「頂きまーす」とキジ子は言う。ミケはワイルドにホットドックを包んでいる紙を破き、豪快にかぶりつき、口の端から、スパイス入りの間ねぎのみじん切りがはみ出し、ポロポロと落ち、「うめぇ、うめぇ」と呟く。キジ子はそんなミケの様子をみて、よしっと意を決した様子で、ホットドックを包んだ紙を丁寧に取り除き、パクリと一口。すると、「ピリ辛だけど、癖になる味ねw」とキジ子は言い、恍惚の表情をした。俺はコーヒーを飲みつつゆっくりとホットドックを味わう。昨日はアルコールが入っていたからか分からないが、今日のホットドックの味は格段に美味しい。俺たちはあっという間に一人2個のホットドックを平らげ、残り1個がテーブルに残った。ミケと俺、更にキジ子が残りのホットドックを一瞥し、今度は互いを牽制する様に見合う。「キジ子、お前はお子さまだから、刺激物はその辺で止した方がいいにゃあ」とミケがキジ子に牽制。「はあ?、ミケこそおばさん、なんだから、止したらw」とキジ子はせせら笑い返す。「おばっ!?、このメスガキ!、おっと!!志村そうは行かないにゃあ!」とミケは俺が漁夫の利で二人が言い合っている間に食べてしまおうかとしたが阻止し、「ちっ」と俺は舌打ち。「やるわねぇ、志村さん」とキジ子は不敵な笑みを浮かべ俺の行動に関心をする。膠着状態に入り、お互いの行動を監視していて、埒が明かなそうだ。「このままだと、ホットドックが冷えて美味く無くなる・・提案だが、三等分にしてはどうだろうか?」と俺は二人に提案をした。「まあ、いいにゃあ」とミケは了承し、「そうね、いいわ」とキジも続いて了承。そして、「じゃあ、三等分して俺は真ん中で、両端はお前らって事で良いな?」と俺は三等分の手筈を説明する。「いいにゃあ」とミケは同意し、「賛成!」とキジ子は屈託のない笑顔で同意。くっくっくっ、馬鹿がw、ホットドックの本体は真ん中、両端は出涸らしの様なものw、やはりこいつらは猫だなw。「じゃあ、果物ナイフを持って来るね」と俺は立ち上がり、くるりと向きをかえて、視線の先にある鏡に映った俺の顔は邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 果物ナイフがある棚に向かおうと一歩踏み出すと、「ちょっと待って下さい!」とキジ子は俺を呼び止め、俺の頬に一筋の汗が流れる。「何か、おかしくないですか?、食べている時を思い出しながら考えたんですが、両端ってパンと少しのお肉しかないですよね?」とキジ子が疑問を口にし、俺は振り返り、極めて冷静に努め、ポーカーフェイスで、「き、気の所為じゃないかな?」と反論。ミケはキジ子の発言を聞き、えっ!?という顔して、「あたいもおかしいと思っていたにゃあ!」とキジ子に便乗し、「おう、おう、白状するにゃあ!、あたい達を騙そうとするなんて100年早いにゃあw」と調子に乗る。くっ・・、このメスガキ、予想以上に切れる・・、どうする?、ガチンコでは敵わないぞ・・。「お、落ち着いて二人共w、いやーバレちゃたかw、今のはちょっとしたレクレーションだよw」と俺は荒唐無稽な言い訳を展開。「レクレーション?」とミケとキジ子が同時に言いハモル。ジト目の二人の視線を受けながら、俺は果物ナイフを取って来て、「ほーらこれなら平等だよ!」とホットドックを斜めに切り込みを入れ三等分に分けた。「おお!これなら平等にゃあ!」とミケは感心して、「まあ、厳密には違うけど、妥協範囲ね!」とキジ子も納得してくれた。ミケは三等分に別れたホットドックの一つを取り、「ふざけた事を抜かしたら、バチボコにしようと思ったけど、踏みとどまって良かったにゃあw」とサラッと言い、「奇遇ね、あたしも納得できなかったら制裁を加えようと思っていたわw」とキジ子は笑顔で言い、ホットドックを取る。あっぶねー、と心の中で呟き、化け者との交流は危険と隣り合わせという事を俺は理解した。翌日、俺が二日酔いでダウンしている間、キジ子は新しい修行場で鍛錬を積んでいて、今日もそこで鍛錬を積んでいる。今日は俺も付き添い、修行場で見上がると、40メートルある高さのカーペットが貼り付けた様な壁にしがみつき、よじ登っているミケとキジ子がいた。二人は互いに命綱が結んでいて、ミケが先頭に天井に向かっている。彼女らは手足の爪をクマの爪の様な鋭く頑丈な爪にし、カーペットの様な壁に突き刺しながら登っており、時折り、ジュータンの布くずの様なものが落ちてきて、それを化け猫修行館の従業員が神経質にほうきではいて、かたずけていた。「ばりっ、ばりっ、」と絨毯を突き刺す音と化け猫たちの息遣いが建物中から聞こえる、異様な雰囲気が醸し出す空間で、ミケたちはいよいよ天井まで、あと10メートル程の場所に到達し、その先の天井近くには休憩する足場があり、他の化け猫たちが見下ろしながら、水分補給をしているのが見える。ミケは時折、キジ子の様子を伺いながら一歩一歩慎重に登り、数分後には天井に到達して、ミケはキジ子を引き上げて何かをしゃっべっていたが、ここからでは聞き取れなかった。二人は天井の足場で水分補強をしながら休憩をし、それを終えると、今度は来た道を戻り、下ってくる。登りとは逆にキジ子が先行してミケが続く形で下り、登りより早いペースで俺のいる地上に到達して、キジ子は、「はあ、はあ」と息を切らせながら畳に倒れ込む。「キジ子ちゃんお疲れ様!、見てるだけでもハラハラしたよ」と俺はキジ子に労を労いタオルを渡す。「はあ、はあ、ありがとうございます、雑巾がけよりキツイです」とキジ子はタオルを受け取り言う。キジ子が地上に着いて遅れる事数分、ミケが地上に着きキジ子の様子を見て、「だらしないにゃあ、登りと下りの往復して息が切れない様にするにゃあ、それが出来るようになれば元の姿に戻れる準備が整うにゃあ」とアドバイス。「本当に?、頑張ります!」とキジ子はが勢いよく起き上がり再度登ろうとする。するとミケは、「落ち着くにゃあ!、息を整えてから開始にゃあ」とミケはキジ子を制止。「はい・・」とキジ子は、はやる気持ちを抑えた。

 

 翌日もカーペット登りの行をして、次の日も、また次の日も、そしてまたまた次の日も行い、一週間後には、キジ子が登りと下りの往復をしても、殆ど息を切らせる事は無くなった。ミケはその様子を確認すると、今度は雑巾がけの行とカーペット上りの行、ゴロゴロ電球の化け力(ばけりき)の生産の鍛錬をローテーションで行い、五日経ち、いよいよ俺たちの滞在予定の終わりが近づいた朝、ミケは一早く起きてリビングで俺たちを待っていた。「キジ子、そこに座るにゃあ」とミケのいつもと違う雰囲気を感じ、「はい」と一言だけ返事してソファに座る。俺も続いて座るとリビングの壁に寄りかかったジョーの姿を発見し、「ジョー!、何でお前がここに?」と俺は尋ねた。「グッドモーニング、志村、ミケサンに呼ばれて来ました」とジョーは答えた。「ミケ、ジョーを呼んだわけは?」と俺はミケに事情の説明を求める。「今から説明するから黙っているにゃあ」と真剣なまなざしでミケは言い、俺はいつもと違う感じのミケの気迫で押し黙った。「キジ子、もう、お前は元の猫の戻れる状況になっているにゃあ、だが実はお前に黙っていたことがあるにゃあ」とミケはキジ子に言う。「黙っていた事って?」とキジ子はミケに返す。「お前は、通常の逆の手順で化け者になったにゃあ、これから元の猫の戻る工程に移るんだけどにゃあ、実は失敗する可能背がそこそこあるにゃあ」とミケは少し悲しい表情。「失敗すると・・どうなるの?」とキジ子は恐る恐るミケに尋ねる。「失敗するとにゃあ、・・異形のものになり、手あたり次第襲う化け物になるにゃあ・・」とミケは苦々しい顔をし、更に、「キジ子、元に戻る事を諦めて、ここで過ごすのも選択の一つにゃあ・・誰もお前を責めないし、笑わないにゃあ・・、どうするかはお前が決めるにゃあ」とミケはキジ子に選択を迫る。「ちょっと待てよ!、じゃあ、ジョーがいるのは、キジ子ちゃんが化け物になった時に始末するためか?」と俺は声を荒げミケに問い詰めた。しかし、ミケではなく、壁に寄りかかったジョーが口を開き、「そうデース、キジコサーンが化け物になった時に、ワレとミケサンで始末しマース」とジョーは言いカウボーイハットを深くかぶり直し顔を隠す。俺は唖然としていると、「ミケさん、私、お母さんに、どうしても会いたいの!、だからやります!、化け物になったら遠慮なく始末してください!」とキジ子は覚悟を決めた。「キジ子ちゃん!、落ち着こうよ、ここは冷静にね?」と俺はキジ子に考え直す様に促す。だが、「志村さん、ありがとう、私決めたの」とキジ子の決心は揺るがない様だ。ミケはため息をつき、「お前の覚悟、無駄にしないにゃあ」と言い、空中でバク転し、その場に小豆色の作務衣だけが落ちて、裾から三毛猫が姿を現す。「キジ子、あたいの体を触り、元の体をイメージするにゃあ、時間はたっぷりあるから確信が持つまであたいの体をよーく触るにゃあ」とミケはキジ子の膝に乗り触る様に促す。「分かったわ」とキジ子はミケの体を触り、鼻、肉球、尻尾、耳、前足、後ろ足、背中、お腹と様々な所を入念に触り確かめた。「チャンスは一回だけにゃあ、思う存分触るにゃあ」とミケはキジ子に触られながら言う。俺はその光景を見ていられなくなり部屋から退出しよとドアを開けるとオトギさんがいた。「オトギさん!、どうしてここに?」と俺はオトギに尋ねる。「キジ子ちゃんが今日、元に戻る事を聞きまして・・」とオトギは悲しそうな顔した。「オトギさん・・」と俺はオトギにそれ以上何も言えなく、何気に廊下を見ると複数の化け猫修行館の従業員が待機していて、オトギの様に心配して来ている訳でないと俺にも分かった。俺は自室に戻り、再びソファーに座り覚悟を決め、キジ子達の様子を見守る。歯がゆい・・俺は何もできない・・。キジ子がミケを触り始めて一時間が経過し、キジ子は何かを感じたのか、ソファーから立ち上がった。「良いのかにゃあ?」とミケはキジ子に確認。「はい!、やります!」とキジ子は自分を奮い立たせる様に大声で答える。「分かったにゃあ、あたいの体を触りながらイメージした自分を浮かべるにゃあ」とミケは言い、くるっとバク転し、黒髪のツインテールで裸の人の姿に戻り作務衣を着始める。普段の俺だったら動揺して、目を背けるが、今は全く気にならなかった。「志村、下がっていて下サーイ」とジョーがいつの間に隣にいて、俺を下がらせる。俺は素直に従い、ジョーとミケに挟まれたキジ子に注目。キジ子は瞳を閉じて、直立不動で数分・・、額には汗を滲ませていて、恐らくだが怖いのだろう・・。キジ子はキッと瞳を開け、遂に意を決して元に戻る仕草をし始めた。その様子にミケとジョーも身構え、万が一に備えてる。キジ子はジャンプしてクルっと回ると、「ボフッ」と音共に大量の煙が出て俺の視界を塞ぐ。何が起こっている?、成功か?、失敗か?。俺はキジ子がいた所を注意深く見つめると、人のシルエットが出てきて・・、何とそれはミケで、その腕の中には、ちんまいキジトラの猫がいた。「ミケ・・、これは成功だよな?」と俺はミケに恐る恐る聞く。ミケはニンマリと笑い、「成功にゃあ!!、これでキジ子は完璧な化け者にゃあ!!」とミケは高らかに成功宣言。「うおおお、よっしゃあー!!、良かった!!」と俺は、はしゃぎながら喜ぶ。「ヤレヤレ、最悪の状況は避けられましたデースw」とジョーはカウボーイハットを取り、ふーと息を吐いた。

 

 ドアが勢い良く開き、オトギが入って来て、「成功したんですね!!」と言い、ミケの腕の中で寝ている猫の姿をしたキジ子を取り上げ、抱っこして優しい目をしながら抱きしめる。「これでキジ子は里を去り、麓の民宿に戻れるにゃあ」とミケはがオトギに言う。すると、「そうですね」とオトギが寂しそうな顔を今度はした。俺は、化け猫修行館の従業員に事情を報告しよう廊下に出ると、人っ子一人もいなく、報告するまでも無かったようだ。そして、俺たちはキジ子を医務室に運び、一応検査をしてもらい、結果が出るまで、医務室の先生が見守る事になった。次の日には、キジ子に異常はないとお墨付きが出て、キジ子は俺たちの宿泊している部屋、鶴の間に戻され、ミケの監督の元、人間に化けて猫に戻る練習に明け暮れて、俺たちが隠れ里から去る日になる。俺たちは最初に隠れ里に来た時と同じく、登山服を着て、使わないキャンプ道具を背負い、隠れ里の入口の鳥居にいた。キジ子は俺たちと一緒に下山し麓の民宿に帰る予定なので、彼女を待っている訳だが、遅い・・、もう約束の時間をとうに過ぎている。「遅いな・・」と俺は呟く。「仕方がないにゃあ、キジ子にも別れを言う相手の一人や二人いるにゃあ」とミケは俺をたしなめる。「まあ、それはそうか・・あっ!」と俺は納得しつつ、二人の人影がこちらへ向かってきているのを発見。二人はジョーとキジ子だった。「お待たせ」とキジ子はヒョウ柄のリュックに古風な服を着ていて、俺とミケを驚かせる。「その恰好は?」と俺は思わずキジ子に尋ねた。「この格好?、オトギさんから餞別で頂いたの!、どお?、可愛いでしょう?」とキジ子は自慢げに俺たちに言う。「あっ・・うん」と俺とミケはそう答えるのが精一杯だった。「志村、名残惜しいデース」とジョーが俺に言う。「ははっw、俺もだよ!、歓楽街に来たら俺の勤めている事務所に来てくれよな!」と俺はジョーに別れの言葉を贈る。「はい、必ず行きマース、その時は志村、歓楽街を案内してくだサーイ」とジョーは俺に返す。「ジョー!、あたいもお前を歓迎するにゃあ!」とミケもジョーに別れを言い、「ミケサン、その時はもっと語り合いしまショウ!」とジョーは少し嬉しそうだった。俺たちはジョーと別れ、ミケを先頭に濃い霧の中を下山し、霧を抜け、美しいせせらぎと野鳥の鳴き声を聞きながら沢で、オトギに持たされたおにぎりを食べ休憩し、道なき道、化け猫道を通り、一般登山道に出ると、そのまま来た道を戻り、民宿・峠が見えてくる。「いよいよ帰れるねw」と俺はキジ子に言う。「はい、懐かしい匂いがしますw」とキジ子が俺に返した瞬間、「キジ子ーー!!、出てらっしゃい!!、あんたの好きな猫缶よ!!」と民宿・峠の女将、村山の声と共に缶詰を叩く金属音がした。キジ子はハッとなり、声と音の鳴る方を見る。半年以上も行方知れずの愛猫を今でも探していたのか・・。キジ子はおもむろに服を脱ぎ始めて、俺は咄嗟に後ろを向き、ミケはキジ子が服を脱ぐのを手伝っている様だ。俺の後ろで「ボッフ」と音がしたので振り向くと、一匹のキジトラの猫がいて、ミケはヒョウ柄のリュックにキジ子の来ていた服をしまっていた。「じゃあ、志村さん、ミケ、本当にありがとう!、私行くね」とキジ子は色々な物が込み上げてくるのか複雑な雰囲気で言う。「キジ子、達者でにゃあ、最後に言っとくにゃあ、母ちゃんには正体を絶対にばらしてはいけないにゃあ、どんなにお前を愛しても、超えられないものがあるにゃあ、よーく心に刻んで置くにゃあ」とミケは何かを思い出したのか切ない顔でキジ子に忠告。「うん!、分かったよ、ミケ!!、じゃあね、志村さんも御達者で!」とキジ子は茂み飛び込み、「さんを付けるにゃあメスガキ・・」とミケはキジ子が飛び込んだ茂みに呟いた。数分後、「キジ子!!!、あなた何処にいたのよ!、お母さん心配したのよ!」と女将村山の大きい声がした。俺たちは何食わぬ顔で、女将村山が驚き、慌て踏めく状況の彼女の前を偶然を装い通る。「あらっ!、あなた達は!、今日お帰りだったんですね!、お預かりしたお車はちゃんと保管してますからご安心ください、それよりも見て下さいよ!、キジ子が帰ってきたんですよ!」と女将村山は俺たちに興奮し早口で捲し立て、抱っこしているキジ子を見せた。「えっ!?、それは良かったですね!!」と俺は調子を合わせ、「良かったにゃあ!」とミケもそれに続く。「本当に今日はなんて日でしょう・・、それにしてもお客様達、一ヶ月近くキャンプして妙に小奇麗ですね・・」と女将村山は俺たちのあり得ない状態を目ざとく見つける。「えっ!?w、これはですね・・、最近のキャンプギアは良く出来てまして、沢の水でシャワーや洗濯なんて朝飯前なんですよw」と俺は強引に嘘で乗り切ろうとし、「そ、そうにゃあw、快適なキャンプ生活だったにゃあw、ほらっ、先を急ぐにゃあ」とミケは俺の嘘に乗っかり、俺の腕を引っ張る。「そ、そう言う事なので、失礼します」と俺たちは足早に下山を開始。猫岳の登山道の入口に着き、民宿・峠で車のカギを受け取り、駐車場にあるレンタカーに荷物を詰め込み、予めした打ち合わせ通り、キジ子の荷物が入ったヒョウ柄のリュックを民宿の物置に忍ばせ、俺たちは車に乗り込んで出発した。民宿の敷地の出入り口に、キジ子を抱っこした女将村山が立っていて、キジ子の前足を掴み手を振る仕草をし、俺たちはそれに対して軽く会釈を返し、前を走り抜ける。車内のルームミラー越しの猫岳が段々と遠ざかり、ミケは助手席の窓から遠くの山々をずーと眺めて、暫く車内は沈黙が続く。「色々あったけどさ、楽しかったよ」と俺は今回の旅を締めくくる感想を口にする。「それは良かったにゃあ・・、あたいも今回は、忘れられない旅になりそうにゃあ」とミケは小さくなった猫岳を見るため、後ろに視線を移す。俺たちは、秋の装いが始まった木々の中を疾走し、所長が待つ歓楽街の事務所に向かった。

ーおわりー

 

 

 今回ご紹介する曲は、datekenさん作詞作曲、イラストをびんちょまぐろさんによるPavlovian Loveです。

 

 本曲は恋を題材に、人が恋に狂い理性を失うに至る過程に、どの様な刺激や切っ掛けがあるかを科学的なアプローチな歌詞で表現する歌を鏡音リンさんが歌います。

 

 本曲の題名、Pavlovian Loveを和訳すると、パブロフの愛となり造語です。本曲の意味合いとしては、人が恋に落ちる時の条件反射的な意味合いと自分は感じました。

 

 

 小悪魔的なイメージを個人的に鏡音リンに抱いていましたが、本曲の様にホンワカ系もこなせる事に驚きました!ボーカロイドはプロデューサーさんによって変わるんですね!

 

 本曲、Pavlovian Loveは科学的な歌詞で恋が落ちる過程を見事に表現し、化学が苦手な方でも感情移入でき、この歌詞は意味は何だろう?と調べ、ちょっとしたお勉強の切っ掛けにもなる素晴らしい曲だと思いますので、是非!本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

鏡音リン

 

weblio様より

Pavlovian