煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

この世の移り変わりを情緒的に歌うVOCALOID曲

 

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 皆さんは積立ニーサをしていますか?、自分は旧ニーサの頃から少額を積み立てています。積み立て始めてから、証券会社にアクセスして、資産確認が日課になり毎日見ていますが、最近のオールカントリーは一進一退で伸び悩み、今年の始め辺りの様な確認するたびに増えている状態は無くなったような気がします。資産が減ったり増えたり、そして減ったりの繰り返しで、これじゃあ埒が明かないなと考えまして、旧積立ニーサを解約して個別銘柄を触れてみようかと思い、まあ、いきなりお高い価格の銘柄には怖くて触れられないので、少額で仮想通貨の草コイン的な銘柄を少量の現物を買って、どんなもんかなと体験しようと思った訳です。思い立ったら吉日、早速色々探すと百円以下の株の銘柄が沢有りました!。沢山ある銘柄を眺めながらマウスでスクロールしていると、メタプラネットと言う銘柄に目が止まったんです!。これでも仮想通貨に数年触っている自分は、ちょっと運命を感じましてw、一株百円以下と言うお手軽感覚もあり、買おうとしました。しかーし、最低100株から、つまり最低価格が7千円位になりまして、体験には高くない?、ちょっと・・・それは・・・と踏みとどまり止めてしまいましたw。それから数日後、メタプラネットはビットコインの購入の傍らホテル経営をする会社なんですが、何と!、ホテル経営が破綻しましたというIRが出たんです!。最初に思った事はあぶねーと言う感想、それから代表取締役のサイモン・ゲロビィッチというにわかに信じがたい名前に胡散臭さ感じましたね・・・。更なる情報収集をXで敢行すると、ビットコインを買うだけの会社がこの先、何人で回すのか?とか、業務内容が気になるwとか、などなどこの会社の行く末に大変興味を引かれている様子でした。まあ、今回の事で適当に選んではいけないと分かりましたw。いづれにしても、いつかは個別銘柄に触れて見たいなと思いますが・・・、スクエニとかどうなんでしょうかね?、株価は随分と落ちてますけど、良作ゲームが一本出れば爆益の可能性も有りますよね?、うーん・・・でも、今のスクエニというか、ゲーム業界自体に明るいビジョンが感じられないんですよねw、リメイクで食っている感じが成長を感じられず、このまま衰退して消えていくのかな?って印象が強いです。ゲーム株がだめなら・・・バイオ株?、ロマンがあるとネットで散見されてますし・・・、何だかこのまま何も買わずに終わりそうな気がしますw。

 

今回のお品書きになります

 

煮干しがお送りするちょっとした物語

 

 まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 



 

 人の言葉を理解し操り、人の姿に化ける動物・・・通称化け者。そんな人外の者たちが多く暮らし、生活を営んでいる場所がある。それは稲荷神社を中心に広がる大人の街である稲荷歓楽街。卑猥な看板の明かりの下で、化け者たちは様々な職に就き働いているのだ。しかし稲荷歓楽街で欲望を満たす人々のほとんどは彼らの存在を認識していない。なんなら、稲荷歓楽街の中心にある稲荷神社も一般人には認識できず、ばかされている。人とケモノが、ばかしばかされ共生しているこの街で俺は現状を知っている数少ない人間、志村という者だ。

 

 稲荷歓楽街のメイン道路からやや西側に位置する枕通り。そこにはラブホテルが立ち並び、独自のルールが引かれ、アンタッチャブルな関係のカップルが集う。そんな場所のラブホテルの薄暗い一室に俺たちはいた。「姉御・・・、しっかりするにゃあ」と黒髪でツインテールのメイド姿をした女性が玉ねぎの様に髪を束ねた中年女性に励ましの言葉を向ける。メイド姿の女性の名はミケ、正体は三毛猫で、俺の同僚にして化け者の化け猫だ。因みに語尾のにゃあは猫だからじゃなく、金のしゃちほこが有名な城下町で生まれ育ったために身に付いた方言が猫なまりした結果である。そして、髪を玉ねぎの様に束ねている中年女性はムササビの化け者にして、この枕通りを仕切っている姉妹の姉の方だ。「ああ、大丈夫だよ・・・」とムササビ姉妹の姉はミケにぎこちない笑顔を返す。「お姉さん!、事態は一刻も争います!、妹さんが契約書を保管している所に心当たりが無いですか?」とOL風の髪をセミロングな女性がムササビ姉妹の姉に尋ねた。彼女の名はサバ子、正体はサバシロ柄の猫で月に一回の地方で行われるサバイバルゲームが何よりの生きがいにして、副業の一つにサーバー保守管理、鯖缶が大好きのサバサバ系雌猫だ。ムササビ姉妹の姉は少し考える仕草をし、「恐らく・・・、妹が大事な物を保管するなら、ここから二件隣のラブホテル最上階・・・多分そこの妹専用プライベート区画だよ」と素直に答える。ムササビ姉妹の答えにミケが手にしていたスマホのスピーカーから、「あらあらw僥倖、早速回収してちょうだい」と女性の声がした。その声の主は、俺の上司にして雇人の化け者で化け狐に属している通称所長と言われている麗人だ。彼女の本名は誰も知らない、稲荷神社の関係者なのは間違いないが、色々と謎が有る人物。「ワイはこの部屋で待機か?」とスキンヘッドで白いワイシャツに黒いスラックス姿、更に裸足で椅子に拘束されている男が言う。この男は今回のキーになる男だ。そもそも俺たちは何故この場所にいるのか?、それは枕通りの中心に位置する通称パパ活路地でパパ活しているパパ活女子がラブホテルで何かを飲まされて失神するという事件が連続で起きた。俺の上司の所長は稲荷歓楽街全体を統括している立場且つ、事件で使われた飲み物が所長の子飼いの研究室から持ち出された試作型エナジードリンクだと発覚して、早期の解決をしないとまずい状況になる。事件が起きた場所はムササビ姉妹が仕切っている枕通りと言う特殊な閉鎖空間のため、通常ある防犯カメラの類が殆どなく、おとり作戦で犯人を割り出す事になった。とある事情により男から女に変わってしまった俺の状況は所長にとって正にタイムリーで、おとり役に抜擢される。納得はしなかったが、なし崩し的に請け負う羽目になり俺はパパ活路地にておとり役をする事になった。所長の雇われ人もとい雑用係のミケと俺、そして、今回の作戦に必要な技術と知識を兼ね備えたサバ子の三人で作戦に臨んだ。首尾よく犯人の特定が終わり、パパ活路地にておとり役をする事、四日後。ようやく表れたターゲットの犯人をミケとサバ子がいる部屋におびき出し、サバ子の拷問もとい足つぼマッサージによるコミュニケーションで事件のあらましを吐かせる事に成功。それは、パパ活女子が失神しておよそ半年ほどの意識不明の間に、彼女たちの自宅にあるタンス貯金を奪うという計画だった。だが、肝心の研究室から持ち出した犯人は分からず焦る俺たち。しかし、突如換気口から現れたネズミの化け者、チュウゴロウの出現により事態は大きく動く。何と、研究室から持ち出した犯人を所長自ら割り出してしまったのだ。何とも情けない結果に終わり、力が抜けたのも束の間、パパ活女子のタンス貯金の取り分をご丁寧に契約書に起こしていて、計算三枚の契約書の存在が発覚。その内二つは所長が担当し、残り一枚の今回の事件の一味であるムササビ姉妹の妹が持っている契約書を手に入れる事を所長から急遽指示された訳だ。

 

 「あらあら、それではムササビ姉妹の妹さんが保管している契約書を手に入れてちょうだい」とスマホ越しに俺たちに改めて指示が下される。俺たちは口を揃え、「はい!」と返事を返す。「まあ、良い返事w、所長感激だわw、あらっ?」と俺たちの返事を誉めた後にあちら側で何かが起きた様子。俺たちはスマホをじっと見つめる。すると、スマホのスピーカーから、「まあw、チュウゴロウw、相変わらず早いわねw、ご苦労様w」と先程まで俺たちの部屋にいたネズミの化け者であるチュウゴロウを労う。僅か数分足らずで所長の元へ辿り着くその速さに俺たち一同は、「はやっ!!」と驚きの声を上げた。ミケはすかさず、「所長!、もしかして枕通りの近くにいるのかにゃあ?」とミケにしては至極理論的な質問を展開。ミケの質問に、「あらあら、私はそこから真南にある倉庫集合地帯手前の昭和スナック通りにいるわよw」と所長が答える。倉庫集合地帯は稲荷歓楽街の最南端に位置する倉庫が集まった箇所で、主に稲荷歓楽街のお店の備品や在庫を保管している倉庫や、お酒などの問屋が集まっている場所。そして、その手前には昭和レトロなスナックが立ち並びぶ通称昭和スナック通りがある。そこには昭和の空気でしか生きられない者たちが集まる場所で、稲荷歓楽街でも少し雰囲気が違う。「昭和スナック通りって、ここから30分以上かかる場所にゃあ・・・」とミケは余りの速さに呆れた表情。スマホのスピーカーから、「あらあらw、チュウゴロウは韋駄天と称されるほどの俊足なのよw、更にネズミならではのショートカットが加わり、この速さが実現出来るのよ」とベタ褒めをした。所長の言葉を聞いたミケは、「へ、へーそいつは凄いにゃあ・・・まあ、あたいだったら一分切るのは余裕にゃあ・・・」と黒髪のツインテールを手櫛しながら片目を僅かにひくつかせ嘯く。明らかな嫉妬をしているミケ。確かにミケの身体能力なら可能かもしれない。だが、その人知を超えた力をフルスロットルすれば、稲荷歓楽街中が大騒ぎになり、早さを競うどころじゃなくなる。それは本人が一番知っている事で、適材適所が有る事は百も承知。だが、ミケには譲れない事もあるのだ。特に所長から、一番の部下と思われる事は譲れない。何故なら育ての親である所長から一身に愛を与えられたミケは、所長にとって特別な存在だと自負しているからだ。因みに俺が所長から誉められてもミケは嫉妬しない、人間である俺は嫉妬の対象外だからである。「なんやw、お前w、あのチュウ公に嫉妬しとるんかw」と突如椅子に拘束されている実行犯の男がミケに言う。ミケは拳を顔の前で作り、「オッサン・・・、あまり無駄口を叩くとバチボコするにゃあ・・・」と殺気を放ちながら威嚇。ミケの殺気に男は、「おおw、こわっw」とおどけた。先ほどまでしっかりと恐怖や怒りを表していた男だが、何か吹っ切れたような覚悟めいた印象があり、俺はその仕草に何故か哀愁を感じた。

 

 「じゃあ、私は稲荷歓楽街駅のコインロッカーから契約書を確保するため行くわね、あなた達はムササビ姉妹のお姉さん並びに、実行犯であるそこの彼の保護をしつつ、契約書の確保して待機をお願いね、私と化け猫部隊がなるべく急いでそちらに向かうからくれぐれも無茶をしないで」と所長はこれから俺たちの取るべく行動の詳細を指示。契約書の確保とムササビ姉妹の姉の保護は分かるが、実行犯である男の保護する理由が分からず俺は、「ちょっと待って下さい!、この男の保護は必要ですか?」と所長に尋ねた。すかさず、スマホのスピーカー越しから、「あらあら志村君、大いに必要よ、彼はこれから行う化け者裁判に証人として出廷してもらわないといけないのよ」と答える。化け者裁判と言う聞きなれない言葉に、「化け者裁判?」と俺は呟く。すると、サバ子が、「志村さん、化け者は人の法律では裁けません、そこで稲荷歓楽街では化け者だけが適応される独自の法律があります、法を犯した化け者は稲荷神社で化け者裁判を行い刑を決めるんです」と説明をしてくれた。俺は過去の事を思い浮かべながら、「えっ!?、でもミケの奴が散々やらかしても裁判をやった節がありませんけど?」と疑問を口にする。俺の疑問にヤレヤレといった仕草したミケは、「人間の様にガチガチに法律で固めている訳ではないにゃあ!、今回の様に一線を越えてしまった化け者に対して発動されるルールみたいなものにゃあ、志村は相変わらず無知にゃあw」と説明の最後に俺を小馬鹿にした。ミケの軽口に俺はムッとしながら、「うるせーな!、そんなこと知る訳ないだろ!」と抗議。俺とミケがにらみ合う中、「あらあら、喧嘩しないの!、そういう訳だから実行犯の彼の保護はお願いね、くどい様だけど、積極的な戦闘は避けて私たちが到着するまで籠城するなりして持ちこたえてね、じゃあ幸運を祈るわね」とスマホ越しに所長が言う。俺たち作戦チーム三人は一斉に、「了解!」と元気よく返した。スマホの通話が終わり、サバ子は持ち込んだ黒い大きなトランクケースの底を素早く取り外す。そこには銃と初日に使用したタクティカル装備があった。俺はその銃を見ながら、「これ・・・本物?」とサバ子に尋ねる。サバ子は手慣れた仕草でタクティカル装備を装着しながら、「ほぼ本物に近い仕様ですが専用ゴム弾を射撃出来るようにしたカスタムアサルトライフルです」と銃を手にしてマガジンを装填した。俺はサバ子の手している銃をまじまじと眺め、「ゴム弾?、結構相手に対して気を使っているんだ・・・」と感想めいた事を言う。俺の発言にサバ子は、「それは・・・」と何かを言おうとした時、「どちらかに死者が出た瞬間、争いが苛烈を極めて更なる死者を出す・・・、そんな負の連鎖を私たちは経験をしたり話として知っているんだよ・・・、だから今回の時の様になっても妹側でも殺傷出来る凶器は出さない筈さね」とムササビ姉妹の姉が口を挟み、続け様にミケが、「あたいも話には聞いているにゃあ・・・、だから所長は皐月の夫が鬼籍に入った時も、相手側を追放するだけに留まったにゃあ・・・」と言った。皐月とは所長の妹で、稲荷神社の現神主である。ミケが言っている話は、おおよそ7年前ごろに起きた事件の事だ。その頃の稲荷歓楽街は東と西に別れた勢力があり、東は所長をトップとした勢力と西にはツキノワグマの化け者である剛力鉞がトップにした勢力が有った。その頃の所長は今の様に仕切っている訳ではなく、なし崩し的にその地位にいるだけの状態。そんな折、二つの勢力は末端同士の小競り合いから対立が深まり対決姿勢になる。しかし、末端とは違いトップから幹部クラスでは対立をしていないという何とも奇妙な構図が広がった。争いが起きても幹部やトップ通しの話し合いで事態を収拾する日常がこのまま続くと思われた矢先、風雲急を告げる知らせが入いる。稲荷神社の皐月の夫である岩次郎が鬼籍に入ったのだ。そこから昼行燈をしていた所長は行動を起こし、対立していた勢力を稲荷歓楽街から追放して今に至る。ミケは感慨深げにしていると、「おやまあ、所長の子飼いのあんた達には何も話してないのは意外だね・・・」とムササビ姉妹の姉がぽつりと言う。ミケはムササビ姉妹の姉を見つめ、「姉御・・・それはどういう意味にゃあ?」と尋ねた。ムササビ姉妹の姉はため息を付き、「私が言ったって言わない約束だからね?、所長は聞かされたていたから穏便に済ませたんじゃないんだよ・・・実際に見て知って経験していたからその様な行動に出たんだよ」と答えた。ミケは首を傾げながら、「何を言っているにゃあ?、稲荷歓楽街で血で血を洗う争いを頻繁にしていたのは戦後間もない頃の話しにゃあ、所長が見ている訳ないにゃあ?」とムササビ姉妹の姉の正気疑う目。ムササビ姉妹は首を横に振り、「私が子供の頃、所長は今と同じ姿で確かに存在していたんだよ、嘘じゃないよ?、私以外にも年寄りの化け者なら知っている事さね、まあ、何故だかその事を触れようと誰もしないのは何かあるんだろうけどさ・・・」と驚愕の事を言う。ミケはその話に固まり、俺は恐る恐る、「他人の空似とかじゃ?、もしかして所長の親とかじゃ?」とムササビ姉妹の姉に確認。ムササビ姉妹の姉は懐から葉巻を出して吸い口を歯で食いちぎると咥えて火を灯し一服し、「人違いじゃないね、実際に私が子供の時にした当時の会話の事を開いても覚えているからそれは無いね・・・、まあ、あえて言ってないだけで特段隠している訳じゃない感じさね」と再び一服して天井に煙を吐く。得体の知れない人だと思っていたが想像以上に抱えている秘密は大きそうだ。俺はミケの肩に手を添えて、「気にするなよw、誰だって秘密はあるだろ?、何なら落ち着いた時に聞けば良いだろ?」と少しショックを受けていた様なので落ち着かせようと俺は努める。ミケは少しぎこちない笑顔を俺に向け、「そ、そうにゃあw、志村の言う通りにゃあw、今度聞いて見るにゃあ!」と何とかいつもの調子に戻った。

 

 俺たちはムササビ姉妹の妹が保管している契約書を確保するためにそれぞれの準備をする。サバ子はサバゲ―スタイルになり、ミケは珍しく膝宛てと拳を痛めない様に穴あきグローブを装備していた。俺は特に戦闘では役に立たなそうなので、護身用として神器を掌(てのひら)に顕現(けんげん)する。掌には駄菓子屋で売っている半透明の水鉄砲が現れた。俺が女性になったのはこのちんちくりんな水鉄砲を神様らか受け賜わった所為で、正直複雑な心境になる。今のままでは、永遠に水が切れる事がない只の水鉄砲。護身用にするためには、今らから神様にお願いをして変えてもら訳だが、俺には皆目見当が付かず、「なあミケ?、神器の仕様を変えても貰おうと思うけど、何が良い?」と意見を聞く。俺の問いにミケは顎に手をかざし、「うーん・・・、出来れば相手を殺傷しない程度且つ行動を不能する威力のものが理想にゃあ・・・、サバ子!、何かいい案がないかにゃあ?」とサバ子に話を振る。サバ子は何かを思いついた仕草をし、「先輩!、私にいい案がありますよ!、それは高圧の水を出せるようにすればいいんですよ!」と自信満々に答えた。ミケは困った顔をして、「それは無理にゃあ、志村に神器を与えた神様は加減を知らないからそんなのを敵に向けたら最後、建物ごと胴が真っ二つになるのがオチにゃあ!」と言う。サバ子は驚愕の表情をして、「えっ!?、そんなに凄いんですか?、それ?」と俺に尋ねる。俺はジト目で、「うん・・・とにかく扱いが難しんだ・・・」と返したら、「頼むから高圧の水は止めておくれ!、建物の水漏れは甚大な被害になるんだ!、いいかい?、不動産で食うって事は物件を我が子の様に大事に維持してそこから染み出す僅かなお金が利益になるのさ、だから想定していない支出は痛手なんだよ!、後生だから止めておくれ!」とムササビ姉妹の姉が懇願した。ムササビ姉妹の姉の要望もあり俺たちが神器の扱いに困っていると、「ワイなら良い案があるでw」と突如関西弁が名乗りを上げる。ミケは忌々しい目で男を見て、「何にゃあ?、言ってみるにゃあ?」と発言を許可。男は薄ら笑みを浮かべながら、「ワイな、大昔に蓋を開けると氷結し始めるジュースにドハマりした事があるねん」と言う。ミケはすかさず、「だから何にゃあ?、とっとと結論を話すにゃあ!」と答えを促す。男はへらへらと笑いながら、「過冷却水と言う液体なんやけど、察するにその姉ちゃんの水鉄砲は液体なら何でも出来るんやろ?、ならw、過冷却水をドバーと勢いよく出して相手を無力化しなはれ!」と最後はドヤ顔。ミケは少し感心しながら、「ほーう、流石氷河期世代にゃあ、考える事がそれっぽいにゃあw」と煽る。男は、「そうそう、ワイは氷河期世代、氷雪系最強・・・って!、言わすなど阿呆!」と乗り突っ込みで返した。俺は少しくすっと笑いながら、、「ミケ!、スマホ貸してくれない?」とミケに言う。ミケは、「ほれっ!、でも神様の電話番号は分かるのかにゃあ?」とスマホを投げる。俺はスマホをキャッチして、「ああ、大丈夫!、こういう時の為に神様に連絡先をQRコードがして貰ったから」と懐から一枚の紙を出す。髪には複雑な文様が印刷されていて、それを俺はスマホのカメラで撮影してリンク先に移る。移動先のwebには複雑な数字とも見える羅列した文字が一行だけありそれをタップして通話をボタンを押した。スマホを耳に押し当て数度のコール後、「なんじゃ?、誰じゃあ?、お前?」と神様の声と共にガヤガヤと大勢の人が会話していて例えるなら居酒屋の様な雰囲気の音が耳に入る。俺はすかさず、「あっ、志村です、あなたの契約者です」と先方に自分の事を認識させようする。少しの沈黙の後、「志村?、電話番号が違うでないか!、私を騙そうとしているな?、たくっ、最近は神様を騙す不埒な契約者です詐欺が多いと聞くが、私に掛けたのは運の尽きよw、罰を与えてやるから覚悟せよ!」と酔っ払っているのか俺の事が全然分からない。俺は焦りながら、「ちょっ!?、待って下さい!、詐欺じゃないです!、あなたの契約者です!、コロッケとソースを貢いだじゃないですか?」と俺が特定できる事柄を言う。コロッケとソースと言うキーワードにようやく、「・・・がっはははw、冗談だw、分かっているぞ!」と体裁を整える神様。絶対分かっていなかった筈だが今回はそんな事に構っていられないので、「ははw、冗談旨いですよ神様w」と俺は全力で担ぐ。俺のよいしょに気を良くした神様は、「だろ?w、でっ?、要件は何だ?」と何とか本題に入った。俺は躊躇なく、「過冷却水って出来ます?、それから少し強めに出せるようにして欲しいのですが?」と要求を言う。神様は何かを飲んだ音を出した後、「私を馬鹿にするな!、過冷却水を出すなて訳無いぞ!、今な他の神がお前の世界から缶酎ハイを仕入れて来たんだがw、丁度この缶の銘柄が・・・ひょう?、まあいいかw、じゃあ行くぞ!」と何やら最後辺りに不気味なワードが聞こえた。神様の号令の後に俺の神器が握られていた掌に冷気を感じレモンの匂いが漂う。俺は慌ててほんの少し水鉄砲の引き金を引いてテーブルの上に出して見ると、僅かな液体があっという間に氷の塊になる。テーブルに放たれたそれをミケはすかさず近寄りスンスンと嗅ぎ、「これは・・・」と言ってペロリと舐めた。すると、ミケの目は見開き、「缶酎ハイにゃあ!」と言う。ミケの様子に俺はすかさず、「あの!、神様!、缶酎ハイじゃなくて過冷却水です!」と間違いを指摘。相変わらず雑音が多い中、「ああ?、そうか?、別に良いではないかw、ちゃんと凍るし、勢いもそれなりにしておいたぞw、アルコール入りだけどw、きゃはははw」と馬鹿笑いをした瞬間に電話は切れた。「ちょっ!?、神様?、もしもし?、もしもし?」と俺が焦っている所に、「志村!、どうしたにゃあ?」とミケが心配そうに伺う。俺はスマホを耳から放し、「何か・・・缶酎ハイの過冷却水になっちゃった・・・」と報告。それを聞いたミケは、「凍るなら問題ないにゃあ!、切り替えていくにゃあ!」と俺をフォロー。しかし、「凍っても溶けて結局水浸しじゃないのさ!」とムササビ姉妹の姉が叫ぶ。そんな時サバ子が先ほど俺がテーブルの打った缶酎ハイ過冷却水で氷になった塊をおもむろに手にして、「凄いですよ!、この氷溶けないです!」と俺たちに見せた。俺はサバ子の手から氷の塊を手に取りぎゅっと掴むと、ヒンヤリとした感覚だけで通常なら液体になる所が全くならなかった。「これなら建物の被害は心配しなくても大丈夫ですよ」と俺はムササビ姉妹の姉に氷を渡す。ムササビ姉妹の姉は疑うような目で受け取り、「本当だ!?、まるで溶けないよ?、うん、これなら大丈夫だね、まあ・・・少し缶酎ハイ臭がするけど・・・」と納得した様子。ミケは俺たちのやり取りを見届けて、「うしっ!、これで問題は解決にゃあ!、姉御!契約書の在処までナビを頼むにゃあ!」と作戦の決行を宣言した。

 

 俺たちは準備が整えると、ムササビ姉妹の保管している場所に向かう事にする。地上ではムササビ姉妹の妹派と姉派が小競り合いを始めていて、二人も保護する対象を抱えて移動するのは不可能と判断し、屋上に上り比較的ラブホテルとラブホテルの距離が近い事を利用して、ミケとサバ子の化け猫ならではの身体能力を使い飛び移る手段にした。索敵能力が優れたサバ子を先頭、次に後ろ手で親指同士を結束バンドで拘束した実行犯の男、その後に俺、そして背中には元のムササビの姿になったムササビ姉妹の姉、最後尾はミケの隊列を組み慎重に部屋のドアを開けて廊下に出た。人払いをされたラブホテル内は異様な静けさが支配していて、外からだろうか?僅かに争う喧騒が聞こえる気がする。先頭を歩くすっかりサバゲー仕様の服装をしたサバ子の軍用ヘルメットから飛ぶ出しているサバ柄の耳が忙しなく動く。物音を極力立てず俺たちは階段を上がり、後一回りで屋上に出られるドアに着くといったところで、サバ子が腕をエル字型に曲げて握り拳を作るハンドサインを出す。俺たちは予め簡単なハンドサインをサバ子から教えて貰っていたので、それが敵の待ち伏せを意味していたのが分かった。ラブホテルは封鎖されているのにどうやって待ち伏せできたのかは皆目見当が付かないが、突破するほか道は無い。サバ子は抜き足差し足で徐々に進み、その様子を俺たちは固唾に飲んで見守った。階段を上がりきって屋上の扉が有る角に差し掛かるとサバ子は振り向き耳を塞ぐジェスチャー。俺たちは耳を塞ぎ、サバ子は胸に装着している手榴弾の様なものを手にし、上部についているグリップを握る。数秒の沈黙が続き、遂にサバ子が手にしていた手榴弾の様なものを投げた!。その瞬間、鼓膜が破れそうな音と共に閃光が起きて、数発の発砲音がする。俺は目がくらみ暫く前が見えない状態になり身動きが出来ない。そして、ポンポンと肩を叩く感触と共に、「志村さん、待ち伏せを無力化しました!、もう大丈夫ですよw」とサバ子の声がした。俺はゆっくりと目を開けて、やや不明瞭な視界でゆっくりと階段を上がると、枕通りの検問をしていた交通誘導員の恰好の下っ端ムササビが白目で横たわっている。ミケも後から駆け上がり俺の横に着くと、「流石サバ子にゃあ!、また腕を上げのかにゃあ?」とサバ子を誉めた。サバ子は照れながら、「先輩止めて下さいよw、それ程でもないですw」と返す。ミケはサバ子に近づき、「謙遜するなにゃあ、待ち伏せした者をこうもあっさりとやれるのは誰でも出来る事じゃないにゃw」とサバ子の肩を叩くと、ミケとサバ子二人は手際よく気絶している下っ端ムササビを壁に寄りかからせ、一仕事を終えたミケは振り返り俺を見て、「志村!、この三人に撃ってみるにゃあ」と突如指示。俺は戸惑いつつ、「えっ!?、何で?」と尋ねる。ミケは腕を組み、「ぶっつけ本番で使って、予想外の威力や威力不足でこれからの戦闘中にパニックになるのは御免にゃあ!、今の神器の状態を確かめるにゃあ」と説明した。異論の余地が一切ないその説明に俺は、「そうだな!、了解!・・・ごめんなさい」と謝罪しながら神器の引き金を引く。想像以上な量の缶酎ハイ過冷却水が半透明の水鉄砲の先から勢いよく飛び出し、気絶している下っ端ムササビ三人組が飲み込まれた。一秒もかからず、「パキパキ」と小気味いい音と共に氷の塊が形成され、下っ端ムササビたちは顔だけ出して、缶酎ハイ特有の甘ったるいアルコールの匂いがする氷の塊に浸かった形になった。ミケは早速氷を弄って強度を確かめる。軽く小突いたりした後頷く仕草をして、「これなら大丈夫にゃあ、あたいやサバ子が倒した敵をこれからその神器で拘束するにゃあ」と役目に俺に与える。俺は頷き、「おう!、任せとけ・・・ちょっ!?何やってるんだあんた?」と返事返そうとしたら、実行犯の男が後ろ手で顔を氷に付けてかじり始めたのを見て驚く。男はシャクシャクト音を鳴らしながら立ち上がり、「イケるでw、缶酎ハイ過冷却水を売ったら儲かりまっせw」と嘯く。イラついた表情のミケは、「お前は黙っていろにゃあ!、後で拘置所に幾らでも差し入れしてやるにゃあ」と壁に顔を押し付けた。俺たちは再び隊列を組み、サバ子が慎重に屋上へと通じる扉を開けて先陣を切って飛び出す。数秒の沈黙の後、「オールクリア!、屋上には誰もいません」とサバ子のゴーサインが聞こえて俺たちは屋上に出る。ラブホテルの屋上は大量の室外機と普段は見上げる巨大な看板のネオンがあった。ネオンの一部が漏電しているのか、不快な音を出し点滅を繰り返すのを横目に隣のラブホテルが見える袂まで俺たちは進む。下からでは結構近くに隣接していると思われたが、屋上からこうしてみるとかなりの距離がある・・・。俺はフェンス越しに下を覗き吹き付けるビル風を顔に受けると一歩下がり、「ミケ・・・、本当に大丈夫か?」と確認。ミケも下を覗き黒髪のツインテールとフリフリのメイド服を風にはためかせながら、「大丈夫にゃあ!、化け猫の力を信じるにゃあ!」と満面の笑みを俺に向けた。フェンスをミケの蹴りで折り曲げ、ムササビ姉妹の姉が苦情を言ったが俺たちはなだめ、飛び移る準備を開始。まずは一番身軽なムササビ姉妹の姉がそのまま滑空して隣の屋上に難なく着地した。そして次は、「ちょっ!?、何するねん」と恐怖と動揺を浮かべながらミケに持ち上げられた実行犯の男。ミケは少しタイミングを取る様に持ち上げた男を揺らし、「かっ飛べにゃあ!」と隣の屋上めがけて投げた。宙に舞った男は、「ぎゃああああ」と叫び向う側の屋上の地面にワンバウンドしそのまま転がる。次は俺だが・・・やはり投げるのだろうか?。俺は少し緊張した趣で、「あの・・・俺はどうやって向う側へ?」と質問する。するとサバ子が俺を突然お姫様抱っこして、「こうするんです!」と勢いよくジャンプした。下から吹きあがるビル風を受けながらサバ子の顔越しに見える稲荷歓楽街の夜景・・・。その素晴らしい景色に見とれていると、あっという間に向う側の屋上に着地し、丁寧に俺をサバ子は降ろし、「大丈夫でしょ?」とウィンク。その笑顔に不覚にも少し見とれていた俺だが、「あっ、うんw、ありがとう・・・ミケは?」と誤魔化す様にミケの様子を見る。ミケはジャンプしようと少し一歩下がったていた。さあ、飛ぶぞっという瞬間!、上空から、「ボフッ」と化け者が出す例の音が複数。そして複数の下っ端ムササビが何処からともなくミケの周りに降り立つ。「お前ら!、どこから来たにゃあ?」とミケは臨戦態勢。俺は驚き、「ミケ!、早くこっちに来い!」と叫んだ。

 

 向う側の屋上で孤立無援になったミケ。サバ子が援護しようと銃を構えるとミケがこちらを向いて、「サバ子!、あたいこの事は気にするなにゃあ!、この程度なら楽勝にゃあ!」と援護を止めさせる。サバ子は銃を降ろし、「でも!、先輩!」と叫ぶ。そんなやり取りの間、相手は勿論待ってくれず早速ミケに飛び掛かる。ミケが本格的に戦闘している所を俺は見た事がない・・・本当に大丈夫なのだろうか?。一人の交通誘導員姿の下っ端ムササビがミケに腕を掴んだ瞬間、まるで時代劇の殺陣の様に自ら宙に舞い頭と足が空中で逆転。ミケはそのままくるっと回転し勢いを付けて肘を下っ端ムササビのみぞおちに入れた。下っ端ムササビは吹っ飛びフェンスに跳ね返され地面に落ちると、腹を抱えながらジタバタともがく。あっという間のその出来事に俺たちを含めその場にいた下っ端ムササビ連中も固まった。立場が逆転された下っ端ムササビたちは距離をとり静観。その様子を見ていた俺の耳に、「あれは・・・ニャア気道」とサバ子の呟きが聞こえる。俺はすかさずサバ子を見て、「サバ子さん!、知っているんですかあれを?」と尋ねた。サバ子は頷き、「私も噂程度ですが、化け猫の間でまことしやかに囁かれている伝説の護身術があるんです・・・その名もニャア気道、昭和初期にカレー好きの護身術の達人に飼われていたキジトラの化け猫が開祖と言われています」と言う。俺はミケの様子を伺いなら、「ニャア気道?、凄いんですか?」と再びサバ子に尋ねる。サバ子もミケを見ながら、「はい・・・、噂では一対百でも勝てるとか、流石先輩です!」と最後は尊敬の念を抱く仕草をした。俺とサバ子がやり取りをしている間も、順調に下っ端ムササビを倒す。その光景は戦っているという感じでなく、まるで舞っている踊りの様相を呈していた。10人ぐらいの下っ端ムササビは全てのされ、ミケは悠然と飛んでこちらに着地し、「待たせたにゃあw」と言う。俺はミケの肩を叩き、「何だよw、そんな武術を持っているなら早く言えよw」と茶化す。ミケやドヤ顔になり、「まあ、乙女は秘密の数だけ魅力があるにゃあw、ビギナーガールのお前も見習うと良いにゃあw」と調子に乗りまくる。俺は顔を引きつらせながら、「いや、俺もう直ぐ男に戻るから・・・」と返した。後一つ飛び越えれば目的の場所だ・・・。再びミケがフェンスを蹴り倒し、先程と同様の順番で飛び移ろうとした時、またしても上空から、「ボフッ」と複数の音。ミケはイラついた表情で、「いったい何処から湧いてくるにゃあ!!」と叫ぶ。確かに待ち伏せされた事といい、どこからともかく奴らは現れる・・・。ムササビ姉妹の姉はいつの間にか枕通りの外側に面しているフェンスにいて、「ムササビカタパルトだよ!、奴ら枕通りの外側から来てるよ」と俺たちに向けて叫んだ。俺はミケとサバ子の乱戦に巻き込まれない様に端に寄って移動し、ムササビ姉妹の姉の元へ行き外側を見る。そこには、道路を挟んで向かい側のビルの屋上にシーソーの様な板が並んでいて、交通誘導員姿の下っ端ムササビたちが一定間隔でジャンプして板に飛び乗り何かを飛ばしていた。俺は上空を目を凝らしよく見ると、ネズミの様なシルエットが見えたり消えたりしているのが分かり、「もしかして・・・元の姿のムササビを飛ばして滑空してこちらへ来ている?」と呟く。ムササビ姉妹の姉は、「正解だよ、本来なら他の化け者勢力に枕通りが占拠された時に行う戦術さね・・・」と俺の予想を肯定した。次々と降り立つ下っ端ムササビ。数で押し切る算段なのだろう・・・。ミケは向かって来る下っ端ムササビを次々と投げ飛ばしながら、「お前たちは早く飛び移って契約書を確保するにゃあ!、しんがりはあたいがするから安心するにゃあ!!」と指示をする。サバ子は銃で応戦しつつ、「了解!」と返し、実行犯の男をやや乱暴に投げ飛ばす。向うがに転がりながら着した男は、「ワイは保護対象やぞ!、もっと丁重に扱わんかい!」と抗議した。そんな男の戯言に俺たちは相手せず、先程と同様に俺をお姫様抱っこでサバ子は抱えて飛んだ。少し遅れて滑空して俺の背中にしがみつくムササビ姉妹の姉は、「この建物も部下に封鎖させているから一応大丈夫だと思うけど・・・、あのドアを開けて階段を降りれば妹のプライベート区画だよ!」と不安が混じった感じで言う。俺たちは頷き、サバ子を先頭にドアを蹴り破り突入。中は始めにいラブホテルの内装と一緒で、一瞬戻ってきたと錯覚する。階段を数段飛ばしながら降りると、白い壁に照明が明るくラブホテルというかどちらかというとオフィスの様な印象を受ける景色が広がっていた。

 

 通路の中央ら辺に観音開きのドアが一つあって、俺たちは慎重に開けて入る。室内は本来ある壁が撤去されて吹き抜けの広い空間になっており、サーバーという奴だろうか?、数えきれない端末が並んでいて、「カチカチ」と一定間隔で音を鳴らしていた。キョロキョロと室内を見回りしている俺にゾクッと寒さで身震いが起き、「ここ・・・寒くない?」と思わず言う。サバ子は注意深く辺りを調べながら、「この数の端末だと、室温をこの位冷やさないと熱暴走を起こしてしまうんです」と説明。噂で聞いて事がある・・・こんなに冷やさないとダメんなんだ・・・。索敵が終了したサバ子は一直線に一つのモニターが有る端末に向かい操作を開始し始める。俺は特にやれる事は無く、彼女の元へ駆け寄った。サバ子は手慣れた手つきでキーボードとマウスを操作して、俺には皆目見当つかないデーターを出して何かを調べている。サバ子はタクティカルベストのポッケからUSBを取り出し端末に差し込み、キーボードから小気味い音と出しながら、「志村さん、そこに金庫があるみたいです・・・、今解錠しますから中を調べて下さい」と俺に指示。サバ子が一瞥した方を見ると中型の金庫があり、端末と何やら繋がっていた。俺が金庫の前でしゃがむと、金庫の上部にある赤いランプが緑に変わると同時に、「ピピ」と音と共にガチャリと扉が半開きになる。俺が金庫の扉に手を掛けると、ムササビ姉妹の姉が来て、「さあ、何が有るんだろうね・・・」と言う。金庫の扉を開け切ると、札束と数冊のパスポート、それに書類の様なものが一番下の段にあった。俺は早速数冊の書類を取り出し見始める。サイドビジネス契約書と借用書だけで、もしや別の場所に保管していたのではと不安がよぎる。一つ一つまた一つとめくり諦めかけた時、俺たちが探し求めていた契約書が現れ、「あった・・・」と俺は呟く。サバ子やムササビ姉妹の姉は即座に俺の見ていた資料を見て、「やりましたね!」とサバ子は言い、「全く、あの子は・・・」と複雑な仕草。契約書は三つの割り印と、エナジードリンク横流ししていたタヌキの研究員の名と、そこにいる実行犯の男の名、そしてムササビ姉妹の妹の名が記されていた。契約に記されていたパパ活女子のタンス貯金を奪った取り分は、6対2対2更に目標金額も記されている。その金額は100億。つまり、目の前にいる実行犯の男の取り分は20億円になる様だ。男は涼しい顔をしながら、「なあ?、ワイ冷え性やねん、廊下で待機してええか?」と呑気に打診してくる。端末の解析に戻っていたサバ子はおもむろに銃を取り出し、「うるさいですよ」とお尻にゴム弾をお見舞いした。失神してしまう程の威力のゴム弾だがお尻には痛みしかなく、「いたっ!!!、お前・・・シャレにならんぞ・・・」と流石にうずくまって静かになる。実行犯の男の額に脂汗が滲んでいて、俺は流石にヤバいと思い、「ちょっと失礼」とベルトを緩ませてスラックスと下着を降ろす。サバ子に撃たれたお尻は黒紫色に染まりその光景に、「うわ・・・」と俺は声を失う。このまま放置する訳にいかず、神器の水鉄砲の引き金を軽く引いてアイシングをしてやった。実行犯男はにちゃあと薄気味悪い笑顔を俺に向け、「姉ちゃん、感謝やで・・・借りが出来たな」と感謝の言葉を口にする。俺は、「お、おう」と言うのが精一杯だった。

 

 カタカタと端末操作をしているサバ子の手が止まり、「これは・・・」と呟く。俺はすかさずサバ子の隣に行き、何か見つかった?」と尋ねる。サバ子は俺を見て、「どうやら、この部屋にある沢山の端末は当初仮想通貨のマイニングとして利用されていた様です、ですが、電気代の高騰により頓挫して中止したみたいです・・・」と再びモニターに視線を戻しキーボードを操作し始めた。俺はサバ子の作業を見守りながら、「じゃあ、今は何に使用しているんだ?」と広い部屋に整然と並べられた端末を眺める。俺の質問に反応する様にサバ子の手先が一層早まり、キーボードから出る音が高速化し、「少々お待ちを・・・、ああ、どうやら個人ウォレットの保管場所にしている様です、えーと、中身は・・・嘘でしょう!?」と驚愕の表情を最後はなった。俺が尋ねる前にムササビ姉妹の姉が滑空しながら机に着地して、「どうしたんだい?」とサバ子に言う。サバ子は驚きながら、「約500億・・・、この部屋の端末内全てにあるウォレットにビックコイン500億分保管されてます・・・」と答える。ムササビ姉妹の姉は俺の肩に飛び乗って、「じゃあ、何かい、この部屋には500億の大金が有るのかい?、妹はどこからそんな大金を?」と更なる詳細をサバ子に要求。サバ子は焦りながら端末の操作を開始し、「えっと・・・仮想通貨販売所から何処かのサーバーを経由してここに送られた様ですね・・・」と解析情報を言う。俺はモニターを見つめ、「販売所って、そんな簡単に盗めるものなのか?」と仮想通貨に対して素人の俺は単純な疑問を口にする。サバ子は端末の解析をしながら、「このログを見るに、方法は分かりませんがどうやら正式な手続きを踏んで送られている様です」と俺の疑問に答えた。俺の肩にいるムササビ姉妹の姉はため息を付き、「我々なら出来るよ・・・、その販売所とやらの管理者に化けて本物と入れ替わり堂々と送ったのさ・・・」と消えてしまいそうなポソポソとした声を出す。サバ子は端末操作を止めて、「ああ!、ムササビの化け者さん達なら確かに出来ますよねw」と合点がいった表情。俺の知らない何かを話していて堪らず、「ちょっと待って、俺にも分かる様に説明してくれ!」と言った。ムササビ姉妹の姉はサバ子を見つめた後、「化け者の変化はね色々と制約があるのさ」と言い、「制約?、それは何ですか?」と俺は肩に乗っているムササビ姉妹の姉に尋ねる。するとムササビ姉妹の姉ではなくサバ子が口を開き、「化け者が化けれる人間は基本一度決めた一種類だけなんです、それから年、性別は誤魔化せません、理論は分かりませんが年齢相応の姿に勝手になり、精々自由に出来るのは服装、髪型とメイクそれに僅かな体系変化位ですね」と俺が想像していた変化とは随分違う。俺は目をパチクリして、「えっ!?・・・じゃあ、凄い美人の芸能人に化けたり、逆に年寄りに化けたり色々な姿に変化出来ないって事?」と確認。サバ子は頷き、「はい、概ねその通りです、だから私たち化け者は変化する対象を慎重に選ぶんです」と俺を肯定する。俺が驚いているとムササビ姉妹の姉がサバ子の肩に乗り移り、「でもね例外が有るのさw」とニヤリ。俺はムササビ姉妹の姉に、「例外って何です?」とすかさず返す。ムササビ姉妹の姉は腕を組み、「私たちムササビの化け者は、化け狐の様に術を使えず、化け猫の様に驚異的な身体能力もなくw、他の種族と比べると見劣りするけどさw、見たものなら何でも変化出来るんだよ!w」とドヤ顔をした後、「ぼふっ」と煙と共に例の音を出す。煙が晴れるとサバ子と瓜二つの姿の女性が現れ、「どうだい?w、よっ!」と言ったら、「ボフッ」と続けざまに例の煙を出した。煙が晴れると今度は見知らぬ女性が立ってい、「誰・・・です?」と俺は尋ねる。サバ子が苦笑いし、「何言っているんですw、志村さんですよw」と言う。不覚にも自身の姿が分からず、「あっ・・・w、そうだねw」と照れ笑い。「ボフッ」と煙が又も出ると机に元の動物の姿をしたムササビ姉妹の姉が現れ、「どうだい?、凄いだろう?、この能力を使えば例の販売所とやらに侵入して仮想通貨を送る事なんて造作もないさねw」と自慢げに言った。俺はムササビ姉妹のパフォーマンスに感動しながら、「凄いです!潜入とか簡単そうw」と賛美を送る。先ほどまで気が抜けない緊張の連続だったが俺たちは少し気が緩み談笑した。サバ子はひとしきり笑い終わると、端末に向き直り、「それでは、販売所に仮想通貨を送り返す作業に入りますね」と盗んだ物を返す作業に入る。俺は、「サバ子さん!、ファイト!」とエールを送り、「妹のやらかしを帳消しにしておくれ!」とムササビ姉妹の姉は懇願した。

 

 空いている椅子に俺は座りサバ子の作業を見守っていると、「カチャ」とドアノブが回転する音がする。俺はすかさず扉の方を注視しながら、「皆!何か来た!」と警戒を促す。俺たち一同が扉に注目していると、ゆっくりと観音扉が開き、「ごめんなさい、苦戦しちゃったw」と黒髪でツインテールにメイド姿、ミケがウィンクしながら入って来た。俺は、「ミケ!、おま・・・」と言い終わる前に、「パン」と爆竹の音が鳴りミケが吹っ飛ぶ。俺は驚愕しながら、「ミケーーー!!」と叫び音の出所に視線を移すとサバ子の手にしている銃の先端から煙が出ていた。俺は動揺し、「サバ子さん・・・何故?」と言う。サバ子は何事もなかったように端末操作をし始め、「あれは先輩じゃないですよ、猫なまり語尾が無かったです」と淡々と説明した。確かに・・・入って来た時普通の喋り方だった・・・。だが、それでも心配になり気絶しているミケに瓜二つのメイドに近づく。丁度おでこに大きなこぶが出来ていて、白目を向き口から涎が出ている。どう見てもミケだ、観察をしても見分けが付かない。俺が偽物だと確信を得られずにいると、ムササビ姉妹の姉が偽物と思われるメイドの体に着地しスンスンと匂いを嗅ぐ仕草をして、「これはムササビだね!、ミケじゃないよ」と太鼓判を押す。俺はため息を付き、「安心しました・・・ありがとうございます」と礼を言う。ムササビ姉妹の姉は、「私が今、出来るのはこれ位のものさねw」と返す。侵入したてきた偽ミケを壁に寄りかからせ、再び俺は椅子で待機。数分後またもやドアが開く音がして、「おう!、倒して来たぜw」と姿かたちが同じでも明らかな偽物が入室。サバ子が即座に銃を構えてヘッドショットを決め、俺が壁に寄りかからせる作業がこのあと30分ほど続く。サバ子の仮想通貨返還作業はまだ続いていて、俺は入口を注視しながら壁を見た。あれから数二十人程のミケの偽物が侵入してきた・・・。壁にはずらりと並んだ気絶しているミケの偽物が横たわっていて、「随分と壮大な景色になったね・・・」とムササビ姉妹の姉が呆れる。こうもミケの偽物が侵入を繰り返すという事は屋上の戦闘はまだ続いているという事だ。ミケと別れて一時間位経っているが、大丈夫なのだろうか?、いくら体力自慢のミケでも持つのか?。色々と頭の中で考えていると、「終わりました!w」とサバ子が万歳をする。俺は立ち上がり、「お疲れ様!、無事送り返したの?」と言う。サバ子は背伸びをしながら、「いえw、仮想通貨販売所が封鎖しているので、送られてきた時に経由したサーバに無理やり押し付けて終わらせましたw」とあっけらかんと責任放棄。俺は驚き、「ちょっ!、それじゃあ返したことにならないんじゃ?」と問い詰める。サバ子はウィンクをして、「大丈夫ですよw、このサーバーは国立研究所のものらしいので、サーバー内に私が無理やり作ったウォレットを技術者が発見したらしかるべく対応をするでしょう!、まあ・・・結構な突貫工事でやったから先方のサーバーはダウンしたようですが」と最後は聞きたくない事を言う。俺は顔を引きつらせながら、「はは・・・そうなんだ」と返すのが精一杯だった。取り敢えずやれる事をやった俺たちはミケの援護をするために屋上に踵を返す。サバ子を先頭に慎重に階段を登り、俺は実行犯の男に肩を貸して後に続く。屋上に着くと死屍累々、下っ端ムササビたちが数えきれない程倒れていて、中央には外見上は異常はない様子の肩で息をしているミケがいた。ミケは俺たちの存在に気が付き、「はあ、はあ、け、契約書は見つけたのかにゃあ?」と尋ねて来る。俺はすかさず、「契約書は見つけた!、後は所長たちが来るまで持ちこたえるだけだ!」と叫ぶ。ミケはニコリと笑い、「でかしたにゃあw、ラストスパートと言いたいけどにゃあ・・・さすがに体力が限界にゃあ・・・」と膝をつく。俺は実行犯の男を階段に座らせ、サバ子とミケの元へ駆け寄る。ミケは汗をダラダラと全身から滴らせ、俺から見ても明らかに限界。ミケに肩を貸し立ち上がり一旦屋内に避難して先程の端末が有る部屋に籠城をしよとした時、「ボフッ」と上空から複数の音がした。ミケはうんざりした顔で、「またかにゃあ・・・、ムササビ共はいったい何人いるにゃあ」と言う。俺がミケを抱えながら屋上の入口の向かい、サバ子はしんがりを務め銃を売りながら退避行動した。ミケの体はやけに軽く、力も抜けていてこれ以上の戦闘は無理そうだった。屋内に入り階段を降りようとした瞬間!、目の前には数えきれない程の下っ端ムササビがいて、「こりゃあ大変・・・私の地上にいる部下が突破されたみたいだ!」とムササビ姉妹の姉御が叫ぶ。前にも後ろにも大勢の下っ端ムササビが迫り、これは万事休すかと俺は覚悟を決める。あと数秒で俺たちは下っ端ムササビたちに袋叩きに会うだろう・・・。歯を食いしばり、力の限り手にしている神器を撃ち、無駄な抵抗と分かってもやらずにはいられなかった。遂に下っ端ムササビにもみくちゃにされて、あちらこちらを引っ張られてせめて大事な契約書を抱えて最後まで取られない様に抵抗をする。すると、「あらあらw、面白そうねw、私も混ぜれくれない?」と聞き覚えがある声。そしてこげ茶色の塊が横薙ぎして屋上にいた下っ端ムササビは一掃された。黒髪を束ね、胸元を大胆に露出した白いワイシャツに、際どいスリットが入った黒のロングスカートでえげつない角度のハイヒールを履いた所長が屋上に降り立つ。数えきれない尻尾をユラユラを揺らしながら所長は、「お待たせw、頑張ったわね、今回はご褒美をあげるわね!」と俺たちにぺろりと赤い舌を出す。俺たち駆け寄り所長の後ろに下がる。「はいw、注目!」と所長は言い、不自然にとぐろを巻いていた一本の尻尾をおもむろに、屋内から出て来た下っ端ムササビたちの前でとぐろを解き、何かをゴロンと置く。俺は目を凝らして見るとそれはムササビ姉妹の姉に瓜二つの姿をしたタマネギの様に束ねた黒髪にひび割れたサングラス、中年位の女性・・・ムササビ姉妹の妹だった。トップのその悲惨な姿に下っ端ムササビたちは戦意喪失し力なくその場に崩れる。俺の肩に掴まっていたムササビ姉妹の姉は妹の元へ行き、「ボフッ」と音共に煙を出し、妹瓜二つの姿になり、「馬鹿なことしたね・・・」と呟き頭を撫でた。ようやく戦闘が終わりヘナヘナとその場に座り込んだミケとサバ子。俺は辺りを見回し懐のものに気が付き、「あの、契約書です」と所長に手渡す。所長は笑顔で受け取り、「ご苦労様w、化け者裁判の証拠資料として提出できるわね!、三人とも今日は本当にご苦労様w、後は私たちは処理するから休憩して良いわよ」と労を労う所長の言葉で俺はその場にへたり込んだ。俺の背中に寄りかかっているミケが、「今日は自販機の補充は無理にゃあ・・・」と呟く。近くにへたり込んでいるサバ子は、「私はお婆ちゃんにマッサージとブラッシングをして貰います・・・」と言う。俺は、「俺はたらふくご馳走を食べて寝る・・・」と夜空を見上げた。

 

 少し遅れて所長の部下である黒服で様々な柄の猫耳と尻尾を携えた男女が忙しなく現場で動き、差し入れのコーヒーを飲みながら、それらを何となく俺が眺めていると、屋上の入口から身に覚えがある黒服が実行犯の男を担いで来た。黒服の男は所長の前まで来ると実行犯の男を降ろし、「この男はどうしやす?」と少し時代がかった口調で所長に指示を仰ぐ。所長はクスっと笑い、「あらあら、初めまして、実行犯さんw」と実行犯の男に挨拶。男は所長の姿を見て、「偉いべっぴんさやなw、ワンナイトラブせえへん?」と軽口をした。ミケがよろよろ立ち上がり、「オッサン・・・、調子に乗るなよ!、あたいがバチボコにしてやるにゃあ!」と実行犯の男に向かう。だが、黒服の男が実行犯の男を地面に押し付け、「姐さん、休んでいてください、この不埒ものはあっしが制裁を与えやす・・・」とミケに言った。ミケはその場に座り込み、「そうかにゃあ?、じゃあそうさせて貰うニャアwクロベエ!」と返す。クロベエと言う名にようやく思い出し俺は、「久しぶり!、クロベエ!、俺だよ俺!、志村!」とクロベエに話し掛けた。クロベエは俺を見て、「はて?、あっしが知っている志村さんは男でやす、あなた様はどちら様で?」と俺に尋ねる。俺が説明しようと口を開くと、所長がニヤニヤしながら、「クロベエは知らないのねw、この子は正真正銘の志村君よw、神様の気まぐれに女の子になっちゃったのw」と説明をした。クロベエはじっと俺を見つめ、「そうでやしたか・・・、それは難儀な事ですね」と真面目に返す。今まで静観していたサバ子が、「クロベエは真面目過ぎです、そこは少しいじってあげるのが作法ですよ!」と言う。クロベエは困った表情で、「あっしはどうもそのような事は不得意でして、勉強中でやす」と当回しに遠慮した。所長は煙管を懐から出し火を灯すと吸い込んで夜空に吐き出し実行犯の男を見つめ、「取引しましょう」と一言。実行犯の男は首を傾げ、「取引って何や?」と返す。所長はクスリと笑い、「今回のパパ活女子の失神事件をあなたが単独主犯にする話よw、もちろんタダとは言わないわ・・・、このまま罪を被ってくれれば一億、あなたの口座に振り込んであげるわ、贈与税の辺りも私たちで何とか処理してあげる」と取引内容を言う。男は少しの沈黙の後、「どうせ断れないのやろw?、ええでw、ええでw、罪被ってやるわw」と取引を了承する。所長は笑顔で、「僥倖w、それでは手を貸して」と実行犯の男に手を差し出す様に要求した。実行犯の男は少し戸惑いながらも、「何をするんや?」と手を差し出す。所長は実行犯の男の手の甲に人差し指を付けて、何やら文字を書く仕草。すると、実行犯の男の手の甲に見た事がない文字が浮き上がり消えた。実行犯の男は不思議そうな顔で自身の手の甲を眺め、「今のは何や?」と所長に尋ねる。所長は赤い舌を一度出し、「それはね、樹印(ジュイン)よ、陰陽道の木・火・土・金・水、五行における木由来の契約印で、植物があなたを四六時中監視しているわ、今回の契約を破る素振りをしたら樹印が発動して始末してくれるのよw」と説明する。男は少しも驚かず、「始末ってどうなるんや?」と詳細を要求。所長は妖艶な笑みで、「知らない方が良いわ」と一言だけ言った。実行犯の男は諦めて、「まあ、ええわ、要するに裏切らなければええんやろっ?」と確認した。所長は頷き、「そうよ、何もしなければ数十年後にあなたは一億円を手に出来はずよ」と肯定する。実行犯の男は、「結局、芋引く人生やったわ」とぽつりと呟いた。所長の会話が終わったのを察したクロベエは、「それではこの男を最寄りの警察署に届けておきやす」と男を抱えて屋上から飛び降り、稲荷歓楽街の夜空に実行犯の男の叫び声がこだまし、これでようやく全てが終わった・・・。俺たちは所長が手配したタクシーに乗ってそぞれの帰路に着く。それから一週間後、俺は元の性別である男に戻った。いつもの様に電車で稲荷歓楽街向かう。電車の中でぶら下がっている週刊誌の広告に、実行犯の男の顔があって、連続こん睡強盗犯の闇と銘打った記事が書かれている。実行犯の男はあの後、所長との約束通り単独犯として自供をして罪を全て被った。世間はその事件で賑わせていて、ネットでも話題でどこを閲覧してもその事件で持ち切りだ。恐らく暫くはこの事件は世間を賑わすのだろう・・・。枕通りは引き続きムササビ姉妹の姉が仕切り、妹を始め今回の事件に与した下っ端ムササビたちは化け物裁判で判決が下され稲荷歓楽街から姿を消す。パパ活女子はと言うと、意識不明の被害者はタヌキの研究者たちの懸命な分析により出来た中和剤で回復し、今回の事件を機に稲荷歓楽街商工会から正式に活動禁止条例が発令され、枕通りのパパ活路地にはもう一人もいない。貧困や奨学金の返済で止むに止まれず活動していたパパ活女子には所長が裏から手を差し伸べて、稲荷歓楽街で安全且つ稼ぎが良い仕事を紹介した。主にノスタルジーJKにて働いているらしい。稲荷歓楽街駅に着き俺は電車から降りて改札口を通り駅構内でこれから帰宅の途に着く稲荷歓楽街で働いている人々とすれ違う。駅から出ると青空の下で、先週の喧騒が嘘の様に何事もなく稲荷歓楽街商工会規則に則り清掃作業をしている人たち。俺の視界の中には化け者がいるのだろうか?、まあ、些細な事だ・・・ここは言葉を操り人の姿に化ける動物、化け者が跋扈し多く住まう稲荷歓楽街なのだから。

 

362曲目の紹介

 

 今回ご紹介する曲は、R Sound Designさんが作詞作曲、イラストをがーこさんによるレトロポリスです。

 

 本曲は時代の移り変わりによって価値観や流行りが次々と変わり、最先端がふとした瞬間に誕生したものに追いやられ気が付くとレトロな部類になる・・・そんな切なさと自身にある新しい部分を見つけてアップデートを計り新たな未来に返り咲こうとする再誕の歌を可不さんが歌います。

 

 本曲の題名レトロポリスは、恐らくですが懐古主義、古めかしいものを好む事を表すレトロと、古代ギリシャ時代における政治や軍事の集合都市を表すポリスが合わさった造語だと思われます。本曲の意味する所は、古くなった者たちの集合都市の意で、個人的な解釈になりますが世の中は等しく皆、古くなり新しくなる新陳代謝をしているという意味合いだと思いました。

 


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 本曲に採用されてドット絵のgif動画は味が有って良いですね!。曲の方も情緒感がある秀逸な歌は思わず本曲の世界観に浸ってしまいます。

 

 本曲レトロポリスは、古いものから新しいものへと移り変わる常世とは違う現世の常(つね)を、情緒感溢れる歌詞で表現して、最後はその常(つね)に抗う様に返り咲こうとする気概を宣言する感じは、聴き手に諦めずに生きようと促してくれる力があります。最近少し疲れ気味でやる気が出ない方など、本曲を聴いてみては如何でしょうか?、きっとあなたの力の源に働きかけると思いますよ!。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

pixiv百科事典様より

可不

コトバンク様より

レトロ

ポリス