煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

出会いによる刹那の輝きを歌う VOCALOID曲

 

 

 こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 照り返す太陽の光が本能でしょうか、身の危険を感じる季節に突入しましたね。去年の殺人的な暑さを経験した所為もあり体への負担は軽微で済んでいて、今の所、自分は大丈夫そうです。まあ、去年から周知されていた気象庁の予報通りになってしまいましたが、この急激な気温の上昇には驚いてしまいますよね。直近の静岡県によるこの時期で、初の40度越えを観測を報じたニュースや、イワシの獲れる海域が段々北上している事実に、何故、国連や世界中の国々が環境問題に熱心に取り組まれているのが分かりますよ。自分も環境問題に協力したいのは山々なのですが、カーボンニュートラルに関わる設備投資は高コストで、一般底辺市民の自分では到底出来る訳も無く、精々、新しいエアコンに買い替えて省エネに貢献する事が関の山です。スイスの大手銀行UBSさんの発表したデータによると、日本の富裕層は増加傾向らしいので、恐らく為替や株、はたまた不動産投資で資産を築くことに成功したであろう方々にお任せします。

 

今回のお品書きになります

 

 

 

煮干しがお送りするちょっとした物語

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

 



 失態を犯した和光(わこう)と正厳(しょうげん)は住職から托鉢(たくはつ)を命じられいつもの三倍という条件を課せられる。だが転んでもただじゃ起きないのが和光、逆にそれを利用して屏風絵の正体を材木問屋の三河屋の主、徳兵衛に問いただそうと正厳に提案。正厳にしても屏風絵の正体を知りたいのは山々で快く了承する。二人はいざ参らんと勇んで江戸へ向かうのだった・・・果たして二人を待ち受けるのは何か?。

 

 山寺から数刻、麓まで辿り着いた二人は街道筋をひたすら歩き関所を目指す。江戸に続く街道は整備されおり、二人の歩みを一層早まってあっという間に関所に着く。和光は関所の門番に、「ご苦労様でやす、あっし共は山寺の僧でございやす、托鉢をするため来やした」と言う。門番は和光と正厳をジロジロと見て、「中で吟味いたす故、あそこで待機しておれ」と関所の中にある屋敷を指す。屋敷には畳の上で様々な人が寛いでいて己の番を待っていた。和光はニコリと笑い、「へへへw、これはどうも分かりやした」と素直に指示された屋敷に向かい、正厳は無言で門番に会釈をして兄弟子の和光の後に続く。屋敷の畳に上がる前に縁側で桶に入れた水で足を洗っている二人に対して年増の女が近づき、「あらw、お坊様方w、ご苦労様です」と和光と正厳それぞれの脇にお茶を置く。和光は足を洗うのを止めて、「おっw、こいつはありがてぇw、へへっwすまねぇな」とありがたく頂く。少し遅れて正厳も茶碗に口を付けて、「ありがとうございます、旅の疲れが癒されます」とお礼を言う。年増の女は口を手で隠し、「そんなw、良いですよ礼なんてw、これは私のお役目ですからw、それよりもお坊さんたちは托鉢のお役目ですか?」と最後は尋ねて来る。和光は茶碗を置き、「そうでぃw、徳を積むためにはるばる山寺から来たんでぃw」と答えた。年増の女は、「こんな末法の世さね、徳なんか積めるのかね?」と疑いの目を二人に向ける。正厳はズズとお茶を飲み干して、「こんな世ですからこそ、徳を積まないといけないのです、飢饉により人々の心は荒んでいますが、御仏の心を親身に伝えればおのずと心は穏やかになり徳を喜んで積むでしょう」と真っ直ぐな目で年増の女に言った。年増の女は依然として疑うような目を向けつつ、「なら、良いけどね・・・、お上は質素倹約とうるさいし、あたしゃ駄目だと思いうけどね」と去る。和光は手ぬぐいで足を拭きながら、「江戸は今、水野忠邦の野郎が推進している質素倹約で随分と寂れちまっているらしい・・・やっと飢饉が収まってこれかって時によ、何を考えているのやら」と愚痴を言いながら畳に胡坐をかく。足を手ぬぐいで拭き終わった正厳は兄弟子の和光の隣に正座で座って「兄者!、ここでお上の悪口は御法度ですぞ!、もしお役人に聞かれでもしたらただじゃ済みませんぞ?」と警告を発する。和光はへらへらと笑いながら、「そんなのわーってるよ、でもみんな言ってるぜ?」と言う。和光のその人目を気にしない物言いに同じく待機している者たちにクスクスと笑いを誘って頷く。それから数刻すると、二人の番になり役人の案内に従い関所番士の吟味部屋に入る。吟味部屋には関所番士が書物を見ながら忙しそうに作業をしていて、入って来た和光を見るや否や、「何だ和光か・・・許可する!、次!」と役人に次の吟味を促す。その瞬間和光が関所番士の前に座り込み、「ちょw、ちょwそれは寂しいですぜぇw、こう何か、お主、江戸には何用に参ったのだ?とかやりましょうぜぇw、ほらっ!、この往復手形、何かおかしくないですかい?」と懐から往復手形を出して駄々をこねる。関所番士は書物をパシャリと叩きつけてから和光の剃髪頭を叩き、「やかましい!!、飢饉以来、食い扶持を求めて農民が江戸に入ろうとあれやこれやと手段を講じて山ほど来るのだ!、お前の様な生臭坊主に構っておれん!、とっとと行け!」と怒髪天。和光は己の剃髪頭を撫でながら、「へ、へい」と後退し、正厳は和光の袖を引っ張り、「兄者!、行きましょう」と部屋から出たら、入れ違いに門番の役人が血相を欠いて入って来た。門番の役人は跪き頭を下げて、「恐れながら申し上げます!」と言う。関所番士はムッとしながら、「なんじゃ!!」返す。門番の役人が頭を上げて、「はっ!、例の百姓どもが証拠にも無くまた来ました!」と報告。すると関所番士は机を掌で叩き、「またあいつらか・・・、蹴散らしてくれるわ!」と顔を真っ赤にして部屋を飛び出し、それに門番の役人が続く。その様子にポカーンと眺めていた和光と正厳。二人は騒ぎに巻き込まれまいと、追われる様に関所を後にする。目の前に広がる江戸の街を見つつ和光は、「おおこわっ、あの方はいつもなら気さくな良い方なのによ、こんな世の中じゃそうなるかねぇ」と自嘲気味に言った。正厳はムッとしながら、「あれは兄者が悪いのですよ!、お役目中にあの様な振舞をすれば誰であろうと怒りますぞ?」と警告。和光はへらへらと笑い、「へへっw、違ぇねえw」と返す。かつて江戸八百屋町と謡われ活気に富んだ毎日何かが生み出される文化の発祥の地も、飢饉を境に活気を失われれ暗雲漂う。和光と正厳らはその曇った顔の人々を見ながら托鉢の場所を探すと突如、「きゃーー」と女の叫び声がした。

 

 和光は「正の字!聞いたかい?」と正厳に確認。正厳は頷き、「はい兄者、確かに聞こえました」と肯定する。二人は颯爽と叫び声がする方へ走ると人だかりが出来ていて隙間から何やら揉めている様子が見えた。「ええい!離すのだ!」と藍色の羽織をしている武士が真新しい抽斗箪笥(ひきだしたんす)を両手に抱えながら足元にすがる女に罵倒している。何が何やら状況が分からない和光と正厳。埒が明かないと感じた和光は人だかりの最後尾にいる商人風の男に、「ちょいと失礼、あれは何だい?」と尋ねる。商人風の男は、「ああ、お坊様、これはご苦労様でございます、あれは江戸をお騒がせしている質素倹約見回り組の取り締まりですよ」と答えた。質素倹約見回り組と言う初耳な言葉に和光は、「その質素倹約見回り組ってぇ何だい?」と再び尋ねる。商人風の男は時より背伸びして渦中の武士と女を見ようと試みながら、「はっ、質素倹約見回り組は・・・おっと、水野忠邦様直轄の組織でございます、よっと、一向に進まないご自身の改革を推進するために旗本の次男坊や三男坊で組織なされた様です、クソ見えねや・・・最近はああやって雅な品や着物を目の敵にして没収をするのですよ」と親切に説明をしてくれた。ようやく事態を飲み込んだ和光はニヤリと笑みを浮かべ、「そう言えば三河屋の徳兵衛が燃やさるとか何とか言っていたと聞いたけどよぉ、なるほどねぇwそう言う事かいw、ありがとよ!」と商人風の男に礼を言って人だかりを、「ちょいと道を開けてくんなw」と謝りながら突き進む。突然の行動に正厳は慌てふためき「兄者!、どこへ?」と叫ぶ。しかし、和光は振り向きもせずどんどんと進んだ。最前列迄の人だかりを割って入った和光は更に進み質素倹約見回り組の武士の目の前まで来て、「おうおうおう!、あんた何をやってんだい?」と言う。突然の僧の出現に少し驚く質素倹約見回り組の武士。だが直ぐに落ち着きを取り戻し足にまとわりつく女を蹴り上げる様に振りほどき、「坊主が何用だ?、拙者のお役目を邪魔立てするならば、タダでは置かないぞ!」と警告する。和光は吹き飛ばされた女を抱きかかえて、「ひっでぇ事するぜぇ、お侍さんよw、この女がなにをやったんでぃ?」と尋ねた。鼻息荒く憮然とした態度の質素倹約見回り組の武士は口を開き、「この女はな・・・お上が出したお触れの質素倹約を背いたからよ!、この商家では皆が質素倹約に励んでいる所に贅沢三昧をしていると密告が有っのだ!、早速屋敷を改めたところ、この様な雅な贅沢品が発見されたのじゃ、老中水野忠邦様からの命により没収後に燃やす決まり、一介の坊主であるお主の出る幕でなはいわ!」と答える。女の着物に着いた土ぼこりを軽く払って立たせた和光は質素倹約見回り組の武士に近づき手に抱えている抽斗箪笥(ひきだしたんす)を見つめてニヤリと笑う。その不気味な挙動に質素倹約見回り組の武士は一歩下がり、「な、なんじゃ?」と不可解な顔。和光は不敵な笑みを浮かべ、「確かに・・・お侍さんの言う通りお上の指示は従うべきだぜぇ、でもよぉ、腑に落ちないですぜぇ」と言った。挑戦的な振る舞いにこめかみに一瞬血管が浮き出た質素倹約見回り組の武士は、「何が腑に落ちない?」と声を荒げながら問い質す。和光は口を開き、「江戸っ子てっはのよぉ、昔からよぉ、ものを大事にする気質なんだぜぇ、よお!あんた!、察するにこれは白木の箪笥で、古くなって薄汚れちゃあカンナで削って綺麗にしてるんじゃねぇかい?」と突如見守って静観を決め込んでいる当事者の女に尋ねた。女は二度頷き、「お坊様の仰せの通りでございます、その抽斗箪笥はわたくしめの大祖母から伝わる品、決してお侍様が思う様な金にものを言わせて手に入れた品ではございません!」と和光の推測を肯定する。推測に確かな裏付けを得た和光は囲んでいる大衆に向けて、「という事はよぉ、こいつは新品じゃなくてよぉ、古いもので言うならば究極の質素倹約の品じゃねぇか!、解せねぇよな?、みんな?」と演説をして煽る。和光の放った煽りが、一歩下がり様子を伺っていた大衆たちの心に火が着き、「確かにおかしいぜぇ!、それが贅沢品って言うなら江戸にはなんも残らないぜぇ!、ちょっとあんた何とか言いなさいよ!」と質素倹約見回り組の武士に大衆の怒りが一点集中した。流石の質素倹約見回り組の武士もたじろぎ、後ずさりをして、「お、落ち着くのじゃ、どうやらわしの勘違いだったようじゃな、うん、これは実にいい品じゃ、質素倹約を体現していて誠に結構結構、抽斗箪笥はここに置いとくぞ!、さらば!」と立ち去る。質素倹約見回り組の武士の藍色に白地で質素倹約の文字が縫い付けられている羽織がはためく後ろ姿を和光はほくそ笑んで、思いのほか事が上手く運んだ事によって、鯉の滝登りの様に調子が乗りに乗って、「古くても新しいそれが粋な江戸っ子でぃ!、一昨日来やがれっ!」と思わず言ってしまう。すると、立ち去る質素倹約見回りの武士の歩みがピタリと止まり、その背中から殺気の様なものが放たれたと思うと振り返り、「貴様・・・今何と申した?」と和光に表情が無い顔で言う。和光はしまったと心の中で呟き、幼少の頃に己を殺めようとした父の顔と重なり、一寸先の自分を思い浮かべた。人が人を殺めようとした決心した時、かくも能面の様な顔をするのか、質素倹約見回り組の武士が腰の刀に手を掛けて無表情で駆け寄り、和光の目の前まで瞬く間に間合いを詰める。和光は目を閉じて観念をし、師である住職が父に助命の嘆願をするために立ちはだかった光景が走馬灯に走りった。お師匠・・・・すまねぇと和光は心の中で詫びてその時をつ、しかし!、「お待ちください!!」と正厳の声が響く。和光はゆっくりと瞼を開けると、目の前には弟弟子の正厳が土下座をして、その先には刀を抜き上段の構えをしたまま固まっている質素倹約見回り組の武士がいた。正厳は頭を下げたまま、「申し上げます!、あなた様への暴言の数々は真に遺憾!、しかしながら我が兄弟子和光は生来の生臭坊主であり、やらかす事は数知れず、この様な不埒ものを相手にする事はあなた様の名誉の関わります!、武士の一分は然るべき相応しき所で守るべきと存じ上げます!」と最後はまるで首を差し出すような仕草をした。質素倹約見回り組の武士は微動だにせず、囲んでいる大衆は固唾を飲んで見守る。ぎゅっと瞳を一旦閉じた質素倹約見回り組みの武士がため息を付き刀を収め、「確かに・・・お主の言う通りじゃ、この様なお調子者を切っては末代までの恥・・・」と言う。そして、抽斗箪笥の持ち主である女の元へ行き、「此度は真に無礼な事をした、すまん」と頭を下げて、和光の目の前まで来た。和光はヘラヘラと笑いながら、「まっ、お互い様って事で勘弁し・・・」と言い終わる前に質素倹約見回り組の武士の拳が和光の顔面に飛ぶ。盛大に吹き飛んだ和光は殴られた頬を抑えつつ起き上がり呆然。それに対して質素倹約見回り組の武士はニヤリと笑い、「これで手打ちじゃ」と言い、「貴様、名を何と申す?」と正厳に尋ねた。正厳はは立ち上がり、「はっ、拙僧は正厳と申す者です」と頭を深々と下げる。質素倹約見回り組の武士は、「良い名じゃ、縁が有ったらまた会おうぞ」と立ち去った。和光が頬を抑えながらよろよろと立ち上がると、取り囲んでいた大衆は、「胸がすく思いだぜ!、すげぇぜあんた!、惚れ惚れするよw」と矢継ぎ早に正厳を褒め称え、「みんな!、このお坊さんは托鉢に来たみてぇだ!、ここに銭をいれるんだぜぇ!」と一人の男が強引に正厳の托鉢バチを奪い銭を集め始めた。あっという間に銭の山が出来上がり、住職から課せられた試練は達成。大衆たちは散り散りになり静かになった通りには、謀(はかりごと)が思わぬの結果になりムスッとした和光と、見た事がない銭の山に戸惑う正厳、更に抽斗箪笥の持ち主である商家の女だけになった。商家の女は抽斗箪笥を抱えながら、「本当にありがとうございました、お陰様で先祖代々の品を守る事が出来ました、早速でございますが何かお礼をしたいと存じ上げます、ささ!、中へ」と己の屋敷に招く。普段なら遠慮なくその誘いを、いの一番に受ける和光だが、「すまねぇ、あっしらは先を急ぐからよ、失礼するぜぇ、正厳、行こうぜぇ」と柄にでもない事を言う。正厳は和光の袖を引っ張り、「折角の申し出、受けましょう兄者!」とこちらも珍し事を言った。和光は不可解な顔をしながら、「おやおや、明日は雪でも降るかねぇ、もしかして正の字・・・惚れたか?」とゲスの勘繰り。正厳は顔を真っ赤にして、「兄者!、違いますよ!、この様な大金を持ち歩くのは危険です、ここで預かって貰いましょう、それに・・・その顔で深川木場(ふかがわきば)に行くのですか?」と言う。和光は一瞬キョトンとした顔した後に己の剃髪頭をぴしゃりと叩き、「いっけねぇ、あの野郎に殴られて馬鹿になっちまったのかねぇ?、正の字!、おめぇの言う事はごもっともだぜぇ!、という事だからよっ!御厄介になるぜぇ」と商家の女に頭を下げる。商家の女はニコリと笑い、「フフw、どうやらお話が付いた様ですねw、どうぞこちらへ!、誰か?、お坊さん方を一番いい部屋にお通しして頂戴!」と指示をしながら屋敷に入る。妙に手慣れた接客に二人は驚いたが屋敷に入るとそこは旅籠屋で納得するのだった。

 

 翌日、和光の頬の腫れも大分収まり、山寺から江戸までの移動による疲労も回復、更に托鉢で集めた銭を旅籠屋に預かって貰い深川木場に向かう二人。数里ほど歩くと川に数えきれない程の山から切り出された丸太が浮び、真新しい木の香りがする場所に辿り着く。材木を加工する職人があちらこちらと忙しなく動き、川では器用に丸太に乗って長い竹竿の先についているかぎ爪で他の丸太に引っ掛けて手繰り寄せる様に職人が水面を移動していた。「こりゃあ・・・壮観だねぇ」と和光は目を細めて目の前に広がる景色に感動する。隣にいた正厳は驚きつつ、「そうですね兄者、噂では聞き及んでいましたがこれ程までとは・・・」と言う。それから深川木場をキョロキョロと見回しながら歩く二人。三河屋の場所までは聞いておらず途方に暮れていると何やら川の土手で座り込み筆を走らせている男がいた。和光は駆け寄り、「ちょいと失礼するぜ!、なあ、あんた?、三河屋を知らねぇかい?」と躊躇せず道を尋ねた。土手に座り込んでいる男は手にしていた筆を止めて、「三河屋?、ああ、あそこに見える大きな屋敷がそうだぜぇ」と川から少し離れた大きな屋敷を指す。和光は笑顔で、「助かったぜぇ、恩に着るぜw」と礼を言って、正厳が無言で頭を下げる。二人は早速、男が指さす屋敷に向かおうと足を一歩踏み出した瞬間、土手に座っている男が、「待ちな」と引き留める。和光は即座に、「なんでぃ?」と言う。土手に座っている男は口を開き、「恩を着るってぇならよぉ、早速返してもうかねぇ?」と恩を返す事を要求。和光が口を開く前に正厳が口を開き、「拙僧たちは修行中の身、持ち合わせなどありませんぞ?」と言う。土手に座っている男は笑いながら、「銭なぞいらねぇよぉ、ただおいらの書いている絵を見て貰って忌憚なき感想を言って貰いてぇんだ」と要求する恩返しの中身を開示。和光と正厳は互いに見つめ合った後、和光が口を開き、「合点承知の助!、任せてみなぁ」と言い二人は男の絵を見た。男の絵は目の前に平がる深川木場の景色だった。細かい所まで念密に描かれており、その立体的な構図に二人は舌を巻く。「すげぇぜ・・・あんた、有名な絵師かい?」と和光は男の素性を尋ねる。男は困った顔をしながら、「有名・・・?、ちげぇよ、ただの下手の横好きの有象無象の一人よw」と答えた。正厳の方は未だに男の絵はじっと見つめていてその眼は真剣そのもの。男は苦笑しながら、「おめぇさんの相方、随分と真剣に見てるじゃねぇかw、おいらこそばゆいぜぇw」と言う。正厳はようやく絵を見るのを止めて、「拙僧はあまり詳しくありませんが、これは・・・かなりの絵と心得ます、売ればそれなりのものになると思いますぞ!」とベタ褒めをした。男は笑顔で、「そうかい!、それは良かった!、でも・・・これは駄作だぜぇ」と絵を破く。和光は驚き、「ちょっ、もたいねぇ!」と言い、正厳も同様に驚き、「何と・・・!」と言葉を無くす。男は手慣れた手つきで墨が入っている竹筒に蓋を閉めてその周りに筆を紐で括り最後は紙を巻いて懐に入れ、「ありがとうよぉ、方向性が合っている事は分かった、後は季節と手前に何かを書き足さねぇといけねぇな・・・ほんじゃ、あばよぉ!」とブツブツと独り言を言い最後は別れを二人に言って去った。男の背中を眺めていた和光は、「ありゃなんでぃ?」と言う。正厳は、「さあ?、拙僧にも皆目見当付きません・・・」と返した。

 

 奇妙な男との邂逅後、二人は案内された通り大きな屋敷に向かう。屋敷は商家で材木の注文や取引を行っている場所で忙しなく手代の者たちや丁稚奉公の子供たちが働いていて、瓦に掛かっている立て看板に三河屋と記されていた。和光は商家を見渡し、「すげぇぜぇ正厳!、こんなでけぇ屋敷に奴さんは住んでいるのかねぇ?w」とはしゃぐ。正厳は特に驚かず、「はあ、材木問屋ですからね、これ位は当たり前かと」とつれない言葉。和光は苦虫を噛んだ顔をして、「かーーー、これだらかは良い所の奴はよぉ!」と言う。兄弟子の嫉妬を交わす様に正厳は、「はいはい兄者、行きましょう」と三河屋に向かおうとしたら、和光が突然、「ちょいと待ちねぇ、俺っちは裏口で待ち伏せするからよぉ、お前だけで奴に面会をしに行ってくれぇ」と言った。正厳は不可解な目をして、「徳兵衛(とくべえ)殿が逃げると?、兄者、邪推過ぎますぞ!、馬鹿な事を言ってないで行きますぞ!」と兄弟子の僧とはあるまじき人を疑うその腐った性根に憤る。しかし、和光は弟弟子の忠告を無視し、「ほんじゃ、行くぜぇ!」と商家の裏側に言った。正厳はヤレヤレといった仕草をして三河屋へ向かう。三河屋に入ると丁稚奉公の子供が颯爽と着て、「いらっしゃいまし、お坊様、当家に何の用でございましょうか?」とよく躾けられた大人びた言葉遣いで言った。正厳は軽く会釈をして、「済まぬが、主の徳兵衛殿に面会を取り次いでくれぬか?」と要請。丁稚奉公の子供は笑顔で、「へえ、少々お待ちを」とお辞儀をして屋敷の奥に行こうとする。すると、奥から偶然にも徳兵衛が忙しなく手代に指示をしながら出て来て正厳をちらりと一瞥すると奥に再び入って行った。主の不可解な行動に丁稚奉公の子供は躊躇するも屋敷の奥に行く。その様子を見た正厳は、兄弟子の予感が当たった事に複雑な気持ちになり、合掌して小さい声でブツブツと念仏を唱え己の心に湧き出た憤りを抑えた。一方、正厳の姿を見て全てを察した徳兵衛は丁稚奉公の子供に、「いいかい?、私が裏口から出る頃にあのお坊さんにこう言うんだ、主は急用が出て先ほど裏口から出て行ったと、その後は休憩して良いから皆と一緒に甘いお菓子でも食べてお行き」と懐から出した長財布を開けて一分銀を手渡す。丁稚奉公の子供は飛び上がりながら驚き、「旦那様!、こんなによろしいので?」と確認。徳兵衛はいやらしい笑顔で、「良いんだよw、普段のお前たちの働きに報いたいのさ!、それじゃあ、頼んだよ」と言って裏口に向かった。裏口の前に着いた徳兵衛はいったん立ち止まりキョロキョロと辺りを見回す。正厳が追って来ないと踏んだ徳兵衛はため息を付き、裏口の戸に手を掛けて開けた。その瞬間、徳兵衛はとギョッとする。何故なら目の前には見覚えが無い僧が笑みを浮かべながら立っていたからだ。和光はへらへらと笑みを浮かべ、「お初にお目にかかりやす、あっしは和光と言う者ってぇんだ、屏風絵を寄進した山寺のもんだってぇ言えば分かるだろぉ?」と名乗る。和光の正体が分かった徳兵衛はへなへなとその場に座り込み、「申し訳ありませんでした、牝牛が屏風から出たのですね?」と言う。あまりにもあっさりと聞きたかった事を言う徳兵衛に和光はポカンとしながら、「こりゃあ・・・また素直に喋るねぇ・・・」と呆気にとられた。

 

 正厳が合流すると三人は近くの人目から避けられる竹林まで行った。サラサラと竹の葉と葉が擦れる音と時折聞こえるギギギギとしなる音を聞きながら和光と正厳は徳兵衛と対峙。最初に口を開いたのは和光だった。「あの屏風絵のは何だい?」と尋ねる和光。徳兵衛はもじもじとしながら、「はあ・・・、お話が少しお長くなりますがよろしいですか?」と逆に二人に確認する。和光は「いいぜ!、その為にはるばる山寺から来たんでぃ!」と言い、「お願いします、拙僧はあの屏風絵の正体を知りたいのです」と了承した。徳兵衛は頷き、「良いでしょう・・・、始まりは稲荷遊郭阿僧祇大夫(あそうぎだゆう)に将棋相手がいないとボヤいた時です」とポツポツと屏風絵の経緯を言い始める。しかし、阿僧祇大夫と言う言葉に和光が驚き、「ちょっ、ちょっと待ちな、阿僧祇大夫と言ったら大名でも一晩買えないともっぱらな高級遊女じゃねえか!?、あんた・・・どえれぇ儲けてるだな・・・」と話しの腰を折る。徳兵衛は手を横に振り、「誤解です、手前共の儲けでは阿僧祇大夫を相手してもらうのは到底無理でございます、たまたま阿僧祇大夫と縁がありまして、甘味処で手前が将棋指し相手がいないと何となくでございますが言ったのです」と言う。すると今度は正厳が口を開き、「ちょっと待って下され、遊郭の女は基本的に遊郭から出られないと聞き及んでます、甘味処と言うなら外でお会いしたのですか?、そんな事が出来るのですか?」と尋ねる。横で聞いていた和光はヤレヤレとばかりに、「正の字よぉ、お前さんは本当に世間知らずだねぇ、阿僧祇大夫はよぉ、他の遊女と違って買われて遊郭に入ったじゃねえのさ、自ら入ったのよぉ」と説明。正厳は首を傾げて、「兄者・・・何故自ら遊郭に入ったので?」と再び尋ねた。和光はめんどくさそうな仕草で、「さあねぇ、好きもんなんじゃねぇ?」と答える。正厳は兄弟子の適当な答えにムッとして、「兄者・・・何ですかその取って付けたような答え・・・拙僧は真面目に聞いているのですぞ?」と言う。兄弟弟子同士の言い争いになりそうな気配を察知した徳兵衛は、「あの・・・続きを話していいでしょうか?」と制止を兼ねて尋ねた。和光は照れ笑いをして、「おっw、すまねぇ」と言い、正厳は、「申し訳ありません、続きをどうぞ」と謝罪をする。徳兵衛は咳ばらいをして、「手前がその話をして一月後の事でございます、阿僧祇大夫が当家の商家屋敷に例の屏風絵を持って参ったのです」と言った。そこでまたもや和光が、「ちょっ、ちょっと待ってくれ、阿僧祇大夫が屏風絵を一人で持ってきたのかい?w、嘘を言っちゃあいけねぇよw」と再び話の腰を折る。徳兵衛が口を開く前に正厳は口を開き、「兄者・・・特に不可解な所はありませんでしたけど?」と話しの腰を折った兄弟子に憤る。和光は、「おめぇ、馬鹿だろ?」と即座に返す。兄弟子の暴言にカチンときた正厳が、「はあ?、馬鹿とは何故です?」と取り敢えず理由を聞く。和光はニヤリと笑い、「よーく、想像してみねぇ、着物を着た麗しい女がよぉ、あんな大きい屏風絵を肩に担いでくると思うかい?」と言う。正厳はあっと言う表情をして、「た、確かに兄者の言う通りです・・・ですが拙僧が馬鹿だというのは別の話しではございませんか?」と俄かに怒りを帯びる。和光はヤレヤレとばかりに、「往生際が悪いぜ正の字!、おめぇは馬鹿だよw」と弟弟子を追撃。正厳は顔を真っ赤にして、「兄者・・・取り消して下され」と言う。和光はニヤ付きながら、「やだねぇw、何なら相撲で決着つけようかい?w」と駆け引きを持ち掛ける。正厳は即座に、「望むところです、兄者の様な生臭に拙僧が負ける要素はござらん!」と了承。二人は距離を取り四股を踏んで両手を枯れた竹の葉が降り積もった地面に付けた。今まさに兄弟弟子同士の骨肉の醜い争いが始まろうとした時、「話を続けさせろ!!」と徳兵衛の怒号が飛んだ。

 

ーつづくー

 

 366曲目の紹介

 

 今回ご紹介する曲は、雄之助さん春野さんによる合作、つまり・・・作曲、作詞、アレンジメント、ボーかロイドチューニングをお二人でコラボレーションし、イラスト・アニメーションをNiheさん、映像・3DCGをsowitiさんによるSupernovaです。

 

 最初は真似事から始まった・・・、歪な歩みから徐々にそれなりに上手くなり、今度は君と共に歩むために正しくないかもしれないが私が導く・・・。

 

 本曲は出会いをテーマに、人と人との邂逅による化学反応で起きる須臾(しゅゆ)の輝きを初音ミクさんが歌います。

 

 本曲の題名であるSupernovaは、天文学による超新星を表し、個人的な解釈になりますが星に最後が訪れた時に起きる大爆発の刹那の輝きを、出会いによって起きた瞬く間(またたくま)の絆の光を指している思いました。

 


www.youtube.com

 

 今回は雄之助さんと春野さんによるコラボ曲という訳で一流と一流のクリエイターが重なり合うとかくも素晴らしい曲が出来上がるのですね・・・。とても素晴らしい時間を過ごせました。

 

 本曲、Supernovaは人との邂逅によるひと時の振れ合いで生み出される素晴らしい絆の力の輝きを歌にした素晴らしい曲です。人との繋がりはマイナスな面も多々あり、臆病になりがちな現代に必要な曲だと思いますので、是非!本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

pixiv百科事典様より

 

コトバンク様より

超新星