煮干しの一押しVOCALOID曲

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古の言葉から情緒を感じるVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 気温が下がり、肌寒く感じる今日この頃ですが、最近は寒さで目が覚めてしまい、そろそろ毛布の出番が来た感じがします。日中の全国平均気温は20度を超えており、夜間は平均16度位を指し、数字で見ると決して寒くはないんですよね。しかし、寒く感じてしまうのは、つい最近まで苦しめられた異常な暑さのためであって、あの暑さの凄まじさが物語ってますね。予報では10月中まで、暑さが続くと報じていましたが、本当に?と思ってしまいますよねw。それでは、324曲目の紹介とちょっとした物語をお送りしたいと思います。

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

 曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 

 森の木々は紅葉を始め、道路のカーブから、僅かに覗かせた峠の集落はひなびた様相を呈していた。私はハンドルを切り、慎重に曲がる。車には繊細なものを多く載せてあり、顧客に納入する前に、傷物にしては大変なことになるからだ。私は、工芸品を扱う職人たちが必要とする貴重な材料や道具を卸す会社に勤めている。弊社は非常にニッチな需要に応えていて、こだわりが強い職人が主な顧客だ。入社したての頃は、全国津々浦々を渡り歩く羽目になるとは予想していなかった。面接では工芸品の材料や工具を扱う会社と説明を受けていたので、精々、製造元から取り寄せて、それを顧客に送るために、配達手続きをして終る簡単な仕事と高を括っていた。だが、現実は予想の斜め上を行く。弊社は貴重で繊細なものを多く扱っている訳だが、その貴重性から配達会社から保障を出来かねないという回答の趣旨が来たために、自分たちで直接、届ける事になった。いや、送るだけならまだしも、取り扱っている一部の商品は自分たちで採取、加工をしたりする。私の思い描いた社会人生活とはあまりにも掛け離れていて、転職という二文字が頭に浮かぶ。車は難所を何とか通り抜けて、ようやく緩やかな下り道に入り、私はホッとする。そして、緩やかな坂道が続き、ようやく峠の集落に着く。村の中心を通っている一番広い道路を走りながら、辺りを見回すと田んぼの収穫は終わり、刈り取られた田んぼが続き、表を歩いている人はおらず、静まり返っている。それはそのはず、この峠の集落は、昭和の終わりごろをピークに過疎化が進み、若者は去り老人ばかりなっているからだ。私は、いつもの様にいぶし銀の立派な瓦を目印に車を走らせる。道すがらに商店が数件があったが、どれもやっているのか、うかがい知れない。数分後、いぶし銀の瓦屋根がある屋敷に着き、その角を曲がる。すると、正面に田んぼに囲まれた雑木林が見え、道はその中心に伸びていた。私は迷わず直進し、道が続いているとはいえ、雑木林の中に入ると私は徐行し、枝を踏んでパキパキと音をさせながら進む。数メートル道なりに進むと、立派な門構えが現れ、それを潜る。中は雑草は生えておらず、倉庫の様なものが数棟あって、古い日本家屋があった。

 

 私は車のエンジンを切り、降りて古い日本家屋に向かう。日本家屋の戸を開けようと私が手を伸ばすと、戸が勝手に開き、頭に手ぬぐいを巻き、デニムに上は作業着姿の青年が出てきて、私を見ると、無言で会釈する。何となくだが、どうやら虫の居所が悪い様だ。「あの、郡山商店の者です、いつもご贔屓にありがとうございます、ご注文の品をお持ちいたしました」と私はいつも通りの台詞を言う。「ああ・・」と青年は、一瞬、何かを言いかけて、家の中をみて、私の方へ向き直し、「師匠は中にいますから」と私の脇を通り抜ける。ちょっ、弟子の君が応対するんじゃないの?。私は困惑しながら玄関から家に入ると、土間が広がり、漆の独特は匂いが充満している。私は、「ごめんくださーい!、郡山商店です!」と大き目の声で言う。すると、「ああ!、待っていたよ、お入りなさい!」と奥から男性の声がした。私は土間と家の境にある式台と言われる板の間に座り靴を脱ぎ上がる。畳を歩き、奥に行くと、白髪で作務衣を着た初老の男性が椀の漆器に漆を塗っている最中だった。初老の男性が手慣れた手つきで漆を塗ると椀は見事な朱色に染まり、ただの木材が輝きを放つ。初老の男性は丁度きりが良い所で作業を中断し、「遠い所、よくおいでなすった、どれ」と立ち上がる。この方は今回の顧客である、東北随一の名人で、荒巻さんだ。「あの、お弟子さんを取ったんですね」と私は、荒巻さんに尋ねる。「ああw、どうも、跳ね返りで素直じゃなくて難儀しているよw、まあ、俺の技を受け継いでくれるっていうから、感謝はしてるが・・、どうも最近の若者は何を考えているのか分からん」と荒巻さんはぼやく。ああ・・、なるほど、喧嘩して出て行った所だったんだ・・。「大変ですね・・」と私は取り敢えず共感した振りをする。「フフw、お嬢ちゃんw無粋な真似はしないでくれw、どれ、頼んだ品を見せてくれ」と荒巻さんは私の似非共感を見抜き、自身が注文した品の確認を要求。「はは・・、かしこまりました」と私は顔を引きつりながら、土間に向かい靴を履き外に出る。車のハッチバックを開けて、漆が入った容器を取り出し、土間に持ち込み式台に置く。「どれ」と荒巻さんは漆の容器を開けて、ヘラの様なものですくい、目を近づけて真剣な目で観察をした。「今年は猛暑で漆に影響があると思っていたが・・どうやら大丈夫の様だな」と荒巻さんは笑顔になり納得してくれた様子。「納得、頂いて何よりです」と私はすかさず言う。そして、「あと、金粉と金箔は?」と荒巻さんは残りの注文した品を要求。「あっ、はい、少々お待ちください」と私は再び車に戻り、段ボール箱を取り出し、土間に戻る。「ご注文の品のです」と私は段ボールを開けるて、箔打紙(はくうちし)という、いわゆる油取り紙の束と、瓶詰の金粉が現す。荒巻さんは、おもむろに箔打紙を束ねた紐を解きめくると、見事な正方形の金箔が現れ、やはりそれをジーと見て確認し、更に瓶詰の金粉も同様に確認。「うん、いい出来だ!」と荒巻さんは納得した。

 

 「それでは、これは請求書です、期日以内にお振込みよろしくお願いします」と私は荒巻さんに請求書が入った封戸を手渡し、お辞儀。「ああ、早急に振り込むよ」と荒巻さんは請求書をの封戸を受け取りながら言い、更に、「お嬢ちゃん、お茶を飲んでいきなさい」と私をお茶のみに誘う。「はい、喜んでw」と私は快諾し式台に腰を下ろす。荒巻さんは注文した品物を持って奥に行き、ドタドタト音を鳴らし何処へ行くと、またドタドタト音を鳴らし帰ってきて、お盆に茶筒、急須と魔法瓶ポットそれに湯飲みを持ってきた。荒巻さんは茶筒から急須にお茶っ葉を入れる。そして、魔法瓶ポットからお湯を出し急須に注ぐ。少し時間を置き、急須を持ち傾けて、二つの湯飲みに交互に入れる事を繰り返し、片方を私に差し出す。私は湯で温めらた湯飲みの温度を手で感じ取りながら、「ありがとうございます」と湯飲みを傾けて飲む。荒巻さんも、遅れて湯飲みをを取りお茶を飲む。「ふー」と私は人心地を付き、「漆器の売れ行きはどうですか?」と尋ねる。「ああ、売れ行きは好調だw、最近は海外からの注文が多いな」と荒巻さんは言う。「そうですか、弊社としてもお客様が活躍してくれて喜ばしい限りです」と私は返す。「売れるのは良いがな・・俺があと何年出来るか・・」と荒巻さんは複雑な顔。「お弟子さんがいるじゃないですか!」と私は荒巻さんを元気づけようと努める。すると荒巻さんは苦笑いをして、「ありがとうな、お嬢さん、だが奴がものになるのは、いつになるやら・・」とたそがれる。「そうだ、お嬢さん、あんたが持ってきた漆の由来をしっているかい?」と荒巻さんは急に話を変えて私に尋ねた。「由来・・、後北条のミツウロコ漆の事ですか?」と私は応えた。「そう、あたたの持ってきた漆はそんじょそこらの物とは訳が違う、豊臣秀吉に滅ぼされた、北条氏直由来の物なんだ!」とちょっと顔を高揚しながら荒巻さんは言う。あっ・・・これは話が長くなる奴だ・・、うちの会社の人も似たような人がいるから分かる。「良いかい?、お嬢さん、ミツウロコ漆は民草を豊かにしようと考えた北条家が、海外にも評判が良かった漆器に目を付けて、氏政の父氏康から始めた肝いりの政策で、優良な漆を全国から見つけ、それらをかけ合わせて、作られた漆なんだよ」と荒巻さんは鼻息荒く語る。「へー・・そうなんですね、じゃあ、勉強になりました、失礼します」と私は適当に切り上げ逃げようとする。「ちょっ、ちょっと!、何を帰ろうとしているんだ、これからが面白いんだ、何だ、反抗期か?、短気は損気だぞ」と荒巻さんは私を引き留め、立ち上がった私を座らせ、口を開き、「当時、ミツウロコ漆器は海外で反響が大きく、特にヨーロッパ貴族の間でブームが起きて、莫大な富みを生んだんだ」と言った。

 

 「じゃあ、北条は景気良かったんですねw」と私は素直に感じた事を言う。「ああ、だがそれが裏目に出て北条家は滅んだ」と荒巻さんは切ない顔をする。そして、「豊臣秀吉の天下になり、北条家に上洛を要求をしていた訳だが、財力がなまじ有ったために、当主の氏直は強気な姿勢でそれを拒んだ」と言う。「まあ、その後は知っていますよw、それで攻められて開城して滅亡されたんですよね」と私は学校で習った歴史を思い出す。「ああ、あらましはそうだが、豊臣秀吉が攻めたのは上洛の件ではなく、ミツウロコ漆だったという説を知っているか?」と荒巻さんは、初耳な説を私に確認。「いや、知らないです」と私は素直に言う。「フフw、そうだろう、当時の豊臣政権は資金繰りに困っていた、直参の家来に褒美を取らせようにも、土地も金も限りがあり、どう考えても足りなかった、そこで秀吉は北条家の莫大な富を生み出すミツウロコ漆に目を付けて、上洛をしなかったと難癖を付けて奪おうと画策をしたんだ」と荒巻さんは新説を唱え始め、さらに続き「だが、結果的に言うと秀吉はミツウロコ漆を手に入れる事は叶わなかった、何故なら、秀吉に奪われるくらいなら自分たちで灰にしてしまえと民草が決起して燃やしてしまったんだ!」と力説。「えっ・・でも、何で弊社にあるんですか?」と私は疑問を口にする。「それはな・・お宅の社長が山々を駆けずり回り、ようやく見つけたミツウロコ漆の老木を見つけて、挿し木などして増やしたからだ、お嬢さんw、もう少し自分の会社の事を知った方が良いw」と荒巻さんに私は笑われた。「はあ・・」と面目なさそうな顔をする私を横目に荒巻さんは、「話は戻るが、民草の動きは徳川家康の耳にも届いた、だが、家康は動かずそれを黙認したんだ、一説には北条と民草の関係に感銘を受けた家康があっぱれな大義として見届けたらしい、秀吉はその事の顛末に怒って、開城し投降した北条家の当主の氏直以外の面々に切腹を命じ北条家を事実上の滅亡させ、更に黙認した家康を当時何もなかった江戸に移動させられたんだ・・、どうだ?、面白かっただろ?」と荒巻さんは言いたい事を全て言い終わり満足顔で私に評価を求めてくる。「ええ・・、凄く面白かったです!」と私はとりあえず褒めて体裁を整えた。

 

 「そうかい!、それは良かったw、時間を取らせちまったな、詫びではないが良いものをやろう」と荒巻きんは奥に行き、すぐ戻り真新しい木箱を持ってきて私に差し出す。「これは?」と私は差し出された木箱を受け取りながら尋ねる。「フフw、開けてみな」と荒巻さんは言う。私は言われるままに木箱を開けると、中には黒を基調とした美しい鶴の金彩(きんだみ)細工が施された五つのお椀だった。「えっ!?・・・良いんですか?」と私は恐縮。「遠慮せず持って行けw」と荒巻さんは豪快に言う。「じゃあw、ありがたく頂きますw」と私は木箱の蓋を閉め、「それでは失礼します、ごちそうさまでしたw」とぺこりと頭を下げ、立ち上がり車に向かい歩く。そして、「ああ、気を付けてな、それと・・転売するなよw」と荒牧さんは去り際に釘を刺す。私はビクッと体を振るわせ、振り返り、「ハハっw、そんな事はしませんよw」と私はかろうじて言う。荒巻さんは私の様子に笑い、「ハハw、まあ、別に転売して良いがなw、お嬢さん、話しを変えるが、帰りは南側から帰りなさい」と言う。「南側ですか?、何故ですか?」と私は真意が分からず困惑しながら尋ねる。「まあw、行けばわかるよw」と含んだ笑顔で荒巻さんは答えた。「・・?、はぁ、ではそうさせて頂きます」と私は再びペコリとお辞儀をして車に乗り込んだ。エンジンを始動し、アクセルを踏み込み前進して、私はルームミラーを見ると荒巻さんが手を振っていた。私は視線を前方に戻し門を潜り雑木林に入ると、「ジジィー!、私に呪いを掛けやがった!」と盛大に独り言を言う。荒巻作の漆器金彩細工が市場に出ると、500万は下らない。くそっ、転売して奨学金を一括で払おうとしたのに!。荒巻さんクラスの品だと、転売に出すとその素性と経緯が徹底的に洗われ、本人の耳にも伝わる。私が転売に出せばすぐバレて会社に迷惑掛けるので事実上、家宝にする以外、道は無い。私はしょんぼりしながら、雑木林を抜けて、いぶし銀の屋根が目印の屋敷の角で止まり、「南側って言ったよね・・」と私は呟く。私は来た道とは逆に曲がった。

 

 この峠の集落を出るには北と南に延びている道のどちらかしかないが、北、南、どちらを行っても同じ道に合流するので支障はない。私はいつもと違う風景を楽しみながら進む。山道に入り、くねくねと登り、今度は下り道に入り山の中腹位に差し掛かった時、ドライブイン峠という、年季が入った赤い屋根のログハウスが現れる。へー、こっちの店は休憩する店があったんだ、次回はこちらの道にしよう。私は次に来る時は寄る事に決め通り過ぎようとした時、荒巻さんの台詞が蘇り、車を減速し止まる。うーん・・どうしよう・・、荒巻さんが何かを示唆していたが、絶対この店の事だよね。車のエンジンと空調の音だけがする車内で少し考える。よしっ、行こう!、あの老人の事だ、次に会った時、絶対この店の感想を聞くはずだ。私は意を決してハンドルを切り、駐車場に止める。車から降りると、私の他にはバイクが一台以外なく、閑散としていた。私は店の入り口に向かい、恐らくだが当初は鮮やかな茶色だった黒いドアを開け入る。「いらっしゃいませ、一名様ですか?」と私が店内に入ると初老でエプロンと三角巾を被った愛想が良い女性店員さんが出迎えた。「はい、そうです」と私が答える。「では、こちらの席にどうぞ!」と店員さんが私を席に案内。案内された席は四人用のボックス席で広々としていた。席に座ると私は店内を見回す。至る所に写真が飾られていて、その写真の内容から察するに、この店の歴史の長さがうかがい知れる。私はテーブルの端に張るメニュー立てから、メニューを取り出そうと手を伸ばすと、見慣れない球体の謎の物体に目が止まる。私はそれを引き寄せて観察。何だろう?、星座が記されていて、その下にお金を入れる様な穴がある。私が謎の物体を、物珍しさもあってまじまじと見ていたところ、「お冷です、注文はお決まりですか?」とテーブルにお冷を置き、愛想が良い店員さんが注文を私に伺う。「あっ、すいません、まだです・・あの、これ何ですか?」と私は思い切って尋ねる。「ああ、それは占い機ですね、自分の星座が記されている所にある穴に百円を入れると、小さい紙が出てきて、広げると今日の運勢が出るんですよw」と店員さんが笑顔で答えた。「えー、占い機ですか?、面白そうw」と私のテンションは未知の機械によって上がる。店員さんは、はしゃいでいる私を微笑み、「お客さん、注文が迷われてるなら、当店でおすすめのキノコ御膳はどうでしょうか?」と勧めてくる。ふむ、秋だし、旬のキノコで舌鼓と行きますかw。「じゃあ、それでお願いします」と私は勧められたキノコ御膳を承諾。「かしこまりました、少々お待ちください」と笑顔で注文を受け、厨房の方へ去った。店員さんが去り、一人になった私は、早速、財布から百円玉を出し握りしめ、占い機を回し自身の星座を探す。えーと、私はおうし座だから・・あった!。私は、すかさずお金を投入するが、何も起こらない。あれっ?、何でよ、何も出てこないじゃない!。私は心の中で憤慨した。占い機を持ち上げて様々な角度から観察したり、振ってみたりして、試行錯誤していたら、小さな文字でお金を投入したらレバーを引いてくださいと記されている事に気付く。浅はかな自分に恥ずかしさのあまり、顔の辺りが暑くなるのが分かった刹那、「ぶっほっ」と噴き出す声がして思わず辺りを見回す。私の斜め後ろに男性客が口を押えていた。恐らくバイクの客だろう、その彼をよく見ると、荒巻さんの所で会ったお弟子さんで、私と目が合うと、無言で軽く会釈をしてくる。私も、会釈を返し視線を正面に戻し、見られたくない恥部を見られ、更に顔の辺りが熱気を帯びる。だが、見られたのはしょうがない、私は両手で仰ぎ火照った顔を冷まし、気持ちを切り替えて、レバーをつまんで引いた。

 

 レバーを引くと、「ガチャコ」と音が鳴り、更に、「チャリン」と硬貨同士がぶつかる音が鳴ると、丸めた小さい紙が出てきて、私は広げる。小さな文字で今日の運勢が書かれていた。えーなになに、今日は思いがけない出会いがあるでしょう?、何これ?、フフっw、所詮は子供だましかw。私は占いの結果に嘲笑い、紙をポケットの中に入れる。ちょっとしたハプニングはあったが、チープな占いのお陰で少し気持ちが楽になった。私はそれから、スマホを片手に窓からの景色を眺めたりして時間を潰していたのだが、流石に飽きて来たので、雑誌や新聞がないか見回すと、相席側のテーブルの端から茶虎柄の耳が飛び出している事に気が付く。うおっ!?、いつの間に?。私は、にやりと笑い、手をそーと伸ばし、茶虎柄の耳をつまもうとした時、耳がいったん引っ込み、間を置かず、まんまるとした可愛い顔の茶虎猫出てきて、じょりっと人差し指を舐めた。「うひゃっ!?」と私は思わず叫んでしまった。私の叫びを聞きつけたのか、店員さんが厨房から出てきて、「あっ、茶美子!、ダメでしょう!」と私から見て正面の相席側に近づき、茶美子と言われた猫を持ち上げると、「うみゃあ!」と不満そうな声で茶美子が鳴き、体をよじり、ぬるんと店員さんの手から抜け出す。「こらっ、茶美子」と再び店員さんは怒るが、茶美子はどこ吹く風で私の座っているソファにジャンプして隣で香箱座りを開始。「すいません、直ぐ撤去しますので」と店員さんは申し訳なさそうに言う。「いえ、大丈夫です、猫は好きな方なので」と私は茶美子の背中を撫でる。すると、茶美子は目を細め、グルグルと喉を鳴らした。「そうですか、邪魔ならすぐ声を掛けて下さい、即座に退去させますので」と店員さんはお辞儀をして去る。私は茶美子の背中を撫でながら、空いた手ではスマホを見て時間を潰す。10分位経った頃、店員さんがお盆を手にやって来て、「キノコ御膳です」と私の目の前に置き、「山菜オコワは、おかわり自由ですから、お気軽にどうぞ」と言いペコリとお辞儀をして去った。私は箸を取り、キノコ御膳を見る。マイタケ、ヒラタケそれとブナシメジを多めに各種野菜の天ぷら、それからなめこの味噌汁に、三つに仕切られた皿に、醤油、塩、抹茶塩があり、お盆の端には恐らく人参の糠漬けだろうか?それが添えてあった。私は、「頂きます」と言い、早速手を付ける。まずは天ぷらから行こう!。私はヒラタケの天ぷらを箸で取り、ナチュラルな味を確かめるべく、何もつけないで食べる。「ぱりっ」と小気味いい感触と共にキノコ独特の風味がして美味しい。ヒラタケの天ぷらを食べ終えると、私は山菜オコワを口にする。モチモチとした感触と山菜の香が実によく、たまらないw。山菜オコワが入っている茶碗を置き、今度はなめこ味噌汁を箸でよそいながらすする。うーん、このトロトロの感じが癖になるわねw。さて・・次は人参の漬物にしよう。私は箸を漬物が入っている小皿に向け、一欠けらを挟み、口に運ぶ。あっ・・これ好き、他の漬物にはない歯ごたえとハーブの様な人参の独特な風味が合わさり美味しい。それから、私は同じようなローテンションでキノコ御膳を味わい堪能。10分位で綺麗に平らげて、夢心地な気分になる。追加で頼んだコーラを飲み、いつの間にか私の膝に顎を乗せている茶美子を撫でて、窓から景色を眺めると、日が傾き始めていて、茜色に染まった空と木々が美しく、それに見とれ至福の時を過ごす。景色を堪能した私は残りのコーラをストローで吸いこんでラストスパートをかけようとした時、ちょっとした面白い考えが浮かび、手のひらに数滴たらし茶美子の口まで持っていく。茶美子は匂いは嗅ぐが口は開かず、目を細めたままだった。茶美子は人の食べ物に興味が無い様だ。私の飽くまで偏見に基づいた私見だが、猫は人間の食べ物をねだる生き物と思っていた。これは考えを改めなければ・・。注文したものを全て平らげた私は、会計を済ますため茶美子を退かそうとすると、空気を察したのか、自ら立ち上がり、お尻を上げてストレッチをし、ぴょんとジャンプして床に降りてレジの方へ向う。茶美子はレジ台まで行くと再びジャンプしてレジ台に乗り、尻尾を自身の足を隠す様にぐるりと巻き、尻尾の先が丁度付け根に触れる感じで姿勢よく座る。その様子に私は「フフッ」と少し笑いながら立ち上がり、レジ台の前に来ると、「すいませーん、会計お願いします」と店員さを呼ぶ。厨房の奥から「はーい」と声が聞こえ、足音が近づく。店員さんが姿を現すと、「はい、はい、お会計ですねw」と手慣れた手つきで伝票を見ながらレジを打つ。そして、「キノコ御膳を一つ、コーラをひ一つ、合計1800円になります」と言う。私は財布を取り出し、「これでお願いします」と千円札を二枚出す。「はい、ありがとうございます、二千円お預かりしまして、お釣り200円ですね」と店員さんはレジから百円玉二枚を取り出し私に手渡す。私はお釣りを受け取り、「ご馳走様でした」と会釈をしながら言い、「またのご来店を心よりお待ちしております!」と店員さんは笑顔で返し、茶美子は「ぶるるにゃあw」とまるで同じことを言っている感じで鳴いた。

 

 私は一人と一匹に見送られながら店を出ると、駐車場に停めていたバイクの前でお弟子さんが煙草を吸っていた。私は近づき、「先ほどはどうも」と言う。お弟子さんは「あっ、うっす」とあいまいな受け答えをし、少し気まずそうだった。恐らく、先程の占い機の件だろうが、当事者の私より気にしているとは・・、なんて素朴な性格なのだろうか。私は場の空気を変えるために、「そういえば、荒巻さんから、お椀を貰いましたよw」と話を振る。すると、彼は怪訝な顔をして「師匠が?、あの申し訳ないですが見せてもらえないでしょうか?」と言う。「ええ、良いですよ」と私は小走りで車に向かい、お椀が入った木箱を取り出し、再び小走りで戻る。「あの、これが貰ったものですが・・」と私は木箱を彼に差し出す。彼は、「失礼します」と軽く会釈し、蓋を開け、中身を見た彼は、苦笑して、「あの、これって、俺が練習で作った漆器ですよw、やられましたねw」と言う。「えっ!?、荒巻さんのじゃないんですか?」と私は確認。「違いますよw、正真正銘、俺が作ったものです」と彼は答えた。じじぃーーー、だから転売するなって釘を刺したのか!。欲に駆られて転売したら、贋作の烙印を押されて会社から追われる羽目になった・・。心は怒りで渦巻いていたが、顔には出さず、「はは、そうなんですかw、まあ、家でお料理に使おうとしていたので、寧ろ気兼ねなく使えてラッキーですw」と万年、スーパーのお惣菜が主食の私が言う。「漆器職人としてそれは名誉な事です!、末永くお使いください!」と彼は私の言った事を真に受けて感謝し、木箱の蓋を閉める。私は、若干、罪悪感を抱きつつも、「はい、今度の夕食は腕によりをかけて、このお椀を使わせていただきます!」と嘘の倍プッシュ。「じゃあ、SNSのアドレス交換しません?、俺の漆器を使った料理の画像を送ってくださいよ」と彼は懐からスマートフォンを出す。私は顔を引きつりながら、「ええ、良いですよ・・」とバックらスマートフォンを出し、彼とアドレス交換をした。お互いのアドレスの交換が完了し、彼がおもむろにスマートフォンを操作すると、私のスマートフォンに着信の音が鳴る。私は、すかさずスマートフォンを見て、彼からのメッセージを確認し、「大丈夫です、着てますよ!」と言った。私の言葉を聴くと彼は、「それじゃあ、楽しみにしていますんでw」とヘルメットを被り、バイクにまたがり、キーを捻りハンドルを握ると、「ぶるるん」とエンジンが始動し、手を振り私が来た方向へ走り去る。私は笑顔で手を振って身送り、彼の姿が見えなくなると、「うおおお!、どうしよう!、私、料理できないよ!」と頭を抱える。自慢じゃないが私の人生で料理したのは、学校の家庭科の授業だけだ。「やべぇよ、やべぇよ」と私が動揺していると、脛の辺りにちょんちょんと何かが触れる。「うわっ!?」と下を見ると茶美子だった。「あっ、あんた、外に出してもらえるんだ」と私は通じないのは承知で茶美子に話しかけたところ、茶美子は私の目を見ながら「うにゃ」と鳴き、何というか、同情的な目で、再びポンポンと私の脛を優しく叩く。ね、猫に同情された・・?。私はしゅんとしながら、とぼとぼと歩き車に乗り込み、お椀が入った木箱を助手席に置く。私は車のエンジンを始動して、徐行しながら茶美子の姿を捕らえつつ、公道に出て目的地の方へ走らせる。薄暗い山道を走りながら、助手席のお椀が入った木箱を一瞥し、私は、「しょうがない・・、料理の勉強するか・・」と呟いた。

 

 

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲、マスタリング、映像をマグネタイトさん、イラストを瀬奈悠太さん巫(かんなぎです。

 

 神々がまだ人々の近くに存在していた頃、少女は歌う、踊る、神々のために、そして人々のために・・しかし今宵は違う、少女は初めて、己のために想いのために歌い舞う、美しいすずの音がシャンシャンと鳴らし、己のために歌い舞う。夜が明けて、少女は意を決していると己では思っていたが、何かの切っ掛けで心はユラユラと動くようだ。未だに晴れない心の不浄に苛立ち、更なる心身のお清めをしたい少女。だが彼女には時間は無いのだ。彼女に出来る事は、これから一つになる御方に全てを託し頼る他ない。そして、古の名は人々から忘れ去られた、それは新しい彼女の名が刻まれたからだ。約束された豊穣の秋が来て人々は笑顔になる。人々は忘れないだろう、次の巫女が名を捧げるまで。

 

 本曲は、古の日本で使われた言葉で情緒感を感じる歌詞、それを十二分に表現する曲を羽累(はる)さんが歌います。

 

 本曲の題名、巫(かんなぎ)は、巫覡(ふげき)とも言い、神の意志を人々に伝えたりする、神に仕えている者の意味です。本曲では大事な儀式の前に抱いた想いを歌っている事から、恐らくですが題名は、曲中の想いを歌っている少女の職業もしくは立場を意味していると思いました。

 

 

 

 

 マグネタイトさんの曲は相変わらず難解な歌詞で考察を好む人たちを深淵に誘いますねw。最初、この曲を聴いた時、何語?みたいな感じで混乱しましたよ。古語という、大昔の日本で使われた言葉だそうです。殆ど意味は分かりませんが奥ゆかしくて良いですね。

 

 本曲、巫(かんなぎ)は、古語と言われた難解な言語を歌詞にしていますが、分からなくても大丈夫です!、本曲の動画のコメントにもありますが、「理解するな感じろ!」なので、構えなくても、聴けば感動する事は間違いないですので、是非、本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

羽累(はる)

 

初音ミクWIKI様より

巫(かんなぎ)