煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

連鎖する悪意なVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 遂に電気の値上げが始まりましたね。左を向いても負担、右を向いても負担、負担、負担づくしの世の中になり、嫌になりますね・・。最近では、嗜好品や贅沢品に手を出すのは抵抗があり、普段なら何も考えないで買う物も、少し考えて買う感じになってしまいましたよ。収入は増えない、負担だけが増える、このジリ貧感が解消される日が来るのでしょうか?それでは、306曲目の紹介とちょっとした物語をお送りしたいを思います。

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 

 暑くも寒くもない、過ごしやすい季節の五月晴れの日俺は財布から小銭を取り出すと、自販機に小銭を入れる。少し思案をしてから、俺は缶コーヒーを飲む事を決めた。「がこっ」と音がしたのを確認して、自販機の取り出し口に手を入れて缶コーヒーを取り出す。そして、缶コーヒーのプルタブを開けた瞬間、「シュッ」と音がする。俺は缶コーヒーを煽り飲むため見上げると、雲一つない青空が見え、少し切なくなった。空になった缶コーヒーを、自販機の備え付けのごみ箱に入れ、目的の場所向かう。目的場所に向かう道中、俺とすれ違う若者たち。新しい生活に期待と希望に溢れ、かつての俺を見ている様だ。だが、俺に待っていたのは、挫折と絶望だった。俺には何かがあると信じていた・・だが、大学に入って、上には上がいて、何も持ってないと分かった時、何もかもが面倒になり大学を中退する。そこから、落ちるのは早かった。半年も経たず、アパートから追い出され、ホームレスになって、野宿は嫌なのでネットカフェの代金を稼ぐため、日銭を稼ぐ毎日。実家に帰るという選択が無い訳じゃないが、逃げ帰る気力も無かった。

 

 そして、気がついたら、ホームレス生活も3年目に突入した。こんな生活をしていると、面白い仕事につける事が出来る。興信所の様な会社から、浮気現場を押さえるため、見張り役として、ホームレスに扮して、敷いた段ボールに寝ながら待機する仕事だ。散髪も半年に一回、無精髭を生やし、ボロボロのカーゴパンツにシャツの一張羅(いっちょうら)しかない俺にとって、正に打って付けの仕事って訳だ。そんな惨めな仕事だが、これが結構な金になる。仕事を一回請ければ、ネットカフェ生活が一ヶ月は余裕で暮らせた。今、俺が向かっているのは、その興信所の様な会社だ。一応、俺は銀行口座を持っているのだが、先方は何故か、直接、現金を渡す事に拘っている。まあ、足が付かない様にとか、何か俺が知る由もない事情があるのだろう。歓楽街に入り、数分歩き、丁度、歓楽街のど真ん中の雑居ビル、ここが興信所の様な会社の場所だ。先程から、俺が興信所の様な会社と言っているのは何故か、それはこの会社がある雑居ビルに興信所の名前も何も無いからだ。確かにここで営業をしている。しかし、雑居ビルのポストにも社名も無い、ネットの地図にも載って無い、徹底的に隠されているのだ。故に、俺はこの得体の知れない会社を興信所の様な会社と呼んでいる。

 

 俺は薄暗い雑居ビルに入り、年季が入った、エレベーターの手動で開く蛇腹の扉を開け、中に入り閉める。エレベーターの事務所の階を押すと、ガタンと少し揺れてエレベーターが動き出す。俺は目的の階に着くまで、考え事をしていると、ある事を思い出した。あっ、そう言えば、土日は絶対来るなって念を押されていたんだ・・どうする?引き返すか?。俺が決断に迷っていると、「チン」と音が鳴り、エレベーターは目的の階に着いてしまった。行くだけ行って、ダメだったら引き返すか・・。俺は取り敢えず行く事を選択して、エレベーターから下り、事務所に向かう。事務所に続く通路から歓楽街が見えて、卑猥な宣伝文句が書かれた看板から発する光が通路を彩っていた。事務所のガラス扉の前まで来ると、カーテンが掛かり、照明も点いていなかった。「ああ、こりゃあダメだ・・出直すか・・」と俺は呟き、元来た道を戻りエレベーターに入る。そして、エレベーターの扉を閉めようとした時、ゴロゴロという音が近づきてきて、押している人が隠れる位に満載した段ボールを積んだカートが現れた。「ちょっと、ごめんにゃ」とカートを押している主は言い、強引にエレベーターに乗る。今・・ごめんにゃと言った?コンセプトカフェでしかそんな台詞聞いた来ないぞ。俺が少し困惑していると、段ボール越しに白い手が伸びてくるのが見えた。白い手はエレベーターの扉を閉め、操作盤を弄り始める。すると、カートの主は「上かにゃ?下かにゃ?」と俺に尋ねた。普通、何階ですか?っだろ、何だコイツ・・女の様だが・・まあいい。俺は気を取り直して「一階をお願いします」と言う。そして、カートの主は「はあ?何、人間みたいな事を言っているにゃ?あたい達が用があるのは上か下かないにゃ!」と捲し立て、エレベーターの操作盤を指していた。

 

 操作盤をよく見ると、確かに階数の他に上と下が記されたボタンがある。上?下?何処へ行くんだろうか?屋上?、地下駐車場ってこの雑居ビルにあったっけ?。俺は埒が明かないと思い「あの・・下って一階に止まりますか?」と尋ねた。すると「お前!さっきから何を言っているにゃあ!」と手を引っ込めて、段ボールの横から顔を出す。カートの主の顔を見て俺は驚く。十代後半、黒髪でツインテールでエプロンをしたメイド服、いや、この際それは大したことではない。彼女の頭に三毛柄の耳が生えているのだ。絶対作り物じゃない!、だって、耳が・・さっきからピクピクと動いていて、その動きはまるで猫の耳そのもので、あり得ない!。俺があり得ない事だらけで固まっていると同時に、彼女も俺を見て「に、に、人間にゃあ!?、あにゃにゃにゃにゃにゃ!?ヤベーにゃあ!こんな時!こんな時は!」と彼女はパニックになりながら、エプロンのポケットから手帳を取り出す。彼女は手帳を素早くめくり、「トラブルシューテイングにゃあ!えーとにゃあ、に、に、人間に正体がバレた時は・・あったにゃあ!」と目当てのページを見つけ、更に「えーとにゃあ、人間に正体がバレた時は素早く抹殺しましょう」と彼女は読み上げる。そして、カートがいきなり迫って来て、俺はカートに積んだ段ボールとエレベーターの壁に挟まれて身動きが出来なくなった。「覚悟するにゃあ!人間!、お前の運の無さを恨むにゃあ」と彼女は迫ってくる。彼女の目は先程の人間の目ではなく、猫の様な目になり、そして、よく見ると尻尾があり、それは興奮して膨らんでいた。

 

 ヤバい、ヤバい、殺される!どうする?考えろ俺!そうだ!。俺は自由に動かせる右手で、彼女の喉元に指先をちょこちょこ動かしながら下から上になぞった。すると「あっ、あっ、ダメにゃあ、それはダメにゃあ」と彼女は目を細めてゴロゴロ泣き始め、放心状態になっている。よしっ今だ!。俺は彼女に隙が出来ると、体を捻りながら強引に段ボールとエレベーターの隙間から脱出し、その勢いで彼女の脇をすり抜け、エレベーターの扉を開けて、通路を走る。後ろから「待てにゃあ!、あたいを手籠めにするなんて!不埒もの!」と彼女は身に覚えがない事を言い、走って追いかける気配がした。後ろを振り向く余裕は無い。恐らく物凄いスピードで近づいて来ている。非常階段の扉が開いている事を願いつつ俺は、ドアノブを思いっきり捻る。非常扉は開いて、非常階段が現れた。早速、非常階段を降りようとした時、目の端に消化器という文字が入り、妙案が浮かんだ俺は消化器を手にすると、振り返り返った。彼女は、およそ二メートル先まで迫っていて、立ち止まり振り返った俺の行動に反応し、壁を蹴って反対側の壁に飛び、再び壁を蹴り、今度は上空に飛ぶ。そして、天井の配管を思いっきり蹴り急降下し「ヒャッハー!、覚悟するにゃあ!」と襲いかかる。人外の彼女の行動は予想できない・・しかし、消化器による範囲攻撃なら対応出来るはずだ!俺はピンを抜きレバーを握る。ピンクの煙が通路いっぱいに広がり視界を遮った。「ゲホっ、ゲホっ、ハクチョン!何をするにゃあ!」と彼女の声がピンクの煙の中から聞こえてくる。どうやら効果は有った様子!チャンスだ。俺は小学生以来、久しぶりに二段、三段抜かしで階段を必死に降りて、遂に、二階の踊り場に到達し、逃げ切れると確信した時、妙齢で髪を束ねて、白シャツ、ロングの黒いタイトスカートで赤いハイヒールの女性が立ちはだかった。

 

 「しょ、所長!」と俺は急遽立ち止まり、妙齢の女性に言う。彼女は俺を度々(たびたび)雇ってくれている、興信所の様な会社の経営者だった。「あら、あら、どうしたの?志村君」と所長は悠長に俺に尋ねる。「所長!う、後ろから化け物が迫ってきます!」と俺は言い、上の階に続く階段を指し示す。すると、「往生際が悪いにゃあ!ゲホっ、ゲホっ」とピンクの粉まみれの彼女が追いついて来る。そして、「諦め・・にゃにゃ!所長!帰って来たのですかにゃあ」と彼女の態度が急変した。「えっ!所長これはどうい事ですか?」と俺が振り向くと、ふわっと煙が俺の顔に当たり、反射的にそれを吸い込んでしまう。煙を吸い込んだ俺は、意識が朦朧としてきて、足に力が入らず、その場に崩れる。遠のく意識の中、「土日は来ちゃダメって、あれほど言ったのに」と所長の言葉を聞いて、意識が途絶えた。フカフカの柔らかい感触といい匂いがする。耳元で何かが囁く様に、声が聞こえきた。「所長、どうするにゃあ?」、「どうしましょう」、これは・・猫メイドと所長の声だ。「タヌキから貰ったど忘れ薬を飲ますにゃあ!」、「ダメよ、前に飲ませた子は効きすぎて自分の名前も忘れてしまったじゃない」、「そんな事を言っている場合じゃないにゃあ!あたいが無理やり飲ますにゃあ!」、ここで俺の意識は覚醒して目を開けると、口に何かを咥えている事に気が付く。そして目の前には例の猫メイドが小瓶を傾けて、中の液体を垂らそうしていた。俺は急いで起き上がると、口に咥えさせられた物を吐き出し、それは床に転がる。見るとそれは漏斗(じょうご)だった。

 

 俺は急いで辺りを見回す。身を覚えがある内装、事務所に間違いない。状況が段々分かって来た。先ほど感じたフカフカで良い匂いは、所長の膝、つまり、所長の膝枕で事務所のファブリックソファーに寝かされていた様だ。意識を取り戻した俺に「あら、あら、おはようw」と所長はいつもと変わらない口調で俺に挨拶をする。そして、「ちっ、起きやがったにゃあ」と猫メイドが悪態をつき、シャーと威嚇をした。「でっ?どうするにゃあ所長」と猫メイドは所長に尋ね、所長は、「ミケ、こうしましょう、志村君はこれからあなたのパートナーとして働かせましょう」と言う。猫メイドはミケという名前か・・所長の話しが本当ならどうやら俺は助かったみたいだ。「ルールはどうするにゃあ!人間に正体をばらしてはいけないって、書いてあるにゃあ!」とミケは抗議した。それを聞いた所長は「ルールブックを貸して」と言う。すると、ミケは素直に「はいにゃあ」とエプロンから手帳を差し出す。所長は手帳を受け取ると、自分のデスクに行き、万年筆で何やら書き込んでいる。そして、「はい!」とミケに書き加えたページを開けながら手帳を返した。ミケは返された手帳を読むと「これなら、問題ないにゃあw」と安心した顔する。俺は二人のやり取りが気になって「ミケ・・さん?手帳を見せてもらえますか?」と勇気を振り絞ってミケに尋ねた。「何にゃあ?あたいのルールブックが気になるにゃあ?、ほれっ」と以外にもあっさり、俺に手渡してくる。

 

 所長が書き加えていたページを見ると、人間に正体がばれたら素早く抹殺しましょう・・これはミケが俺を殺そうとする前に読んだ文句だ。その後にインクで、正し、所長が認めた人間は例外とする、と書き加えてある。はっ!?こんな簡単に改変出来る、フワフワしたルールで俺は殺されかけたのか?冗談じゃないぞ!。俺はわなわなと体を震わせて、「待て、ちょっと待て、勝手に話しを進めるな!所長!俺はあんたの飼い猫に殺されかかったんだぞ?、説明しろ!この猫メイドはなんだ?」と俺は怒りに任せて、一方的に捲し立てた。所長は少し考える素振りをして「そうね・・いいでしょう、犬公方って知っている?」と俺の要求を飲み、そして問いかける。「犬公方?、知っていますよ!徳川綱吉の事ですよね」と俺は得意満面に答えた。「あら、あら、博識なのねw、そう、徳川綱吉、なら、生類憐みの令は知っている?」と所長はおちょくる様な物言いで再び俺に問いかけ、中々本題に入らない事に辟易しながら俺は「知っていますよ!、中々、子が出来ない綱吉が祈祷師に相談して、前世の殺生が関係しているとか何とか言われたのが発端らしいですね」と言う。「そう、表向きはね」と所長は短く返す。「表向き?じゃあ、本当は何なんですか?」と俺は所長に答えを求めた。「綱吉ちゃんてね、凄くピュアな人だったのw元々、動物全般が好きで、動物たちといつかは語り合いたいっていう、お人だったのw」と所長はまるで知り合いの話をしている様に話す。「動物好きの将軍様が、自分の趣味のために生類憐みの令を発令したって事が、この猫メイドと何の関係があるんです?」と俺は言いながらミケを見る。ミケは俺達の話に興味が無いのか、一人掛けのソファーで毛づくろいの仕草をしていた。

 

 「あら、あら、短気の男は女に嫌われるわよw綱吉ちゃんね、度し難い程、欲望に忠実なお人だったのねw彼は直参の旗本を京都に行かせて、陰陽師を連れてこさせたのw」と所長は言いながら、自分の机の上にあった、細工が施された上等なケースから銀色の煙管を取り出し、先っぽに煙草の草を詰め入れ、マッチで火を灯してふかして、マッチを振って火を消す。そして、マッチのリンの匂いと煙管から漂う煙草の煙が、俺の鼻孔に到達すると同時に、俺は軽くむせる。「あら、あら、ごめんなさいねw、それでね、陰陽師に鼻薬を嗅がせて、家康公が築いた江戸に張った結界に手を加えさせたのw」と所長は言い、再び煙管をふかす。「手を加えるって何を?」と俺は恐る恐る聞く。「ふふっw、笑っちゃうわよw江戸に張った結界は本来、幕閣に恩恵を与えるものなのよ、でもね、全員じゃない、資質がある人に恩恵を与えて、その者が頭角を現し、そして、徳川の世を栄えさせる礎にするシステムなのw」と所長は普通の人が聞くと与太話に聞こえる事をサラサラ言い続け、更に「その結界のシステムを人ではなく動物に向けるように、設定変更をしちゃったのw、生類憐みの令を発令したのは、恩恵を授かる動物の確率を上げるためなのよw、もう、それからの江戸は大変よw」と思い出し笑いの様な仕草をする。そして所長は再び一服、煙管をふかし、「だって、ミケの様に人と動物の中間の姿で、人の言葉をペラペラ話す得体の知れない者がわらわらと出てくるんだものw、まあ、流石に当時の老中たちも怪異の影に綱吉公がいる事に気づきいてね、綱吉ちゃんは老中たちが放った刺客に誅殺されちゃったの」と話し終わり、遠い目をした。「えっ!?徳川綱吉って病死じゃないんですか?」と俺は所長に尋ねる。「あら、あら、志村君w君も綱吉ちゃんと負けず劣らずピュアな人ねw、歴史とは為政者の都合で出来てるものよw」と所長は俺を子ども扱いする様に話し、そして、「綱吉ちゃんを誅殺して、老中たちは江戸の結界を元に戻そうをしとのよ、でもねw、動物たちに結界の恩恵は、授かる事は無くなったのだけど、綱吉ちゃんが結界に無理やり手を加えた反動でね、幕閣が授かる恩恵が以前の二割ぐらいしか戻らなかったのよ」と言う。

 

 「二割?それだとかなり困った事になるんじゃないですか?」と俺は所長に再び尋ねる。「そうね、確かに困った事になったわ、そのせいで幕閣に優秀な人材が生まれなくなって、焦った幕府は怪しい山師みたいな人材を重用したりしたもんだから、どんどん先細りしていって、ペリー来航を発端とした騒動で遂に、大政奉還して徳川幕府は終わってしまったの」と所長は俺の質問に答えてくれた。「知らなかった・・徳川の世が終わったのは徳川綱吉が原因だったんですね」と俺は所長の話に感服する。「まあ、確かに綱吉ちゃんが原因なのは紛れもない事実だけど、幕閣の身内びいきが多様性を損なう事になり、次々と来る難局に対応できなかったのが要因と私は思うの・・」と所長は事実を認めつつ、最後は徳川綱吉をフォローした。所長が徳川綱吉について話すとき、何か、並々ならぬ想いを感じる・・何なんだろうか?。俺が考えを巡らせていると「ごめんなさいねw長々と話しってしまってw、話しを戻すけど、要するにミケは、徳川綱吉が行った結界の改変に伴い、結界の恩恵を授かった動物の子孫なのよ!」と所長は俺が聞きたかった答えを、ようやく教えてくれた。これまでの歴史的な経緯と真相を聴いて、俺はある疑問が生じ、そこで、「ちょっと待って下さい!もしかするとミケ以外にも沢山いるんですか?」と所長に質問する。所長はにっこり笑い、「ご名答!そう、ミケ以外にも沢山いるわw、目の前にいる私もそうなのよ」と答える。「えっ・・所長もですか?」と俺はすかさず返す。俺の発言を受けて所長は、「何だと思う?」と俺に間髪入れず問いかけてくる。そして、所長の目は猫の目の様に瞳孔が縦長になり、瞳の色は赤に染まり、インテリでゆるふわで優しい雰囲気の所長が、妖艶で怪しい雰囲気な美女に変わった。俺はゴクリと生唾を飲み込み、「さ、さあ?見当もつきません」と答えるのが精いっぱいだ。「もう!張り合いが無いわね!答えはこれよ!」と所長が言うと、顔の耳が消えると同時に頭に獣の耳が生え、お尻から数えきれない尻尾が生えて、事務所の半分ほどが尻尾に占拠された。尻尾の先端は黒く、その他はこげ茶色のフカフカで触り心地が良さそうな感じだ。

 

 「九尾?、いや!、一、二、分からないや・・妖狐って奴ですか?」と俺は言う。「そうよ!狐の化け物、妖狐!」と所長は自信満々とそして誇らしげに答える。「えっと・・因みに何尾なんですか?」とこの異常事態でも俺は何処か落ち着いている自分に驚きつつ、まるで日常の会話の様に訪ねた。「さあ?、知らないわw、年々増えてくるし、18尾までは数えていたんだけど、面倒になってw」と所長は少女の様にいたずらっ子の様に笑い、あっけらかんと答える。そして、先ほどまで一人掛けのそソファーで毛づくろいの真似をしていたミケが、「久しぶりの所長の尻尾にゃあ!」と言い、所長の数えきれない尻尾の塊に飛び込んて姿が見えなくなった。「ちょっ!出て来なさい!」と所長が体をクネクネする。すると、尻尾の塊の隙間からミケの顔が出てきて、「ふみゃー、この中で一生住みたいにゃあ」とミケは目を細め、愉悦に浸っていた。「もう、おしまい!」と所長は言って、元のインテリで優しい雰囲気の、いつもの姿に戻ると同時に尻尾の塊が消えて、尻尾の塊の真ん中にいたミケは床に尻もちをつく。そして、「あいたっ!」とミケは声を出した。「おほん、それでは志村君、私やミケを総じて化け者と言うのだけども、私たち化け者が生業にしてる仕事の手伝いを今日からしてもらいます」と所長は言い、それに対して、「仕事って・・何ですか?」と俺は恐る恐る尋ねる。「まあ、ミケについて行けばわかるわよw、ミケ!、早速で悪いんだけど、志村君とお仕事に行って」と所長は含んだ笑みをして、ミケに指示をした。「はいにゃあ!、志村、ついてくるにゃあ!」とミケは所長の指示を快諾し、空中でくるりと一回転して、三毛猫の姿になり、猫の姿で俺についてくる様に声を掛ける。猫の姿でも喋れるのか・・。「あ、ああ」と俺は困惑しながら、ピンと尻尾を上に向けながら歩く三毛猫について行った。事務所から出て5分ぐらい歩くと、歓楽街にある小さな神社にたどり着く。神社の石畳をミケは先陣切って俺の先を歩き、神社の石造りで150センチぐらいの高さの灯籠の一つに止まり、振り向いておれに、「志村!灯籠の火袋の中に手紙があるから取るにゃあ」と言い灯籠の柱で前足を支える形にして、後ろ足だけで立つ。

 

 俺は灯籠の頭部分の空洞を見ると、普通は少し薄暗い程度だが何故か真っ暗だった。いや、真っ暗ってレベルじゃ無い、一寸先も見えない、漆黒そのものだ。俺が躊躇していると「何をまごまごやっているにゃあ!」とミケが言い、俺の脛に猫パンチをかます。スパンと強肩の投手が投げたボールをキャッチャーミットで受けた様な音と同時に痛みが走り、俺は、片足だけでぴょんぴょん跳ねた。「痛い!痛いよミケ」と俺はミケに抗議する。「はあ?、あたいが本気で猫パンチをしたら、お前の脛は今頃、くの字に曲がってるにゃあ、手加減をした事に感謝するにゃあ!」とミケは意に返さない。俺は気が進まなかったが、漆黒の闇に慎重に手を入れようとした時、突如、黄色い双眸(そうぼう)が漆黒の闇に浮かぶ。「うわっ!」と俺は思わず声を上げた。そして、灯篭の火袋からにゅるっと黒い液体の様なものが出てきて地面に落ちる。俺は反射的に一歩引き下がり、それを見ると黒猫だった。黒猫はミケと猫の挨拶である鼻チュウをして「姐さん、あっしが依頼の手紙を温めておきましたよ」渋い声で喋り、「クロベエ、ご苦労にゃん!」とミケはクロベエと呼んだ黒猫を労う。俺は二匹のやり取りを固まって見ていると、クロベエがこちらを見て「姐さん、こちらは?この方、人ですよね?」と尋ね、「こいつは、人の志村という雄にゃあ!、所長の命令で今日から一緒に仕事をする事になったにゃあ」とミケは事の経緯と俺の紹介をする。すると、「これは、これは、初めまして、あっしはクロベエと申す化け者です」とクロベエは俺に自己紹介をしてきた。「は、初めまして、志村と言います、あっ、人です」と俺も返す。猫に挨拶してしまったよ・・。クロベエがどいて空洞になった火袋に茶封筒があり、俺はそれを手に取ると、猫の体温で生暖かい。茶封筒を差し出すと、二匹の猫がクンクン嗅ぎ始め、二匹同時に見上げて俺を見て、「封筒を開けるにゃあ!」とミケが俺に催促する。俺は封筒を開けて、丁寧に折った紙を広げると、絵文字の様な、人の俺には到底、読めない文字が羅列している紙と、地図の様なもの、二枚が入っていた。

 

 「えーにゃに、にゃに、拝啓、化け者様へ、当方、公園にて子育て中の母猫でございます。最近、不審な人がうろつき始め、子供たちを残して、食べ物を調達する事が困難になりました。つきましては、化け者様のお力をもってして、何とか出来ないでしょうか?、よろしくの程、お願い致します」とスラスラとミケは読み上げ、そして、「公園って何処にゃあ?」と疑問を投げかける。それに対して、「姐さん、この地図によると、近くの四角公園ですね」とクロベエが地図の様な紙を見ながら言った。「よしっ!四角公園に急行にゃあ!、志村!、クロベエ!ついて来るにゃあ!」とミケは言い、先陣を切って走り出す。「ガッテンです!姐さん!」とクロベエが後に続き、「ちょっと待ってよ!早いって!」と猫の瞬発力について行けない俺は泣き言を言った。四角公園は神社から1、2分の所にあり、歓楽街の中という事もあり、普段は酔っ払いと同伴出社するために待ち合わせをるキャバ嬢たちがいる公園だが、昼間の時間帯は、静かなものだ。俺は遅れて到着すると、ミケとクロベエ依頼人らしき牛柄の猫に何やら話しをしている。俺に気が付いたミケは「遅いにゃあ!志村!」とクレーム言い、「はあ、はあ、うるさい!そんな早く走れるか!」と俺は抗議した。牛柄の猫は俺の姿を見るなり警戒心をあらわにしてシャーと威嚇をしたが、ミケがうにゃうにゃと何かを語り掛けると、牛柄の猫が警戒心を解き、俺の脛辺りに頭突きをして、愛情表現をしてくれた。

 

 「うっし!どうやら、問題の怪しい人はそろそろ来るらしいにゃあ」とミケは息巻いて言い、「ちょっと!、何か作戦はないの?」と俺が焦りながらミケに尋ねる。すると、「安心するにゃあ!志村はそこの茂み隠れて、不審人物があたいに手を出しそうなったら、出てきて警察を呼ぶぞ的な事を言うにゃあ」と自信満々にミケは答え、どうやら、この手の仕事は慣れている様子だった。俺は指示された通り茂みに隠れ、不審人物が来るの待つ。10分位、経った時、何やら男性が一眼レフカメラを持って動画撮影をしながら、ぶつぶつと何かを言っている。丁度、俺の二メートル先に男性が来た時、ミケが姿を現す。「うおっ!、猫さんいましたw」とミケの姿を確認した男性が実況する様に言う。この語り口、間違いない、動画配信者だ。不審者とは動画配信者が取れ高を求めて、この公園の猫を撮影しに来た男性の事だった。ミケは尻尾を自分にまいて姿勢よく座り、男性が近づいても微動だにしない。「皆さんw綺麗な三毛猫ですよwどうですか?」と男性は言いながら、ミケの鼻先、数センチまでカメラを近づけた時それは起きる。パンと音が鳴った瞬間、一眼レフカメラが公園の壁まで吹っ飛び、バラバラに分解した。「はっ?えっ?カ、カメラが・・はは、僕はプロの動画配信者、この程度ではへこたれないぞ」と男性は言いながら、ショルダーバックからハンディカムカメラを取り出し、証拠にもなくミケを撮影しようとする。そして、ミケは後ろを向いて、男性に背中を見せる形になって、砂かけする様に後ろ足で蹴り上げた。男性が持っていたハンディカムカメラは天高く舞い上がり、重力に引かれ、地面に激突してバラバラになる。

 

 流石に機材を二台ともオシャカされた男性は怒り始め、「こ、この、馬鹿ネコが!」と蹴り上げようとする仕草をした。打ち合わせ通りに、茂みから出てきて、「おい!何をしている!警察を呼ぶぞ!」と俺は男性に向かって警告を発する。「はっ?いきなり何だお前?」と男性は俺の突然の出現に驚き、意識が俺に向いていると、後ろでミケが何かに変化した。そして、「きゃあ!変な人がいる!誰か来てください!」と大声でミケは変化した姿で叫んだ。男性はまたまた、突然出現した声の主の方へ振り向くと、「ちょ、俺は変な人じゃ・・古っ、君なにそれw古っw」といったんは誤解を解こうとしたが男性がミケの姿に笑う。しかし、それは仕方ない事だ。ミケが変化した姿は、小麦色の肌、目の周りは白と黒のパンダみたいなメイク、そして三ニスカとルーズソックスの格好をした古の女子高生の姿だったからだ。「うひょー、天然記念物もんじゃんwこの子をSNSに投稿すればバズって機材代が回収できるかもw」と男性はこりずに、今度はスマホで撮影をしようと試みる。そして、その時「おほん!」と俺の後ろから誰かが咳ばらいをした。男性の顔が一気に青ざめ、「そ、そうだw、用事を思い出したw、限定フギュアを買いに行く予定だった!」と男性は逃げる様にこの場を立ち去っていった。

 

 俺が振り返ると、制服警官が立っていて、「本官の仕事は終わりですな!」と俺に話しかける。この渋い声は・・。「お前・・クロベエか?」と俺は制服警官に尋ねた。「ご名答!、クロベエです!」と俺の問いにクロベエは答えて、くるりとその場で一回転して、元の黒猫に戻り、クロベエはミケの方へ駆け寄る。ミケはクロベエの頭を撫でまわし、褒めた。そして、ガサガサと茂みから音がすると、先ほどの牛柄の猫が出てきて、ミケたちに何かをうにゃうにゃ話しかけ、ミケがいきなり俺の方へ向いて、「手帳返すにゃあ!」と催促してきた。すっかり忘れていた・・。俺はポケットに入れっぱなしだった手帳をミケに返すと、ミケは手帳を開いて、牛柄の猫の前に差し出す。すると、牛柄の猫は手帳に前足を乗せる。乗せた前足を引っ込めると、手帳には赤い肉球の跡と謎の文字が記されていた。牛柄の猫は茂みの中に消え、ガングロの女子高生とホームレスぽいっ男、そして黒猫だけが取り残される。俺は改めてミケの姿を見て「何でそんな姿になったんだよw」と尋ねた。「はあ?、事務所の横にある、お店のお姉さんがこの格好をしていたにゃあ」とミケは堂々と答える。「前なw、横のお店って風俗だろ?あれはな、お店に来たオッサンのノスタルジーを刺激して、若かりし頃に出来なかった事をさせる、あーして、こーするサービスを提供する店なんだよwだから、現代の女子高生の姿じゃないんだよw」と俺はようやくミケにやり込めれると思いウキウキで話す。するとミケは、少し悔しい顔をするが、意地悪そうな人相になり「あーして、こーするサービスって何をパコパコしてるにゃあ?w猫のあたいに分かる様に教えて欲しいにゃあw」と言い返してきた。「はあ?ふざけんなよ!パコパコ言っている時点で知っているだろうが!」と俺も負けじと言い返す。

 

 言葉の応酬が続き、ミケのターンになると「ふっ・・これだから童貞は話がおもしろくないにゃあ」と今度は方向性を変えてなじってきた。「はっ!?ちげーし!俺は童貞じゃないし!全くw大学でつけられた俺のあだ名知ってる?、種馬!種馬だよ!」と俺は真実の欠片もない与太話で応戦を試みる。「へーそれは凄いにゃあw経験人数は何人かにゃあ?」とミケは追撃の手を緩めない。「え・・三千人くらいかなwもう、とっかえひっかえ大変だったよw」と俺は思いついた事をペラペラ言う。そこで、今まで静観していたクロベエが「一年は365日、大学は4年ですよね?一日一回メスと契りを交わしたとしたとしても、1460回、物理的に到底無理な回数ですよ志村さん・・猫のあっしが言うのもなんですが、そんな噓、猫でも騙せませんぜ」と俺を論破した。打つ手が無くなった俺は「うっせーなー!ミケ!お前だって処女だろが!」とやけくそ気味にミケに絡む。ミケはニヤリと笑い「はいにゃあ」とスマホをの待ち受け画面を俺に見せた。待ち受け画面には、俺が初めて会ったメイド姿のミケが、ちんまい茶虎の子猫を四匹抱いた画像だった。「は?これが何?」と俺は意図するものが分からずミケに尋ねる。「あたいの子供たちにゃあ」と衝撃の答えをミケは言う。「はは・・、えっw凄いなw化け猫ジョークって奴?」と俺は現実逃避をし始めた。「ジョークじゃ無いにゃあ!、向かって右からチャタロウ、チャジロウ、チャミコ、チャミエにゃあ!」とミケは俺に容赦なくとどめを刺す。「うそ・・だろ?えっ?じゃあ、子育てしながら働いているのか?」と心は猫たちにズタズタにされて、ギブアップ寸前にななっていたが、俺は疑問をぶつけてみる。「この子たちは、もう、独り立ちをして、それぞれ幸せに暮らしているにゃあ」と眩しい笑顔でミケは答えたくれた。子育てを終えて、働き者のミケは俺とは天と地の差がある存在だった。これは暫く立ち直れそうもない。

 

 勝敗は決し、俺がしょぼくれているとミケは察して「よし、志村!今日はお前の初仕事を終えた記念にゃあ、おごってやるにゃあ!」と言い、空中でバク転して、ガングロ女子高生から、ショートカットのOL風の女性に変化する。そして、「あっしも、お供します!!」とクロベエも賛同して、くるりとその場で回転して、ホスト風の男に変化した。そして、俺は二匹の化け者の後に続き、森のひだまりという喫茶店の前に着く。この店は俺の馴染みの店でもあった。ネットカフェ生活をしていると、どうしても食事はマンネリ化してしまい、飽きてしまう。月に一度、この店で贅沢をすると決めているのだ。俺達は喫茶店のドアを開けると、ドアに備え付けてある呼び鈴が鳴り、気付いた店員が俺達を迎えいる。ゆったりとしたボックスシートに案内された俺達は、メニューを早速注文を始める。「あたいはオムライスにゃあ!」とミケは速攻に決め、遅れて、「じゃあ、あっしは焼き魚定食」とクロベエは中々渋い選択をして、「俺はステーキセット」と俺はお気に入りの一品をチョイスした。それから、注文を終え、注文した料理が来るまで、俺たちはそれぞれ思い思いの事をしていた。ミケはスマホで誰かとメッセージをやり取りをしていて、クロベエは喫茶店に置いてあった新聞を真剣な目で読んでいる。俺はというと、窓際の席から、通りの行きかう人々を眺めていた・・。通りを歩いている普通の人生を歩んでいる人々が、今は凄く遠い存在に感じる。酷い目にあいながら、ミケたちとたった数時間、行動を共にしていただけでこのノスタルジー、更に長く行動を共にすると、どうなるのだろうか?。でも、俺は悲観的な思いは無かった。何故なら、通りを歩いている人たちの世界に俺の居場所は無いからだ。そんな出来損ないな、社会不適合者の人間扱いされない俺をミケたちは人と呼んだ。人と呼ぶミケたちが、必要としてくれるなら、暫くはこちらの世界に身を置いてもいいと俺は思う。

 

 

 今回ご紹介する曲は、いよわさんが全てを手掛けた地球の裏です。

 

 死をもってしても、その人間が持っていた悪意は引き継がれ、伝播し、終わる事が無い無限地獄が続く・・死んだぐらいでチャラになると思うなよ。お前が選択した事はそういう事だ、という悪意の連鎖とそれに連なる混沌とした世界観を、緩急が激しい曲調に乗せ、裏命さんが歌います。

 

 世界の裏とは、日本から見れば南米、南米から見れば日本が裏になります。どちらが裏か表か、それは観測する人によって変わってきます。それを人に置き換えれば、自分を有利にするため、その人の立ち位置など、事情と立場で対象の人に対する印象は変わります。本曲の題名、地球の裏は、他者に対してのイメージを固定する悪意を警鐘するという意味が込められていると自分は思いましたよ。

 


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 本曲を一言で表すなら、カオス。難解な歌詞には、考察好きの自分もかなり苦戦しましたw。難解歌詞系の曲の共通点は何故か妙に、依存性というか、中毒性が強く、本曲、地球の裏も例に洩れず、中毒性が強いですね!。暫く、ヘビーローテーションしてる思います。

 

 本曲、地球の裏は、緩急乱れた曲調に乗せた、難解な歌詞が考察好きを夢中にし、本曲の動画の再生数が証明していますが、意味は分からないけど、何故かハマるという素晴らしい曲だと思いますので、是非、本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

 

 裏命