煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

憧れから始まる物語を歌うVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 新緑が美しく芽吹き、様々な花が咲き誇り、行楽シーズン到来って感じですね!皆さんはゴールデンウィークに何処かに行く予定はありますか?今年のゴールデンウィークの行楽地は国内外の人達で滅茶苦茶に混む予感がしますね・・自分は人込み大っ嫌いなので、適当に車でブラブラして終わらせますwそれでは記念すべき300曲目の紹介とちょっとした物語をお送りしたいと思います。

 

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました

 

曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 「ど~も!ルリルリです!最近、暖かくなってきましたね!」と私はモニターに付いているカメラに向かって話しかける。「今日はね、流行りのトレカ、ポシェットモンスターの開封の儀をして行くよ!」と懐から未開封のカードパックを出してカメラに見せ、「レアカードが出たらどうしようw」とわざとらしく私は可愛らしくおどけて見せ、モニターの視聴者数をチラッと見る。視聴者数は23を表示していてピクリとも数字の変化は無かった。(何でやねん!ボケが!)と私の心の中の似非関西人が毒を吐きつつ「それでは開けるよw」と慎重にカードを傷つけない様にパックの上の方をハサミで切って、中身を取り出す。出て来たカードはコモンカード(価値がないノーマルカード)ばっかりで、特に盛り上がる事は無かった。

 

 それから雑談をして、「まったねー!」と別れの挨拶をして私の時間は終了した。私、ルリルリ事、川上萌香はアイドル活動、略してアイ活に勤しんでいる。今しがた、私がやっていたのは、ネットの生放送をやっていた訳だが・・視聴者数を見ると散々たる結果であった。「何やねん!こんな可憐な乙女が愛そう振りまいてるんやぞ!見ろやボケ!」と心の中の似非関西人が表に顕現して、己の不甲斐なさに机を叩きモニターが揺れた。私がこの様になってしまった原因は高校生の頃に遡る。私は友達に連れられて、間近で見れるアイドルが謳い文句の某アイドルグループの劇場に行った。舞台での彼女たちは、キラキラと輝いて、生命力に溢れて、とてもカッコいい姿に私は、たちまちアイドルという存在に心を奪われ渇望するようになる。

 

 しかし、事務所の門を叩く度胸も無く、オーディションを受ける積極性も無かった私は、主にネットを主戦場としたネットアイ活をする。数人の人が見てくれただけでもとても嬉しくて、ちょっとしたアイドル気分に浸り、アイドルになりたいという欲求を満たして溜飲を下げた。だが、人は欲深い生き物である。もっと、もっと、と欲求がエスカレートして行き、今やただの承認欲求モンスターになり果てて、ご覧の有り様である。「はーーー、どうやったら、見てくれるんだろう・・」と私がぼやくと同時に『ピコっ』とスマホから音が鳴る。私はスマホを手に取ると、『お疲れ様です。生放送良かったよ!これから打ち上げしない?』とマキ姉からメッセージが来ていた。私はすかさず『お疲れ様です♡良いですねwミーコは来るんですか?』と返信する。『来るよwじゃあ、いつもの居酒屋で』とマキ姉とのメッセージのやり取りは終わった。

 

 マキ姉とミーコは私と同じネットアイ活をしている同志だ。マキ姉事、マキは姉御肌が売りで、視聴者から寄せられた悩みに対してサバサバな物言いでアドバイスを実況するアラサーアイドルだ。根強いファンが付いていて、私より当然ファンがいる。ミーコは天然なキャラでヨガやストレッチを実況して、私達より頭二つ分抜けたファンがいる。しかし、それにはカラクリがあった。いわゆる、ヨガやストレッチをする服装は、体のラインが分かるピッチりして露出が多い。必然的に男性が彼女の体を見る目的で視聴する訳だが、困った事に本人がその自覚が無い。その事をマキ姉と私は彼女に対して、やっている事に自覚があるのか?大丈夫か?と指摘して心配をしたが彼女はどこ吹く風で、「そんな事は無いっす、純粋にヨガやストレッチが好きな人が見てるだけっす」と、どこまでも能天気ガールなアイドルだ。そんな私達ネットアイ活三人組は、動画配信会社が企画した、ネットアイドルフェスが切っ掛けになって、知り合った訳だが、実はお互いの本名は知らない・・当初は、その場限り、その日限り、その月限りの関係と私は思っていたが、ずるずると2年の月日が過ぎて、お互い本名を知らないまま仲良くなって、今日この日まで来てしまった。

 

 三国と書かれた看板を掲げた居酒屋の前に私はいた。この居酒屋が[いつもの居酒屋]で私達がよくここを利用する。この店は、とあるコンセプトを掲げていて、それをマキ姉が凄く好んでいた。私は三国と書かれたのれんを潜ると、男性店員が案内するため私の元へ来る。店員は古代中国の漢服と言うのだろうか?私は詳しく無いので何とも言えないが、とにかく三国志演義のドラマに出て来そうな服装をした店員が、右手をグーにして、左手の掌にくっつけ、胸の辺りに掲げる独特なポーズで、「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか?」と私に接客をしてきた。マキ姉に教えてもらったが、今しがた男性店員がした独特のポーズは、包拳礼(ほうけんれい)と言って主に中国武術家がする礼で、一般の人は使わないそうだ。「待ち合わせをしているんですが・・」と私は言いながら店内を見回すと、奥のテーブルにスーツ姿に眼鏡をかけたマキ姉と長袖のシャツにデニム姿でロングの髪をしたミーコがこちらに手を振っていた。「あっ!いました!」と私が言うと「かしこまりました、おしぼりとお水をお持ちいたしますね」と男性店員が包拳礼をして去った。

 

 「ごめんなさいw待ちました?」と私は早速、二人がいるテーブルの元へ行って二人に話しかける。「ルリルリ!全然待ってないっすw」とミーコが言い「私達もさっき来たばっかりだよwほら!ルリルリ、座って!座って!」とマキ姉は自分の隣の椅子を後ろに引いて掛ける事を促してきた。私は催促された席に着くと「いやー今回は残念だったね」とマキ姉が肩を叩きながら散々たる結果の生放送について、私を慰めてくる。「今回もですよ・・」と私は落ち込みながら返す。その様子を見たミーコが「でも!だんだんトークも上手くなっているっす!」と私をフォローしてくれた。「日進月歩、雨垂れ石を穿つと言いたいけど・・私達アイドルの活動時間は有限だからね・・」と勝気なマキ姉が少し暗い顔し「アイ活の時間は無限っす!30を過ぎても活動しているアイドルもいるっす」とミーコがまたフォローに入る。「30過ぎてもアイ活している人って、一発当てた人でしょ?、私の様なほぼ無名なアイドルが三十路でやる何て絶対、無理、無理・・」とミーコのフォローでも立ち直れないマキ姉。その時、「おしぼりとお水です。ご注文は決まりましたか?」と先ほどの男性店員が来た。

 

 親しい者に見せていた砕けた表情が、店員の存在で私達は、すっと、真顔な感じの顔になり「ええっと、どうする?私が適当に決めて良い?」とマキ姉が采配する事に許可を私達に求めてきた。ミーコは「いいっす!」と私は「いいです!」と応える。マキ姉はメニューを見ながら「じゃあ、とりあえず、鳥の唐揚げ酒池肉林盛と生中三つお願いします!」と男性店員に伝え「かしこまりました、鶏の唐揚げ酒池肉林盛と生中三つですね」という確認に私達が頷くと彼は厨房の方へ行った。「だからさ・・私・・体を使おうと思うの・・」とマキ姉が先ほど中断した話を再開し「か・・体?マキ姉それは・・まくら的なあれですか?」と私が恐る恐る聞く。「違うわよwルリルリwこーれw」とマキ姉が自分のふくよかな胸を寄せて私達に見せた。「見損なったっす!マキ姉が破廉恥路線に変更なんて・・どうせ、10年遅い定期とコメント書かれるのがオチっす」とミーコがマキ姉のしようとしている破廉恥行為にイエローカードを出す。

 

 それに対してマキ姉が「はあ?あんただって、ぴちぴちのウェアーで似たようなものでしょうが!」とミーコのアイ活に物申した。「違うっす!あれは正式な服装であって、断じて、破廉恥な意図は無いっす!エロエロな脳みそを持っているからマキ姉はそう見えるんじゃないっすか?」とミーコも負けじと反撃する。(これは・・あかん・・)と私の中の似非関西人が警鐘を鳴らした。基本、私達は、私とマキ姉が愚痴る、それをミーコがフォローして慰めるという黄金パターンで成り立っている。しかし、時々、今回の様に天然で能天気な故に穢れを知らないミーコの潔癖な精神が、マキ姉や私の吐くドロドロとした闇に、拒絶反応を起こし糾弾する時があるのだ。そして、その時は必ず荒れた。「はい!はい!マキ姉さんは別にきわどい恰好をする訳じゃなくて、少し胸を強調した衣装にするという事ですよね!」と二人の言い争いに私が割って入ってマキ姉をフォローし「まあ・・私だってまだ嫁入り前の女ですから、抑え目にするわよ」と私の助け舟にマキ姉が乗り「そ、そうなんすっか?ごめんなさいっす・・てっきり、きわどいい水着を着て男に媚びるかと思ったっす」と若干トゲがある物言いだがミーコは謝罪をし「わ、私も悪かったわね・・あなたのアイ活を侮辱して」とマキ姉もまだ納得はしていなかったが、彼女の天然であるゆえに出る物言いという事は分かっているので、わだかまりを飲んで謝罪を受け入た。

 

 (ほんま、あんたら手間がかかるで・・)と私の中の似非関西人が胸を撫で下ろした時、「鳥の唐揚げ酒池肉林盛と生中三つです」とチャイナドレスの女性店員が言い、私達の前に生ビールが入った中ジョッキを置き、漢服を着た男性店員がこれでもかと唐揚げを山盛りに盛っている大皿をテーブルの真ん中に慎重に置く。そして、最後に小皿を置いて、店員二人とも包拳礼をした後に去った。私達の前にそびえ立つ唐揚げの山、鶏の唐揚げ酒池肉林盛は、居酒屋三国の名物で早い、美味い、沢山の三拍子揃って、お持ち帰りも対応してくれる人気メニューだ。マキ姉が注文が全て来た事を確認すると、ゴホンと咳ばらいをし「えー、ちょっとトラブルがあったけど!それではお互いのアイ活が成功する事を願ってカンパーイ!」と音頭を取り、私達アイドルの宴が始まった。私達は同時に生中を飲むと、「ぷはー美味い!」と同じ感想を漏らし、上唇に付いたビールの泡で出来た白い髭を見てお互いゲラゲラと笑う。そうこうするうちに、ミーコがゴソゴソと唐揚げの山の奥で何かをやり始めた。(はっ!?あかん!!)と私の中の似非関西人が過去の記憶からある事が起きると予見する。私は立ち上がり何かをしようとしたミーコの手を止めた。ミーコーの手にはレモンが握られており、唐揚げの山に掛けようとしていた様だった。



 

 「ミーコ!言ったじゃない!レモンを掛ける時は大皿じゃなくて、取り分けた小皿に掛けてって!」とマキ姉がミーコに注意する。「唐揚げって言ったらレモンじゃないっすか!」とミーコが抗議すると「私はマヨネーズ派なの!知っているでしょ?」とマキ姉が抗議を却下して、(ワイはケッチャプ派や)と私の中の似非関西人が呟いた。それからは、唐揚げが盛っている大皿に添えてある好みの調味料を付けて、食べて飲んで騒いでを繰り返し、小一時間が経つ。私達はすっかり酔っ払っていたが、会話は弾んでいて、お互い下らない事を言い合ってケタケタと笑っていると「緑一色サラダ(リューイーソーサラダ)です」と男性店員が私達のテーブルに突然置く。「だれ?これ頼んだの?」とマキ姉が半笑いで尋ねると「自分っす!肉を食べたら、その分野菜を摂らないとダメっす!」といつもの調子であまり酔っ払って無い様なミーコが答え、大皿のサラダを取り分けないで、そのままモシャモシャと兎の様に直食いを始めた。



 

 その様子を見た私とマキ姉はゲラゲラと笑う。ミーコは見た目だと酔っ払っているのか判断が付かないのだが、どうやらしっかりと酔っ払っている様だ。「よーし盛り上がって来たなw」マキ姉が言い、そして「店員さん!三国カクテル、三色をお願いしまーす!」と彼女は遠くにいる店員に注文した。その瞬間、私とミーコが酔いが吹き飛び、真顔になる。「三国志ウザ絡みが始まるっす・・」とミーコが苦虫を噛み潰したような顔でサラダをウサギの様にむしゃむしゃ食いながら言う。三国志ウザ絡みとは・・マキ姉が酔っ払うと時々起きる現象である。マキ姉は三国志が好きだ。その知識を使って私達にウザ絡みを仕掛けて来るのだが・・そのオープニングセレモニーが三国カクテルで桃園の誓いから始まる。男性店員が私達のテーブルにそれぞれ、青、赤、緑に染まったカクテルグラスを置いた。「さーあ!誓いましょ!我ら生まれた日は違えども 死す時は同じ日同じ時を願わん」とマキ姉が言い放ち、緑のカクテルを勢いよくを飲み干し、私達も続いてカクテルを飲み干したがミーコは小声で「嫌っす」と囁き(なんやねん!こいつ!ワイは一緒に死ぬなんて嫌や)と私の中の似非関西人には反骨の相があった。



 

 「あれ?誰だっけな?ほら!蜀の軍師で有名な!ルリルリ知っている?」とマキ姉がヘラヘラしながら私に尋ねてきた。(ワイに仕掛けて来よった!どないする?知らんとしらを切るか?いやダメや!前に知らんと言ったら永遠とその武将の事を歌ったやんけ!ほなら!)と私の中の似非関西人軍師が決断する。「諸葛亮孔明ですよね!」と私が答えると「プフーw諸葛亮孔明ww本名と字(あざな)の欲張りセットwwあれれ?あなた、字(あざな)を呼ぶ合う間柄という事は、古代中国人とお友達なんですかw紹介してくださいよwルリルリさんw」とマキ姉が思いっきりウザ絡みをして「何やねん!こいつ!いてまうぞ!」と私の中の似非関西人が思わず表に顕現した。「出た!似非関西人!ご無沙汰してますw半年ぶりですねwルリルリとは仲良くさせてもらってますw」とマキ姉が更に私を煽り、「もう、嫌や!付き合いきれんわー!」とあまりのウザさで私はギブアップ宣言してミーコを見る。「ストップ!ストップ!もうやめるっす!マキ姉!どうしたんすっか?今日のウザ絡みは度が越えているっす!」とミーコがマキ姉をたしなめる。すると、マキ姉がしくしく泣きだした。

 

 「今日のマキ姉の感情のブレ幅が大きいっすね・・」とマキ姉の醜態を前にして困惑してる私の元へ来て、耳元に囁いた。確かに今日のマキ姉はおかしい・・ウザ絡みにしても、いつもなら程々にしてここまで絡んで来ない。「私、結婚するの」とマキ姉が一言呟く。「えっ!?」と同時に私とミーコが驚き、「彼はアイ活の事は容認してくれてはいるけど・・同居が始まったら辞めてくれって言われたの・・」とマキ姉が涙を流しながら語った。「同居はいつからですか?」と私が尋ね、マキ姉が「来年の今頃」と簡潔に答える。マキ姉のアイ活はもうすぐ終わる・・私もいつかは辿る道、その時私はどうなっているのだろうか?束の間の沈黙の後、私は不安を振り払う様に「店員さん!三国カクテル、三色お願いします!」と店員に注文して「さあ!桃園の誓いパート2をやりましょう!」と私がマキ姉とミーコに鼓舞すると、二人は無言で頷いた。

 

 アイ活と言う活動から出来た関係は、生涯の関係ではなく、アイドルを辞めた時に終わる関係だと皆、理解をしていた。マキ姉は来年にアイドルを辞める。つまり、マキ姉と私達の関係は来年に終わるのだ。そして、残された私とミーコは積極的に人と接するタイプではなく、マキ姉あってこその関係で、恐らく段々と疎遠になって行って、私とミーコの繋がりは自然消滅をするだろう。桃園の誓いパート2をした後、私達はこの関係が来年で終わるという喪失感を忘れるためにお酒を浴びるように飲んだ・・そして、アイドルを夢見た乙女が一人、夢から覚め現実に生きるという事象に抗うように私達は記憶が無くなるまで飲み明かした。

 

 キーンと言う耳鳴りの後、気が付くと舞台の袖に私は立っていて、フリフリのミニスカートにラメが散りばめたジャケットを着ていた。観客席を見ると、沢山のファンが席を埋め尽くし、カラフルなサイリウムライトを振っている。私が舞台に出ると歓声と悲鳴が轟く。歓迎してくれるファンに向けて何かを言おうとした時「退けや!この舞台はワイのモンや!」と誰かが私に声を掛ける。私が声のする方を振り向くと、私と瓜二つの女性が立っていた。「なーに、キョドッてんねん!お前がよーく知っている似非関西人さんやでw」と言い、続けて「お前、マキ姉さんがアイドルを辞めると歌った瞬間、芋を引きよって、シバくぞ!われ!お前にはマキ姉さんの思いを受け取り、一流のアイドルになる気概がないのかワレ!」と私に一方的に喋り、私が反論をしようと試みた時、きーんという耳鳴りがまたして、膝をつき耳を抑えてうずくまる。体中から脂汗が絶え間なく出て、耳鳴りが更に強くなる・・そして、目の前が真っ白になり私は気絶をした。

 

 目が覚めるとベット上で裸で寝ていた。「痛っ!あ、頭が痛い・・」と私は呟き、辺りを見回すと、見覚えがある窓からの風景、部屋の家具、直ぐにここが何処か分かった。ここは、私達が酔い潰れると決まって泊まるビジネスホテルだ。隣のベットを見るとミーコが「うっ・・頭が痛いっす」と二日酔いでダウンをしている。「ミーコ、マキ姉は?」と私がダウン中のミーコに尋ねると「マキ姉っすか?部屋の代金を支払って帰ったっす」と答える。流石マキ姉だ、酒豪であるマキ姉が酔っ払う事はあっても次の日はケロッとしていて、二日酔いをしている所を見た事が無い。「今度会う時にお礼をしないとね」と私が言うと「そうっすね・・ルリルリ、自分から提案があるんっすけど」とミーコが神妙な面立ちで言う。「なあに?」と私が返すと「これからは、自分とルリルリは定期的に会う事にしようっす」と応える。それを聞いた私は「何で?」と質問する。「マキ姉は来年の今頃にはもういないっす、残された自分たちがこの先も関係を続けるには、半強制的に会う予定を作るしかないっす」とミーコなりに先の事を考えていて、私と同じ見解を持っているのは嬉しかった。「うん!そうしよう!」と私が快諾する。「決まりっす!これからは週一会うっす」とミーコは嬉しそうに言った。

 

 私達は、シャワーを浴びて身支度をし始めた。昨日の服はお酒の匂いが染み付いていて不愉快な気持ちになるが、他に着る服は無いので仕方なく着る。最後にデニムのジャケットを着た時、ポケットに何かが入っている感触があった。私は、ポケットを弄ると紙が出てきて、それを広げると、動画番号が書かれ、”PS・似非関西人より”と送り名が記されていた。私が少し動揺しながら見ていると「何っすか?これ?」とミーコが濡れた髪をタオルで拭きながら覗いてくる。「はは・・何だろうねW」と私は愛想笑いをして、恐る恐るスマホで動画サイトにアクセスし、動画番号を検索ボックスに入れた。すると、この動画は秘密鍵が掛かっていますと表示されている。私はゴクっと生唾を飲み込んで、先程の夢の事もあり、直感に従い自分の誕生日を数字にした20020401と番号を入れると、秘密鍵が開いて動画の再生が始まった。動画にはどこかのトイレの洗面所の鏡を映していて「あっ!ここは居酒屋三国のトイレっす!」と後ろから私のスマホを見ていたミーコが言う。動画が撮影された時間はトイレの中の時計から、居酒屋三国で私達がお酒で酩酊状態になった時の様だ。そして、トイレの奥から誰かが歩いて来て、姿を現した。姿を現したのは私だった。「えっ?えっ?」と私の頭は完全に真っ白になってしまう。茫然自失の私をよそに動画の再生は続き「どーもw似非関西人やでw初めましてやなw」と私が名乗った。「ルリルリのトイレがやけに長いと思ったんっすけど、こんな事をやっていたんすねw」とミーコはケラケラと笑い、その後に来た二日酔いの頭痛で顔をしかめる。

 

 私とミーコのこの動画に対しての印象は天と地の差があった。ミーコにとってこの動画は私のお茶目な動画。私にとってこの動画は全くに見覚えが無い戦慄のホラー動画だ。動画はまだ続いていて「ルリルリ!姉さんの雪辱を晴らそうや!これからはガンガン行こうや!」と言い殴って動画が終了した。(は、恥ずい、ワイは何をやってるんや・・)と私の中の似非関西人が恥辱で悶えていると「よーし!自分も頑張るっす!!」とミーコが能天気に似非関西人に賛同する。そして、動画を閉じ、私はベッドに飛び乗ってうつ伏せになり、恥ずかしさで両足をバタバタする。それからしばらくして、私達は身支度が終リ、ホテルで軽めのランチをしてからチェックアウトをし、ホテルの前で次の会う予定を決め、それぞれの帰路についた。





 そして、一年後・・「はーい、お送りした曲はアイドル地獄変でした。週末の天気は荒れ模様ですので、お出かけの際は傘を忘れないようにお気をつけ下さいね!来週のルリルリのローカルニュースでまたお会いましょう。この放送はルリルリがお送りしました」と私が言い終わると「はいっOKです!お疲れ様です」と目の前にいたスタッフさんが私に収録が終わったことを合図する。あれから、私は地道にネットの生放送を続けていた。そして、転機が来る。ローカルラジオのパーソナリティの仕事のオファのメールが来たのだ。商店街が運営しているローカルラジオ局で、ギャラは雀の涙程だったが、ラジオのパーソナリティをしているという肩書は、伊達ではなく、自治体のちょっとしたイベントの司会や、商店街の行事の進行など、ちょいちょいと小さい仕事が舞い込むようになり、以前より知名度が上がって、少しはアイドルぽっくなった。

 

 「お疲れ様です!」と私はラジオのスタッフもとい八百屋のおじさんとパン屋のオーナに挨拶をして私は元靴屋さんを改装した放送局を後にした。商店街のアーケードを歩いていると、スマホから振動がして、私はすかさずスマホを見ると二通のメッセージが届いている。確認すると『ヤッホー!マキです!ラジオ良かったよ!いつもの場所で会いましょう』とマキ姉からメッセージだ。マキ姉はあれから結婚をして同居をし、アイ活から足を洗った。だが、マキ姉は諦めてなかった。マキ姉の必死の説得で旦那さんが折れて、アイ活の許可が下り、人妻アイドルと言う異色のアイドルになる。も一通は、『ラジオを聞いたっすよ!居酒屋三国で弾けるっす!』とミーコからだ。ミーコはヨガやストレッチの実況をしていたが、卑猥すぎるというクレームから炎上騒ぎに発展してしまい、一時期はアイ活を休止していた。しかし、捨てる神あるなら拾う神あり、とある老人福祉施設から声がかかり、それが切っ掛けになって運動トレーナーアイドルとして復活する。今や触れ合えるアイドルとしてお爺ちゃんやお婆ちゃんに人気のアイドルになった。

 

 私は三国と書かれた看板を掲げている店の、のれんを潜る。漢服を着た男性店員が入店した私を確認し「ルリルリさん!お二人があちらでお待ちですよ」と掌で、指し示す方向には、マキ姉とミーコが私に向けて手を振っていた。「ミーコ!マキ姉!お待たせ!」と私が二人に詫びる。「遅いっす!」とミーコが言い「全く!いつも最後に来るわねw」とマキ姉がぼやき、更に「店員さん!三国カクテルお願いね!」と注文をした。「いきなりっすか?」とミーコが困惑して、「マキ姉wペース早すぎw」と私は苦笑し「な~に、ぼやいてんの!記憶が無くなるまで行くわよ!」とマキ姉が号令をかけると「三国カクテルです」と男性店員が青、緑、赤のカクテルを私達の前に置き包拳礼(ほうけんれい)をして去った。マキ姉は蜀推しなので、直ぐに緑のカクテルを取りそれを掲げ「恒例の儀式を始めるわよ!誓いましょう!我ら生まれた日は違えども 死す時は同じ日同じ時を願わん」とマキ姉が桃園の誓いを言い、私達はそれぞれのカクテルを煽って飲み干した。私達のアイ活は道半ば、そして夢半ばだ。その道を三人で一緒に辿り、最後まで行く事を願いたい・・夢路の先にたどり着くまで、夢見るアイドルたちは、これからもここで桃園の誓いを続けるだろう。

 

  今回ご紹介する曲は碧亀さん作詞作曲、イラストを筆緒さん、動画を瀬戸わらびさんによるアイドルになりたいす。

 

 本曲は、光の中で舞い踊り、美声で多くの人を魅了し続ける憧れのあの娘と、同じ存在になる事を夢見る、乙女の歌を鏡音リンさんが歌います。

 

 本曲の題名、アイドルになりたいは、曲中に出てくる引っ込み思案の少女の心の叫ぶを題名にしたと自分は思いましたよ。

 

 本曲は実に鏡音リンちゃんのイメージにピッタリの曲だと思いましたよ!アイドルに憧れる純真無垢な少女の気持ちが伝わる良い曲ですね!

 

 碧亀さんの本曲はコンピネーションアルバムで聴けるようです!興味がお有りでしたら是非!

true2skr.wixsite.com

 

 本曲、アイドルになりたいは、憧れによって、見る方から見せる方に転向したいという思いは老若男女問わず起こりえる心理をキュートに表現した本曲は素晴らしいと思いますので是非!本動画を視聴して聴いてみて下さい。

 

 

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

 

鏡音リン

 

神韻芸術団様より

 

接触しないで挨拶する方法