煮干しの一押しVOCALOID曲

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悠久の時を超えた奇跡を歌うVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 トルコ南部、ガジアンテプ付近で起きた地震で現時点で判明しただけでも4000人近く方が犠牲になったようですね。地震は午前4時に起きたので、被災された方のほとんどは就寝中だったため避難をする暇も無く、倒壊した建物に閉じ込められた人がかなりいるそうです。半日後には同規模の地震がまた起こり、現地では阿鼻叫喚の様相を呈している様です。地震による被災は我が国にとって他人事ではないので、政府による支援を早急に願いしたいですね。それでは290曲目の紹介をしたいと思います。(物語というか怪文書は飛ばしても結構ですw)

 

 

 「酸素濃度20%、窒素濃度70%正常値です。危険なウィルス、有害物質は検出されませんでした。」高層建造物の屋上に着陸している、宇宙船のAIから大気の検査結果の報告を受けた俺は、宇宙服のヘルメット脱ぎ空を見上げ深呼吸をした。どこまでも広がる青い空は気持ちを開放的にして天然の酸素はやっぱり美味かった。俺は天然の酸素を十分に堪能すると下に目を移す。下に広がる旧人類の建造物群は朽ちていて植物の浸食が始まっていた。素晴らしい景色を見ながら余韻に浸りたかったが「さてと!彼女に会いに行くか・・」と呟き気持ちを気持ちを切り替えて階段を降りた。

 

 階段を暫く降りていくと彼女が居た。腕を組んで瓦礫の上に寝ていて、事情を知らない人が見ると死体に見えるだろう。指がぴくっと動き、目が開き俺の方を見て「始めまして、あなたが新しい担当者ですか?」と彼女が尋ねてきた。「はい、そうです。これから数年よろしくお願いします」と俺が挨拶をすると「よろしくお願いします」と彼女は挨拶を返してきてから、伏し目がちになり「あの・・前の担当者は元気ですか?」と彼女は前任者の事を聞いてきた。「父ですか?元気にしてますよ。中年太りであなたの記憶の中の父とは大分、容姿が変わってしまいましたが」と俺が答えると彼女は「・・そう!」と言って少し微笑んだ。「それでは摩耗した部品の交換と論理プログラムのメンテナンスをしたいので宇宙船に行きましょう」と彼女を促して、宇宙船に戻るため俺達は元来た階段を上がった。

 

 彼女は人間ではない、旧人類が作ったアンドロイドだ。俺の曽祖父が買った歌に特化したアンドロイドらしいが、俺は詳しくは知らない。曽祖父が死の間際に「彼女を見守ってくれ」という懇願を祖父が快諾して以来、祖父から父へそして俺に至る現在まで、我が一族は彼女を見守ってきた。「摩耗したパーツの交換は終わりました。論理プログラムも異常は検知されてませんね。これで暫くは大丈夫なはずです。」と俺は事務的に彼女に報告すると「ありがとう」と彼女は感謝の言葉を述べると俺をじーっと見てきた。「何ですか・・?」と俺は眉をしかめ尋ねると「君は前任者やその前の前任者より彼に似ているね」と彼女は答えた。「そんなに似てますか?まあ、家族から曽祖父に似ているとよく言われますね、逆に聞いていいですか?」と俺に尋ねられると「いいですよ」と彼女は了承した。

 

 「なんで担当者なんですか?俺達はあなたのマスターの子孫という事を知っていますよね?なんで他人行儀なんですか?祖父から聞きましたよ、あなたが提案したんですよね?」と俺は少し強めに彼女に問い詰めた。彼女は少し困った顔をして「彼・・あなたの曽祖父がこの星を去った時期に本当に大勢の人が亡くなったの・・必要以上に関係を持って悲しみたくないの」とスカートのポッケトから古ぼけた懐中時計を取り出して見つめ、今に泣きそうな表情をしながら彼女は答えた。スーパーカタストロフィ・・彼女が言った大勢亡くなった時期に起きた未曾有の超弩級自然災害、旧人類から新人類に移り変わった事象だ。

 

 曽祖父が十代の頃のこの星は、未曾有の気象災害が続いていた。星が人類を駆除するような現象に旧人類は決断を急かされていた。それは誰を生かし、誰を見捨てるかだ。結局、旧人類は曽祖父を始めとした十代から二十代の無作為に選ばれた若者達に希望を託して、月面の地下に避難させた。月面の地下には生きる為に必要な物資以外の音楽や芸術、嗜好品を持ち込む時間も余裕も無かった。その為、月面に逃れた曽祖父達は強制的に風習や文化がリセットされた形になってしまった。曽祖父達はそれでも懸命に生き続けて、祖父の頃には独自の文化や風習が月面の地下で芽生え始めた。そして、父の代で旧人類と一線を画す価値観や文化、風習が完璧に定着した。丁度その頃から、月面の地下に逃れた子孫たちは自負を持って、曽祖父以前の人類を旧人類、以降を新人類と呼ぶようになった。

 

 「すみません・・でも、曽祖父はあなたを最後まで気にしていましたよ・・いや!曽祖父だけじゃない祖父も父もあなたを気に掛けてますよ!」と俺は一族の想いを彼女に訴えた。彼女は少し沈黙した後に「それは分かっています・・でも・・もう少し時間を下さい・・あと少しで何かがわかりそうな気がするんです」と言った。少し熱くなってしまった自分に反省しつつ俺は「わかりました・・でも俺達一族はあなたを家族と思いっています。それだけは忘れないでください」とトーンを抑えて彼女に諭すように言うと「はい」と彼女は返事をすると表情に明るさが戻った。

 

 彼女を見送った後に俺は崩壊しつつある街並みを眺めていた。アンドロイドに取り憑かれた一族と揶揄された事もあった・・しかし、俺たち一族はそんな世間の目に耐えて懸命に彼女を世話をした。そんな俺達に対しての彼女のそっけない態度は苛立ちを覚える。祖父や父は何も思わなかったのだろうか?心のわだかまりが解消できず俺は瓦礫にふて寝していると何処からか声が聞こえてきた。俺は起き上がり声が聞こえる方向を見ると、丁度向かい側の建物の屋上に彼女の姿があった。初めて聞くアンドロイドの歌声・・俺達、新人類には歌という文化が無い。歌という概念は知っているが実際に聴くのは初めてだった。リズムという特定のパターン刻む声が俺を高揚させるのが分かる。祖父や父はこの事を一言も言ってくれなかった・・何故だろうか?いや、そんな事はもうどうでもいい・・今は彼女の歌を聴いていたい。俺は、一族の行為は無駄ではなく、価値がある尊い行いだったと、奇跡を目の当たりにして確信した。

 

 今回ご紹介する曲は作詞作曲を晴いちばんさん、動画を藍瀬まなみさん、イラスト大島つくもさん、マスタリングを酒井秀和さん達によるワンダールインズです。

 

 本曲は崩壊した世界で気の遠くなる時間を過ごしても、色褪せること無い想いを秘めたアンドロイドが、奇跡の邂逅を果たして想いを告げる歌を初音ミクさんが歌います。

 

 本曲の題名、ワンダールインズを簡単に和訳すると廃墟で起こった奇跡になります。意味合いとしては本曲が展開する物語を連想する題名と思いましたよ。


www.youtube.com

 本曲のアニメーションと曲は、考察と妄想が捗ってとても楽しかったですね。本曲は各種サブスクで絶賛配信中なのでリンクを張っときますね!

 

 

  本曲、ワンダールインズは聴き手の想像力を刺激して、あれやこれやと考察と想像を楽しめる曲だと思いますので、是非!本動画を視聴して聴いてみて下さい!

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

初音ミク

英辞郎様より

ワンダー

ルインズ