煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

今宵もパーティ!なVOCALOID曲

 

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 令和六年、辰年は不安定な世界情勢、政治的な混乱、天災と散々な幕開けになってしまい正月気分が吹き飛んでしまい、更に恒例の確定申告の時期が近づき、心中穏やかじゃない感じで、何か良い事が起きないかな?と思う今日この頃です。いや・・ちょっと今年は開幕から飛ばし過ぎじゃないですか?と神様的な方々にお伺いしたいですねw。こんなのほんの小手調べだと、答えが返って来そうな予感がしますが、気にせず記事を書いて行こうと思います。

 

今回のお品書きはこちら

 

 

煮干しのお送りするちょっとした物語

まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

 

※題名や挿絵にBing Image Creatorを使用しました



 正月も終わり、世間はすっかり通常の生活の戻って、道行く人たちは忙しなく各々の目的のために行き交う。俺は路肩停車しているレンタカーの中から、そんな人の流れを眺めつつ、コンビニの前で対象である30代半ばで中肉中背、眼鏡に茶髪、ダッフルロングコートに白のパンツ姿にベージュのパンプスを履いた女性を、怪しまれない程度に観察をしていた。俺の名前な志村、今の状況は仕事の依頼で浮気調査をしている。何もせず、人の監視をするのは意外にも重労働だが、こんな普通の仕事は久しぶりで、度々遭遇する奇々怪々な仕事に比べればストレスフリーだ。俺は車内の時計をチラリと一瞥をして、「ミケの奴、遅いな・・」と呟いた。先ほど俺が口にしたミケと言う名は、まるで猫の様な感じだが、驚くなかれ正真正銘、猫の事だ。猫を相棒にしているとは実に不可解な事だと思うかもしれない。だが、落ち着いて聞いて欲しい。化け者という、人の言葉を理解して操り、人の姿に化けれる者たちがいるのだ。その化け物たちの中で化け猫に属しているのが俺の相棒ミケである。おっと、噂をすれば何とやらだ。対象越しに見えるコンビニから、十代後半で黒髪ツインテールに緑と黄色のメッシュを入れ、赤とピンクを基調とした地雷系ファッションをした女の子がコンビニの袋を片手に、こちらへまっすぐ向かって来た。彼女がミケ、化け猫である事を周りの物が知る由も無いが如何せん奇抜な服装で周囲の目を独り占めをしていて対象の女性もチラリと一瞥。助手席のドアが開き、「志村、あんパンと牛乳にゃあ!、長期戦になるかも知れないにゃあ・・腹に詰め込んどくにゃあ」とミケがコンビニの袋からあんパンと牛乳を出す。俺は受け取ると、「サンキューw、やっぱ張り込みはこれだよねw」とあんパンを包んでいる包装を勢い良く破り捨てかぶりつく。どこのコンビニに入ってもある、某有名なパンメーカーのあんパンは、濃厚な甘さのあんを、しっかりとパンが受け止め、目新しさが無いが堅実なクオリティを維持していて美味しい。そして俺は牛乳パックに目を向ける。俺はおもむろに牛乳パックを慎重に開けると、丁度いい注ぎ口の形にして流し込む。うん、やはり、あんパンを食してからの牛乳はまた格別だ。牛乳とあんの甘さが加わり、程よい甘さの牛乳になって、何という美味なんだろう。俺はあんパンを食い、牛乳を飲むというローテンションを続け平らげると肝心な事を失念していた事を思い出し、「あっ」と言う。ミケはあんパンと牛乳を堪能しながら、「何にゃあ?」と俺に尋ねる。ミケを単に食事を買いに行かせるためだけに対象がいるコンビニに行かせたのでは無い。対象の女性が浮気をしていると思われる男性がコンビニに入ったっきり、一向に出てこないので買い出しがてらに様子を見に行かせたのだ。「ミケ、中の様子をどうだった?」と俺は早速ミケに報告を促す。ミケはゴクリと牛乳を飲み、「そう言えば、様子を伺う目的だったにゃあw、あんパンと牛乳の美味しさでうっかり忘れてしまったにゃあw、店内では男がカウンター脇でじっと待機をしていたにゃあ」と報告。俺はミケの報告に不可解な男の行動に疑問を持ち、「待機?、何をしてるんだ?」とミケに尋ねた。ミケはチラリとコンビニを見て、「店員さんにそれとなく尋ねたら、ポシェットモンスターのトレーディングカードが売り出すのを待っている見たいにゃあ」と答える。ポシェットモンスター・・、それは家庭用ゲーム機から10年以上前に発売されたゲームの事で、モンスターをゲットして相撲をさせるそのシュールなゲームは、何故か世界中で人気を博して、現在でも根強い人気がある。対象の浮気相手の男が購入するために待機しているのはそのトレーディングカード版だ。大の大人が何故子供の玩具に白熱をしているのか?、それはポシェットモンスターをプレイしていた世界中の当時少年少女であった往年のプレイヤーたちが、懐かしさなのか、このトレーディングカードゲームにあり得ないぐらい白熱をして人気を博した。世界規模の需要の高騰を受けて、レアリティが高いカードとなれば超高額で取引をされる様になり、ポシェットモンスターのトレーディングカードは資産と嘯く者も現れる始末になる。ちょっとした投機みたいな状況で、一攫千金を目当てに有象無象が群がり、今日では大の大人が子供を押し退けて、こぞってポシェットモンスターのトレーディングカードを買い漁っているのだ。俺はミケの話しにあるワードが頭に浮かび、「トレーディングカード・・転売ヤ―か?」と言う。ミケは頷き、「多分そうにゃあ」と肯定。俺は首を傾げ、「浮気相手の副業の付き添いか?」と言いながら対象の方を見た。すると、丁度、運送会社がコンビニの前に停まり何やら段ボールをカートに乗せて店内に入る所だった。

 

 俺たちが注意深く見ていると、対象の浮気相手と目される茶髪でグレーのスウエットで紺のパーカ姿にスニーカーを履いた男が笑顔で出て来て、それを確認した対象はコンビニの前に停めてある自身の車に乗り込む。浮気相手と目される男は車のハッチバックを開けて恐らくトレーディングカードであろうコンビニの袋を入れて助手席に乗り込んだ。対象の車が移動を始め、俺たちは少し距離をとりながら後に続くと、トレーディングカードショップの駐車場に停まり、今度は浮気相手と目される男が店の前で待機をして、対象が店内に入った。俺たちは車が対象たちから見えない所で停車して、ミケを車に残して俺が遠くから対象を観察すると、やはりトレーディングカードを購入し、車のハッチバックを開けて積み込み移動を開始。そんな事を何度か繰り返し、対象が運転する車はレンタル倉庫に停まる。レンタル倉庫は見通しが言い道路沿いに面していたので、かなり距離をとって街路樹で歩道から見えにくい路肩に停車し、俺は望遠ズームレンズを装着したカメラで監視の体制になると助手席から、「ボフッ」と化け物が化ける時に出す例の音がした。助手席には三毛柄の猫に戻ったミケが姿を現し、「志村、装着頼むにゃあ」と俺に要請。俺はすかさず、懐からボイスレコーダー付き首輪を取り出すとミケに装着した。装着が終えたミケは前足で助手席の開閉ボタンを押しドアを開けて、「言って来るにゃあ!」と言い飛び出す。俺は小声で、「気を付けてな」と送り出し、ミケをカメラのファインダー越しに追うと、対象と浮気相手と目される男が乗っていいる車に近づき、シュタタタと早足で車の下の潜り込む。俺は引き続きカメラのファインダー越しに様子を伺っている所、すでに停車していた数台の車から数人の男女が出て来て、対象と浮気相手と目される男も呼応するかのように車から出て、一斉に集まる。ミケは現場の状況を臨機応変に対処し、対象たちが集まった場所の近くに駐車している車の下に移動を開始し、俺はその集まったメンバー、一人一人を撮影をした。対象達を含めた数人の男女は何やら話し込み始め、数分もすると話し合いが終わったのか一斉に車に積んだ恐らくトレーディングカードを持ち出して、レンタル倉庫がある建物に入って行った。俺はその様子をパシャリパシャリと数枚撮り、対象たちが出て来るのを注意深く観察しながら待つ。対象を含めた数人の男女は、レンタル倉庫の建物から出て来て、挨拶の様な仕草をしたら、あっさりと解散をし、それぞれの車に乗り込んで去った。残された対象と浮気相手と目される男に、俺はカメラのレンズを回しズームしてフォーカスし、二人が会話している所を数枚撮影すると、浮気相手と目される男がペコリと頭を下げて徒歩でその場を後にする。そして、一人取り残された対象も自身の車に乗り込み走り去ったのだった。俺は対象の尾行を開始するためにカメラを後部座席のフロアマットに置きエンジンを掛けた瞬間、助手席の空きっぱなしの窓からいつの間にか戻ったミケが飛び込んで助手席に着地をすると毛づくろいを始める。俺はミケの首輪を外し、後部座席に放り投げ、「ミケ、あいつら何を話していた?」と尋ねながら対象の車を追う。ミケは毛づくろいをいったん中断をして、「今日の収穫は?とか、概ねトレーディングカードの話題ばかりにゃあ」と答えた。俺はミケの回答に頷きながら対象の車が信号待ちで停車しているのを発見したので、真後ろに着くのを避けるため、一旦路肩に停車。停車をするとミケは毛づくろいを止めて、ため息を付きながら車の窓を閉め、「あの二人は浮気してないにゃあ、会話を聞いたけどにゃあ、お互い敬語を使っていて、かなり他人行儀だったにゃあ」と言う。俺も同じ感想を抱いていて、「俺もそう思う」と返す。どう見ても親密な中って感じではなく、仕事仲間だという印象が強い・・それに浮気デートでラフな格好は絶対ない。どうやら、対象をかれこれ数日の監視で浮気の可能性は極めて薄いと、依頼者を納得させるだけの証拠が集まったようだ。信号が青になった瞬間、対象の車が動き始めたので俺はハンドルを握りアクセルを踏み込み、「よしっ、対象が家に帰ったら、今回の調査は終わりとしますか」と言う。助手席のミケは「ボフッ」と音と共に煙を出しいつものメイド姿になり、「おうにゃあ!、自宅まで帰るのを確認したらミッションコンプリートにゃあ!」とミケは意気揚々と返した。

 

 対象の車の尾行を続けていると、右折すれば自宅に帰れる交差点に差し掛かる。俺は当然右折するものだと思い予めウインカーを右折にしたら、何と対象は逆方向にウインカーを出し曲って行ってしまった。俺は急遽ウインカーを左折に切り替えて曲り対象を追う。ミケは対象の車をじっと見つめ、「どこ行くつもりにゃあ?」と呟く。俺はハンドルを握りしめ、「まさか・・尾行がバレた?」と不安を口にした。ミケは青ざめて、「それは不味いにゃあ・・ミッションが失敗したら所長に何をされるか分からないにゃあ」とガクガクト震え始める。所長とは俺たちの上司で雇人、更に化け者で化け狐に属した麗人の事だ。素性が全くの謎で皆は所長と呼んでいる。俺たちは戦々恐々としながらも尾行を続けると、対象の車はホームセンターの駐車場に入った。俺たちも続いて駐車場に入り、対象が駐車した場所から離れて駐車する。俺たちがじっと様子を伺うと、対象が車から降りて紙袋を持ち誰かを待っている仕草をし始めた。対象の行動でどうやら俺たちの尾行はバレてない事が分かり安堵して胸を撫で下ろす。ミケは「ふう」とため息を付いて対象を眺めながら、「まさか・・これから浮気相手と落ち合うつもりかにゃあ?」と言う。俺も対象の彼女を眺め、「さあ?、紙袋を持っているからママ友に受け渡す予定とかもよ?」と俺は返す。数分後、対象が何かに気が付き手を振る。俺たちは対象が見つめている方を見て驚愕をした。そこには見覚えがあ顔に黒髪の三つ編みを四つに束ねた少女がいて、俺は驚きのあまり目が点になり、「あ、あれって・・・稲荷神社の・・どっち?」と言う。この台詞には訳がある・・歓楽街の中心に所長ゆかりの稲荷神社があるのだが、そこには双子で少女の化け狐がいる。彼女たちは双子なので瓜二つな訳で、身内でない限り直ぐに判別をする事は出来ない。ミケは驚きながらもじっと凝視をした後、車の窓を開けてスンスンと匂いを嗅ぎ始め・・口を開き、「水無月にゃあ・・」と呟くように答えた。驚きが収まらない俺は、「水無月ちゃん?、本当に?いつもと恰好が違くない?、というか・・少し背も高いし・・、何でこんな場所に?」と疑問を矢継ぎ早に言う。ミケは既に冷静になっていて、「間違いなく水無月の匂いにゃあ・・理由は分からないにゃあ・・でもこれは極めて重要な事件が起きてしまったにゃあ・・」と深刻な顔をした。俺はそんなミケの態度に、「いやいやw、そんな大げさなw、皐月さんの付き添いで来てるのかもよ?」と若干おちゃらけて言う。皐月とは水無月の母親で、稲荷神社の神主を務め所長の妹。ミケは俺を見つめ、「皐月がこんな所をうろつく訳ないにゃあ!、皐月の買い物は大抵は歓楽街の隣町で済まし、遠出しても所長の経営している九尾百貨店しか行かないにゃあ・・つまり単独で水無月はここに来たにゃあ・・」と力説。ほんの僅かだが、ミケは稲荷神社の家ネコ時代があったので、生活習慣を良く熟知しているのだ。ミケの力説を聞いた俺はへらへらと笑いながら、「へー、じゃあ一人でここまで来たんだ、俺も思い出すな小学生の頃に背伸びして電車を乗り継ぎ、外の世界を見た時の感動は今でも忘れられないなw」と過去の自分と水無月を重ね合わす。しかしミケはぎろりと俺を睨み、「お前は事の重大性が分かっていないにゃあ!、水無月の母親である皐月は過保護にゃあ、今頃姿が見当たらないと分かって半狂乱になっているかもしれないにゃあ!」とドスを利かせた調子で即座に俺に返す。俺はミケの迫力に驚き、「えっ・・そんなにヤバいの?」と恐る恐る尋ねた。ミケはこくりと頷き、「そうにゃあ、かなりヤバいにゃあ」とグローブボックスを開けて予め置いてあったスマホを取り出し何処かへ連絡をし始める、電話が繋がるとミケはスピーカに切り替え、「あっ、所長!、今良いかにゃあ?」とスマホに話しかける。所長と表示されていているスマホの画面から、「あらっ?、ミケ?、丁度良かったわ!、今大変なのよ・・、水無月が行方不明で妹皐月が半狂乱で辺りを探し回っているの、私の所にも数分置きに連絡が来て水無月の行方を聞いてくるのよ、それでね、今日は適当に切り上げて歓楽街に戻って一緒に探してくれないかしら?」と所長の声と歓楽街の喧騒が合わさって聞こえてきて、どうやら水無月を探している最中の様だ。ミケと俺はお互いを見合ってゴクリとつばを飲み込む。ミケはゆっくりと口を開けて、「あのですにゃあ・・、実はお耳に入れたい事があるにゃあ・・」と慎重に言葉を選ぶ。スマホから即座に、「あら?、何かしら?、手早くお願いね」と所長の声が返ってきた。ミケは対象と水無月を一瞥して、「水無月があたい達の目の前にいますにゃあ・・対象と接触をしています・・指示をしてお願いしますにゃあ」と言った刹那、「えっ!?、本当に?、保護して!」と所長が珍しく声を荒げる。所長の躊躇なく出した指示にミケは、「りょ、了解ですにゃあ」と押され気味に返す。ミケの返事を聞いた所長は、「じゃあ、いい返事を待ってるわ!、志村君!ミケ!頼むわよ!」と一方的に通話が終わった。ミケはため息を付き、「妙な展開になったけど・・、ちゃっちゃっとやりますかにゃあ」と覚悟を決め、俺は拳を握り、「よしっ!頑張りますか!」と気合を入れる。俺たちが改めて二人を見ると、いつの間にか対象の姿はなく、水無月だけが取り残されていて、手にしている紙袋の中身を見てホクホク顔をしていた。しかし・・彼女はどうやってここまで来たのだろう?。以前に留守番で預かった時に、水無月ちゃんからは外の世界をほぼ知らないと聞いているし、普通ならバスや電車を利用すると思うが・・彼女はお小遣いも無いらしい・・。化け者である彼女ならではの徒歩の可能性があるが・・、イヤイヤ、それは無い。土地勘が無い彼女が闇雲に徒歩で動いて目的地に着くとは到底思いえない・・。思考を巡らせていると俺は、つい最近見た着物姿の彼女が頭に浮かぶ。そうだ!お年玉だ、恐らくそのお金でバスか電車で乗り継いでここに来たに違いない!、んっ?、でも対象とどうやって連絡を?・・まあいい、後は本人に聞こう。俺は謎の大半に対して納得できる答えを導き出し、肝心の対象との連絡手段が分からなかったが、後は本人から聞けば良いと踏んで水無月を保護するべく車から出ようドアに手をかける。だがその時、「志村!、待つにゃあ」とミケが引き留める。俺は車のドアに手をかけたまま、「ミケ、何だよ・・早く声を掛けて保護しようぜ!」と言う。ミケは水無月を見ながら、「こんなだだっ広い駐車場で声を掛けたようものなら、逃げられて保護が失敗に終わる可能性が高いにゃあ、志村・・水無月はあれでも化け者の端くれにゃあ、舐めてかかると・・手痛い目に合うにゃあ!、まずは慎重に様子を見て、チャンスを伺うにゃあ」といつになく慎重な意見。俺はその至極まともな意見に、「お、おう、そうだな、水無月ちゃんの目的も知りたいしな」と納得をして水無月の様子を伺った。

 

 俺たちは車の中で息をひそめて彼女の動向を見守る。水無月は対象から受け取った紙袋を自身のショルダーバックに入れると、スキップをしながらホームセンターの駐車場の出口に向かう。ミケは再び煙と共に、「ボフッ」と音を出し、猫の戻りいつでも尾行できるようにスタンバイして、水無月が駐車場を出たのを確認した俺はアクセルを踏み込み彼女の向かった方へ車を走らせる。彼女とおおよそ20メートルぐらいの間隔を開けて徐行と停車を繰り返し尾行。どうやら駅の方へ向かって歩いている様だ・・。彼女はキョロキョロあちらこちらを見ていて、その表情は驚きと笑顔を浮かべ、冒険をしている感じだ。彼女の仕草に遠い昔の記憶が蘇り俺の表情が自然に緩む。当時、小学生低学年だった俺は、少しづつ貯めたお小遣いとお年玉を握りしめて友人と共に電車を乗り継いで都内に行った事がある。初めての都会は見るものが全て初めてで、地元ではあり得ない高さの建物や、煌びやかな看板、食堂の入口にあるサンプルとそこから漂う美味しそうな食べ物の匂い、何もかもが俺を楽しませた。俺と友人は特に目的も無かったので、ブラブラとあちらこちらを見て回り、最後は駅の中の食堂でカレーを食べて帰路に着く。ほんの些細な遠出だったが俺には大人の階段を登った気がして、何だか誇らしかった・・。「志村!」と突然大きなミケ声で、思いにふけっていた俺は我に返り、「えっ!?、あっ、ごめんw」とキョロキョロと辺りを見回し謝罪。ミケはジト目で「水無月が店に入ったにゃあ・・」と言う。俺はそのミケの言葉に慌てて水無月先ほどまでいた場所に目をやると姿かたちはどこにもなかった。俺は慌てて、「店ってどこ?」とミケに尋ねる。ミケはヤレヤレとばかりの首を振り、「しっかりしてくれにゃあ・・見失ったらあたい達が所長にお仕置きをされるのを分かっているのかにゃあ?、全く・・あそこの雑貨店に入ったにゃあ」と前足を出す。俺は三毛柄の先にあるクリームパンみたいな形状の足先を指す店を見た。様々な物が所狭しと並び、何の店かは、ぱっと見ても分からない。俺は必至に見失った水無月を探したがここからでは店内が伺い知れず焦る。そんな中、「うっし!、志村!、お前が様子を見て来るにゃあ」と突然ミケが俺に指示をしてきた。俺は驚き、「いや・・ばれるって、匂いとか敏感なんだろ?」と指摘。ミケは猫の顔でニヤリと笑う。その顔を見て俺は猫って笑えるんだと感心した。俺が全く関係ない事に思いを馳せていると、ミケは前足で車の中央にあるコンソールボックスをちょんちょんと突く。俺は首を傾げながらコンソールボックスを開けるとその中にはサングラスと金髪のかつら、それに力士と記された男性用香水が入っていた。俺はサングラスと金髪のかつらを手にして、「ミケ・・いつの間にこんなものを」と言う。ミケは得意顔で、「如何なる時も準備を怠るべからずにゃあ!」とドヤ顔。俺はまたまた、猫ってドヤ顔が出来るんだと感心しながらかつらを装着してサングラスを掛け、香水を適度に振りまいた。ミケはスンスンを匂いを嗅ぐ仕草をして、「うん、大丈夫にゃあ!、これなら水無月も気が付かないにゃあ!」と太鼓判。「じゃあ、行ってくる」と俺はミケのお墨付きを得て意気揚々と車から降りて例の雑貨店に向かった。

 

 雑貨店は本当に様々な物が並んでいて原型は何の店だったのかは分からなく、店内の通路は人一人がやっと通れるぐらいにギチギチに商品が所狭しと置かれていた。店内をくまなく探すと店の一角にあるハンカチやタオルが並ぶコーナーに水無月が真剣な目で選ぶ仕草をしているのを発見。俺は極力近づかず目立たずを肝に銘じながら適当に商品を手にしながら観察を開始した。改めて近くで見る水無月は、やはり俺が知っている水無月より少し年が上の感じで心なしか背も高い・・遠目では分からなかったが、黒髪の三つ編みに・・・洗濯バサミだろうか?、とにかく奇妙な髪飾りを付けていた。水無月は両手でハンカチを一つづつ手にしていて、どうやら、どちらかにするか悩んでいる様だ。一つは紺色の手ぬぐいの様な木綿で出来たアヤメの花がデザインをしているハンカチと、もう一つはバラの花がデザインされたピンク色のオーソドックスなコットン生地で出来たハンカチ。自身の為か誰かにプレゼントするためかは分からないが、彼女の真剣な目つきは恐らくだが後者の誰かにプレゼントするためだと俺は感じた。5分弱も悩み続け、手にしているハンカチが汗を吸うんじゃないかと俺が余計な心配をしていると、水無月がアヤメのハンカチを戻し、色違いのバラのデザインのハンカチをもう一つ手にしてレジに向かう。レジに着いた水無月は少し緊張をした仕草で、「あ、あのラッピングお願いしますです」と妙な、ですます口調で店員さんにお願いをして、もう一人の店員さんに清算を求めらると、財布からお金を出すのに、もたついたが無事に清算をしませた。数分でラッピングが終わり店員さん丁寧に差し出された水無月は、「ありがとうです」と礼を述べて、ラッピングされたハンカチをバックに入れて意気揚々と店を出る。俺は上機嫌の彼女に続き店を出て小走り車に向かい乗り込む。車内に入るとミケが「店内の様子はどうかにゃあ?」と早速尋ねてきた。俺はシートベルトを締めて、エンジンを掛け、サイドミラーを確認しながら徐行運転を始め、「何か、ハンカチを買っていたよ、恐らくプレゼントだと思う」と返す。ミケは首を傾げ、「プレゼント?、ははw、分かったにゃあw、普段からお世話になっている、あたいへのプレゼントかにゃあw」と急に上機嫌になった。俺は水無月の背中を見続けつつ、「そんな訳あるかw」と一笑に付す。すると、「何でそんなこと言うにゃあ!、知らないのかにゃあ?、あの双子は最近、あたいの事をミケお姉さまと呼んでくれるにゃあ!」とミケは自分の予想が誇大妄想じゃないと反論。俺は苦笑をしながら、「それはだなw、お前から何らかのものを引き出すための方便なんだよw、この前だって、双子によいしょされて、まんまとタブレットを買い与えたじゃない・・・あっ!!」と俺は言い終わる最後にとんでもない事に気が付き叫ぶ。ミケは余りの声の大きさに顔をしかめつつ、「何にゃあ、いきなり・・志村・・大きな声を出さないで欲しいにゃあ」と非難。俺は冷汗をダラダラと流しながら、「お前さ・・双子のあの子達にタブレットを買い与えた事をさ・・所長や皐月さんに報告した?」と尋ねる。ミケは首を傾げ、「報告してないにゃあ、したら皐月の教育方針で没収されるのが落ちにゃあ、それがどうかしたのかにゃあ?」と返す。俺はゴクリと唾を飲み込み、「水無月ちゃんが、俺たちの調査対象と何で連絡をしていたと思う?」と質問。ミケは少し考える仕草をして、「あたいの買い与えたタブレット使って連絡を取っていた?、じゃあ・・今回の騒動の発端は・・あたい?」とショックのあまり、アイデンティティのネコ方言のにゃあを語尾にするのを忘れる。俺は水無月を見ながら、「まあ・・そういう事になるかな・・」と無慈悲な結論を叩きだした。ミケは青ざめた顔して、「あっ!、そう言えば用事を思い出したにゃあw」と助手席の窓を開けて飛び出す姿勢をする。俺は咄嗟に手を伸ばし、「待てこら!、逃げるな!」と三毛柄の尻尾を掴む。ミケは驚き、「志村!、猫の尻尾は敏感でデリケートにゃあ!、気安く触るになにゃあ」と後ろ脚で俺を蹴る。化け物本来の力で蹴られれば、ひとたまりも無いが、間違いなく大騒ぎになり取り返しが付かない状況になる。それを気にする精神的な余裕が幾ばかりか残っている様だ・・その証拠に俺の腕に走った衝撃は軽いものだった。これ以上、駄猫を追い詰めると何をするか分からないので俺は極めて冷静に努め、「落ち着けって、まだ名誉挽回のチャンスはある!」と言う。俺の台詞にミケは逃げ出すのを止めて、「本当かにゃあ?、この状況を打開する策はあるのかにゃあ?」とまるで金鉱脈を見つけた炭鉱夫よろしくな希望を見つけた顔。俺は頷き、「ある!、でもそれには水無月ちゃんの協力が必要だ」と30メートル先の黒髪で三つ編みを四つに束ねた少女を指さす。ミケは水無月を見て、「水無月の協力?。あいつがあたいのために協力をしてれるのかにゃあ?」と顔を曇らせる。俺はミケの頭を撫でて、「大丈夫さ・・今回は道義的にも彼女は協力を拒む事をしないよ」と本当は一か八かの賭けだが絶対に顔に出さないようにした。俺はかつらとサングラスを後部座席に投げ捨て、「よしっ、水無月ちゃんに声を掛けに行くぞ!」と車のドアを開ける。ミケは慌てながらも化け者が化ける時に出す例の音を出し、黒髪でツインテールのメイド姿になり助手席のドアを開けた。俺は早くもなく遅くもない歩行速度で水無月に向かい、それをミケが後に続き、とうとう5メートルほどの距離に接近する。俺はピタリと歩みを止めるとミケが俺の背中に顔をぶつけ、「急に止まるなにゃあ!」と抗議したが、俺は無視をして、「水無月ちゃん!」と比較的大きな声で呼び止めた。俺の声にビクッと少女の肩が震え、ゆっくりと振り向く。少女の双眸(そうぼう)に俺たちの姿が映ると、茶色の瞳が青い色に変化をして瞳孔が縦長のいわゆる獣の瞳に移り変わり臨戦態勢になる。脱兎の如く逃げる姿勢をした水無月に対して俺は、「待ってくれ!、このままだとミケが大変な事になるんだ」と言う。その言葉に水無月は反応する様に瞳の色が茶色に戻ると、スタスタとこちらに歩みより俺の目の前まで来て、「ミケが?、どうしてです?」と真剣な顔をして俺に尋ねる。彼女の問いかけに俺が事情を説明しようとしたら、後ろからミケが顔を出し、「水無月!、あたいの事をお姉さまと何で呼ばないんにゃあ!」と空気読めない発言をした。水無月はジト目で「えっ・・だって、そう呼べば喜んで、利用出来そうだと思ったからです」とその茶色い瞳は一切の濁りは無い。子供特有の穢れなき忖度しないその言葉にミケは、「がーん・・あたいは弄ばれただけかなのかにゃあ・・あたいの事を尊敬していたんじゃないのかにゃあ・・」とショックを受ける。水無月は少し困った顔をして、「尊敬はしているです・・でもそれとこれは別腹なのです」と自身の三つ編みを照れ隠しなのか触った。俺は二人のやり取りに心がほっこりして、ミケの昭和成分多めのリアクションにノスタルジーを感じるのだった。

 

ーつづくー

 347曲目の紹介

 

 

 今回ご紹介する曲は、作詞作曲をなみぐるさん、イラストをnekomoさん、ギターを杉村謙心さんによるずんだパーリナイです。

 

 本曲は、ずんだもんと愉快な仲間を紹介しながら、レッツパーティしたくなる曲をずんだもんさんが歌います。

 

 本曲の題名ずんだパーリナイは、恐らくですが穿った見方はせずとも、心配ご無用なそのままの意味だと思われます。

 


www.youtube.com

 

 ずんだもんって亜種がいるなんて初めて知りましたよw。あんこもんはすぐ分かりましたが、カルダモンは正直????って感じで皆目見当が付きませんでしたw。検索するとスパイスの一種なんですね!、勉強になりましたよ。

 

 本曲、ずんだパーリナイは、聴いているだけでご機嫌なテンションにしてくれて、今宵もレッツパーティな勢いにしてくれるかも知れない大変秀逸な曲ですので是非!、本動画を視聴して聴いてみて下さい!

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

 

ニコニコ大百科様より

ずんだもん