煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

人生の岐路を歌うVOCALOID曲

こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 こども政策担当大臣の小倉將信(おぐら まさのぶ)氏が異次元の少子化対策のたたき台を発表しましたね。個人的には、子供が減ったら国の衰退に繋がるので、大いに対策をして欲しいですね。それよりも、「たたき台」って聞いて意味が分かりましたか?自分は全く分かりませんでした。たたき台というのは原案や草案のような仮の案を書面化かする意味なんですが、いきなり知らない言葉が出ると、そこで引っかかって先に進めなくて、少子化対策の内容が頭に全く入らない自分がいましたよw。たたき台って何だ?ネットのニュースや新聞、テレビでも普通に説明もなく、使っているので一般常識なのか?みたいなw。まぁ、自分は学が無いって事で終わる話ですwそれでは297曲目の紹介に移りたいと思います。(物語というか怪文書は飛ばしても結構ですw)

 

ます始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社は関係ありません。

曲の紹介は下の方にあります!物語を飛ばしても構いません。

 

 春うららの中で、私、金田桜子は今日もデスクワークに明け暮れていた。いつもの様に始まって、いつもの様に終わる、今日もそうなるはずだった。私のパソコンに一通のメールが来た。誰だろうと確認すると、私の上司である室長からだった。「業務終了後、会議室に来てください」と簡潔に書かれていた文面に私は嫌な予感がした。業務時間が終わり、私は会議室に向かうと、グレーのスーツに紺と白のストライブが入ったネクタイ、中分けの髪型をしてメガネをかけた神経質そうな男性・・つまり室長がすでに座って待っていた。「金田さん、お疲れ様です。そこに掛けて」と室長が手のひらで椅子を指して、私に席に着くように促してきたので「はい、失礼します」と席に着いた。私が席に着くと室長が咳払いをして「えー、金田桜子さん、うちの会社、コロナで業績が落ちているのは知っているよね?」と質門をしてきたので「はい・・それが何ですか?」と答えながら(これは・・まさか・・)と私が胸の内で不安で一杯になっていると「我が社としても精いっぱいにコストカットをして、今まで何とか堪えて来たんだが、それも限界でね・・ついては社内幹部会議でリストラを敢行する事が決まったんだよ」と死刑執行の判決文を読む裁判官の様に室長が言った。

 

 「あの・・つまり・・私をリストラするという事ですか?」と私が若干声を震わせながら尋ねると「まあ、簡潔に言うとそうだね」と無慈悲に答えた。「あの!困ります!私にも生活がありまして・・今、会社を解雇されたら路頭に迷ってしまします!」と私は目一杯(めいっぱい)懇願した。「私もね、辛いんだよ・・一部署につき二名と上からのお達しでね・・あっ、でも悪い事ばかりじゃないんだよ、退職金の積み立てと今月の給料も色を付けて支払う、おまけに会社都合で解雇で良いと上も言ってくれているから結構いい条件じゃないかと私は思うんだけど」と室長は聞く耳を持ってくれはしなかった。「何で!私なんですか!弊社では7年も身を粉にして働いた報いはこれですか?」と私が尚も食い下がると室長は「あまり言いたくないが・・去年、副業で訓告処分を受けたよね、君?」と私にとって耳が痛い事を言い出し「そこら辺から社内評価に響いて、リストラ要員にリストアップされたんだよ、まあ、身から出た錆って奴だね」とぐうの音も出ない理由を提示されて私はそれ以上は何も言えなかった。

 

 「金田さん、まあ、そういう訳だから。私も何かもう少し手当が付かないか、上に掛け合ってみるつもりだからさ、引継ぎの件はよろしくね」と室長は一方的に言って退席した。月末には私に正式な解雇通知が来て、数日間、引継ぎ作業に追われた。そして、勤務最後の日、私は段ボールに私物を入れていた。同じ部署の皆は、腫物を触る様な感じで遠巻きで私の様子を伺っている所に「金田!災難だったな!」と紺色のスーツに赤いネクタイ、そして短髪で恰幅が良い男性が普通に話しかけてきた。それは同期の山田だった。私の同期は様々な理由で会社を去り、結局残ったのは私と彼、二人だけな訳だが、私が解雇される事によって彼は同期の唯一の生き残りになってしまった。「君がいなくなるなんて寂しくなるな・・これ、餞別」と山田が封筒を渡してきた。「えっ?山田・・・ありがとう!」と私は同期からのサプライズで舞い上がり、封筒の中身を確かめると何やら紙の束が入っている。手を入れてその一枚を取り出しと、何とクーポン券だった。「俺の秘蔵のクーポンコレクションだ!これから何かと入用な君に役立つ品だと思う!礼ならいらないぜ」と得意満面に山田は言った。

 

 「あ、うん、あ、ありがとう」と笑顔をひきつりながらも私は何とか礼を彼に言った時、遠巻きに見ていた同僚の一人が「ぶほっ」と噴き出したので私が睨むと、同僚達は蜘蛛の子散らすように解散して業務に戻った。「山田、縁が有ったらまた会おう」と別れの挨拶を山田に私がすると「おう!またいつか!」と山田は屈託のない笑顔で返してきた。若干後ろ髪を惹かれる思いははあったが私はエレベーターに向かった。エレベーターが着いて開くと、先客がいて私の様に会社から渡された私物入れの段ボールを持っていた。室長は一部署につき二名と言っていた・・彼も私と同じようにリストラされたのだろう・・「すいません」と私は段ボールの彼に一声かけて、横に並んだ。横目で段ボールの彼の顔を覗くと室長だった「はえ?なんで??室長?」と私は間抜けな声をあげながら困惑をしていると「何だ、金田さんか」と室長は普通に話しかけてきた。「あの・・室長・・リストラされたんですか?」と誰もいないエレベーターの密室で何故か小声で私は尋ねた。「ああ、そうだよ、自分から名乗り出たんだ」と室長はあっけらかんと答えた。

 

 「自ら?どうしてです?」と私がまた尋ねた「質問が多いね・・私の部署で会社を解雇されても生き抜ける可能性が高い人間は、私と君だったからだよ。私は独身で着の身着のままで身軽で実家は結構太いからね、君は副業するほど、バイタリティ溢れ、気も強くて、人付き合いも上手いからという理由で申し訳ないが君を選んだ」と明確に丁寧に元室長が答えてくれた。「室長はともかく、私は買い被りですよ!」と私が抗議すると「確かに、己(おのれ)の事は己(おのれ)が一番よく知っているからね。でも君ね、己(おのれ)の事をよく知ってから抗議しなさいよ。私が言える事はこれまで、時間はあるんだ、ゆっくり自分を見直しなさい」と説教めいた事を元室長が言い終わるとエレベーターが一階に着いてドアが開いた。元室長は先にエレベーターから出て振り返ると「あっ、協力金名目で会社から一人200万円引き出せる事に成功したからね、じゃあ、また何処かで縁が有ったらお会いしましょう」と私にさらりと言って去った。

 

 私は思わぬ吉報に浮かれながら、会社の駐車場に止めている愛車に向かった。件(くだん)の副業はこの車を手に入れるためだった。会社の給料だけでは到底手が届かなかった・・そこで、私は会社で培ったプログラムのノウハウをフル活用して、宅配者支援アプリを制作をしたのだ!若者の間で流行っている宅配サービスは、基本は早いもの勝ちになっていた。出来るだけ近場で沢山の宅配を請ければ儲けられる。しかし、遠くの宅配を請けてしまうと、その分の時間のロスが響いて儲けが下がる。その為、宅配者は人口が多くてサービス利用者が多い場所に集中して、競争が激しくなっていた。私はそれに目を付けて、独自に集計したデータに基づき、ライバル宅配者があまり居なく、サービス利用者が沢山いる穴場スポットを、アプリユーザーが密集しない様に自動分散しつつ、お天気と共にお知らせするアプリ、その名も『孔明くん』を私は制作して提供した。孔明くんは宅配者の間で瞬く間に広がり、私の懐には確定申告をして、税金を差し引いても、目的の自動車が余裕で買えるお金が入った。宅配サービス運営が、私の孔明くんを真似たシステムを導入して、早い者勝ちから、宅配者に平等に振り分ける、運営方針変更をしてからは、私のアプリは無用になってしまったが、美味しい思いをした。

 

 そして、そのお金で買ったのが、排気量1200CC、ターボ付き、マニュアル、ツードア、ハッチバック式でオートセンサー付き、シートは本革仕様で丸いフォルムが可愛い白瀬重工製、フランス語でようこその意味を冠している車ビアンヴュニュだ。リアバンパーの下に私が足を蹴るように一瞬入れると、オートセンサーが感知してハッチバックが開いた。すかさず、私物の段ボールを荷室に収納した。両手が塞がっても開けられるこの機能は本当に気に入っている。私は最後に解雇された会社を見た。(結局、7年もの間、この会社にいて何も残すことは出来なかった・・私という存在は一体何なんだろうか?)と感傷的な思いに浸りつつも車に乗り込んでプッシュスターターを押してエンジンをかけて古巣から去った。一月後・・私は机に向かって渋い顔をしていた。「貯金・・120万円、協力金・・200万円、退職積立金・・350万円、現金の合計は670万円、月の収入は自作計算機アプリの売り上げ・・月7000円、失業手当・・月18万円これなら今年いっぱいは大丈夫そうね・・」と私は自分の置かれた状況を書いた紙を見ながら呟いて、昨日買ってきた就職情報誌を手に取った。(でもな・・早い内に就職して収入得ないとまずいよね・・最悪、固定費を賄う収入を出来るだけ早く確保しないとな・・)と憂鬱な気持ちで就職情報誌のページをめくっていると、現金払い!未経験者歓迎!とお決まり台詞が掛かれた風俗の求人に目が止まった。

 

 「風俗か・・私、いけるかな?」と自室の姿見に映った自分を見ながらセクシーポーズをした。「いや、いや、ない、ない、落ち着け私!落ち着くのよ!」と私は血迷った自分を落ち着かせて冷静になるよう努めた。気を取り直して就職情報誌を隅から隅まで読んだが、これはと思う求人は無かった。私は就職情報誌をゴミ箱に投げ捨てて、床に大の字になると「室長のバカヤロウ!何が生き残る能力が高いだよ!この年で再就職何て無理だよ!はーーアラブの石油王でもいいから何処かの金持ちが来て私をお嫁にして!」と恨み言と実現性が不可能な迷い事を言って、その日はそのまま、ふて寝して終わった。翌日、目が覚めると、モチベーションが依然として低いままだったので気持ちを切り替えるために、車で何処かに遠出する事にした。私はシャワーを浴びて身支度を終えると、愛車に乗り込んで出発をした。目的は無い、とにかく何処か遠くに行きたいのだ!数分後、車を走らせると高速道路の入り口が見えてきたので私は吸い込まるように入って行った。高速道路の下りを30分ぐらいだろうか?走り続けていると、県境に差し掛かり、田畑や山が増えてきた。更に下りを走っていると山々の尾根には残雪が残っていて、普段見る景色とはまるで違う別世界になっていた。もうそろそろ何処かでユーターンしようかと思案していると、高速道路の出口に春名郡と書かれた出口が見えた。

 

 私はその地名に覚えがあり、迷わずその出口を降りると、まるで誰かに導かれるように細い山道に入って行った。一時間位、山道を走り続けると、「ようこそ!春名村へ」と錆びれた看板が私を出迎えた。春名村・・ここは私が18歳まで過ごした故郷だったが両親は早く亡くしていたので、頼る身寄りもない私は大学生になったと同時に村を去ったのだ。車を停車させ、久しぶりに見る村の景色を見ていると、唐突に腹がなり、昨日から碌に食べてない事に気が付いた私は、村が一望出来る食堂の事を思い出して、そちらへ向かった。食堂は竹林に囲まれた平屋で、瓦の上には枯れた竹の葉が積もり、竹の葉と葉が擦れる音と竹のきしむ音が時折した。懐かしむ場所であるはずが、何故か何も感じなかった。それは、村を一望しても同じだった。私は車を駐車して降りると食堂の戸をガラガラと開けて入った。店内の中が村人だらけで、アウェイな空気だったらどうしようと思っていたが、幸運にも私以外に客はいなかった。「いらっしゃい」とデニムに小豆色(あずきいろ)のシャツ、ピンクのエプロンを掛け、マスクをした店主と思わしき、中年の女性が私を出迎え、私が店内を見回していると「お好きな席へどうぞ」と店主が案内してきたので、奥のテーブル席に座った。店内は何も変わりはなく、店主の女性も何処か見覚えがあったが、生憎、思い出すことが出来なかった。

 

 店主は私のもとへ来ると水が入ったコップを置き「メニューは壁に書かれてますから、あちらからお選びください」と案内するとカウンターの椅子に座って待機した。私が壁に書かれたメニューを選んでいると、ガラガラと戸が開き老人が入って来た。「おや、源爺!」と店主は親しげに老人に声を掛けていた。恐らく村の人間である原爺と呼ばれた老人は、白髪でボサボサの頭、カーキ色の上下の作業着に地下足袋(じかたび)姿をした野良作業を終えてきた感じだった。「いつもの頼むだ」と源爺が注文すると「好きだねー」と店主が了承して厨房に入って調理を始めた。源爺は奥にいる私を見つけると「おめぇ、何処の人間だ?村の衆じゃねえべ」と私に話しかけてきた瞬間「源爺!ダメでしょ!お客さんが困っているでしょ!すいませんね」と源爺を店主が咎めると、「なして、そんな事言うだ!おらはただ尋ねただけだ」と源爺が店主に抗議して応酬し始めるのを見かねた私は「大丈夫ですよ、都心から来ました」と源爺の相手をする事にした。

 

 源爺は私からの好意を気をよくして早速話を始めた「おめぇさん、都心から来なすったのか。じゃあ、烏丸(からすまる)先生の生家を見学しに来なすったのかえ?」と会話に謎の人物が突然登場してきたので「か、からすまる?」と私が困惑していると「源爺!だから言ってるじゃない!烏丸(からすまる)先生何て今じゃ誰も知らないの!」と店主が助け舟を私に出してれた。「おめぇ、烏丸(からすまる)先生を知らないのか?烏丸(からすまる)先生はこの村の出身で大正時代に活躍された、有名な小説家だべ。知らねぇか?」と源爺は烏丸(からすまる)先生の正体を明かして私に確認をしてきた。一応、私はこの村の出身であるが烏丸(からすまる)先生なんて全く知らなかった。「あ、ごめんなさい・・知らないです」と源爺に恐縮して私が言うと「そうか・・知らねぇか・・」と源爺はしょんぼりして縮んだような気がした。「まあ、知らねぇのは仕方ねぇべけどさ、この村に来たら烏丸(からすまる)先生が好物だった味噌おにぎりとタケノコの醤油煮を食っていけ!」と源爺が私に提案して「おう、味噌おにぎりとタケノコの醬油煮を頼むだ」と店主に勝手に注文を始めた。「源爺!ごめんなさいね・・どうします?」と店主が源爺をまた咎めつつ私に確認をしてきたので「あ・・別にそれでもいいです」と特段に食べたいものが有った訳じゃないので私は了承した。

 

 源爺が独り言のように村の世間話を店主に話しかけている。店主は適当に相槌する訳でもなく、確かに受け答えをしつつ二人分の調理をしている姿に私は関心をした。数分後、源爺の注文したものが先に出来た。エシャロットに砂糖味噌を添えた物と、輪切りをしたトマトの上にみじん切りをした生玉ねぎを乗せて、更に同じくゆで卵をみじん切りした物を玉ねぎの上に乗せ、仕上げにマヨネーズをトッピングした謎のトマト料理が運ばれた。「こいつは美味いどー、おめぇも食うか?」と源爺が謎のトマト料理を小皿に分けて私に差し出してきた「えっ・・良いんですか?」と私が遠慮しながら受け取ると「こうやって食べるだ」と源爺は謎のトマト料理を手で取ると一気に口の中に放り込んだ。「うめぇ!やっぱりうめぇな!」と源爺が絶賛していると「ごめんなさいね!女の子がそんな、はしたない食べ方が出来るわけ無いでしょ!」と店主がまたも源爺を咎めつつ箸を私のもとへ持ってきて、「柔らかいから簡単に分けられるからね」と箸で切るようなジェスチャーをして教えてくれた。

 

 源爺がビールと料理に舌鼓をしているのを横目に私は早速、謎のトマト料理を小分けして食べてみた。フレッシュなトマトの味と共にピリッとした生玉ねぎの味を、卵とマヨネーズがマイルドにして、独特なハーモニーな味がする、とても美味な食べ物だった。私が食べたのを源爺が確認をすると「うめぇべ?」と私に確認をしてきたので「はい!美味しいです!」と私は賛同した。そうこうしていたら、私の頼んでいた味噌おにぎりとタケノコの醤油煮が遂に来た。味噌おにぎりは、長皿の上に竹の皮を引いて、その上に三角が主流となった現代に珍しく丸いおにぎりが二つ、タケノコの醤油煮は小鉢に山盛りに入っていた。私は取り敢えず、味噌おにぎりをほうばった瞬間(あっ・・)と心の中で呟いた。私はこのおにぎりを食べたことがある・・まだ両親が健在の頃、私は風邪を拗らせて数日間寝込んだ事があった。私は体調が中々戻らず、食べた物を全て戻して、水以外受け付けなくなっていた。母はお粥や消化に良い食べ物を作ってくれたがどれもダメだった。日に日に弱っていく私・・ある日、母が竹皮に包んだ味噌おにぎりを持ってきてくれた。

 

 私は食べ物を見るのも嫌だったが、必死な母の訴えもあって渋々一口食べてみた。するとどうだろう、あんなにダメだった食べ物が吐き気も無く、すんなりと食べる事が出来た。私はあっという間にぺろりと完食して、それから、徐々に食欲が戻って体調が回復した。私は・・なんでこんな大事な事を忘れていたのだろうか・・?私は懐かしい味噌おにぎりの味に感傷的になりながらも、黙々と味噌おにぎりを食べ、タケノコの醤油煮を合間に挟みつつあっという間に完食をした。それを見た酔いどれ源爺が「おめぇ、見事な食いぷりっだな!うちの新宅の嫁さに行くべか?」と私を称賛しながら絡んできた。「源爺!すいませんね、あっ、会計ですか?」と店主が私と源爺の間に強引に入ってきて、退散した方が良いと手でジェスチャーしながら言ってきたので「はい!お願いします!」と私は快諾してお金を支払って食堂を出た。

 

 食堂の外に広がっている、村を一望できる景色は先程とは違った景色に見えた。村の至る所に幼少の私の姿が重なり合い、最近では思い出すことも無かった両親の姿が一緒に蘇る・・私は目頭が熱くなり、一筋の涙が流れて、それを手で拭うと、駐車している愛車に向かった。私が車に乗り込もうとした時に、黒塗りの高級車が入ってきて、食堂の駐車場に止まった。「神威(カムイ)だ!」と私は驚きながら言った。神威(カムイ)とは白瀬重工の最上位車種の高級車だ。田舎の村には不釣り合いで異彩を放っている車から、お抱え運転手だろうか?紺の制帽と制服に白い手袋で30代ぐらいの男性が降りると、後部ドア開ける。ショートカットの黒髪、黒のジャケットと白のワイシャツに黒のパンツで黒のパンプスをした女性が降り、何やら後部座席にまだ誰か居るらしく、降りるように促している様だった。すると、きめ細やかな美しい白い手が出てきて、艶やかな長い黒髪を三つ編みに、アイボリーのニットフレアワンピースを着た、一般人ではない空気を纏った美少女が慎重に車から降りてきた。「ここが、かの有名な烏丸(からすまる)先生が好んだと言われる味噌おにぎりが食べる事が出来る食堂ですわね!」と三つ編みの美少女が輝いた目で言うと「その様でございます、玲香お嬢様」とお抱え運転手らしき男性が相槌をして「では、参りましょう」とショートカットの女性言うと、3人は食堂の中に入って行った。(烏丸(からすまる)先生のファンがいたよ・・お抱え運転手に従者と言う奴か?)と少し驚きながら、3人を見送ると、私は改めて車に乗り込んだ。

 

 山道を越えて高速道路に入り、都心に向かって上りを走っていると、スマートフォンから着信音が鳴り、愛車のカーナビに連動して、スマートフォンの着信内容が表示された。同期の山田だった。私はハンズフリーのボタン押して通話に切り替えると「あっ、山田です、俺さ会社辞めたわw」と信じられない事を開口一番に山田が言った。「はっ!?なんで!?どうして!?」と矢継ぎ早に私が質問攻めすると「あれかさー、君が去ってから、社内の空気が凄く悪くなってね、次は誰がリストラされるのか?って感じでみんな疑心暗鬼になって最悪だったんだよ」と山田が答えると「そうなんだ・・これからどうするの?」と今後の事を恐る恐る私は尋ねた。「あっ、それは大丈夫、室長が新しい会社を立ち上げたから俺はそっちに行く」とまたまた驚愕な事をあっさりと山田は言った。「ちょっと!!私は聞いてないけど!!」と私が半ば半狂乱になりながら怒鳴り散らすと「落ち着けって!スマホをチェックしてみろよ!」と山田がなだめるように言ったので道路交通違反ではあるが、私は片手でスマートフォンをチェックしてみると、室長から何件も着信が来ていた。「室長から・・着信がきてる・・」と興奮状態が急激に収まって少しトーンが落ちた声で私が言うと「だろ?新しい会社でまた会おうや」と言った山田の声は、今まで聞いてた声の誰よりも優しく感じた。「ありがとう・・」と私は安堵で涙声で応えると「おっ・・おう・・まあ、何だ、今度飲み屋でパーと騒ごうぜ!じゃあな!」と私に気を使いながら、たどたどしく言った山田に対して「うん・・約束だよ、じゃあね」と言って私は通話を終了した。

 

 春名村は電波状態が悪く、スマホが繋がらない所が多い・・その為、私は室長の連絡に気が付かなかった。山田にはお礼と共に怒鳴ってしまったのを謝ろう・・私は涙と鼻水を車内に置いてあるテッシュを取って拭った。私はこれまで自分には何も無いと思ってた・・しかし、こんな私にもあった。春名村の味噌おにぎり、同期の山田、室長、あって間もないけど、私の記憶を蘇らせる切っ掛けをくれた源爺と店主・・そう、私にはあったんだ。私は新しい門出を踏み出すように、アクセルを踏み込んで我が家に向かって疾走した。

 

 

 今回ご紹介する曲は動画から作詞作曲全てをはまなすさんお一人でこなして作られたMarinerです。

 

 本曲ははまなすさんご本人が、人生の岐路に立たされた時に感じた心情や想いを歌詞にして、鏡音レンさんが歌います。

 

 本曲の題名Marinerは作曲者であるはまなすさんの心象風景を表している題名と自分は曲を聞いて思いましたよ。

 

 

 本曲を聴いていると、潮の香と波の音がする光景が頭に浮かびますね。歌詞の一つ一つに重みがあって、決して思い付きではなく、実際の体験から出た歌詞だと感じて良かったです。

 

 はなまるさんはBOOTHにて音源を配布してまして、残念ながら本曲はまだ出してないようですが他の曲も大変良い曲ですのでご興味がお有りでしたらどうぞ。

 

kadenzp.booth.pm

 

 本曲、Marinerは己が導き出した答えを歌詞にする事によって、聴き手には誰もが悩み苦しんで耐え忍んでいるという、ある種の共感性を感じさせて孤独から少し解放させてくれる良い曲だと思いますので是非!本動画を視聴してい聞いてみて下さい!

 

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda初音ミクV4XVer1.00

ニコニコ大百科様より

鏡音レン