どうぞ遠慮なく！なVOCALOID曲 - 煮干しの一押しVOCALOID曲

明けまして　おめでとうございます　

本年もよろしくお願いします　

　令和が始まって早くも五年目ですね。令和になってから振り返ればコロナ禍や台湾有事、ロシアとウクライナの戦争、アメリカの利上げによる円安など社会情勢が落ち着かない日々が続いた気がします。本年も引き続き厳しい情勢が続きそうですが兎年は飛躍や向上と言われていますので少しは状況の改善を期待したいですね。それでは本年初の２８５曲目の紹介をしたいと思います。（物語というか怪文書は飛ばしても結構ですｗ）

　俺はしがないサラリーマンで明日からの正月連休は寝正月の予定で暇を持て余していた。初詣？論外、論外だ、毎朝、満員電車に揺られて人込みはうんざりだ。俺は持て余した時間を八百（ヤオ）チューブの動画で潰していたらふっと思い立った。そうだ・・あの噂を確かめよう。

　あの噂とは今年のお正月頃に某巨大掲示板でまことしやかに囁かれていた噂だ。大晦日の夜に日本が誇る検索エンジン世界シェア１位であるヤオヨロズの音声システムに、「緊急につき解決したい案件があります」と話しかけると、とある場所に案内してくれるとういものだった。当時は企業が行った新手のステマじゃないかという話もあったが結局は真相はわからず、うやむやになって終わった。

　俺は退屈しのぎにヤオヨロズの音声システムを立ち上げ、羞恥心でうわずらせた、ぎこちない声で「き、緊急につき解決したい案件があります」とシステムに話しかけた。すると、システムが「ご提案します」と応えてヤオヨロズマップで何処かの場所を示していた。俺は「嘘だろ・・」とつぶやき鳥肌と共に興奮で少し体中が汗ばんだ。ゴクっと唾を飲み込み気持ちを落ち着かせて俺はスマホの案内を改めて見た。

　場所はオタク御用達の中原ソワレを指していた。中原ソワレは昭和初期に建てられた１階から7階までは商店街、8階から10階は住居、屋上は日本庭園付き神社がある巨大モダンマンションだ。因みにソワレはフランス語で、夜に行われる公演という演劇用語を、当時のオーナが夜でも賑わう場所になる様にと願いを込めて付けた名前らしい。当初はハイカラで最先端な建物に一流の店が立ち並んだ商店街だったが今や秋葉原の店が一か所に詰め込んだ感じのオタク系の店がひしめき合っていて、俺も何度か足を運んだ事があるが建築法が今より明確に定まっていない時期の建物だからか、構造が複雑怪奇で毎回迷子になるような場所だ。

　「終電まではまだ時間はあるな・・」と時計を見ながらつぶやき、俺は身支度を済ませ駅に向かった。中原ソワレに着くと大晦日なので人はまばらだった。幸いにもスマホの案内に目的の場所のテナント番号が記してあったので拍子抜ける程あっさりとたどり着けた。冗談半分の冷やかしのつもりだったので俺はソワソワしながらテナントの前を何度か通り過ぎた。しかし、噂の真相を明かした者としてSNSでバズるかもなとか、某巨大掲示板で英雄になれるとか承認欲求が限界まで膨らんだ俺には入る以外選択肢が無かった。

　意を決して中に入ると薄暗く、四畳ほどの広さの部屋を沢山の蝋燭が部屋を照らしていた。部屋の真ん中に机があり魔女の様な大きな帽子をかぶった女が座っていた。占い館？と思った刹那、女が「弊社にようこそ！クライアント様！お待ちしていました！どうぞご遠慮なく！お掛けください」と言った。それを聞いた俺は、お待ちしていた？クライアント？スマホの個人情報が洩れている？弊社？など頭の中にぐるぐると疑念と混乱の渦が巻き起こった。

　俺は入ってきたドアを一瞥（いちべつ）して逃げる姿勢をした瞬間、女がいつの間にか隣にいて強引に俺の手を引き椅子に座らされてしまった。女は正面に座り直し咳払いすると「クライアント様は弊社にお越しになられるのは初めてですよね？弊社は安心の平和主義がもっとうでして、お見積りからアフターケアまで明確親切！ただ・・一度正式にご契約なされますと手加減が出来ませんのでご注意ください。あっ！営業時間はまだありますからごゆっくりと、どうぞご遠慮なく！熟慮してくださいませ！」と一方的にしゃべり続けられポカーンとしてる俺に対して女は最後にニコっと笑みを浮かべ俺を見つめてきた。